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日( )

2003年11月30日()
 
(a)
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(b)
(b)
 昨日は早朝から昼過ぎまで千葉県九十九里浜で砂浜のきのこを観察してきた。ずっと雨風が強くほとんど撮影はできなかった。南部の一宮町から始めて蓮沼海岸まで10数ヶ所の浜辺を歩いたが、どこに浜にも共通して見られたのはスナヤマチャワンタケであった。キツネタケ属、ザラミノシメジ属、スナジクズタケも砂浜にかなりみられた。駐車位置から砂浜に出るまでに通過した防風林では、ショウロ、シモコシ、ニセマツカサシメジ、マツカサキノコモドキが何ヶ所かで見られたが、結局一つも採取はしなかった。
 新たにケシボウズが発生した地点は一ヵ所も見つからなかった。過去に発生をみた場所も5〜6ヵ所確認してみたが、新しい発生個体はほとんどなかったが、わずかに新たな個体の発生もみられた(a, b)。強い雨のなかでかろうじて2枚だけを撮影できた。強風の中ひとりで傘をさしてカメラを濡らさないようにしながらの撮影はやはりかなりの無理があった。傘は撮影中についにオチョコになってしまった。さらにいずれもピントがあっていない。このあと、千葉県立中央博物館に寄ってから、一般道を使って帰宅した

2003年11月29日()
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日久しぶりにさいたま市の公園に行ってみた。見沼地区のウッドチップベースの草地からはシロフクロタケ(a〜c)が何ヶ所にも見られた。幼菌(a)からやや老菌(c)まで一通り揃って出ていた。深い茂みの中にはサケツバタケあるいはキサケツバタケ(d, e)、イタチタケ、コガサタケ、フミヅキタケ属などが、倒木からはアラゲキクラゲが出ていた。ふだんならよくみかけるヒトヨタケ科のきのこはザラエノヒトヨタケとクズヒトヨタケがわずかに出ていただけだった。腹菌類ではハタケチャダイゴケが相変わらず元気がよい。今朝観察したのは(キ)サケツバタケだけだった。サケツバタケとキサケツバタケは光学顕微鏡レベルでは全く区別がつかない。

2003年11月28日(金)
 
(a)
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(b)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
 遠州灘の砂丘で丸くて小さな砂だらけのきのこをいくつか掘り出した。柄は無く、頭部からゼラチン質に包まれた菌糸を伸ばしている(a)。この部分は偽根のような器官かと思ったのだが、そうではなかった。反対側には外皮の中央付近に柄の痕跡のような跡がある。切断してみると若い菌の内部は真っ白(b)だったが、大きな方は暗褐色で粘液混じりの粉塊であった。
 最初に大きな方のグレバを覗いてみた。対物40倍で見ると、ずたずたに切れたような弾糸が見えた(c)。胞子は球形であるが細かい部分はわからない。油浸100倍にして胞子を見ると短い柄のようなものがついている(d)。まだ十分成熟していないからだろうが、先の鈍い針のようなもので表面が覆われている。感触としてはドングリタケの仲間ではないかと感じた。
 若い真っ白なグレバを覗いてみると、面白い姿が見えた(e)。担子器を作る組織なのか担子器そのものなのかはよく分からない。でもそういった組織なのだろう。先端の細胞は胞子(d)よりもはるかに大きい(f)。この姿を見ているとドングリタケ属の幼菌とは別なのかもしれない。頭部からゼラチン質の菌糸を長く伸ばしていることも面白い。

