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2003年2月10日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日(2002/2/9)の雑記でケシボウズタケの一種として取り上げたきのこは、どうやらドングリタケ属のきのこのようである。明石市の正井俊郎さんからもドングリタケ(Disciseda subterranea)ではあるまいか、というご指摘のメールをいただいた。この仲間にはD.candida、D.pericellataなどが知られているので、再び詳細に検討してみた。胞子サイズがやや小さめだがT.subterraneaとしてよさそうだ。なお、正井さんにはオニイグチモドキとオニイグチの胞子写真の差し替え間違いと、イグチ類の疑わしい写真についても指摘いただいた。正井さんありがとうございました。
 今一度当日撮影した別のデータを掲載しておこう(a, b)。写真(a)は地表に出ている時と同じような状態に配置したもので、実際には下部は砂に埋もれている。写真(b)は左側の個体の裏面を見えるようにひっくり返したものだ。どこにも柄を持っていたような痕跡はない。しかし、中には0.5mmほどの柄を持ったものもあった。
 再度弾糸を覗いてみる(c)と、押しつぶしたり無理な力を加えずともすぐに短く切れてしまう。やはりどこにも隔壁はない。そして多くが極度に湾曲している。胞子表面(d)には棘状の突起(疣)があり、径4.5〜5.5μmほどである。
 ちなみに柄が分離しやすいケシボウズタケ属と並べて撮影してみた(e)。右の二つがケシボウズタケ属の頭部で、左二つがドングリタケである。右のケシボウズタケ属をひっくり返して撮影したのが(f)だが、よく見るといずれも剥離(分離)した柄の痕跡やら、短い柄が残っている。またケシボウズタケ属に比べてドングリタケは内皮が厚くしっかりしている。ちなみにケシボウズタケ属の頭部は老菌になるとフワフワである。
 ドングリタケ属とケシボウズタケ属、砂地や荒れ地で並んで発生していたら、掘ってみない限りそれがどちらなのかはまずわからない。(e, f)の写真ではサイズのやや大きいケシボウズタケ属をならべたが、頭部のサイズがほとんど同じようなケースはしばしばある。しかも、隣接して発生していることもある。

2003年2月9日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
 九十九里で採取してきたケシボウズタケの中には、頭部と柄がとても脆弱でちょっとした風でもすぐに分離してしまいやすいタイプ(?)がある(2003/2/6c)。このタイプの孔縁盤周辺を少し大写しにしてみた(a, b)。今回は老菌しか見つからなかった。おまけに、見つけたとき、その場所を掘ってみると柄がない。息を吹きかけてみると頭部がコロコロと転がった。頭部裏面にはただちぎれた柄の痕跡があるのみであった。すでに柄が完全に分離していたわけだ。周囲を掘ってさがしてみたがそれらしき柄は見つけられなかった。
 この菌についても今年の秋に再度、成菌や幼菌を採取して改めて観察が必要だが、とりあえず胞子や弾糸の様子を覗いてみた。低倍率でみた時点で(c)、すでに胞子には疣があるようにみえる。拡大してみると表面がやや大きめの疣(d)におおわれている。輪郭に焦点(e)を合わせてみると、弾糸の分岐の様子もよくわかる。さらに何回か弾糸を取り出して探してみたが、掌状節部のような構造はみられない。
 この仲間のきのこは外見だけではまず種の同定はできない。頭部の頂孔や孔縁盤の様子、柄の表面の様子や柄の基部などをよく観察すればある程度はわかるが、最終的には顕微鏡による観察を抜きにしては種の同定はできない。しかもミイラのみではそれもなかなかままならない。かといって幼菌や成菌を確実に得るのは難しい。

2003年2月8日()
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 早朝、先日採取してきたケシボウズタ(2003/02/06d)を少していねいに見た。これは柄の3分の1ほどから上部を地表に現し散生していたものだ。まず3本を取りだして並べてみた(a)。この写真の最上部に位置する個体の孔縁盤を撮影したのが(b)、真ん中の個体の柄の部分を中心に撮影したのが(c)だ。これは10個体ほどを採取して持ち帰ったもの(2003/02/06f)から任意に3本取り出したものだ。頭部から柄の基部までのサイズは35〜45mmほどある。
 いずれも胞子表面には肋骨状の隆起が見られる(d)。これは胞子表面に焦点を合わせたものだが、輪郭部にも焦点を合わせてみた(e)。弾糸にみられる掌状の節部を取り出してみたのが(f)である。Tulostoma striatumに近いような感触を得たが、正確な同定にはさらに各部の詳細な観察が必要だ。今回採取の個体はいずれも老菌ばかりだったので、今年の晩秋にでも幼菌と若い個体を採取して改めて同定したいと思っている。
 ちなみに昨年12月にT. striatumの若い個体を観察(2002/12/9雑記2002/12/17雑記)している[胞子写真は、2002/12/14雑記も参照]が、その場所は今回採取した場所とは全く別である。また、その場所には、かつて見られたT. striatumはもはや全く見られない。人為的(?)に掘り返されたようにも見えるし、砂に埋もれたのかもしれないが今や跡形もなくなっている。

