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「きのこ屋」さんから指摘を受けたのだが、昨日ザラエノヒトヨタケとして載せたきのこ(h)はどうやら別種のようだ。同じく(i)、(j)のきのこはオキナタケ属
とするよりナヨタケ属としたほうがよさそうだ。ただこれが何なのかはよくわからない。 さいたま市の秋ヶ瀬公園にはいろいろなアセタケが出る。ここで取り上げたきのこは早朝公園のシイ・カシ林のジメジメした場所で採取したものだ。 成菌(a)、 ヒダ(b)、幼菌(b)、凹頭状の柄の基部(d)などをみたときキヌハダトマヤタケだと思った 。念のためにヒダ切片(e)を切り出した。ヒダ実質の組織(f)にはとりわけ特徴はない。側シスチジア(g)は厚膜で、多くは先端に石灰質の結晶がついている。この時点でキヌハダ トマヤタケ説は崩れた。傘中央部の先端にはわずかな毛(h)のようなものがある。傘組織(i)は問題ない。倍率を上げて担子器(j)、胞子(k)をみるとコブ状をしている。これで、もはや完全にキヌハダトマヤタケとの推測は覆された。もしキヌハダトマヤタケなら、側シスチジアは薄膜だし胞子はインゲン豆形で平滑だ。胞子紋(l)はキヌハダトマヤタケなど と同じ色をしている。 キヌハダニセトマヤタケはvon J. Stanglのモノグラフでは 色がかなり黄色っぽく描かれているが、記述と検鏡図からみて、おそらくこれはキヌハダニセトマヤタケ(Inocybe paludinella (Peck) Sacc.)と思われる。手元に小林孝人氏のモノグラフがないので断定はできないがまず大きくはずれてはいないと思う。 |
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昨日さいたま市の秋ヶ瀬公園をあるいてみた。ここ数日の雨のおかげで多種・多量のきのこが顔をだしていた。ただ、テングタケ類、イグチ類、ベニタケ類は非常に少ないかほとんど見かけなかった。「夏のきのこ」にはまだ時間が必要なようだ。 キオキナタケ(a, b)、オキナタケ(c)はあちこちに多数みられる。オウナタケに似たきのこ(d, e)があったが、顕微鏡観察の結果はキオキナタケと変わりなかった。イヌセンボンタケ(f)が地表近くに埋まった材からでていた。ザラエノヒトヨタケ(g, h)はチップから多数でている。オキナタケ属らしき美しい姿のきのこ(i)が印象的だった。トキイロオキナタケ近縁種だろうか。すぐ脇には淡紅色を帯びた幼菌(j)もある。ほかにも多くのナヨタケ属(k, l)などがみられた。 ナヨタケ属、オキナタケ属がいちどきに多数でてくると完全にお手上げだ。これらの仲間の検鏡は時間との勝負なので、限られた時間にすべてを検鏡することはできない。このため、特定の種だけに絞って採取・検鏡するのだが今回はその時間もなかった。 今回持ち帰りは4,5点だけだが、胞子紋をとるだけで精一杯で、オウナタケに似たきのこの検鏡までしか手が回らず、他のサンプルは破棄することになった。この他にも数十種類のきのこがみられた。 |
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同じホウライタケ属(Marasmius)でも、オオホウライタケ(6/23d, e)とスジオチバタケ(6/24a〜c)のミクロの姿は対照的だ。きのこの大きさは圧倒的にオオホウライタケの方が大きいのに、その胞子(a)は小さな傘を持ったスジオチバタケの胞子(b)の方がはるかに大きい。というより、スジオチバタケの胞子が巨大といったほうがよいのだろう。こういった巨大胞子を作るからなのか、担子器(c)も他のきのこと比べて大きい。スジオチバタケの強靱な柄(d)をみると外周部分はパイプ状の骨格をなしていて、まるで植物の維管束のようにみえておもしろい。胞子写真のスケールは1目盛りがおおむね1μmだ。 今回の撮影もふだん愛用しているオリンパスの単眼顕微鏡(e)で油浸×100を使った。かつて高校などで広く使われた学習用顕微鏡だが、これと同型のものが先日ヤフーオークションで3万円強で競り落とされていた。レンズの状態にもよるがこれは非常にお買い得だと思う。ケーラー照明こそついていないが、しっかりしたステージと微動ノブ、コンデンサを持った本格的なものだ。昨日・今日の写真はすべてこの顕微鏡とデジカメを使って撮影した。このクラスの顕微鏡でもきのこの世界が大きく広がることは間違いない。 早朝、団地の駐車場の脇をみると何ヶ所かにイタチタケ(f)が出ていた。数日前までは何も無かったはずなのに...。しかし、最近はどこに行ってもみるのはイタチタケやその仲間ばかりだ。 |
