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2004年9月20日()
 
どこかで見たような写真
 
 昨日、知人から「ある掲示板に、どこかで見たような写真がアップされていた。調べてみると『キノコのフォトアルバム』に掲載されている写真だった。知っていますか?」とのこと。
 指摘された掲示板をみると確かに「アルバム」に掲載の写真である。投稿者により直接アップされ、出典の明記などはされていない。掲示板運営者の意図がどうであれ、「写真だけで種名を議論する」場で勝手に利用されるというのはあまり愉快なことではない。
 相変わらず、無断引用、無断盗用が横行しているようだ。これまでも何度か「『きのこ雑記』の××の写真は他人の撮影・アップしたものを無断で使っている。埼玉きのこ研究会の浅井はけしからん。」という根拠の無い非難メールをもらったことがある。
 法律論を持ち出すまでもなく、他人の撮影した写真や文章を使うならば、せめて出典くらいは明示すべきである。それがモラルというものだろう。余談であるが、「きのこ雑記」の運営者は、[埼玉きのこ研究会] の会員ではない。住まいが埼玉県にあるだけである。

2004年9月19日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
 久しぶりにさいたま市の見沼地区に行ってみた。ウッドチップには、早朝出たと思われるお馴染みのヒトヨタケ属のきのこ数種類と、ツブカラカサタケ近縁種(a, b)がやたらに目立った。ハラタケ科のきのこ(不明種)も多数みられた(c, d)。しかし、いつもならあちこちに新鮮な姿が見られるフミヅキタケ属やコガサタケ属のきのこはほとんどすべてが干からびていた。
 竹林ではドクカラカサタケ(e, f)が数日前に最盛期だったらしいが、今朝は大部分がナメクジに囓られて惨めな姿をさらしていた(f)。腹菌類ではツマミタケ(g)、キツネノタイマツ(h)、ハタケチャダイゴケ、ホコリタケの仲間などがみられたのみであった。なお、ウッドチップ以外の場所にはほとんどきのこが見られなかった。
 明日は高尾山できのこ観察。きのこの発生状況はどんなものだろうか。

2004年9月18日()
 
(1)
(1)
(2)
(2)
(3)
(3)
(4)
(4)
(5)
(5)
(6)
(6)
 今月はじめ頃、胞子をつけ基部まで写った担子器の姿をアップした(雑記2004.9.5)。自分の顕微鏡は性能が悪いから、担子器の全体像などは見えない、高性能の顕微鏡を使えば、誰にだってこの程度の映像は簡単に撮影できるはずだ。そういう内容のメールをいくつかいただいた。

 きのこ図鑑などには担子器の全貌が描かれている。こういった図をみると、顕微鏡下ではきっとそういった姿を見ることできるのだろう、そう思っても不思議はない。しかし、胞子や担子器などの大きさに比較して、顕微鏡で焦点の合う範囲というのはとても狭い。
 顕微鏡できちんと焦点があって見える範囲を表す言葉に、客観的焦点深度、主観的焦点深度というものがある。焦点深度の「客観的」とは純粋にレンズの焦点が合う範囲、「主観的」とは人の目の補正能力によって焦点が合う範囲をいう。目で見ている時には、この両者の和が焦点深度として現れる。

 図(1〜6)の(a)は客観的焦点深度であり、(b)は両者の和である。レンズが高倍率になるほどこの幅は狭くなる。目で見ているときには、(b)の厚みまではほぼきちんと焦点があっているように見える。しかし、カメラで撮影するときに焦点が合うのは、この(a)の範囲だけである。ただ、(b)の範囲まではやや甘いがほぼ焦点があっているように見える。
 一方、スライドグラス上でマウント液中に浮いている担子器などは水平状態を保っているわけではない。大部分は傾いた状態ではないだろうか。水平状態でなおかつ他の組織と重なり合わない状態のものは意外と少ないのではないだろうか。
 きのこのヒダなどから最初に切り出す切片が厚いと、組織が何重にもかさなりあって、特定の担子器だけに絞ってみることは難しい。また、厚めの組織をそのまま押しつぶしてしまうと、形は崩れるし、ごちゃごちゃして目的のものを捉えるのが難しい。
 薄い切片を作っても、マウント液の中では多くの担子器は水平を保っていない。だから、頭部に焦点を合わせると(1, 4)基部はボケるし、基部に焦点を合わせると(2, 5)、頭部はボケてしまう。うまく(3)や(6)のような状態のものを見つけることが最初の仕事になる。ところがこういった状態のものは非常に少ない。
 先の担子器の写真は図で言えば(6)のケースということになる。よほど運が良くないとこういう状態の担子器をて撮影できるチャンスというものは少ないのではないか。なお、図(1)〜(6)で「スライドグラス」として図式化したのはガラスの表面付近だけである。

