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日( )

2003年12月20日()
 
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 昨日午前中、千葉県内房の浜辺を歩いてきた。最初に今年の7月頃に発生したナガエノホコリタケ(雑記2003年7月17日同7月21日)がどのようになっているか、その様子を確認した(a, b)。大部分は頭部が柄から分離して、頭だけがすっかり白っぽくなって転がっていたが(a)、一部には柄がしっかり地表に屹立しているものもあった(b)。また、そこから1500メートルほど離れた別の場所では、新たに11月頃に発生したとみられる群れを見つけた(c, d)。これは切断してみると柄はまだ真っ白だった。念のために胞子(e)、拳状節(f)などをチェックした。
 浜辺にはスナヤマチャワンタケ(g, h)やらスナジクズタケ(i〜k)をまだまだみることができた。スナジクズタケは相変わらず大潮の時には水没してしまいそうな場所に多数でている。その数は例年よりもかなり多い。また、ケシボウズタケ(Tulosoma brumale)同様に筒状の孔口を持ったケシボウズ(l)が新たに7〜10個体ほど見つかった。これは9〜10月頃に発生したと考えられる。頭部の径の割に柄が相対的にかなり短かく、柄の表面は白くて平滑である。まだきちんとした同定はしていないので、現時点では種名まではわからない。

2003年12月19日(金)
 
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(j)
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(k)
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(l)
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 先日のハマシメジ(雑記03年12月17日)と同日に持ち帰ってきた岡山産ハツタケが一つだけまだ冷蔵庫に残っていた(a〜d)。今朝はその胞子を覗いて遊んだ。胞子紋は昨日午後、スライドグラスの左右に2ヵ所、計3枚で6ヵ所に採取しておいたものを使った。
 はじめに水だけでマウントしてみたがやはりとても見にくい(e)。これにフロキシンを加えて輪郭部に焦点を合わせてみると、油球らしきものがはっきりと分かる(f)。しかしベニタケ科の胞子といえばやはりメルツァーによる観察は必須である。またそうでないと表面の模様が浮かび上がってこない。まずは表面に焦点(g)、次に輪郭部に焦点(h)をすえて撮影した。
 子嚢菌の場合は、メルツァー試薬の代用としてうがい薬のイソジンが有用であると以前の雑記(02年12月21日同12月22日)に記した。また千葉菌類談話会通信No.19掲載の長尾英幸氏「うがい薬で調べる子嚢のヨード反応は?」も興味深い結果が記されている(同02年12月31日)。
 上記雑記でも記したが、チチタケ属(Lactarius)に関しては代用はきかない。試みにイソジンを使ってみた(i, j)。胞子の表面の模様がほとんど染まらない。胞子表面の油脂成分を除去したらどうかと思い、アルコールで脱脂処理をしてからイソジンで染めてみた(k, l)。この反応はヒロハシデチチタケの場合とは異なる(同02年12月22日)。なお、染色を促進させるつもりでターボライターを使って熱処理を加えてもみたが、結果は全く変わらなかった。
 また、KOHにイソジンを注ぐと脱色されて透明になってしまう。だから、KOHで前処理をしたものにイソジンを使ってみると全く染まらない。水でマウントしたときと同じ結果しか得られない。

2003年12月18日(木)
 
ルポルタージュ「野の人」
 
 月刊誌BE−PAL1月号でルポルタージュ「野の人」という連載シリーズが始まり、その第1回に石川きのこ会・会長の池田良幸さんがとりあげられた。野武士を思わせる池田さんはまさに、野人という表現がぴったりである。『石川のきのこ図鑑』(絶版)の大幅増補改訂版ともいえる『北陸のきのこ図鑑』の執筆が進んでいることなども紹介されている。しっかりした取材に基づいた記事は安心して読むことができ、氏のひととなりを彷彿とさせる。是非とも一読の価値がある。
 また、同号の21ページには、煙のように胞子を放出するシイタケの鮮烈な写真が掲載されている。これは特殊撮影でもなんでもなく、DVカメラに標準的に装備された機能を使っただけであって、だれにでも撮影できるものだという。DVカメラできのこを撮影している向きには非常に参考になる面白い記事である。
 ハタケチャダイゴケに雨粒があたりペリジオールがはじき出される瞬間の映像とか、ヒイロチャワンタケが子嚢胞子を間歇的に放出している映像などは多少の工夫が必要かもしれないが、とても面白い映像が得られるのではないだろうか。

