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日( )

2003年5月10日()
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
(e)
(f)
(f)
 日光でも標高の高い地域はやっと春がやってきたばかりであった。盤菌類の観察が主目的で出かけたので、他のきのこは見て見ぬふりをして、横目で通り過ぎたものが多かった。しかし、あまりにもきれいだったり目だったものの一部だけは撮影したり採取した。
 鮮やかな蛍光色でハルニレ倒木からタモギタケ(a)がでていた。大部分はまだ幼菌(b)だが、あと1週間もしたら一面に発生しそうな気配だった。ヒラタケ(c)を熊が食い散らかしたばかりの現場に遭遇した。地元の人の話では4/29日にも多くの人が熊を見たということだった。カラマツ林で足元を見るとコキララタケ(d)、アシナガタケ、クヌギタケの仲間が出ている。
 日光を後にして雨風のなか帰路を急いでいると、道脇の5〜6本の樺にカバノアナタケ[菌核](e, f)が多数ついていた。ひところ制ガン効果があるとかで騒がれ、驚くほど高価な価格で取引されて騒がれたことがあったが、現在は沈静化したのだろうか。

2003年5月9日(金)
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
 昨日雨の日光を歩いてきた。標高1400〜1500mあたりはまだ残雪も残り新芽はほとんど出ていない。しかしコメツガとモミの樹下にはシャグマアミガサタケ(a〜d)が多数出ていた。中にはオオシャグマタケと間違えそうな姿をしたもの(d)もあった。6月に仲間内でシャグマを肴に宴会をするので新鮮で大き目の個体を10数個収穫した(e)。
 カラマツ樹下にはオオシャグマタケが顔を出し始めていた(f, g)。これらは外見だけでは同定できないケースがかなりある。(d)のシャグマアミガサタケと(f)のオオシャグマタケなどは、大きさも似ているし、若干色合いが違う程度の差異しか感じられない。
 両者を簡単に見分けるのに最も確実な方法は成熟した個体の胞子をみることだろう。シャグマアミガサタケの胞子は平滑な楕円形で小さな油球を2つもっている。それに対してオオシャグマタケの胞子は中心に大きな油球をもち左右に小さな油球があり、胞子の両極には鈍い嘴状突起をもっている(h)。そして胞子表面には細かい網目模様がある(i)。
 しかしこの両者の胞子も若い未熟個体で観察する限りは全く区別することはできない。あくまでも完熟個体から採取した胞子を見ない限りどちらなのかはわからない。
 この日は、他にもクヌギタケ属数種、ビョウタケ属数種、ヒダキクラゲなどのキクラゲ類数種、タモギタケ、ヒラタケなどのハラタケ目のきのこにも何種類か出会った。

2003年5月8日(木)
 
 かつて今関六也先生は、きのこはどんなに大きくとも微生物なのだから顕微鏡観察抜きには何も語れない、と盛んに強調されていた。保育社「原色日本新菌類図鑑2」でも「読者と共に日本のきのこを研究しよう」というタイトルで、くどいほどにこのことを訴えている。しかし長いこと、顕微鏡は研究者の道具であってアマチュアには不要といった意識が広く蔓延していたように思う。
 最近とみに感じるのが地方在住のアマチュアの間に急速に顕微鏡が普及しはじめていることである。インターネットの急速な日常化がこの傾向をさらに助長しているように思う。ホームページ上や掲示板などで検鏡写真がごく普通に登場するようにもなってきた。
 難しいことは抜きにして胞子などの顕微鏡下の姿だけを楽しむ視点があってもよいのではないか。ミイノモミウラモドキのように外見は何の特徴も感じられないきのこや、ヒイロチャワンタケのような単純な姿のきのこも、胞子の姿は変化に富んでいて見ているだけでも楽しい。
 gajinさんによる「顕微鏡写真の画像処理法(ばかまつの場合)」をみると、如何にして美しい顕微鏡画像を得るかを工夫して楽(苦?)しんでいる様子が手に取るように見える。こういった作業は邪道でもまやかしでもないと思う。いま少し高度に処理しようとすれば、「八王子のきのこ」の奥 修氏による「顕微鏡デジタル画像における光学ノイズ除去」が非常に参考になる。
 「今日の雑記」では画像処理は、無処理ないしは短時間にできる必要最小限の処理しかやっていないが、ここ一番といった場面では、gajinさんの方法や、奥修氏の方法を活用したい。

