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日( )

2003年6月10日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 昨日夕方川越の保護林を歩いてきた。きのこの発生は悪く片手で数えるほどしか見られなかった。色の薄いタイプのダイダイガサ(a, f)がでていた。ベニタケ属のきのこが5〜6種類見られたが、干乾びているものが多く、ここでは何とか胞子紋を採取できたものを3つほど取り上げた。ヒビワレシロハツ(b, g)、ケショウハツ(c, h)、アカカバイロタケ?(d, i)は広範囲に見ることができた。最も広く多数みられたのはイタチタケ(e, j)だった。他にはヒメカバイロタケが目立った。硬質菌も意外と種類が少なく、カワラタケ、エゴノキタケ、スエヒロタケが新鮮な姿をみせてくれた。なお、(f)〜(j)は上の段のきのこの胞子である。ケショウハツは比較的若い菌しか得られなかったせいかカバーグラスに採取した胞子紋が非常にまばらだった。それにしてもベニタケ属のきのこの胞子は光学顕微鏡でいくらみてもみな同じで、同定にはほとんど役立たない。

2003年6月9日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
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(i)
(i)
(j)
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(k)
(k)
(l)
(l)
 内房の浜でケシボウズ以外に観察されたきのこについてもメモしておこう。ホコリタケ科のきのこ(a〜c)は薄い外皮(?)がモザイク状に残ってとても印象的だった。直径は24〜32mmほどある。胞子(d, e)表面は疣状突起に被われている。弾糸(f)はところどころで分岐し、表面に小孔をもっている。幼菌は見つからなかったので、柱軸や担子器は確認できなかった。
 スナジクズタケ(g, h)は単生のものから束生のものまでみられた。傘表面が乾燥のためか亀裂が入っていた。束生した背丈の低い子実体の傘は上から落ちてきた胞子で暗紫褐色を帯びていた。胞子紋は暗紫褐色(i)で、胞子には明瞭な発芽孔が見られる。
 ハマニンニクなどのイネ科植物の根元には相変わらずニセホウライタケ属と思えるきのこ(k, l)が多数出ていたが、このところの雨不足のため全般的にやや干乾び気味であった。このきのこのミクロ的所見は雑記2002.5.15に記したのでここでは省略した。
[補足] スナジクズタケとしたきのこは、Psathyrella ammophila (Dur. & Lev.) Ortonではなく、未知種のPsathyrellaのようである。これは、スナジクズタケではないことが判明した(2006.9.30補足)

2003年6月8日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日、菌友のY氏、S氏と三人で内房の浜を歩いてきた。ケシボウズに出会えるとは思ってもいなかった(a〜e)。3月13日(雑記2003.3.14)にチェックした時には何もなかった地点である。これらのケシボウズは3月後半から4月頃に発生したものと考えられる。5月30日(雑記2003.5.31)に同浜を訪れた折には、うかつにも立ち寄らなかった場所である。この日にチェックしていれば比較的新鮮な状態がみられたのかもしれないと思うと残念だ。とりあえず胞子だけは確認した(f)。20個体以上あり10数個はそのまま残してきた。
 ケシボウズの仲間は秋から冬にかけて発生するといわれている。ミイラ化した老菌は春先までみられるケースが多いという。これまで採集された多くのケシボウズはたいていが、冬季に見つけられた老菌であり、若い菌の報告例は比較的少ない。
 ケシボウズを見つけると、半分以上の個体は現地にそのままの状態で残してきた。いつごろまでミイラとして残るのかを知りたいからである。昨年12月に確認した若い菌(雑記2002.12.9)は数ヶ月後にもミイラとして残っていた。関東の冬場は乾燥しているので、数ヶ月経過した時点でも形を残しているのだろう。ところが、5月30日に訪れた折には、3月13日に残してきた10数個体は既にひとつもなかった。たかだか2ヶ月半で土に返ってしまったようだ。初春に発生したものは雨と高温にさらされて、梅雨の頃までには風化して跡形もなく消失してしまうのだろう。
 このケシボウズについてはまだ同定に必要な検討作業をやっていない。この日は他にも、スナジクズタケ、ハマニンニク等の根から出るニセホウライタケ属、ホコリタケ科などに出会った。

