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オオカボチャタケは日光では比較的よく見られるきのこなのだが、困ったことにほとんど同じような姿をしたアカゾメタケもかなりの頻度で発生している。この両者は、ちょっと見ただけでは区別するのが難しいように思える。 8/14に日光で出会った個体(a)は、直感的にはオオカボチャタケと思えたのだが、かつてアカゾメタケを オオカボチャタケと間違えたことが何度かあったので、念のためにその場で10%KOHを傘表面(b)と切断面(c)にかけて変色の様子を見た。アカゾメタケなら紫褐色から赤紫色に変わるとされるのだが、このきのこでは赤〜暗赤褐色に変色した。また、切断面に触れると黄褐色の汁と黄粉が手に付いてくる。さらに子実体の一部を持ち帰って検鏡したところ、菌糸に橙色の粒子がゴミのように無数に付着していた。これらの特徴から8/15の雑記で取りあげたきのこはオオカボチャタケに間違いあるまい。 |
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8月10日の「今日の雑記」で顕微鏡の接眼レンズに取り付ける簡易デジカメアダプタを紹介したが、その中の(ハ)(a, b)についていくつも問い合わせのメールをいただいたので、ここであらためて詳細に紹介しておくことにしよう。 これ(a〜d)はKenkoの製品で、商品名は [フィールドスコープ デジタル撮影アダプターFS28](e) といい定価2,400円で、ニコンのクールピクス専用のものだ。大都市などの大型カメラ店などでは2,000円以下で販売されている。ネット通販でも取り扱われているが、こちらは定価の2,400円となっていた。 もともとがフィールドスコープに装着して使うことを前提にしたものだが、うまいぐあいにほとんどの顕微鏡の接眼レンズにそのまま装着して使うことができる。数ヶ月にわたって、ほぼ毎日数回装着を繰り返して使ってみた(f, g)が、案外使えるのではないかとの感触を得た。手持ちの接眼レンズにそのまま装着できるのもよい。ただ、接眼レンズとの固定にやや貧相な3本のネジ(c)を使っており、これが細くて折れやすい。また、何度も取り付け・取り外しを繰り返していると、ネジがバカになって固定できなくなる。 少なくとも8月10日に紹介した(二)の「テープグルグル巻き」よりははるかに安定して使える。コストを考えるとビクセンのデジカメアダプタよりはるかに安くつくが、使えるデジカメはCoolPix950シリーズに限定されるようだ。それ以外のデジカメを使う場合には、ビクセンの製品を使うしかあるまい。 |
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日光で出会ったキノコで非常に特徴があるにもかかわらず、手がかりもつかめないものがある。(a)〜(d)がそれであるが、昨年7月14日にも同じ地域で
同じもの(e, f)に出会っている。太い幹の倒木から発生しており、材はハルニレかミズナラのいずれかである。今回も4、5個ほど発生していた。キノコのサイズも巨大であり、傘の径は幼菌でも20〜25cm、成菌では50〜60cmほどにもなる。なお(c)は裏面、(d)は傘表面だ。 昨年は同行の仲間が「シロアミヒラタケではあるまいか」と言ったが、広葉樹から発生していること、巨大であることなどからシロアミヒラタケとは考えにくい。中心部の肉厚も幼菌で30〜40mm、成菌では70〜80mmにも達する。傘表面には微毛とササクレがあるが、成菌になると微毛はほとんどなくなってしまうようだ。全体がスポンジ状であり乾燥しても硬くならないが、全体にかなり強靱である。 今回持ち帰ったのは傘径20cmほどの幼菌(a)だった。その近くにはグズグズになった老菌がいくつもみら れた。これは傘径50cm以上あった。持ち帰った個体の管孔部付近(g)をいくら探しても、 胞子や担子器らしきものは全くみられなかった。まだ幼菌で未成熟なためなのだろうか。巨大な老菌の一部も切り出して持ち帰ったが、こちらはたった1日で激しく腐敗がすすみ、白い小さな虫が無数に発生しており、検鏡には堪えられなかったのであきらめて破棄した。 検鏡結果からいくつか分かったことは、骨格菌糸(i)、結合菌糸(h)を持った3菌糸型であり、クランプを持つ(j, k)ことだった。(l)はフロキシンで染めてみたのだが 、特に見やすくはならなかった。タマチョレイタケなどに近いきのこなのだろうか。 |
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早朝、さいたま市の秋ヶ瀬公園と所沢市の航空公園に行ってみたが、きのこの姿はほとんどない。地肌はすっかりカラカラで、かろうじて見たのはキコガサタケとハタケチャダイゴケくらいのものだった。近づいている台風が雨をもたらしてくれるとよいのだが。 |