2003年2月7日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日午前中に千葉県の九十九里浜までケシボウズタケを探しに行ってきた。かなり広い範囲を何ヵ所も歩いた結果、3〜4種類のケシボウズタケに出会うことができた(a〜f)。最初の場所で出会った個体(a)は、わずかに柄を見せていたが、掘り出してみると完全な成菌だった(b)。3〜4個体がみられたが、いずれも胞子・弾糸などの様子からTulostoma striatumのようである。
 次の場所で出会った個体(c)は柄と頭部がいとも簡単に分離してしまうタイプで胞子は微疣に覆われている。孔口周辺もやや立ち上がり気味で円筒状になっていた。まだ検索表をたどっていないので、現時点ではどの種に落ちるか皆目わからない。
 さらに全く別の場所で、地上に柄の部分をさらして10数個体が散生している姿に出会った。これは頭部の径が15mmほどあり背丈も25〜35mmほどあった(d)。この胞子は網目状の肋骨に覆われたような姿をしていて、Tulostoma striatumに近い種類を思わせる。
 最後に寄った場所では上記のものとは別のタイプのケシボウズタケ(e)にであった。孔縁盤のタイプや柄の様子からこれもまた別のタイプのように思われる。
 結局合計20個体ほどを持ち帰ってきた。(f)はその一部で、(d)のタイプのサンプルである。詳細に調べたのはまだ1種類のみであり、他のものは胞子を覗いたていどのことしかできなかった。
 ケシボウズタケだけを目的に千葉県の海辺まで250kmほど車を走らせてきたが、そのケシボウズタケに何ヵ所かで出会えたとても幸せな一日だった。

2003年2月6日(木)
 
 昨日は空き時間のほとんどを自宅サーバー構築のために充てたので、他のことはほとんど何もできなかった。OSとしてはRedHat Linux8.0を選んだ。膨大な数のファイルを早めに転送しておこうと思いFTPサーバーを最初に構築した。WEBサーバーはApacheを導入したが、httpd.confの編集は途中までしかできなかった。無論Sendmailなどにはまだ全く手をつけていない。
 とりあえず現時点での回線通信速度を「BB Speed Checker」で調べてみた。局からの距離が3.5Km以上離れている割には早いスピードがでている。メインに使っているケーブルネットの2倍ほどの速度であった。Mozilla(Linux標準のWebブラウザ)での表示も確かに速く快適だ。
 現在住んでいる公団住宅は電気容量が非常に小さいので冬場などはしばしばブレーカーが落ちる。このままの状態で自宅サーバーを稼働するわけには行かないので、サーバ専用の無停電電源装置を新設しなくてはなるまい。自宅サーバーが順調に稼働するまでにはまだしばらく時間がかかりそうだ。まだ猶予はある。今月中に完成させるつもりでのんびりやろう。

2003年2月5日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
 さいたま市の秋が瀬公園にはハンノキ(a)がとても多い。元々が河川敷に開けた公園ゆえ、湿ってはいるが排水がよいことがハンノキの生育に適しているのだろう。今年は早くも花穂が大きく育ってすでに花粉を散布している。今朝は小さな小川に沿ったハンノキの下を歩いてみた。
 すでに1月半ば頃に径2〜3mmほどの小さな盤菌が出ていることは気づいていた。ハンノキ樹下の落ち葉を少しどけてみると、小さな茶碗型のきのこが群がって顔をだしてきた(b)。近寄ってよく見ると半透明の美しい姿(c)をしたものもある。掘り出してみると、昨年の花穂に菌核をつくりそこから長い柄を伸ばして子嚢果をつけている(d)。子嚢盤の径は4〜12mmほどある。
 子嚢盤の一部を切り出して(e)メルツァー液で染めてみると、子嚢先端の頂孔(g)が鮮やかな水色に染まってみえる。子嚢先端面よりわずかに頭を伸ばしている側糸(f)は先端がやや膨らんでいる。胞子(h)をよく見ると尖った両端がアミロイド反応を示しているものがいくつもみえる。Ciboria amentaceaにほぼ間違いないと思われるのだが、胞子の件がやや気になる。

2003年2月4日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
 首都圏にはエゴノキが多いのでほぼ通年エゴノキタケを見ることができる。今年の冬は半背着生〜背着生のものが主体で、大きな傘を作っているものはあまりみていない。写真は今朝の自宅周辺もの(a〜c)だが、傘は小さく棚状にできているだけだ(a)。迷路状のヒダ(b)が干からびたようになってとても薄い(c)。さらに多くは老菌であり、幼菌はほとんどみあたらない。それに対して夏に多い幼菌(d)では迷路が肉厚でしっかりしている。
 この仲間(Daedaleopsis)のきのこは、3菌糸型(trimitic)で明瞭なクランプがある。そして子実層にはおもしろい形の樹状組織をもっているので、顕微鏡で覗いて楽しいキノコだ。同じ仲間で桜の樹によく着いているチャカイガラタケの胞子は何度も見ているのだが、エゴノキタケの胞子は未だに見たことがない。
 山渓カラー名鑑「日本のきのこ」(1988)に「胞子の記録がないので、今後の報告がまたれる」、保育社「原色新日本菌類図鑑」(1989)には「胞子はまだ観察されていない」と記述されている。その後に発刊された地球社「猿の腰掛け類きのこ図鑑」(1996)には「胞子は無色、円筒形、11〜13×4μm」とあり胞子の図も掲載されている。
 長いこと胞子の観察結果が報告されなかったということは、エゴノキタケの胞子を確認するのはそう簡単ではないのだろうか。これまで十回はエゴノキタケを持ち帰って覗いているのだが、未だに胞子の姿をこの目で確認できていない。今朝もだめだった。