2003年5月7日(水)
 [追記]
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 ミズベノニセズキンタケとして扱った水性菌であるが、ミクロの姿を検討してみると再考しなくてはならないようだ。採取したときには何の疑問もなくミズベノニセズキンタケだと考えていた。ちょっと気になる点があったので、たった今あらためて切片を作って(a)確認をしてみた。
 托髄層は絡み合い菌組織(b)、托外皮層は矩形菌組織から多角菌組織をなしている(c)。メルツァー液で染めてみたが、アミロイド反応はない(ように見えた)。観察中に緊急電話が入り10分くらい放置することになった。再び顕微鏡のところに戻ってみると子嚢頂孔部分が何となく青い。それもリング状に青く染まっているようだ(d)。切片全体が茶褐色に染まってみにくいので、水で洗ってみるとはっきりとアミロイドリングの存在を確認できた(e)。念のために他の個体から切り出した子嚢先端部分を見ると、どの切片の頂孔も青く染まっている(f)。
 子実体の姿こそかなり大きかったが、全体にまだ幼菌らしく未熟胞子をもった子嚢がたくさんある。胞子紋はほとんど採取できず、珪藻ばかりが目立った。子嚢の中の胞子サイズはやや小さめだが、ミズベノニセズキンタケとしても全く疑問はない。側糸の姿からも疑問はない。
 保育社「原色日本新菌類図鑑」やスイス菌類図鑑Vol.1の記述によれば、子嚢頂孔は非アミロイドとなっている。ただ、このきのこは過去に何度も見ているが、メルツァー液にひたしても一見したところアミロイド反応はない。時間経過とともにアミロイド反応がでてきたが、これとて、非常にていねいに観察しない限り、子嚢頂孔のアミロイドは気がつきにくい。

2003年5月7日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
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 ゴールデンウイークに出かけたときに出会ったきのこのうち印象的だったものを、いくつか取り上げてみた。福島県川内村では水流に浸った枯枝から出たミズベノニセズキンタケ(a, b)、ピンタケ(c, d)がとても新鮮だった。栃木県藤原町ではオオズキンカブリタケ(e)をこれまでとは全く別の場所で多数確認した。先に出会ったときの個体はほとんどが萎れたり干からびきっていた。同じく藤原町ではテンガイカブリの幼菌(f)が道の真ん中に出ていたが、いくつかは車のタイヤでつぶれさていた。カラカラ陽気のせいか、今年のテンガイカブリは発生が悪いようだ。
 今回は5〜6種類のハラタケ目のきのこにもであったが、撮影だけで採取しなかったり、採取はしたが撮影しなかったものが多かった。非常にあわただしいゴールデンウイークだったこともあって、きちんと種の同定をすることはできなかった。持ち帰ったサンプルは今朝すべて破棄してしまった。検鏡もやっていないので撮影した写真もすべて削除した。

2003年5月6日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
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(g)
(g)
(h)
(h)
 福島県の川内村では清流の沢筋にエツキクロコップタケがあちこちに見られた(a〜d)。白っぽく細長いもの(b)、幼菌でまだ口が開き始めたばかりのもの(d)など、多くの群れに出会えた。
 子嚢盤を切り出してみると(e)、何層にもなった構造をなしている。最も外側の層はほぐして見ないと、真っ黒でなにもわからない。そのすぐ内側の托外皮層は多角菌組織をなし、すぐ内側の髄層は絡み合い菌組織をなしている(f)。子実層面をみると子嚢胞子が側糸に包まれるように並んでいる(g)。胞子は平滑な楕円形でとても大きい(h)。
 このきのこは、落ち葉とほとんど同じような色をしてコナラやミズナラの落枝、倒木の地面に接したところから出るものが多いので、非常に見落としやすい。時には、地面から直接発生しているかのように見えるが、地下の枝につながっている。川内村の水流中ではミズベノニセズキンタケやらピンタケキイロヒメボタンタケなどいわゆる水生菌の仲間がかなりみられた。

2003年5月5日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 さすがに5月である、いわき市でも標高の低い地域ではシャグマアミガサタケ(a〜k)はほとんどおしまいだった(5月3日)。これまで赤松林ではシャグマアミガサタケを見たことがなかった。過去に出会った多くはモミ樹下に出たものだった。
 今日取り上げたものは海岸に近い赤松林に発生するものばかりだ。赤松交じりの杉植林地にでていたもの(b)はヒグマアミガサタケ(トビイロノボリリュウタケ)のような形だし、オオシャグマタケ(ホソヒダシャグマアミガサタケ)にしか見えないような姿をしたもの(d)もあった。しかしとうに最盛期は過ぎているので大部分は(e)のように乾燥しているか、さらにカラカラの黒褐色の乾物状ミイラになっていた。
 持ち帰った個体すべての子実層を念のために確認したところ、すべてがシャグマアミガサタケであった(f)。特徴的なのは胞子が2つの油滴をもち平滑でずんぐりした楕円形をしていること、側糸が頻繁に枝分かれすることであった。ヒグマアミガサタケなら胞子はずっと細身だし、オオシャグマタケなら胞子表面に模様があり、胞子の両極に突起物がある。

