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2003年7月20日()
 
(a)
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(l)
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 ホシアンズタケの胞子紋は白色、と先に記述したが(雑記2003.06.06)、訂正しなくてはならない。白い紙に胞子紋を採ると確かに淡いピンクがかった黄褐色の紋がとれる(a)。しかし、やや傾斜をつけて設置したスライドグラス上に採取した胞子紋の色は汚白色である(b)。
 ホシアンズタケのヒダからはピンク色の液が染み出す。これが柄に着いた液滴となる。胞子紋を採取したときにもピンク色の液が染み出し白い紙を淡いピンク色に染める(ことが多い)。しかしスライドグラスに染み出した液は染まるより前に流出したり蒸発してしまい、ほとんど色としては残らない。このために、ホシアンズタケの胞子紋は淡いピンク色といった記述となっているのだろう。だから胞子紋はピンク色という記述もあながち間違いとはいえないことになる。
 このきのこは全体がゼラチン質の塊のような様相を呈しており、ヒダもその例外ではない。薄い切片を切り出そうとしても、生きのこからはなかなか難しい。やっとのことで切り出した切片(c)は水でマウントしたとたんに実質部のゼラチン質が膨れ上がり側を押し倒してしまった。このままでは見難いのでフロキシンで染め、子実層をみた(d)。実質部はゼラチン質に被われながらも平行型に菌糸が走っている。子実層の担子器周辺を倍率を変えて撮影した(e, f)。菌糸にはクランプがあり(g)、担子器はわりと細長い(h)。
 胞子紋をカバーグラスに取り、そのままひっくり返してスライドグラスにかぶせて覗いた(i)。次に水でマウントしてみた(j)。いずれからも表面に顕著な疣が多数あることがわかる。しかしコントラストが弱くとても見難い。そこでフロキシンで染めてみた。最初表面付近に焦点をあわせると疣が明瞭にわかる(k)。次に輪郭部に焦点を合わせた(l)。

2003年7月19日()
 
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 日光では相変わらずタモギタケ(a)があちこちで大きな群れを成していた。ホシアンズタケ(b)もまだまだ最盛期であり、車窓からでもいくつも見ることができた。タモギタケとホシアンズタケは最近はほとんど採取しないが、昨日は久しぶりに少し持ち帰った。(a)、(b)は持ち帰った株で、ともに夕食の具に化けた。このホシアンズタケ(b)は変則的な発生形態をしていた。
 ハナビラタケ(c)も大小いくつか出会ったが、それらのうち小さなものを1個体だけ持ち帰った。アンズタケ(d)、ハンノキイグチ(e)、ヤマイグチ(f)は発生量が多いようだ。薄暗い斜面に白く大きなオオイチョウタケ(g)が列をなしている姿は異様だった。大きなものは傘径25〜30cmほどにもなる。テングタケ科のきのこもいろいろ出ていたが、テングタケ(h)が最も多く見られた。ベニテングタケは今年はまだ見ていない。
 異臭につられて朽木に近寄ってみると黄色型のサンコタケ(i)がいくつかでていた。暗くて撮影はとても面倒だった。そのすぐ近くに小さな虫草のようなものがみられた(j)。掘り出してみるとクビオレタケの仲間らしき冬虫夏草がでてきた(k, l)。最初に見つけたもの(j)は三つ並んだ写真(l)の真ん中の個体だ。この3個体を掘り出していたために30分ほどを無駄(?)にしてしまった。

2003年7月18日(金)
 
(a)
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(b)
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(e)
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(f)
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 内房の浜では新鮮なケシボウズタケばかりではなく、思いのほか多くのキノコが砂浜にみられた。カヤネダケスナジクズタケ、フミヅキタケ属、コガサタケ属、ヒトヨタケ属の小型菌など10種を下らなかった。コウボウムギやら背丈の小さな海浜植物しか生えていないような水際に近い砂地であっても、それらを分解する菌がいて不思議は無い。
 ナガエノホコリタケのミイラ化したものは相変わらずほとんど姿を変えることなく残っていた。コケでも生えたかように頭部が緑色になったもの(a)、頭部がペシャンコになってしまったもの(b)などが多く、柄もすっかり硬い繊維質になっていた。風化にはかなり強いようだ。
 これまで水際にきわめて近い砂浜で大型菌を見たことは無かったのだが、白い大型菌がでていた(c)。掘り出してみると柄がとても長く、薄い膜状のツバがヒダをすっかり覆っていた(d)。切ってみるとひだは淡ピンク色だった。数時間後にはすっかりヒダを現して色も紫褐色に変わっていた(e)。胞子(f)、ヒダ・傘表皮の組織などからみても、これは普通のハラタケのようである。