2003年2月3日(月)
 
(a)
(a)

  Yahoo!BB で自宅サーバー構築予定
 ホームページのアクセス数が増えるとデータ転送量が増え、サーバーやらCPUへの負荷も急激に高くなる。そのため多くのプロバイダでは、データ転送量が一定量を越えると課金を徴収するシステムをとっている。それでも慢性的に課金徴収の状態が続くと、今度は引越要求つまり解約をちらつかせてくる。これはプロバイダの立場からみれば当然の措置といえる。
 昨年秋から「きのこ雑記」をどうするかの決断をせまられてきた。1ヵ所のプロバイダで大容量のスペースを借りられるとよいのだが、350MB超となるとそれもままならない。やむなくファイル管理の煩雑さを覚悟の上で、複数のプロバイダに分散配置という形をとってきた。悪いことに昨年梅雨の頃から晩秋まで、いくつかのプロバイダで月間データ転送量が5GBを越えてしまった。そのためプロバイダのうちの2つから3月末、あるいは5月末までには引越(=解約)を要求されることになった。規模縮小するか、店を畳むか、あるいは別の方法で継続するか?
 とりあえずは自宅サーバーを立てて「きのこ雑記」を継続することにした。これなら容量の問題とデータ転送量の問題はクリアできる。しかし、今契約しているケーブルネットは自宅サーバー設置を許可していない。そこで昨年12月13日にYahoo!BBへ申し込んだ。
 2月3日開通との通知が届いたのはつい最近のことだ。ISDN回線からの切り替えとはいえ、申込から50日もかかっている。2月3日pm2:30過ぎにようやくモデムが届いた。これでサーバー構築にとりかかることができる。サーバー専用機には小型のブック型パソコン(a)を使うことにした。CPU333MHz,memory128MB,HDD10GB とスペックは旧式だが静かで電気消費量は少ない。

2003年2月2日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 今朝は、一昨日採取したツバキキンカクチャワンタケとサザンカ樹下のキンカクキンのミクロの姿を改めて撮影した。最初にツバキ樹下のものから切片(a)を切り出しメルツァー液を加えた。上側が子実層面、下側が托外皮側であるが、托外皮層のすぐ内側に位置する托髄層の縁がアミロイド反応を示して青く染まった。子嚢(b)先端はきれいな水色に染まる。側糸(c)先端はわずかにふくらみ、途中に隔膜も見られる。
 次にサザンカ樹下のキンカクキンから切片を切り出しメルツァーを加えると、托外皮層のすぐ内側が青変しツバキ樹下のもの(a)と同じ反応を示した。子嚢(d)や側糸(e)の姿・特徴などもツバキキンカクチャワンタケとの差異は感じられない。最後に暗視野照明にして覗いてみると、真っ暗な背景のなかに浮き出した子実層がとても鮮やかできれいだった。

2003年2月1日()
 
(a)
(a)
(b)
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(c)
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(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
↑ツバキキンカクチャワンタケ(a〜d)
   ともに1月31日川口市にて
←サザンカ樹下のキンカクキン(g, h)
 
 川口市でもようやくポツリポツリとツバキの花が開きだした(e, f)が、まだほとんどは堅いつぼみがようやくほころびだしたばかりだ。わずかに小さなつぼみが開きだした樹下(f)をよく見ると、ツバキキンカクチャワンタケ(a)が出ていた。掘りだしてみると長い柄の先に菌核がついているのがよくわかる(b)。また別の場所では前年の花弁をベースにした核から子実体がでていた(c)。持ち上げてみる(d)と花弁のあちこちには、小さな子実体がいくつも出ていた。
 すでに1月の中頃から新宿御苑などでもサザンカの樹下にキンカクキンをみているので、川口市でもサザンカ(i)の樹下をさがしてみた。予想通りキンカクキンがでていた(g, h)。ツバキに出るものとサザンカにでるものとは、光学顕微鏡レベルでは少なくとも全く同じものだ。子嚢盤の様子も、子嚢も胞子もメルツァー液での変色の程度も有意差はない。
 今の時期のツバキキンカクチャワンタケはまだ「走り」だろう。まだ発生数は少なく、全体に小さめなものが多い。本格的に多数見られるのは首都圏では2月後半になってからだろう。

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