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フクロツルタケの胞子紋の一部を削って顕微鏡でのぞいてみた(a)。胞
子の内容物ばかりが強調されて全体の形がわかりにくい影像になってしまった。ヒダ切片(b)を切り出してシスチジアを探したがそれらしいものは見つからない。見ようによって
は側シスチジアにも見え、単にヒダの縁を構成する細胞のようにもみえるのが(c)だ。担
子器(d)も意外と捉えにくかった。 |
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フジウスタケの胞子(e)も覗いてみたのだが、今回持ち帰った個体がや や若かったせいなのか、全体にやや小ぶりだった。グアヤクチンキで緑変するからウスタケではなくフジウスタケとしてよいのだろうが、食感は富士山で見られるものよりもやや淡泊だった。子実層(f)を切り出して肉(g)をみるといかにも脆そうな細胞が詰まっていた。担子器(h)などはウスタケとほとんど区別がつかない。 | |||||
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日光ではタモギタケの大群落に圧倒されたが、道ばたにはイグチがいろいろ見られた。アシベニイグチ、コウジタケ、アワタケ、ブドウニガイグチ、ニガイグチモドキなども見られたが、ここではイロガワリだけを取りあげた。 すぐ近くにアシベニイグチが何本も出ていたので、これ(a)もアシベニイグチだと思って、ひっくり返してみると(b)、柄に網目はなく小さな粒点でおおわれていた。二つに切り裂いてみると直ちに青変した(c)。近くには幼菌(d, e)がいくつも出ており、やはり切ると直ちに青変する。この時点でやっとイロガワリだろうと気づいた。 直接カバーグラスに胞子(f)をとって観察してから、管孔部をいくつか切り出し(g)、少し倍率を上げてみる(h)と、担子器や側シスチジアらしきものが多数みられる。油浸レンズにしてみると側シスチジア(i)、担子器(k, l)が明瞭に分かった。別の場所からは管孔の縁を切り出し縁シスチジア(j)を観察した。胞子写真のスケールは1目盛りが1μmだ。 観察を終えたきのこのうち、幼菌は虫もほとんど入っていなかったので、そのままさっとゆでてワサビ醤油でビールの肴にした。これは美味しいきのこに分類されるだろう。アシベニイグチ、アワタケなどは胞子だけを観察したのち、そのまま廃棄してしまった。 |
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先週に引き続き日光に定点観察に行ってきた。先週うっかり置き忘れたきのこ図鑑を回収することも目的のひとつだった。置き忘れた地点に行ってみると、図鑑は多少濡れていたがほとんど原型を保って無事だった。紙面はほとんどふやけたり波打っていなかった。ということはこの1週間ほとんど雨らしい雨が降っていないという証でもあった。 図鑑を置き忘れた地点の周辺ではタモギタケ(a, b)が大発生(a)をしており、この倒木1本だけでも数十キロほど発生していた。今回もこの一本の倒木に出ているタモギタケの五〇分の一ほどを食用に採取したが、それでも十分すぎる量があった。ミズナラの倒木からはあちこちでオオカボチャタケ(c, d)が出ている。これは遠目にもとても美しい。その一部の切断面を撮影したのが(d)だ。近くのモミの大木の周辺からはフジウスタケ(e)がいくつもでている。その近くの小枝からはコチャダイゴケ(f)やら、独特の匂いをもったニオイカワキタケ(i, j)がいくつもでていた。サナギタケ(g, h)は笹藪の茂った斜面から出ていたので、掘り出すのに危うくギロチンをするところだった。今日はフクロツルタケ(k, l)もあちこちで大きな菌輪をなしていた。 |
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ツブカラカサタケの成菌のヒダを1枚、スライドグラスに寝かせて縁をみると、先端が突出した紡錘形のシスチジア(a)が多数みえた。ヒダの切片を切り出して
縁を探してみるが側シスチジアは見つからなかった。担子器(b)は無数にある。胞子(c)は無色透明に近くとてもみにくい。おまけに、胞子を一面に多数並べてしまったので、形や大きさが捉えにくい。そこでメルツァー液をわずかにたらし、胞子が適度にばらついている部分をみると、鮮明な姿(d)を捉えることができた。