2004年9月17日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 水曜日(9/15)の富士山はきのこがとても少なかったので、ほとんどカメラの出番はなかった。そんな中でかろうじて撮影したのがホウキタケの仲間2種類であった(a, d)。(a)は乾燥気味で分枝の先端がやや干からびている。胞子の表面には縞模様がある(b)。担子器は枝の先端近くまでかなり数多く見られる(c)。もう一つのホウキタケ仲間(d)は、まだ全体に若く、胞子も未熟で数もとても少ない(e)。担子器の姿は明瞭にとらえられるものがあまりなかった(f)。なお、両者とも胞子などはコットンブルーで染めた。久しぶりにスライドグラスをライターであぶった。ホウキタケ類については文献をほとんど持っていないので、種の同定作業などにはいたらなかった。

2004年9月16日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
  (h)
(h)
(i)
(i)
←アカハテングタケ?
 つい数日前まで、あちこちでドクツルタケ、ツルタケ、タマゴタケ、ウスキテングタケ(a〜c)、テングツルタケ(d〜e)、ヘビキノコモドキ(g)などが広範囲にみられた。しかし、今朝はそれらの痕跡すらない。今朝は、のんびりとテングツルタケのアミロイドの胞子を眺めているうちに、出勤の時間になってしまった。とても色鮮やかなピンク色のAmanita(h, i)にいくつも出会った。いずれも幼菌なのか胞子紋はまったく採れず、ヒダをスライドグラスに押しつけてみても胞子らしき姿ははっきりしなかった。アカハテングタケの若い菌なのだろうか。

 昨日きのこ屋(高橋 博)さんと一緒に富士山の山梨県側を歩いてきた。きのこの影は非常に少なく、鮮度の悪い状態の個体ばかりが目に付いた。地元の人や、常連などの話では、その前の週の発生状況とは雲泥の差とのことだった。カメラの出番はほとんどなかった。

2004年9月15日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 千葉県の大多喜町で多数みられたイグチについてのメモである。ちょっとみたところではニセアシベニイグチによく似ている(a, e, g)。裏側をみたところ垂生ではなく直生気味である(b)。孔口部に触れると青変するが、青変性は弱くジワジワと変わっていく。切断してみると傘肉はすみやかに青変する。柄の部分は上部がわずかに青変するが、下部は色鮮やかな黄色のままで青変することはない(c, f, h, i)。
 これらはてっきり同一種だと思って同じ袋に入れて持ち帰っていた。外見から見る限りいずれも全くの同一種に見える。しかし、いくつかの個体の胞子をみて驚いた。親子ほどに胞子サイズが異なるものが混在している(d, j)。しかも透明で大きな胞子と黄褐色で比較的小さな胞子である。外見のよく似た別種をいっしょくたんに持ち帰ってしまったようだ。

 ホームページ「きのこ屋」(高橋 博氏)の「日記 (9月/14日)」に以下のような記述がみられる。一時的な気の迷いによる酔っぱらい書き込みかもしれないが、全く同感である。
「画像が投稿できる掲示板というものが出てきた当初、「これは便利そうだ」と思った。言葉だけより写真があったほうが分かりやすい。きのこの情報交換にうってつけ、のように思われた。が、それは幻想だった。近頃のきのこ関係掲示板を見ると、「このきのこの名前を教えて」という安易な投稿が非常に多い。季節柄きのこが多いのと、デジカメとインターネットが普及したせいだろう。しかし、特徴を捉えた写真は稀であり、ピンぼけのこともある。そんな写真で何が分かるというのだろう。かりによく撮れた写真であっても、写真だけで種名まで分かるきのこというのはむしろ例外的である。そもそも実物を手にとってみても分からないきのこのほうが多いんだから。  (中略)   掲示板を見ることじたいが、精神衛生上よろしくない。というわけで、私のブックマークからは2つの掲示板が消えた。」
 きのこ関連の掲示板を含めてネット上の掲示板というものはほとんど見ない。そんなこともあり、これまで掲載していた掲示板の項目を「きのこ雑記」のリンクから削除した。