2003年7月17日(木)
 
(a)
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 ケシボウズタケの仲間が新たに発生し始めた。千葉県の内房の浜を歩いているとケシボウズが1本だけ黄褐色の胞子にまみれた姿をさらしていた(a)。よくみると前年度のミイラではない。砂を掘ってみるとやや赤茶色のササクレを帯びた柔らかな柄が現れた(b)。他にもあるはずだと思って周囲を探してみたが、それらしきものは全くない。
 10数メートル離れた場所にわずかに砂の盛り上がりがみえた。一部にはウサギの糞のような形の盛り上がり方をしている。砂を軽く払いのけ、手前側の砂を少しどけてみるとウサギの糞ではなかった(c)。霧吹きで水洗いしてみるとケシボウズの姿があらわれた(d)。
 頭部の径15〜18mmの子実体がいくつも群がっている(e)。掘り出してみると柄の長さ45〜55mmほどの子実体がでてきた(f)。柄は柔らかだがとてもしっかりしている。砂が丸い塊の集合のようになっている部分がいくつもあった(g)。これはまだ若いケシボウズだった。掘り出してみると頭部の周囲も菌糸に被われている(h)。柄の根元はやや太くなっていて細かな根状菌糸束におおわれている。これらの頂孔部はまだ開いていなかったが、孔口は筒状ではなく繊維質房状である。
 掘り出したものを縦切りしてみると真っ白な柄とまだネバネバしたグレバが現れた(i, j)。頂孔の開いた個体ではグレバは黄色〜黄褐色の粉状になっていた。なおこの切断個体(i)は、切るときに根元部分を誤ってちぎってしまったので、根状菌糸束の部分は失われている。
 帰宅後とりあえず弾糸と胞子を確認し、胞子だけ撮影した(k, l)。表面に焦点をすえたもの(k)と、輪郭部に焦点を定めたもの(l)を掲げた。弾糸、孔口、外皮、内皮、柄などの様子から判断すると、これはナガエノホコリタケ(ナガエノケシボウズタケ)としてよさそうだ。
 しかし7月中頃というこんな早い時期にケシボウズの発生を確認したのは初めてだった。茨城、いわき、静岡、愛知、新潟の海でも出始めているのではあるまいか。

2003年7月16日(水)
 
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 仕事で東松山まで行ったので近くの武蔵丘陵森林公園を歩いてきた。夏のきのこが色々出ていた。特にテングタケ類とイグチ類に多くの種類がみられた。検鏡する暇もないしサンプルを持ち帰るつもりも無かったので、頻繁に出会ったきのこだけを撮影した。
 最も多く出会ったきのこはタマゴタケ(a〜c)だった。テングタケ、ツルタケ、ガンタケ、コテングタケモドキ、ヘビキノコモドキ、フクロツルタケ、ドウシンタケなども見られたが、白色系のテングタケ類にはあまりおめにかからなかった。わずかにドクツルタケらしきものをみただけだった。
 イグチ類ではあちこちで見られたのがニガイグチモドキ(d, e)とコウジタケ、アシベニイグチだった。他にもクリイロイグチ?、アワタケ、キッコウアワタケなどがみられた。
 芝や草地にはいたるところにカレバキツネタケ(f)、ムジナタケ、イタチタケ、紫色の小さなイッポンシメジ科(Entoloma)などがみられ、切り株のあちこちにはナラタケモドキ(g)がでていた。アラゲカワキタケ?(h, i)が何ヶ所にもみられたが、傘表面の毛が短く圧着状態のものが目立った。やや暗い腐ったような朽木からはベニヒダタケ(j)、ダイダイガサ(k)が遠めにも鮮やかだった。
 ベニタケ科、フウセンタケ科のきのこは一切見なかったことにして通り過ぎた。2時間ほど歩いて約50〜60種類を数えたが、最終的に持ち帰ったサンプルは4種類だけだった。