2003年12月17日(水)
 
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(j)
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(k)
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(l)
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 先日(12月14日)の菌懇会例会の折りに、岡山からはるばる飛行機に乗って運ばれてきたキシメジ節(Sect. Tricholoma)のきのこ(a〜d)を今朝覗いてみた。いくつかの個体の柄の上部にはクモ膜の残滓のようなものが残っていたのだが、今朝はもはや何も残っていない。傘表面は繊維状で粘性はない(c)。ヒダは典型的な湾生をしていて柄の内部は中空である(b, d)。
 ヒダを一枚切り出してみたが縁にも側にもシスチジアはみられない(e)。ヒダ実質は並行型(f)。ヒダ実質部(g)やら傘肉、柄などをさんざん探したがクランプはどこにもない。最初水でマウントして子実層を見たが、透明でとてもわかりにくい。直ちにフロキシンを加えると鮮明になったが、担子器の基部の様子はわかりにくい(h)。そこで軽く押しつぶすと担子器が飛び出してきた(i)。担子器の基部にもクランプはみられない。
 胞子も水で見たときよりもフロキシンで見た方が鮮明に捉えられた(j)。傘表皮は中央部から縁にかけて平行に並んだ細胞からなり所々で立ち上がっている(k, l)。しかし傘表皮を同心円状に切り出すとパイプ状の丸い断面が見えるために、傘表皮は整然とした球形の組織から成っているかのように見える。傘表皮のデータを比較する場合、切断方向は重要である。このきのこはハマシメジとしてよさそうだ。

2003年12月16日(火)
 
佐野書店:12月文献案内
 
 佐野書店から12月文献案内が出た。あわせてうれしい知らせも届いた。日頃佐野書店を高く評価している者としてもこれは我がことのように喜ばしい内容である。以下そのまま引用である。
うれしいニュースをお知らせします。
佐野書店が多大な出版援助を行ったMahesh Kumar Adhikari著「Mushrooms of Nepal 」(ネパールのきのこ) 2000がオランダ国立植物学博物館が発行する大型菌類分類学の世界的な専門雑誌「PERSOONIA」最新号の書評欄で紹介されました。
このほど発行された最新号PERSOONIAーVol. 18, Part 2, 2003, pp200 BOOK REVIEWSの第一番目に本書の書評が載っています。
16行にわたる書評は大部分が内容の紹介ですが好意的で、最後に「The book is recommended as an important source of information on this region we know so little about」と結論付けています。
余談ですが、この書評には注文先として佐野書店の住所、メールアドレスも書かれています。
これもまた世界的な菌類分類学雑誌「MYCOTAXON」の書評欄での紹介に続いての紹介です。
いずれも好意的な書評であり、佐野書店としても出版援助の甲斐がありました。

2003年12月15日(月)
 
(a)
(a)
 昨日は所属する会(菌類懇話会)の例会が行われ、関東圏だけではなく、岡山県・愛知県・福島県・宮城県といった遠方からの友人の参加も目立った。岡山県からはハマシメジ、シモコシ、ハツタケなども持ち寄られた。
 川崎市の緑地では霜柱が立ち、路面も凍っていたが、それでもエノキタケ(a)、土に汚れたハタケシメジ、小さなツチヒラタケ、チャワンタケ類、硬質菌若干を見ることができた。エノキタケだけは撮影したが、他のきのこを撮影する気持ちにはなれなかった。いよいよ軟質菌は発生数も量も少ない季節となってきた。
 午後は恒例のスライド大会、海辺の砂浜に出るきのことか色々な地下生菌といった、ふだん見られないきのこの姿を楽しむことができた。結局今日も帰宅は午前様となってしまった。

2003年12月14日()
 
