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千葉菌類談話会通信No.19が届いた。長尾英幸氏(筑波大学)による「うがい薬で調べる子嚢のヨード反応は?」が目に入った。メルツァー、ポピドンヨードを含む動物用消毒液、うがい薬の3試薬の比較結果を記したものだ。試料としてはチャワンタケ類を使っているが、結論としてメルツァー試薬の代替品としてうがい薬を利用できるとある。先に雑記(2002/12/21、2002/12/22)に書いたものとほぼ同様の結論である。こういったことが話題になること自体、アマチュアが如何に試薬の入手に苦労しているかの証でもあろう。 配布された千葉菌の「通信No.19」は予算の関係で白黒だが、版そのものはオールカラーで作られている。PDF版の配布とWeb上でのHTML版公開を視野に入れての配慮であるという。今はまだ千葉菌HP上では未公開だが、早い時期に「通信」をバックナンバーも含めてWeb上で閲覧できるようになるという。海外の菌類関係の機関紙の多くはWeb上で閲覧できるし、国内でも、北方菌類フォーラム、埼玉きのこ研究会など、会報・機関紙類をWeb上で公開(有料サイトが多いが)する機関・団体が増えてきた。これも時代の趨勢なのだろう。 年末になって、久々にMac上での組版ソフトInDesignがらみの仕事が入ってきたのでおのずとふだんとは違ったところに目が行くようになっている。 |
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早いものだ、何だかんだときのこに明け暮れているうちにとうとう12月末になってしまった。これまでやったこともない妙な回顧にふけってしまった。この一年間に出会ったきのこが走馬灯のようにまぶたの縁をよぎっていく。海辺の砂浜に通うようになって既に何年が経過することだろう。 今年はとにかく千葉県の海によく通った。休日の半分は海通いに終始してしまった。すでに12月に入った頃からコナガエノアカカゴタケとはいったん縁を切ることにした。もとはといえば、10数年昔に出会ったケシボウズタケに再び出会いたくて始めた海通いだった。来年も基本的にはこの行動パターンに大きな変化は無いだろう。 今年は何の収穫もない不毛の一年だったと公言する友人もいるが気の毒なことだ。今年ほど実り多い一年は最近十年ほどの間でも珍しい。長年の念願だったセンボンキツネノサカズキには出会えたし、踏み潰すほど多数のコウボウフデの発生現場に立ち会うこともできた。ケシボウズタケの仲間に出会ったのはつい最近だったし、実に豊かな一年間だった。この「運」を来年まで引き続き運んでいきたいものだ。 |
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上野のアメ横では中国産のキヌガサタケやらトリュフをしばしば見かける。キヌガサタケはすべて乾燥品だが、トリュフの方は生もので黒くて表面が小さなピラミッド状突起に覆われているタイプが多い。昨日買い物客でごったがえすアメ横を通り抜けた。径6cmほどで黒っぽくて表面が小さな丸疣状で粉におおわれたような形のトリュフ(a, b)が、2つ入って500円で売られていた。値切るとすぐに300円になったので、面白半分に買って帰った。無論食用目的ではなく、覗いて楽しもうという腹である。帰宅して切断してみると、綺麗な大理石模様(c, d)が出てきた。 子嚢(e)には胞子が4〜5つ入っている。倍率を上げて胞子表面(f)や輪郭(g)に焦点を合わせてみた。透明なもの(h)は未熟胞子なのだろうか。地下生菌に関しては全く無知そのものなので、見当違いの部分を観察しているのかもしれない。アメ横などに並んでいる中国トリュフにもいろいろな種類があるが、今回のものは先に北海道に持って行ったものと同一種のようだ。 外見だけ見ていると面白くもなんとも無いきのこだが、顕微鏡下の姿は非常に変化に富んでいて興味深い。早速佐野書店にカラー写真が多数掲載されているトリュフ図鑑(フランス刊)を注文した。国内できのこの文献といったら佐野書店の右に出るものは他にない。G洋書は価格が高いし最新の情報に疎い。 |
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早朝さいたま市の見沼地区で何ヶ所かのウッドチップ堆を回ってきた。霜と氷でコチコチになったウッドチップからネナガノヒトヨタケ、クズヒトヨタケが出ていた。傘と柄の一部は凍っているが、ウッドチップの中に長く伸びた根状の柄は柔らかかった。エノキタケも凍っていた。凍りついたエノキタケの一部をはがして持ち帰り顕微鏡で覗いてみた。 今回は凍ったままの状態でヒダ切片を切り出した。スライドグラスにフロキシン液をたらしてそこに切片を落とし込んだ(a)。切片以外の部分のフロキシンは水で洗い流した。縁に棍棒状のシスチジアがあったが、側にも同じような形のシスチジア(b)が散在していた。先日みた試料のそれとは少し形が違う。ヒダ実質をちょっとみればすぐにクランプ(c)はみつかるが、担子器(d)は小さくてわかりにくい。一つをバラしてみた(e)が、撮影するとやはりかなり不鮮明になっていた。 どうもエノキタケには苦手意識があるようだ。12月12日にもエノキタケを検鏡(2002/12/12雑記)しているのだが、エノキタケは何度やってもうまくミクロの姿を捉えられない。胞子も担子器も透明だし小さいのでとても見にくい。今回の失敗は切片の厚すぎ(a)と水の多すぎが原因だろう。照明法以前の問題だ。いずれまた薄い切片の切り出しに挑戦しなくてはなるまい。 |
