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日( )

2003年7月10日(木)
 
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 昨日久々に早朝の見沼田圃を歩いてみた。このところの雨のため多くのきのこが色々と見られた。特に目だったのはヒトヨタケ科、ハラタケ科、オキナタケ科の菌だった。テングタケ科のきのこは相変わらず少ない。ウッドチップや堆肥、畑などの常連ばかりである。
 ビロードヒトヨタケ(a)は無数に群れを成していた。傘表面をよく見るととても美しい(b)。オオホウライタケ(c, d)が大きな群落を作っていた。遠くから見ると大きな紙くずがあちこちに落ちているように見えた。キツネノカラカサ(e, f)は胞子の姿が十字架型をしていて面白い。
 ツルタケかと思って近づいたきのこはツルタケダマシ(g)だった。コムラサキシメジ(h)は今年は発生が悪い。ひさしぶりに出会ったキツネノタイマツ(i)は一本だけが草むらからでていた。ハラタケに似ているのだが、相変わらずよくわからないきのこ(j, k, l)があちこちに出ていた。
 大特急の仕事を抱えていて検鏡する時間は全く捻出できないので、サンプルは一つも持ち帰らなかった。徹夜仕事の直後だったせいか、途中で菌友の車とすれ違ったことにさえ気づかなかった。30分間ほど歩き回っただけで直ちに帰宅した。仕事の納期は今日なので昨夜もまた徹夜となってしまった。さすがに連続徹夜は疲れる。今日はでかけるゾ!

2003年7月9日(水)
 
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(h)
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 アカカバイロタケ(a)の胞子(b)はメルツァー液で染めて見るといかにもベニタケ属らしい姿をしている。この仲間のきのこの胞子は、シロハツ類やクサハツ類などごく一部を除くと、みな同じような表面模様をもっている。さらに胞子サイズも似たり寄ったりであり、光学顕微鏡レベルでは差異をとらえるのは難しい。いわゆるドライマウント(水も何も加えずにカバーグラスをかけて観察)の状態で見ると表面に小さな瘤あるいは疣が見える(c, d)。胞子表面に焦点(d)を合わせるとサイズまでかなり小さめに見える。
 切り出したヒダ切片(e)を見ると、実質部はいかにも脆そうな球形細胞の群れからなっている。ヒダの側面には子実層部分に埋没した状態でシスチジアが見られるのだが、水だけでマウントした状態ではわかりにくい(f)。ところが一端メルツァー液を加えるとシスチジアが赤褐色に染まって明瞭になる。一つひとつは子実層からヒダ実質にまで届くほど大きく、ヒダの表面にはわずかしか顔を出していない(g, h)。
 昨日から今朝にかけては特急の仕事にすっかりかかりきりとなってしまい、ほとんど観察らしい観察はできなかった。いま少し納期が欲しい。しかし今のご時世、贅沢は言ってられない。

2003年7月8日(火)
 
(a)
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(j)
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(l)
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 去る6日にいわき市四倉のシイタケほだ場で暗青紫色の小さな美しいきのこ(a, b)を採取した。ちょっと見た目にはヒメコンイロイッポンシメジかコキイロウラベニタケのように見える。傘表面は微細な繊維状にも見えるし、鱗片に被われているようにも見える。中央部は凹状になっているものもあれば、尖っているものもあった。ヒダはやや垂生気味の直生から上生(c)。現場で最初に見たとき、これらからヒメコンでもコキイロでもなさそうな気がしていた。
 胞子はお決まりの形をしている(d)。ヒダ切片(e)を切り出して平行な実質(f)を拡大してみたがどこにもクランプは無い。ヒダ先端がモヤモヤしているので(e)、拡大してみると薄膜の縁シスチジア(g, h)だった。側シスチジアはない。担子器が透明で見にくいのでフロキシンで染色して撮影した(i)。この時点では、もしかしてコキイロウラベニタケではあるまいかと考えていた。
 傘表皮を放射状方向に切り出してみた(j)。表面に対して組織の要素がおおむね垂直方向に走っている。そして先端は色素を帯びた嚢状をしている。いわゆるデルム(derm)構造である。てっきり傘表面に対して組織の要素が平行に走っている状態、つまりキュウティス(cutis)構造を想定していたので当てが外れた。この部分にもクランプは無い。この嚢状の組織は液胞状であり淡灰色の色素に満たされている。そして、同時に濃青色の粒状の色素を多数含んでいる。粒状の濃青色の色素は傘表皮のかなり中の方の組織にも含まれている(k, l)。
 いずれにせよヒメコンイロイッポンシメジやコキイロウラベニタケなどと同じくアオエノモミウラタケ亜属のキノコには違いないのだが、ヒメコンでもコキイロでもなく、別種のきのこのようだ。ひどくややこしいデータ処理の急ぎの仕事を抱えているので、今朝はこれ以上の追究をするのはやめにした。これ以降の探索は現地の菌友らにまかせた方がよさそうだ。