(a)
(a)
(b)
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(c)
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(d)
(d)
 昨日(シンポジウム)は悪い予測が当たって、二次会を終えて帰宅したのは結局午前様、am1:00であった。しかしふだんなかなか会えない懐かしい顔に会えて楽しい一日だった。
 今月初めに静岡県遠州灘のいくつかの浜で、どうみてもショウロにみえるきのこに何度か出会った。こすったり傷つけると淡赤色になり、KOHをかけても特に色の変化はなかった。紙袋に入れたたまますっかり忘れてテーブルの端に放置したままになっていた。既に10日間近く経過しているので、干からびて小さく硬くなっている。
 今朝、捨てる前に胞子くらいは見ておくことにした。胞子(a, b)やら組織の一部(c, d)をみるとやはりショウロに間違いなさそうだ。しかし、このショウロの出ていた場所には、テリハノイバラ、コウボウシバ、イワダレソウなど小さな草しかみられない。菌根を成すとされる松が近くにないのだ。黒松防風林から汀側に20〜30mほども離れた位置に出ていたものもあった。松の根の先端はそんなに長く伸びるのだろうか。

2003年12月13日()
 
投稿規定の心理的抑圧
 
 ウネミケシボウズタケ(仮)をいつまでも仮称のままにしておくわけにもいかないので、「日本新産種Tulostoma striatumについて」というタイトルで日本菌学会報に投稿した。今後は、審査担当者からどの程度の訂正要求がついて戻ってくることやら、である。
 昨夕、投稿規定にそって体裁を整えて簡易書留で投函した。記述そのものは難しいわけではなく、6月にはほぼでき上がっていたのだが今日まで放置していた。吉見昭一先生の逝去に伴い新たな確認作業が増え、一定の時間が必要となったことは確かだ。しかし、それは口実で、体裁を整える作業がひどく面倒に感じて、長いこと放置していたというのが正直なところだ。
 希菌発見報告とか日本新産種あるいは新種発表などは、日常多くのきのこに出会うチャンスの多いアマチュアにこそ向いた仕事だと思う。しかし、多くのアマチュアにとってはそれぞれの論文誌ごとに厳格に規定された「投稿規定」が大きな心理的抑圧となっているようだ。今少し緩やかに投稿できると国内の新種・新産種はかなり明らかになるのではないかと思う。
 今日はこれから日本菌学会関東支部の第18回菌学シンポジウム「アマチュア菌学ノススメ」がある。ここから玉川大学は遠い、あまりのんびりもしてられない。

2003年12月12日(金)
 
見沼もきのこの影なし
 
 朝さいたま市見沼区にある公園に行ってきた。新たに大量のウッドチップが広く一帯に散布されていた。まだ新鮮なにおいを保ちフカフカである。古いウッドチップはこれらに覆われてすっかり隠れていた。ほんのわずかに地表に姿を残している古いウッドチップからは乾燥したムジナタケ、ハタケキノコ、ツバナシフミズキタケらしきものがみられた。いつもならたいてい見られるヒトヨタケ属のきのこは全くみられなかった。近くの神社には干からびたエノキタケとアラゲキクラゲが立枯れの樹にしがみついていた。馬糞堆からもきのこは何一つ出ていなかった。
 雨でもあり今朝は何も持ち帰らず直ちに帰宅した。データの整理をしたり、未知種のケシボウズタケ属を検鏡しているうちに時間切れとなった。検鏡データの撮影はしなかった。今の時期、資料を整理したり、菌学関連の基礎知識を習得ないし再確認するにはちょうどよい。

2003年12月11日(木)
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
(e)
(e)
 昨日仕事の合間にさいたま市の秋が瀬公園に行ってみた。園内は所々に大きな水たまりが残っておりカラカラに乾燥しているわけではないが、きのこの姿はほとんど無い。出会ったのは、キクラゲ、アラゲキクラゲ、硬質菌4〜5種と寂しい限りだった。キクラゲはカラカラで刃物のように硬い。何本かの落枝にはコキララタケのオゾニウム(菌糸塊)(a)がビッシリついていた。
 ふだんはオゾニウムなどをじっくり観察することなどはないので、今朝はそれを覗いてみた。ルーペで拡大しただけでも純粋な菌糸繊維そのものらしいことはわかる(b)。ひとつまみを顕微鏡の下に持ってきた(c)。拡大してみると隔壁を備えたやや膜の厚い菌糸が、1本から10数本密着して長く太い紐のようになっている(d)。膜は0.5〜0.8μmほどの厚みがあり、繊維の径も3.5〜5μほどある(e)。乾燥したオゾニウムを束にすると真綿のような感触だった。

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