2003年5月4日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 先にいわき市の吉田さんからカンムリタケのサンプルを送っていただいたが(雑記2003/5/1)、一面に群生しているという姿を見たくていわき市まで行ってきた。カンムリタケそのものはさして珍しいきのこでも何でもないが、大量に群生している姿というのは非常にめずらしい。
 現地に行ってみると小さな用水池の縁一面にカンムリタケが群生していた(a〜d)。水面に浮かぶ落ち葉などから発生しているものや水面下30cmほどの水中で発生しているものあり、色も淡黄色から橙色まである。池の縁に発生していたカンムリタケは広葉樹の腐朽葉や松の葉から発生しているものが多かった。池に流れ込む支流の小沢を歩くとそこにも大量に群生しており、ここでは杉の葉から発生しているものが多かった(e, f)。
 外出先で3日の昼過ぎに、親しい友人であり菌類研究の大先輩でもある池田和加男さんの訃報が入った。とりあえず、夜は南会津で一晩を過ごし4日早朝に現地をたって帰宅した。明日お通夜、明後日告別式である。「今日の雑記」も明日、明後日はどこまで書けるか全くわからない。

2003年5月3日()
 
 先にリンクページに小倉辰彦さんの「遊々きのこ」を追加したが、今回新たにふたつ追加した。谷口雅仁さんの「ばかまつの今日のキノコ」は当初はご自身のメモとして始めたのだろうが、今では非常に充実した観察日誌に発展している。写真の美しさには目を見張るものがあり、定評の有る高橋 博さんの「きのこ屋」を髣髴とさせる。顕微鏡写真の映像はとても鮮明である。新潟の安藤さんの「木枯らしの部屋」はノスタルジックなポエムのようで心が洗われる。
 主の素顔が感じられないものや、自分でほとんど見ないサイトへリンクを張るつもりはない。また「きのこ雑記」をリンクしてくれるように依頼したことはないので、リンク用のバナーなどは考えたこともない。自分がしばしば訪問するサイトはリンクページに掲載しておけば便利だし、人に紹介するにも楽でよい。今朝は独断と偏見で一方的にリンクページに追加したサイトを紹介した。
 今日は連休の混雑を覚悟(?!?!)で常磐自動車道を走り、いわき市で友人らに会った後、南会津へ回って宿に入る予定だ。渋滞が比較的少ない暗いうちに出発するつもりだ。

2003年5月2日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(b)
(b)
 一昨日かなりの雨が降ったにもかかわらず、埼玉南部も都心も意外と乾燥している。早朝さいたま市の見沼地区に行ってみたが、緑にすっかり被われた叢にはヒトヨタケ(a)やらシロフクロタケ(b)がやたらに目立った。草の生えていないウッドチップには、すっかり乾燥しきってそのまま乾燥標本にもなろうかという状態でツバナシフミズキタケやらオキナタケ、サケツバタケなどのミイラが多数みられた。都内の新宿外苑、明治神宮でもきのこの姿はほとんどなく、例年なら必ずみられるカンゾウタケもモリノカレバタケも全くみられなかった。
 部屋を整理していたらフィンランド製の古い缶詰がでてきた。一昨年7月に東京のNさんからいただいたシャグマアミガサタケの缶詰だった。平地ではシャグマアミガサタケもそろそろ終わりだが、北国や標高の高い地域ではこれからがシャグマの季節である。例年6月初旬に親しいきのこ仲間だけでシャグマアミガサタケを持ち寄って宴会をしてきた。この缶詰は、万一新鮮なシャグマが採取できないときのために予備として保存しておいたものだ。幸い例年誰かが新鮮な個体を採取できたので缶詰の世話にならずにすんでいた。あらためて缶詰の表示をみると、既に賞味期限は過ぎていた。缶詰のシャグマよりもやはり新鮮なシャグマの方がはるかに味は上だ。

2003年5月1日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 いわき市の吉田健二さんからカンムリタケ(a, b)を送っていただいた。背丈は45〜55mmほどだが、頭部はとても鮮やかな美しい色をしている。切り出した頭部切片をよくみると子実層の基部付近が黄色い色素を帯びている(c)。倍率を一段上げると胞子や側糸が明瞭にわかる(d)。メルツァー液では子嚢の頂孔部分がアミロイド反応を示す(e)。胞子は細長い円筒形をしている(f)。このキノコの頭部は黄橙色をしているが、淡黄色のものもしばしば見かける。いずれにせよ、一面にこのきのこが発生している様はとても美しくみごとである。

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