2003年7月7日(月)
 
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 3日間、菌友らと福島県の浜通り地域で楽しいときを過ごしてきた。海浜地域では適度の雨が降っているのだが気温が低い。山間部ではこのところずっと雨不足と低温が続いていたという。そのためだろう、山の中はカラカラに乾いておりきのこの姿はとても少ない。また、海浜地域ではやっと夏のキノコ類が出てきたばかりだった。
 マツ交じりのコナラ林で出会ったコナカブリベニツルタケ(a, b)はとても美しいきのこだ。2日間にわたって観察したが、乾燥のせいで傘を開くと同時にナメクジに次々に食われてしまい、ついに整った姿の成菌を見ることはできなかった。ナメクジ被害がかなり大きかったので検鏡後は、そのまま廃棄せざるをえなかった。観察・採取例の少ないきのこだけに残念だった。
 アカマツまじりの杉林にはアカカバイロタケ(c, d)が多数見られた。ヒダの分岐がよくわかるように拡大したものを掲げた。古いシイタケほだ場には多くのきのこがでていた。クロシワオキナタケ(e, f)にであったは実に久しぶりだった。ナガエノチャワンタケ(g, h)、クロノボリリュウタケ(i)があちこち見られたが、それらに混じって巨大なノボリリュウタケ(j)があり最初は何だろう思った。ヒョウモンウラベニガサ(k, l)、マルミアリタケはいくつも見ることができた。
 ニガイグチモドキ、アミタケなどイグチ類、ザラエノハラタケ、ナカグロモリノカサなどハラタケ科、ツルタケ、フクロツルタケ、タマゴタケモドキ、ヒメコナカブリツルタケなどテングタケ科のきのこにも何種類かであったが、全般的に数は少なかった。

2003年7月6日()
 
石川県のキノコ
 
 佐野書店から臨時の文献情報が届いた。「石川のきのこ図鑑」復刊にかかわる著者の考えなども紹介されているので、コメント部分を引用して紹介することにした。
 池田良幸著「石川のきのこ図鑑」1996に対し、多くの方から復刊のご希望がよせられましたが、著者の池田良幸氏は、単なる復刊をいさぎよしとせず、大幅に増補改訂した新「石川のきのこ図鑑」を今後4年をめどに出版しようと鋭意努力されています。
 新図鑑出版までのつなぎとして、また新図鑑出版費用の一部に当てたいとの池田良幸氏のご希望で、このたび1999年に出版された石川きこの会編 「石川県のキノコ」を下記により販売することになりました。ご注文をお待ちしています。
 詳細については、「2003年7月 臨時菌類文献案内」を参照されたい。

2003年7月4日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
(e)
(f)
(f)
 日光で出会ったテングタケ科のきのこのうち、ツルタケとばかり思い込んで採取してきたきのこ(a)の胞子をみた。すると、ツルタケの胞子なら球形なのだが、これは広楕円形ないし玉子形をしている(b)。あらためて他の個体をよく見ると、どの個体にも柄にツバないしツバの痕跡がある。となると、これはツルタケではなく、ツルタケダマシということになる。採取時にてっきりツルタケとばかり思い込んでいたので、ていねいにツバの有無などを確認せずに採取袋にいれてしまっていた。うかつだったが、確かにこの両者はよく似ている。
 久しぶりにテングタケ属のきのこのヒダ切片(c)を切り出した。この仲間のヒダは崩れやすいので、薄い切片を切り出すのは意外と難しい。一度乾燥させてから切り出した方が楽だろう。ヒダの実質部はいわゆる散開型なのだが、撮影すると透明でわかりにくい。そこでフロキシンで染めてみるとよくわかる(d)。さらに散開型といってもどういうタイプなのかを、やや倍率を上げてみた(e)。そのまま油浸100倍対物に換えて、担子器(f)などをチェックした。
 今日から3日間菌友ら5人と福島県で合宿だ。宿泊地も山中なのでインターネットとは無縁の生活だ。したがって、この間は「今日の雑記」はお休みとなる。外もかなり明るくなってきたのでそろそろ出発の時間だ。