2003年6月7日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 先に(2003.5.25)埼玉県小川町で採取したコガネムシタンポタケはまだ未熟だったので、そのまましばらく追培養していた。十分熟したと思われる(a)ので頭部を検鏡してみた。実体鏡で頭部の子座を見ると子嚢殼は完全に埋生しており、子嚢殼の先端が膨らんで見える(b)。注意深く見ると、子嚢殼から細長い糸状の子嚢が噴出している様子がみえる。ぶつぶつ膨らんだ先に見える白い糸状のものがそうだ。
 大雑把に子座の部分を切り出してみると完全に埋没した子嚢殼がある(c)。少し場所を変えてみると、子嚢殼の中には細長い子嚢が溢れんばかりだった(d)。倍率を上げて子嚢先端部を見た(e)。さらに倍率を上げ子嚢先端を見ると、帽状のキャップをかぶった子嚢先端は、男性器の亀頭部を思わせるような姿をしている(f)。子嚢内部には糸状の長い(原)胞子が入っているが、これは多数の二次胞子がつながった状態になっている。(g)はフロキシンで染めたもの。子嚢から飛び出した糸状胞子から分かれてできた二次胞子は、過度が丸みを帯びた長方形で、内部に二つの油球がみえる(h)。
 ホシアンズタケの胞子紋に過去のデータ(昨年)を添えた。採取時間が少なかったため落下胞子が少ない。そのため白い紙の上ではよく見ないとほとんどわからない(i)。見やすくするため画像処理をしたが、やや黄褐色の放射線状が胞子紋だ。ピンク色の液滴が意外と鮮明な色を残している。スライドグラスに採取したものもやはり白色である(j)。これもそのままではとてもわかりにくいのでやや明度をあげた。2昼夜放置して多量の落下胞子を得たもの(スライドグラス上)も汚れた類白色であった。これは、検鏡用に既に使ってしまい残っていなかった。

2003年6月6日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 一昨日日光で採取したホシアンズタケの胞子を観察した。保育社の「原色日本新菌類図鑑」によれば、「胞子紋は淡紅色、胞子は類球形、粗面」となっている。しかしこの記述には長いこと釈然としないものを感じていた。これまでみてきたホシアンズタケの胞子紋は淡紅色ではなく白色ないし類白色(a, b)だし、粗面という表現も適切とは思えない。
 スライドグラスに胞子紋を採取した。白い紙をバックに撮影したらどの部分が胞子紋なのかわかりにくいので、フォトショップを使って全体の明度を下げた(a)。黒い紙をバックに撮影したものをみても暗い類白色である(b)。ではなぜ淡紅色と記述されているのだろうか。
 ホシアンズタケの柄は普通濃紅色の液滴を伴っている。そしてこの液滴は柄表面からばかりではなく、ヒダからも染み出してくるように見える。傘表面は厚いゼラチン質の膜に被われているが、これは傘表皮ばかりではなくヒダ面にまで及んでいる。このために胞子紋を採るのは意外と難しい。傘を伏せて放置しても胞子が全く落ちず、ピンクの液でビショビショになってしまうことも多い。白い紙などに傘を伏せた場合、胞子紋というよりも淡紅色のシミができる。このシミには多数の胞子が含まれている。
 ホシアンズタケは国内でも「稀」、海外でも「rare」とされている。このため採取個体も少なく、純粋に落下胞子だけが採取されたケースは意外と少ないのではないか。液滴にまみれた淡紅色のシミが判断を狂わせ「胞子紋は淡紅色」という記述になったのではないか。海外の文献にも淡紅色と記述されたものがあるが、これも同じ理由によると考えられる。あるいはピンク色の胞子紋を持つ個体があるのだろうか。
 次に胞子は「粗面」とあるがこれもあまり適切な表現とは言いがたい。正確には「微細な疣状ないし鈍針状の突起に被われている」と言った方がよい。(c, d)はメルツァー液中で胞子表面と輪郭に焦点をあわせたもの、(e)はフロキシンで胞子輪郭をみたものである。フロキシン入りのマウント液が蒸発してしまいドライ状態になってしまったものが(f)である。「粗面」には違いないが、そういった表現で一言で片付けるにはあまりにも表情豊かな模様である。ちなみに、山渓谷カラー名鑑「日本のきのこ」では「有刺」と記述されている。

2003年6月5日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(f)
(g)
(g)
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(i)
(i)
(j)
(j)
 きのこ屋(高橋)さんと一緒に日光に行ってきた。駐車場について驚いた、糞生菌に情熱を燃やしている菌友のYさんにばったり出会った。シカ、カモシカの糞を集めにやってきたという。
 昨日の日光はきのこの影が非常に薄かった。タモギタケ(a)は干乾びてカラカラになったものが大部分、ホシアンズタケ(b)はほとんど微小な幼菌ばかり、オオシャグマタケ(c)はすでに終わりを告げているかのようだった。こられは新鮮な個体に出会えたのが不思議なほどであった。
 墓場にはスギタケ(d, e)が出ていた。カラマツ林ではアシナガタケらしき菌(f, g)、キイロスッポンタケのタマゴ?(h)のようにみえる腹菌類にであった。目立ったのはピロネマキン科の繊細な子嚢菌(i, j)だった。カラマツ林で出会ったマツオウジはまだ非常に小さかった。
 5月末の台風4号による雨の恵みはほとんど感じられなかった。このまま雨が降らないと次週もあまり期待できないかもしれない。雨が欲しい。