2003年7月15日(火)
 
(a)
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(e)
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(f)
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 一昨日の日曜日(7/13)、埼玉きのこ研究会の例会が秩父地方の美の山で行われた。それによれば、ずっと雨が降っていたにもかかわらず、きのこの姿がとても少なかったという。このところの梅雨らしからぬ低温が影響しているのだろうか。自宅団地でもきのこがとても少ない。
 今朝は自宅周辺で早朝採取したモリノカレバタケを検鏡した。モリノカレバタケは今の時期かなりの頻度で見ることができる。胞子(a)は水でマウントするとコントラストが弱く目が疲れる。メルツァーで染色してもアミロイド反応は見られない。ヒダの幅が狭く密集しているので切片(b)を切り出すのは面倒だ。きれいな切片を切り出せたことはこれまで一度も無い。(b)の切片ではヒダ実質部にかなりの気泡が入り込んでしまった。ヒダ実質は平行に菌糸が走っている(c)。その部分を倍率を上げてみると、いたるところにクランプが見える(d)。担子器(e)は小さいので、肉眼ではうまく捉えられても、撮影はなかなか上手くいかない。傘の表皮をピンセットでつまんで薄くはがし、それを薄切りにして見た。傘の上皮組織はかなり複雑にもつれ合っている(f)。
 昨日の雑記でキヌガサタケの成長の断片を取り上げたが、過去何度かタマゴを自宅に持ち帰り成長の様子を観察している。「きのこの話題」の「キヌガサタケの成長」には2000年7月13日撮影したものが掲載されている。

2003年7月14日(月)
 
(a)
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 昨日は秩父地方の長瀞町で延べ5時間ほどキヌガサタケの成長を観察して楽しんだ。am6:30には既にタマゴの状態のものは無く、かなり成長をし始めていた(a)。到着したときには曇り空であったが、途中で土砂降りの雨になり、やがて再び曇り空になった。
 (a)〜(d)は最終的に大きなマントを広げるまでの撮影データの一部である。昔マリリンモンローが風の悪戯に対して両手でスカートを押さえているという有名な場面があったが、それを思い起こさせるような姿で成長を続ける個体があった。(e)がそれだが、すっかり成長すると(f)のような姿になった。(g)はそれらとは別の位置に出ていたものだが、途中の雨で頭部のグレバが溶け出して真っ白なレースに黒いシミをつけていた。キヌガサタケのすぐ脇に転がった竹幹を見ると径1.5〜2mmほどのサイズのタマハジキタケがいくつもみられた。他にも竹林にはいくつかのきのこが見られたが、撮影も採取もしなかった。とても楽しい一日だった。
 きのこは何も持ち帰らなかったので、帰宅後は安心してビールを飲んで好きな音楽を聴きながらのんびりした休日を過ごすことができた。同定を依頼されたサンプル、チェックを依頼された原稿類などはたまっているが、昨日は久しぶりに何もしなかった。

2003年7月13日()
 