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北本市、鴻巣市、桶川市などで幾つかの自然公園を歩いてみたがきのこの姿はほとんどなかった。地上3メートルほどのところに大きなヒラタケが、エゴノキの根本には乾燥したエノキタケがでていた。足元に転がった材には綿クズのようにスエヒロタケ、目をあげるとビロード状のコウヤクタケ科のきのこがまるで絆創膏である。カワラタケ、カイガラタケなどは干からびているのに、そのすぐ脇でタマキクラゲだけがやけにみずみずしかった。道脇の斜面にはツチグリが霜柱に持ち上げられていた。これらがすべてであった。カメラの出番はまったくなかった。 いくつかの自然公園や保護林を歩いてみると、あらためて今の時期きのこがいかに少ないかを痛感させられる。それでも、撒きたてのウッドチップ、馬糞・牛糞やウサギなどの小動物の糞からは、真冬でさえいろいろなきのこを見ることができる。 |
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昨日に引き続いて見沼地区で採取したアラゲキクラゲを顕微鏡で覗いてみた。最初なるべく薄く切片(a)を切り出し、倍率を上げてみた(b)。水でマウントしただけでは殆ど何もわからない。プレパラートを顕微鏡のステージに乗せたまま、1ccの注射器を使ってフロキシンをカバーグラスの下に注いだ(c)。倍率を上げると(d)担子器の姿が比較的鮮明にみえてきた。 いつみてもアラゲキクラゲやらキクラゲの担子器はなかなか鮮明に見えない。肉眼ですら鮮明に捉えられていないのだからデジカメでまともに写るはずがない。裏側の毛(e)をさらに拡大(f)してみた。アラゲキクラゲ裏側の長い毛は、隔壁の無い厚膜の細胞(f)からなっている。 今回のサンプルは子実体の長径が4〜5cmほどだった。胞子がまだ十分にできていないのか、いくつも作ったプレパラートのどれにも鮮明な胞子の姿を捉えることができなかった。それにしてもキクラゲの担子器や胞子の鮮明な姿を撮影するのは難しい。 「八王子のきのこ」の「きのこノート」に「顕微鏡デジタル画像における光学ノイズ除去」が追加された。市販の画像処理ソフトウエアを用いてノイズ消去が良好に行える方法を克明に解説したものだ。原理などの説明はやや難解だが、PrintShopProでの処理例を使って流れをわかりやすく紹介してある。デジカメで顕微鏡撮影を行おうとするなら、一度は必ず目を通しておいて損は無い。やや職人技的技術も必要だが、光学ノイズに悩まされている諸氏には朗報である。 |
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一昨日見沼地区で採取したヒメキクラゲを顕微鏡で覗いてみた。ヒメキクラゲ科のきのこは生のブヨブヨ状態のまま薄切り切片を作るのは非常に難しいので、まる一日部屋の外に放置して少し乾燥させた。完全に乾ききると非常に硬くなりやはり薄切りは難しい。そこでカラカラになる少し前、ほぼ乾燥した状態のものから切片を切り出した。 表面に近い部分を薄く切ってみると(a)、低倍率でも三層構造をなしているのが十分によくわかる。最外層のやや赤褐色にみえる部分は表面、次の赤紫色部分は担子器の層、その内側に網状の原菌糸からなるゼラチン層がみえる。ちなみに、フロキシンで染色している。さらに一段倍率をあげ(b)て表面近くをみると、表面に胞子もみえた。紫色に染まった担子器からは、とても長い端子柄が表面まで伸びている。胞子(c)はソーセージ型をしている。ゼラチン質に埋まった中には網状に原菌糸が縦横に広がっている(d)。 最初にほんのわずか厚すぎるかなと思える切片(e)を切り出して見たところ、三層の構造がとてもわかりにくかった。最外層から深くゼラチン質の原菌糸側に埋没した位置に担子器(f)が綺麗に並んでいるはずなのに、それが明瞭に判別できなかった。 今日の検鏡写真はケーラー照明を持った三眼顕微鏡で撮影した。最初観察していたときは単眼の簡易顕微鏡を使ってみていた。それでも十分(a)〜(d)のような映像は見られるのだが、デジカメで撮影したものはかなり不鮮明な画像となってしまう。簡易照明に問題があるのだろうが、肉眼で見たときと撮影したときとでは、鮮明さがかなり違う。そこで、あらためてケーラー照明を持った別の顕微鏡で撮影したものだ。対物レンズは普通のアクロマートである。これで、どうやら簡易顕微鏡を肉眼で覗いてみたときとほぼ同じ程度の映像が得られたように思う。 |