2003年7月3日(木)
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(i)
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(j)
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(l)
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 昨日の日光は人も少なくとても静かだった。ホシアンズタケ(a〜c)が最盛期を迎えており、百株以上に出会った。他に傘径数ミリの幼菌が多数出ていてまだまだかなりの期間楽しめそうだ。今回は傘表面の模様が美しいもの(a)や、肉厚の太くてしっかりしたもの(b)、形の整った大き目のもの(c)をかなり見ることができた。一方タモギタケ(d, e)は幼菌と成熟しきったものが目立った。中にはそれぞれの傘径が25cmもあろうと思える群れもあった。
 カラマツ林にはハナビラタケ(f)、シロヌメリイグチ(g)、イタチタケの仲間、いわゆるスギオウジ(ツバの無いマツオウジ)などが幾つも見られた。長径30cmほどのハナビラタケを一つ持ち帰った。ところどころにあるカンバの立枯れには材上生のタマチョレイタケ?(h)なども見られた。
 ハルニレにはいたるところにヒダキクラゲ(i, j)が雨に濡れて新鮮な姿を見せていた。それにしても、ヒダキクラゲの傘面(j)はまるで硬質菌を思わせる。乾燥しきった状態のものはまるで硬質菌のようだ。モリノカレバタケ(k)、キッコウアワタケ?(l)も広葉樹林に多数発生していた。イグチ類とテングタケ科のきのこは、思ったよりも発生が悪く、それぞれ5〜6種類ほどしか観察できなかった。ヒラタケ、ヒメキクラゲなども多くの樹種についていた。

2003年7月2日(水)
 
(a)
(a)
(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(g)
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(i)
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(k)
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(l)
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 今朝は、一昨日川越で採取してきたクロハツ(a)とヤグラタケ(g)のミクロの世界を楽しんだ。胞子紋はその日のうちに採ってあった。残る作業は切片作りだけなので気楽な朝だった。
 クロハツ(a)をカバーグラスの上に30分ほど放置すると適当な量の落下胞子が得られる。これをメルツァーで染色してみた(b, c)。それぞれ、胞子の表面(b)、胞子の輪郭(c)に焦点を合わせて撮影したものだ。この後、ヒダ切片を切り出して総合倍率40倍で見たものが(d)だ。ヒダ先端が赤く変色していたが、しばし放置すると黒褐色ないし黒灰色に変わった。ヒダの先端には面白い形の縁シスチジアがみられる(e)。担子器は子実層の部分に密集している(f)。
 一方、すぐ脇のクロハツ老菌から出ていたヤグラタケ(g, h)は傘径15〜20mmと観察には手ごろだったので、久しぶりに胞子紋を採取した。厚膜胞子を避けて担子胞子だけを採取するのは意外と難しい。傘表面が真っ白なものでは、まだ厚膜胞子もできていないが、担子胞子も未熟である。一方、少しでも頭部が茶色の粉を帯びてくると、胞子紋を採取したときに厚膜胞子が一緒に混ざってしまう。担子胞子だけを得るには工夫が必要となる。カバーグラスに採取した担子胞子は鮮明な姿には撮影できなかった(i)。偏斜照明にしてみると鮮明な輪郭が得られた。
 あらためてヒダ切片を同じく40倍でみた(j)。組織には顕著なクランプが多数みられる(k)。担子器は子実層にパラパラと散在している。繁殖はほとんど厚膜胞子に頼っているので、担子胞子は退化の方向にあるのだろうか。担子器の数も他のきのこと比較するととても少ない。

2003年7月1日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日川越の雑木林を歩いてみると、あちこちにヤグラタケ(a, b)がやたらに目立った。若いクロハツからでているもの(a)やら、傘径6cm超という大きな個体もあった(b)。この両者はいずれも比較的珍しいものだ。きのこの上にきのこが出るので、初めて見るときは感動ものだろう。ヤグラタケ自体はありふれたきのこであり、クロハツの出るところならどこでも見られる。
 1週間ほど前には小指の先ほどの小さな棒状だったマツオウジ(c)がすっかり成長していた。テングタケ科のきのこ(d)は5〜6種類がみられた。イグチ類も7〜8種が見られた。いよいよ夏のきのこ本番を思わせる。例年ならかなり多量に発生するムラサキヤマドリタケ(e)は、今年は成長が悪く、発生量も少ないようだ。結局数本しか出会えなかった。
 1時間ほど歩いたのだが数人のきのこ狩りの人にであった。持っていたのはムラサキヤマドリタケやヤマドリタケモドキ、キイロイグチ、ミドリニガイグチ(f)などであった。中にはクロハツやカワリハツばかりを大量に採取している人たちもいた。出汁にでも使うのだろうか。聞けば、29日(日曜日)はかなり大勢の人たちがムラサキヤマドリタケを奪い合うように採取していたという。

 佐野書店「6月菌類文献案内」が出た。今月紹介の目玉は、Krieglsteiner, G.J.編, 2003 「Die Grosspilze Baden-Wurttembergs Band 4 (バーデン・ウェテンベルグス州の大型菌類第4巻)」Verlag Eugen Ulmer 価格:8,500円 だとのこと。

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