スケールの1目盛りは1μmだ。 ここまでで観察はうち切って、胞子を素材に照明方法をかえて遊んでみた。接眼レンズを15倍のものに換えて(d)と同じ場面をみた(e)。接眼ミクロメータを装着したレンズがゴミと埃でかなり汚れていることを痛感した。たまには掃除をせねばならない。それにしても接眼レンズの倍率を上げるとたちまち鮮明さが落ちる。所詮、対物レンズが作り上げた虚像を拡大しているだけだから、これは当然だろう。次に暗視野状態にして胞子を見る(f)と全く別の世界が広がっていた。(f)は油浸×100を使っているが、その前に見た低倍率での視野はまるでプラネタリウムの世界だ。真っ暗な中に黄金色に輝く小さな星くずを見ているかのような姿だった。 |
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早朝さいたま市の見沼地区を歩いてきた。とにかくきのこの姿はとても少ない。そんな中でもツブカラカサタケ(a, b)ばかりはあちこちに発生していた。幼菌、若い菌、老菌いずれもみることができた。真っ白な若い菌(a)と黒褐色を帯びてややひび割れた老菌(b)とではまるで別種のきのこのようにすら見える。アラゲキクラゲ(c)はすっかり乾燥してカリカリになっている。そのすぐ脇の倒木や切り株からはみごとなマンネンタケ(d, e)が何株もでていた。ウッドチップからはネナガノヒトヨタケ(f)とハタケキノコ以外には何もでていなかった。たいていは他にもヒトヨタケ科、コガサタケ科、オキナタケ科のきのこが数種類は見られるのだが...。 | |||||||
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ウラグロニガイグチを数日冷蔵庫の野菜籠に放り込んでおいたら、例によって白い小さなウジ虫が多数発生していた。虫をよけてかなりいい加減に管孔部を切り出し(a)、対物20×でみると(b)、側シスチジアが無数に見えた。まともな薄い切片を作ったらさらに明瞭に細部が見られるのではあるまいか、そう思って何度か試みたが、結局うまく切り出せなかった。何とか比較的薄い切片(c)を切り出したものの、細部が引きずられてつぶれてしまい、対物20×(d)でみてもかえってわかりづらくなってしまった。シスチジアが他の組織に埋もれている。ただ、高倍率に挙げると担子器(e)が多数見える。 これなどは乾燥させてから切片を作るとうまく薄い状態に切り出せるが、今回はそうはしなかった。胞子(f)は過去に見てきたウラグロニガイグチのそれに比べて一回り小さかった。それにしても、図鑑記述の胞子サイズと現実のそれとはかなりのズレがある。 食卓の端に顕微鏡を置き、すぐ脇の白い紙の上キノコを置いて、コーヒーとパンの朝食をとりながら作業していた。たかだか30分ほどの間に、白い小さなウジ虫が何匹も食卓の上をはい回り、かじりかけのパンの上にもはい上がっていた。何匹かは気づかずに胃袋に入れていたのかもしれない。 |
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キヌオオフクロタケは傘表面が非常に美しい大きなきのこだ。絹糸状のササクレや小鱗片におおわれて独特の感触を持っている。ヒダはとても密でまた幅が広く、隣接するヒダといまにもくっつきそうだ。若い丸山型の個体から、何枚かのヒダを一緒に切り出してみると(a)、側シスチジアが無数に柱状に林立しており、隣同士がくっつき
あわないように
うまくできている(b)。その先端はボーリングのピンのような形をしたものやらヤリのよ
うに尖った頭をもったものもある。 大きく水平に近い姿に傘を開いた個体から切り出したヒダの付け根付近(c)をみても、 同じように側シスチジアが無数に林立している。ヒダの縁には無数の縁シスチジア(d)が みられる。(d)はヒダを1枚つまみとって、スライドグラスの上に寝かせて縁を覗いただ けのものだ。このシスチジアはボーリングのピン型というよりも、先端がくびれて細長く伸びているものが多い。 これらのシスチジアをみていると、ササクレヒトヨタケのつっかえ棒的側シスチジア(f)を思い起こさせる。両者に共通しているのは、ヒダが幅広くとても密である、というこ とだ。形は随分と違うが、隣同士のヒダが適度の隙間を保てるような役割を果たしているのだろう。 キヌオオフクロタケの胞子(e)にはとりわけ特記するような特徴はないが、大きなきの この割には胞子は小さい。スジオチバタケが小さなきのこのくせに、巨大な胞子(g)を持 っているのとは対照的でおもしろい。(e),(g)のスケールの1目盛りはともに1μmだ。 |
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