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ヒメコガサ(6/26c)は見かけこそ地味で目立たない小さなきのこだが、ミクロの世界ではとても豊かな表情を見せてくれる。ちいさな傘をひっくり返してみると、ヒダと柄には小さな毛のようなものが無数についている(a)。 ヒダから切り出した切片(b)をみるとその正体が大きなシスチジアらしきものだと分かる。ヒダの先端(c)には多数の縁シスチジアが、そして側面(d)にも多数の側シスチジアがみられる。さらに柄の表面(e, f)にも同じようなかたちのシスチジアがみられる。傘表面(g)の菌糸は「放射状の匍匐菌糸」と表現されることが多い。担子器(h)はなかなかうまく撮影できなかった。胞子(i)はアーモンド型をしている[スケールは1目盛りが1μm]。図鑑などの記述では「胞子は卵形〜類アーモンド形で胞子盤を有し、それ以外の部分は外被におおわれ仮面状」と記述される。撮影データからは仮面の様子ははっきりとはわかりにくい。なお、菌糸にはシスチジアがある。 なお、今回採取した個体は傘径5mmほどの小さな若い個体だったせいか胞子サイズはやや小ぶりのように感じた。担子器やら仮面状胞子については、いま少し上質の対物レンズを使って撮影すれば明瞭に写ることだろう。 先に採取したミミナミハタケ属(6/26j, k)であるが、ヒダ実質をメルツァー液で染めてみる(j)と綺麗にアミロイド反応を示した。胞子(k)は広卵形から類球形でアミロイド[スケールは1目盛りが1μm]。ということは、「北海道からのみ知られている」というキツネナミハタケ(Lentinellus vulpinus (Sow.:Fr.) Kuhn. & Maire)の可能性が大きい。 |
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日光でみた唯一のベニタケ科のきのこ(a)は、カワリハツのように見えたがFeSO4をたらしてみてもいっこうに変色しない。コケの間からはいろいろの種類の可憐なきのこがでていた。ヒナノヒガサ(b)、ヒメコガサ(c)、ケコガサタケ属(d)やアシナガタケ(f)が、朽ちた材からはオリーブサカズキタケ(e)などがでていた。道ばたからは大きなオニタケ?(g, h)が、ボロボロになった材からはイタチナミハタケ(i)がでていた。同じく朽ちた材からミミナミハタケによく似た菌(j, k)がでているので近寄ってみると傘表面の様子が全く違う。でも、ミミナミハタケ属には間違いなさそうだ。「北海道でのみ採取された」とされるキツネナミハタケ(Lentinellus vulpinus (Sow.:Fr.) Kuhn. & Maire)について調べてみなくてはなるまい。明日にでも顕微鏡下の観察をしてみよう。これまでにも日光では「北海道特産」のきのこがいくつも見つかっているので、検討の余地がありそうだ。 今回はホシアンズタケに出会うたびに柄についた液滴を採取して回った。1ccの小さな注射器(l)を使って100数十個体くらいから集めた赤い汁は0.3ccほどになった。気が遠くなるような根気のいる作業だった。汁をスライドグラスに垂らして顕微鏡下でのぞくと、イボイボの胞子が多数泳いでいた。汁からは甘酸っぱいような独特の香りが漂っている。 |
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日光に定点観測に行って来たのだが、帰宅してみると駐車場に見知らぬ車が駐車しており、いつまで待っても運転者が戻ってこない。いったんよそに車を駐車させてもらい、駐車場事務所やら団地の管理事務所、警察などに連絡を取るがなかなからちがあかない。やっとのことで違法駐車の車の運転者と連絡が取れてどいてもらった。このためかなりの時間を浪費してしまった。 日光ではこのところずっと低温が続き、降水量もとても少なかったという。例年なら今頃多数のイグチやテングタケの仲間がでているはずなのに、これらが全く見られず、ベニタケ科のきのこも非常に少なかった。目立ったのはキララタケ、コキララタケ、ナヨタケ、イタチタケなどのヒトヨタケ科のきのこばかりだった。 そんな中でホシアンズタケ(a〜c)、タモギタケ(d〜f)は多数の株を見ることができた。カラマツにはツバ有りマツオウジ(g)が目立った。地元の人には人気があるマスタケ(h)はよく出ている。シロキツネノサカズキ(i, j)は発生が悪い。ナラタケ(k)にいたってはようやく顔を出し始めたばかりだ。ヤナギからは多数のヌメリツバタケモドキ(l)がでていた。 |
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埼玉きのこ研究会の採集会が、昨日川越市近辺で行われた。採集されたきのこはここ数年間で最も少なかった。例年ならベニタケ科、イグチ科、テングタケ科のきのこがかなり並ぶのだが、これらのきのこはわずかしか見られなかった。とくにイグチ科、テングタケ科のきのこは一つも展示されなかった。 川越水上公園近くの林を歩いてみると、スジオチバタケ(a〜c)、ベニヒダタケ(d〜e)、小さな落葉分解菌(f)などが見つかった。 |