2003年6月4日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
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(e)
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(f)
(g)
(g)
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(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
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(l)
(l)
 昨日、公園のきのこ調査のため菌学教育研究会の布村氏といっしょに相模原市を訪れた。相模原市公園課の職員の方、麻布大学の研究室の方たちと一緒に、市内の公園のウッドチップから発生するきのこを観察・調査した。発生していたのは、チャワンタケ属、ヒトヨタケ属、オキナタケ属の軟質菌とコウヤクタケ科のカワタケ、タコウキン科のエゴノキタケだった。
 チャワンタケの仲間の大部分はオオチャワンタケ(a, b)だった。メルツァーで染めた切片(c)、子嚢(d, e)、側糸(f)などの観察から写真のものはオオチャワンタケにほぼ間違いなさそうだ。
 ヒトヨタケ属ではコキララタケ、ヒメヒガサヒトヨタケ、ワタヒトヨタケ(g, h)が主だったところだった。ここではワタヒトヨタケだけを取り上げた。切り出した切片から側シスチジア(i)、ヒダの縁(j)、胞子(k)、傘表皮の組織(l)などを観察した。オキナタケ属のきのこでは典型的なシワナシキオキナタケ、(シワのある)キオキナタケがみられた。5月31日以降雨が降っていないせいか、全体に干乾びた子実体が多かったが、発生量はとても多かった。
 この日の調査では、毒きのことマジックマッシュルームが発生していないので一同ほっとした。観察・調査の機会を与えてくださった麻布大学の高田先生、研究室の学生さん、相模原市の職員の方々、ありがとうございました。

2003年6月3日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 早朝の見沼地区を少し歩いてきた。芝生の中にキコガサタケ(a〜c)が白から薄黄土色の姿で散生していた。このきのこも早朝しか端正な姿をみることはできない。相変わらずシロフクロタケ(d)が大発生しており、いたるところに見られたが、よい状態のものは少なかった。サケツバタケ、ツブエノシメジ、キオキナタケ、ツバナシフミズキタケは先日の台風後に出た若い子実体もあったが、多くはやや乾燥状態であった。ヒトヨタケ科のきのこではビロードヒトヨタケ(e)、ネナガノヒトヨタケ、ザラエノヒトヨタケ、コキララタケが目立った。
 帰宅して出発までの残り時間にキコガサタケだけを検鏡した。胞子紋は黄褐色(f)、その一部を削ぎとってドライマウント状態(g)で見たあと、水でマウント(h)してサイズや形などを確認した。ヒダの一部を切り出して担子器(i, j)をみた。j はプレパラートの一部に担子器が分離して転がっていたので、それをとらえた。
 今朝もヒダ切片が上手く切り出せず、先端に球状のこぶをもった縁シスチジアの撮影は結局あきらめた。こういった極薄のヒダをもったきのこでは、簡便法としてヒダを一枚スライドグラスに寝かせると楽に縁シスチジアを観察できる。しかしこれはかなりの厚みになるので、観察結果のシスチジアをきれいに撮影するのには適さない。

2003年6月2日(月)
 
ピスがカビにやられた!
 
 一月ほど前に、いわき市のNさんにいただいたピスは大切にプラスチックケースに密閉して保管していた。この間20本ほどを取り出して、再びきっちりとふたをしたのだが、これが裏目に出た。採取したてでまだ半乾き状態のものが何本か混じっていたのだろう。昨日再び何本か取り出そうとふたを開けたところ、上のほうの数十本の表面に緑色のカビが生えていた。他にも黒っぽいカビの生えたものがあった。
 キブシやニワトコ、ヤマブキなどの髄を取り出すと、一見乾いているように見える。ついそのままケースにいれてしまいがちだ。そのケースを密閉状態にしてしまうと、すぐにカビが生えてくる。できれば、十分に乾燥させてから格納するのがよい。特にこれからの季節十分な注意が必要だ。
 結局5〜6本はかなり派手に青色や赤色のカビに侵されており、別の20本ほどには内部までしっかり黒いカビが侵入していた。カビのミクロの姿を見るのならいざ知らず、これではピスとして役立たない。泣く泣くこれら30本ほどを廃棄した。

2003年6月1日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 台風4号がやってきてやっと雨をもたらしてくれたが、雨効果がでるのは3〜4日後くらいだろうか。首都圏はずっと乾燥していたので、ウッドチップ、シイタケほだ木、沢沿い以外ではキノコの姿がほとんどみられない。そのウッドチップに発生するキノコも例年よりもかなり少ない。
 アラゲコベニチャワンタケはちょっと湿った材があれば、ほぼ通年どこにでも見られる。近場のジメジメした場所で見つけたので、今朝はこれを採取してきて覗いてみた。
 大雑把に切り出した切片をみると、3層からなっていることがよくわかる(a, b)。整然とした子実層面、絡み合い菌組織からなる托髄層、そして円形菌組織からなる托外皮層。外皮や縁からは厚壁の剛毛が出ている。この剛毛は托髄層から生じており、托外皮層を突き破って長く外に伸びている(c)。特に盤の縁のそれはとても長い(b)。いずれの剛毛もその壁はとても厚い(d)。子嚢はメルツァーでは反応しないが、KOHに浸すと子実層面の色がより鮮やかになる。側糸は先端が膨大した糸状(e)、胞子はよく見ると表面に小さな疣があるようにみえるが、輪郭部に焦点を合わせてもほとんど平滑にみえる(f)。胞子表面の疣は背丈がとても低いからなのだろう。
 今日は赤熊祭り、仲間内でシャグマアミガサタケを肴にきのこ談義を楽しむ一日だ。例年は会津や富士山のシャグマを食べていたが、今年は日光のシャグマがメインとなる。

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