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昨日の朝さいたま市見沼地区に行ってみた。あたり一面霜で真っ白で一見きのこなど全くなさそうな雰囲気だった。しかしエノキタケ(a)、アラゲキクラゲ、ヒメキクラゲ(b)があちこちで見られた。ウッドチップからは相変わらず、ネナガノヒトヨタケ(c)、ワタヒトヨタケ(d)、クズヒトヨタケ(e)などが出ていた。例年なら雨の後に必ずといってよいほど顔を出すシロフクロタケには一つも出会えなかった。エノキタケはあまりにも立派な株がいくつもあったので、そのうちの一株を久しぶりに食用として持ち帰った。久しぶりに夜はエノキタケのたくさん入った鍋物となった。 | ||||||
先週は2つのきのこの会のスライド大会に出席した。特に出品するものも無かったのでもっぱら鑑賞するばかりだった。デジカメで撮影したデータの発表がずいぶん増えてきた。ここ数年のデジカメの進化にはすさまじいものがある。身近にも、銀鉛フィルムの一眼レフをやめてデジカメ一本にしてしまった人が何人かいる。従来はスライド映写機さえあればよかったのに、最近はプロジェクタも準備しなくてはならない、世話人の皆さんも大変である。 相変わらず日常の撮影にはニコンのCoolpixを使っているのだが、メインに使っている1台が入院した。新宿のニコンサービスセンターに持っていったところ、工場での修理が必要という。帰ってくるのは来年1月の半ば頃になるという。幸い今の時期、きのこの姿は非常に少ないし、スペアの機械もある。日ごろできないことをするにはちょうどよい。今日は久しぶりに「キノコのフォトアルバム」のうちの、カンゾウタケ、キヌガサタケ、ブナハリタケの3点にテキストを添えた。 |
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昨日に引き続き、イソジンガーグルとメルツァー液の比較を試みた。というのも、きのこを始めた当初数年間は、メルツァー液が入手できず、やむなくルゴール液やらイソジンガーグルを使っていたからだ。いまでこそメルツァー液を入手できる環境となったが、長いこと不安を抱きながらもヨウ素入りうがい薬を使っていた。とくにイソジンガーグルにはすっかり世話になった。 今朝は最初にチャコブタケを使った。早朝自宅団地内で拾ってきた落枝に着いていたものだ。子嚢先端のアミロイドリングがどのように染まるかを比べてみた。イソジンガーグル使用(a)のものとメルツァー使用(b)のものをみると、両者にほとんど差異はなかった。これまでの経験によれば、一般に子嚢菌ではかなり広範囲に代用がきくように思う。 ベニタケ科の胞子表面の染まり具合はどうであろうか。今年の5月12日に川崎市で採取したヒロハシデチチタケの胞子紋を使って両者を比べてみた。(c)はイソジンガーグルで染色したもの、(d)はメルツァー液で染色したものだ。これを見ると明瞭な差異がでている。イソジンガーグルでは表面の模様がほとんど染まっていない。しかし、アルコールで前処理をするとかなり染まる。 過去に何度もベニタケ科の胞子をイソジンガーグルで染めて観察してきた。メルツァー液に比較すると全般的に染まり具合が弱い。種によっては全く染まらない。うがい薬を使っていた時代にはアミロイドといえるかどうかよく迷った。しかしメルツァーを使うようになってかなり明瞭にわかるようになった。それでもアミロイドかどうか迷うケースはしばしばある。 |
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メルツァー液(メルツァー試薬)が入手できないのでヨード反応が調べられない、どうしたものだろうか、といったメールをしばしばいただく。 メルツァー試薬はヨウ化カリウム、ヨウ素、飽水クロラール、蒸留水を調合して作るのだが、これがなかなか面倒だ。劇薬指定の薬品は含まれる、少量では分けてもらえない、メスシリンダーなどの計量器具が必要、等々試薬の調合はアマチュアにはかなり敷居が高い。 かつて代用品として各種のうがい薬を使っていた。[ルゴール液]、[イソジンガーグル]、[イソジン] (b)などといった商品がそれだ。これらでもある程度まではヨード反応をみることができる。先日採取したスナヤマチャワンタケを材料に、イソジンとメルツァー液を比較してみた。 (a)は水だけで見た子嚢、(c, d)はイソジン、(e, f)はメルツァー液で染色したものだ。いずれも子嚢頂孔部が明瞭なアミロイド反応を示している。ただ、ベニタケ科の胞子表面の模様は、イソジンでは染まりにくいものもある。またルゴール液ではグリセリンを多く含むせいか微妙なところで反応しないこともある。やはり厳密な判定にはメルツァーを使わねばならないだろう。 なお、メルツァーとはチェコスロバキアの菌学者で、彼の発明した試薬がメルツァー液だ。その人となりについては千葉菌類談話会のサイトにとても明快に解説されている。 |
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