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昨日千葉県外房の浜辺を定点観測してきた。観察対象の腹菌類は全くでていなかった。コウボウムギやハマニンニクなどのイネ科植物の根本には相変わらずいつものきのこ(a, b)が無数に出ている。もしかしたら、今の時期全国の浜辺にでるきのこなのかもしれない。素性はまだよく分からないがcollybiaかmarasumiusの仲間の可能性が強い。イネ科植物にはヒトヨタケ科(c)のきのこなどもでる。砂浜に出るハラタケ目のきのこはまだ他にもいくつもある。これだけでも立派なテーマができあがるかもしれない。 少し黒松林に近寄ってみると、オオホウライタケ(d, e)があちこちに群生していた。驚いたことに今の時期にショウロ(f)やらマツカサキノコモドキ?(g, h)がでている。松毬からはアミヒダタケとよく似た小さなきのこ(i)がでていた。松毬からでているきのこで最も新鮮だったのはマツカサタケ(j〜l)だった。他にもテングタケ科、ヒトヨタケ科のきのこが浜と林の境界付近にいくつも見られた。 |
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[その2] |
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見沼で採取したミドリスギタケと思われるきのこ(6/21 a〜c)の観察結果からの抜粋だ。いつものようにヒダ切片(a)を切り出した。ヒダの組織は平行型(b)、縁を拡大(c)してみると色素を帯びた組織や担子器(d)がみえる。組織のあちこちにはクランプ(e)がある。胞子(f)は表面がザラザラしている(スケールは1目盛りが1μm)。縁シスチジア(g)はボーリングのピンのような形をしている。ヒダにKOHをたらすと次第に黒変(h)していった。柄は若いうちは中実(i)でしっかりしてる。老菌になるとやや中空気味(i)になり内部は綿のように見える組織で充満しており、根本は緑色を帯びていた。また早期剥落性のツバ表面は明るい橙色、胞子紋(j)は褐色をしている。 | |||||||||||
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次に、ウラベニガサ属らしいきのこ(6/20 d〜f)だが、胞子紋(ma)は明黄褐色をしている。ヒダ切片(mb)を切り出して見るが縁シスチジアはみあたらない。ヒダ実質の組織を見るため倍率を上げると(mc〜md)、逆散開型をしていた。この時点でウラベニガサ属だろうと思った。念のために別の個体から切り出したヒダ(me)を見ても同じく逆散開型をしていた。側シスチジア(mf)は薄膜で数はさほど多くない。担子器(mg)は思いのほか細長い。カサの表面は繊維細胞状(mh, mi)でクランプを持っている。 胞子は球形(mj)[スケールは1目盛りが1μm]をしている。これらから判断するとHispidoderma節のきのこではあるまいか。なお、傘と柄にはシスチジアはみつからなかった。 | |||||||||||
[その1] |
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久しぶりに狭山湖北側のシイ・カシ林を歩いてきた。あれほど雨が降ったにもかかわらずきのこの姿は意外と少なかった。ドクベニタケ(a)、ヒビワレシロハツ(b)以外にはベニタケ科のきのこには出会えなかった。イタチタケ(c, d)、ダイダイガサ(e)、チャコブタケ(f)、クロコブタケ(g)、キクラゲ、アラゲキクラゲ、スエヒロタケなどはあちこちに姿を見せていた。アカキクラゲ科(h)のきのこやらクヌグタケ属(i, j)の繊細な白いきのこはいたるところに出ていた。テングタケ科のきのこには全く出会えなかった。 | |||||||||||
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早朝の見沼では、ウッドチップの上に相変わらずヒトヨタケ科のきのこが多数見られる。今朝はいつもとは少し違うキノコに気がついた。 草むらからチャツムタケ属(a〜c)のようなきのこがでている。おかしいなと思いながらよく見ると、草むらの下はウッドチップだった。かなり大きな姿をしていたがどうやらミドリスギタケのようだ。同じくウッドチップからウラベニガサ属(d〜f)と思われるきのこもでている。一見ベニヒダタケのようにも見えたが、それにしては全体がしっかりしており柄も太い。シイの樹林にはヒビワレシロハツ(g, h)がかなりめだつようになってきた。ワタヒトヨタケ(i, j)の幼菌と老菌が並んでいたのでつい撮影した。他にはシロキクラゲ(k)、ハタケチャダイゴケ(l)などをはじめ、ツマミタケ、キクラゲ類、オキナタケ属、フミヅキタケ属のきのこが多数見られた。 ミドリスギタケやウラベニガサ属と判断したきのこに関しては一通り顕微鏡を使って観察したがまだ撮影はしていない。明日は検鏡結果を撮影して記録しておこう。 |
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