(a)
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(f)
(g)
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(h)
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(i)
(i)
 川越の保護林で採取したヤマイグチのミクロの姿を覗いてみた。胞子(a)は傘を2時間ほどカバーグラスの上に伏せて採取したものだ。
 最初管孔面に水平に切片を切り出した。やや水っぽく柔らかいサンプルだったので、カバーグラスを載せると、すぐにひとつひとつの管孔がバラバラのリングに分かれてしまった(b)。ほんのわずかでも厚いと、カバーグラスをかぶせたとたんにメディウスの帯のようになって捩れたり潰れてしまう(c)。管孔リングの内側を拡大してみると、側シスチジアを帯びた子実層が見える(d)。担子器はいずれも2つの担子柄を持っている(e)。4担子柄をもったものがないか探し回ったが、すべてが2担子柄のものばかりだった。
 次に管孔面に垂直に切片を切り出した。管孔部の実質は管孔に平行(f)に走っている。ヒダを持ったきのこでいえば平行型である。そして先端には側シスチジアとほぼ同じような形とサイズの縁シスチジアがみられる(g)。担子器を一回り大きくしてやや太めにしたようなサイズだ(h)。傘表皮(i)は細胞状被で、類球形の細胞が連なっている。
 採取時、ヤマイグチにしては傘表面がややヌルっとしているなと感じたが、雨のせいだと思っていた。それで昨日の雑記ではヤマイグチとして掲載したが、どうやらこれはスミゾメヤマイグチのようだ。傘表面に粘性のあることやシデの樹下に出ていたこともそれを裏付ける。保育社の図鑑などの記述と比較すると胞子サイズがやや大きめだが、まず間違いなさそうだ。
 それにしてもイグチ類の柔らかい生標本から薄い切片をつくるのはとても難しい。乾燥標本だったら薄切りは楽だが、生だと非常に苦労する。そして、剃刀もすぐに切れなくなり、数回使っただけもうナマクラになってしまう。やはりイグチの検鏡サンプルは、定石どおり半乾燥あるいは乾燥状態にしてから、切片作りをするのが賢明というものだろう。

2003年7月12日()
 
(a)
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 最近の雨と気温の急上昇のためか、川越を初め狭山、所沢、三芳などの雑木林では急に多くのイグチ類、テングタケ類がでてきた。昨日も目移りがするほど多数のイグチにであった。
 三芳町、川越市の保護林にはムラサキヤマドリタケ、ヤマドリタケモドキ(a, b)、クリイロイグチ(c, d)、ミドリニガイグチ(e, f)、ヤマイグチ(g, h)などが多数出ていた。(g)のヤマイグチは一つの傘を2本の柄で共有していた。テングタケの仲間も十数種類を数えたが、中でも目立ったのはフクロツルタケ(k)、オオツルタケ(l)であった。いずれの樹林でも頻繁にであったのがキイボカサタケ(i, j)である。あちこちで大きな群落をなして出ていた。
 
         
(ma)
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(mb)
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(mc)
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(md)
(md)
(me)
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(mf)
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 今朝は川越の雑木林から持ち帰ったムラサキヤマドリタケを覗いて楽しんだ。胞子(ma)は典型的なイグチ型をしている。小さな穴から構成されている管孔部(mb)を薄切りにして、その一つを見ると管孔壁から細長い菌糸が多数孔の中央に向かって伸びている(mc, md)。若い菌では、この細長い菌糸で管孔部がすっかり被われている。今朝見たのは成菌なので菌糸は短く管孔壁の周辺にしかみられない。子実層の部分を拡大してみると担子器が密集して並んでいる(me)。傘表皮の組織は面白い姿をしている(mf)。観察済みのきのこはそのまま捨ててしまった。

2003年7月11日(金)
 
(a)
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 昨日午前中河口湖周辺を歩いてきた。樹林に入ると大きなウスタケの群落がとても美しかった(a, b)。大きなモミの樹の根元のハナビラタケ(c, d)は、遠くから見てすぐわかった。多数みられたアミタケとこのハナビラタケは夕食のおかずになった。
 テングタケ科のきのこはタマゴタケ、ツルタケ、アカハテングタケ、フクロツルタケ、コガネテングタケなどが出ていた。イグチ類は発生が悪いのか、コウジタケ、クリイロイグチ、アミタケ、キイロイグチくらいしか出会えなかった。アミタケ以外は一つも持ち帰らなかった。
 特に種類も多く発生頻度も高く目立ったのがアカヤマタケ属(Hygrocybe)のきのこだった。ベニヤマタケ(e〜g)、アカヌマベニタケ近縁種(h, i)、トガリワカクサタケ(j, k)、ワカクサタケ(l)、アカヤマタケなど8〜10種を数えた。期待の盤菌類はわずかしか出会えなかった。
 ここ数日の目の酷使と寝不足のせいだろうか、ドジの連続であった。撮影は大幅にしくじる、採取した袋を現場に忘れる、サンプルをリュックで押しつぶしてしまうという有様だった。

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