2004年9月14日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 きのこ最盛期のこの時期、目立ちにくい小さなきのこは忘れられがちである。大型で形の整った食菌が多数出るので、ついそればかりに目がいってしまうだ。小さなきのこや非食きのこは、その存在すら気づかれるない。ニオイワチチタケ(a, b)もそんなきのこの一つだろう。雑木林をよく見るとあちこちに出ている。顔を近づけるとカレー粉のような独特の強烈な匂いを感じる。
 胞子はこの属独特のアミロイドの模様を持っている(c, d)。たいていは縁シスチジアを観察することができる。側シスチジアを持つ個体もあるが、時には両者とも持っていない個体もある(e)。倍率を上げて担子器(f)を見ながら、何枚もヒダを切り出してはシスチジアを探したがこの個体には全く見られなかった。

 先週月曜日に自宅サーバーがダウンし、「きのこ雑記」の写真にいくつものリンク切れが生じることとなった。原因は5年前に調達したマザーボードの障害だった。時間がとれずしばし放置していたが、昨日マザーボード、メモリ、CPUの3点を購入してサーバーを復活させた。〆めて3万円の出費である。やっとサーバーが復活し写真のリンク切れが解決した。

2004年9月13日(月)
 
菌類の多様性と分類
 
 菌学教育研究会による平成16年度自然史セミナー「菌類の多様性と分類」講座の詳細が発表された。それによると11月27(土)〜12月5日(日)の期間にわたって、顕微鏡の使い方、菌類概論、チャワンタケの分類、ケカビ目の分類、ハラタケ目の分類、植物寄生性分生子果不完全菌類と子嚢菌類、山口県のきのこ、都会でキノコを楽しむ、といったテーマが並んでいる。今回の講座からは、できあがったばかりの筑波の研修棟が会場となる。今日のタイトル部分をクリックすると詳細を記したPDFファイルが表示される。なお、照会先は下記の通りである。
※PDFファイルを読むにはAdobe Reader(無償)が必要です。

問い合わせ先
〒187-0032 東京都小平市小川町2丁目1299-49
菌学教育研究会事務局 布村公一 п彦AX 042-343-6836
E-mail:BZG22155@nifty.com

2004年9月12日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 千葉県の内陸部ではオニイグチが整然とした姿をみせてくれた(a, b)。何度試みてもこのきのこの写真撮影はうまくいかない。レフ板を使って足元も明るくしたつもりだったのだが、できあがりを見るとやはりダメであった。真っ白なドクツルタケなどもそうだが、このようにほとんど黒色のきのこをうまく写すには何か工夫が必要なようだ。胞子表面には明瞭な網目状の隆起模様がみられる(c, d)。シスチジアはかなり大きい(e)。担子器は透明であり、染色しないと見づらい。

 日本菌学会関東支部と千葉菌類談話会共催で行われる菌類観察会(10月10日(日)〜11日(祝):千葉県天津小湊町 東京大学農学部千葉演習林)の締め切り(10月 9月15日)が近づいた。鑑定には豪華な顔ぶれが揃う予定。まだ定員枠にはアキがあり、申し込むなら今のうちだろう。

2004年9月11日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 一昨日と昨日の2日間にわたって千葉県の内房から外房へと浜辺を歩いてきた。きのこの姿は非常に少なく、内房の浜でナガエノホコリタケ、外房でスナジクズタケカヤネダケなどが見られただけだった。スナヤマチャワンタケには一つも出会わなかった。九十九里浜では最近発生したと思われるケシボウズタケには一つも出会わなかった。
 内房の富津市ではいくつかの地点のうち一つの場所でだけ、最近発生したと思えるナガエノホコリタケがみられた(c)。ウサギの糞のようにまるく膨らんでいる(a)場所を探しては掘り出してみると、数ヶ所でナガエノホコリタケがでてきた(b)。
 幼菌を切り出しては胞子を伴った状態の担子器を撮影できないものかと悪戦苦闘した。あまりに小さな真っ白な個体(d-イ)では、まだ全く胞子ができていない。内部がやや茶色を帯びた若い個体(d-ロ)では多数の担子器(と思える組織)が見られる(e)。しかし、いずれも胞子が担子器から分離している。担子器の姿を撮影することは放棄したが、イメージとしては写真(f)が近い。棍棒状の担子器に座生ないし短い担子柄を経て胞子が4つ付いている。
 なお、海辺ではほとんどきのこが無かったが、内陸部の丘陵地帯にはテングタケ科、イグチ科のきのこが種類・量ともに多数みられた。

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