2003年11月27日(木)
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
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(e)
(e)
(f)
(f)
 自宅団地の近くで腐朽材から緑色の小さな盤菌がでていた。11月16日に川崎市の緑地で見たものと同じである(a)。ロクショウグサレキンに似ているが子嚢盤の表面が白っぽい。
 子嚢盤の切片(b)をみると裏側の部分(托外皮層)だけが緑色をしている。この托外皮層はロクショウグサレキンやらロクショウグサレキンモドキでは絡み合い菌組織なのだが、この菌では円形菌組織からなっている(c)。子実層は淡い茶色、中間の部分(托髄層)は緩い絡み合い菌組織からなり色も無色だ(c)。子実層の基部直下の組織はロクショウグサレキンやロクショウグサレキンモドキでは緑色をしているが、この菌ではそれはみられない。 水でマウントした状態で倍率を上げてみたが、子嚢も胞子もとても見にくい(d)。そこでメルツァーで染めた。子嚢先端にアミロイドリングがみえる(e)。胞子の形は紡錘形をしている(f)。
 このきのこは「山渓フィールドブック きのこ」にヒメロクショウグサレキン(仮称)として掲載されているのだが、ロクショウグサレキンモドキと同じく解説はほとんど何もない。イギリスのM. J. Berkeleyによって1859年にPeziza omnivirens Berk.として報告され、後にJ. R. Dixonによって属の変更が行われChlorociboria omnivirens (Berk.) Dixonとされたらしい。属名のchlorociboriaとは「緑色の盃」、種形容語(epithet)のomnivirensとは「全体が緑色の」といった意味である。
 ちなみに、同じ仲間のロクショウグサレキンのepithetであるaeruginosaは「緑青色をした」、ロクショウグサレキンモドキのaeruginascensは「緑青色になる」という意味だ。また、仮称に「ヒメ」とついているが、子実体の大きさはロクショウグサレキンに比べて特に小さいとは思えない。胞子サイズはやや大きめである。いずれにせよ、C. omnivirensを記述した文献を知らないので詳細についてはわからない。以下に上記3種の観察結果を表記してみた。

和 名 子嚢盤表面 子嚢盤外面 托外皮層 子実下層 胞子(μm)
ロクショウグサレキン 緑青色 中心生 毛がある 絡み合い
菌組織
緑色 9-15×2-3.5
ロクショウグサレキンモドキ 偏心生 平滑 6-9.5×1.5-2
ヒメロクショウグサレキン 白っぽい 中心生 毛がある 円形菌組織 無色 12-18×2.5-4


2003年11月26日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 静岡県浜岡町やら大須賀町の浜で、頭部だけ砂上に出した丸いきのこが多数みられた(a)。ちょっと見たところはまるでドングリタケのように見えたが、内皮がややざらつきすぎているといった印象を受けた。掘り出してみるとみなしっかりした柄をもっていた(b)。これらはいずれもケシボウズタケ(Tulostoma brumale)であった。胞子・弾糸からそれを確認することができた(c)。
 一方、まるでケシボウズタケのように見えるのだが、さわってみるとコロコロと転がり柄を持たないものが多数あった(d)。場所によってはいくつも並んで出ていた(e)。いずれも内皮はノッペラボウの紙質である。これらはドングリタケの仲間(Disciseda sp.)のようだ。顕微鏡で見ると切れ切れになった弾糸、短い柄を備え鈍頭の針状突起に覆われた胞子が見えた(f)。
 一方はケシボウズタケ目ケシボウズタケ科ケシボウズタケ属、他方はホコリタケ目ホコリタケ科ドングリタケ属と「目」レベルでことなるのだが、いずれもちょっと見た目にはじつに紛らわしい。たったままの姿勢で見ていると簡単にだまされてしまう。そうでなくともケシボウズタケ属の中に頭部が柄から簡単に分離してしまう種がある。だから、ケシボウズの頭部なのか、ドングリタケ属なのか間違えそうなことはしばしばある。

2003年11月25日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
 浜岡砂丘で掘り出したもっとも若いケシボウズタケ(Tulostoma brumale)はやっと柄が伸び始めた状態のものだった(a)。まだ筒状の孔口部は未完成の状態であったが、内部は既に黄褐色のグレバが完成しており、もはや担子器などは見られなかった。胞子のサイズ、弾糸の様子などは成菌と変わらない。何ヶ所か掘ってみたが、この2個体以外には幼菌は見つからなかった。
 浜岡砂丘に限らず遠州灘のどこの浜でも、ちょうど今はスナヤマチャワンタケが最盛期をむかえている(b〜e)。茨城県の浜から、千葉の九十九里でも今が最盛期であるが、遠州灘で出会ったような群生(b, c)は少ない。狭い範囲に多数が並んでいたり、単生していたり多彩である。やっと口を開いたばかりの丸いもの(d)やら、いくつかがくっついて子嚢盤の壁を共有したものなどもある(e)。かなり砂の動きが激しい場所にも発生しているのが面白い。

2003年11月24日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 土日の2日間、静岡県の遠州灘の東部の浜を歩いてきた。この地域の浜を見るのは今回が初めてだったので、無駄を承知で細かく浜辺に立ち寄りながら西に進んだ。
 浜岡原発の西には大きな砂丘が広がっている。そこのてっぺんからやや松林側に下ったところでケシボウズタケ(Tulostoma brumale)にであった(a〜d)。全般に老菌(b)が多かったが、やや若い個体(c)もあり、発生の最盛期がいつなのかはよく分からなかった。
 これまで博物館などに標本として納められたケシボウズタケ属は数多く見てきたが、フィールドでケシボウズタケにであったのは今回が初めてであった。帰宅して直ちに検鏡したが、確かにナガエノホコリタケとかウネミケシボウズタケ(仮)とは外見ばかりではなく顕微鏡下の姿もかなり異なっている(e, f)。
 砂浜にはナヨタケ属、ザラミノシメジ属、フミヅキタケ属をはじめ、傘と柄をもったキノコが数多く見られた。特に植物も何もない砂浜にスナジクズタケが5〜6本束生している姿は何とも異様であり感動的な姿でもあった。やたらに多かったのがスナヤマチャワンタケであった。

2003年11月22日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
 先日川崎市の緑地で行われた採取会で渡されてしまった宿題の子嚢菌(a)をチェックした。ちょっと見た目にはアラゲコベニチャワンタケのように見えるが、この仲間は迂闊に断定できない。径7〜12mmほどの子嚢盤の縁には鋭い剛毛が顕著に見られる(b, c)。
 子嚢盤を切り出すと托外皮の周辺は円形ないし多角菌組織で、そこにから剛毛が突き出している(d)。剛毛は硬壁をも根元は多角菌組織の中に根をはったような姿をしている(e)。子嚢は薄膜で8つの胞子をもち、側糸の内部には顆粒状の色素がみられる(f)。メルツァー反応は陰性で、胞子表面には微細な疣が見られる(g)。側糸の先端はやや膨らんでいる(h)。これはアラゲコベニチャワンタケとしてよさそうである。どうやら見たとおりの結果となった。
 今日と明日は静岡県御前崎周辺の浜辺を観察してくるので、明日の雑記はお休みである。じきにam4:00、そろそろ出発の時刻になる。

2003年11月21日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
 昨日からの雨で公園のウッドチップ生のきのこは元気がよい。山間部や平地ではめっきりきのこの姿が減った。しかし公園のウッドチップからは雨さえ降ればほぼ通年顔をみせてくれる常連きのこがけっこうある。今朝は出かけたのが早すぎたので、まだ暗くて撮影できなかった。ここ数日のうちにかなりの頻度で見られ撮影したものから一部掲げてみた。
 ツマミタケ(a, b)は幼菌が次々でてくる一方で老菌が異臭をはなっている。オオチャワンタケ(c)はかなりの規模で群生する。ハタケチャダイゴケ(d)も一年中みられるが、見ていて楽しいのは雨粒がカップに落ちた瞬間にペリジオールが飛び出す姿だろう。ツバナシフミヅキタケ(e)も雨と陽光さえ満たされれば真冬にもでてくる。
 他にも今朝は、コムラサキシメジ、ハタケキノコ、シロフクロタケ、ツブカラカサタケ、ネナガノヒトヨタケ、ザラエノヒトヨタケ、ワタヒトヨタケ、クズヒトヨタケ、ハラタケ科のきのこ、キツネノタイマツ、サンコタケなどがみられた。

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