Top  since 2001/04/24 back


日( )

2004年3月20日()
 
もっと楽に系統樹
 
 直接パソコンを前にして作業すると簡単なのに、それを表示画面を説明しながら文字で記述すると、なんと面倒くさいことだろう。今回はおもにNBCIとかEMBLなど外国のデータバンクを利用したが、日本のDDBJを利用すればもっと簡単だ。すべて日本語で対話的に作業ができ、比較的楽に分子進化系統樹が得られる。国立遺伝学研究所生命情報研究センターの生物分類同定システム:ワークベンチ InforBIOを使えばさらに簡単だ。
 ただ、こういった作業をするにあたって、自分が何をしているのかについての基本的理解が欠如していると、得られた結果も無意味なデータになりかねない。その意味では、分子系統解析学なり生化学の基礎知識は不可欠といえるだろう。さらにバイオインフォマティックスの基本を理解していないと、見当違いな結論を導き出しかねない。
 それにしても生きのこからDNA/RNAを抽出して塩基配列データを得る部分は、アマチュアにとってはかなり高いハードルだ。専門の業者に依頼したこともあるが、高価であり、発注にあたっては専門知識も必要だ。この部分はプロの菌類関係者との共同作業にするのがよいと思っている。学問的に価値のあるものならプロは喜んで協力してくれる。
 今後はアマチュアでも新種記載をするとか、新産種の記載内容を充実させようと思えば、DNA解析データは避けて通れない。時代がそれを要求する。

2004年3月19日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 岡山に転勤になったS氏から新鮮なきのこがいくつか届いた。ご愛敬にクリタケなども一緒にいれてあったが、ハゼの実(b)から出たキンカクキン(a)とベニヤマタケが春の到来を告げていた。今朝は久しぶりにキンカクキンを顕微鏡で覗いてみた。
 山口県のマツ、コナラ主体の雑木林で3月14日に採取したというキンカクキンはとても小さい。子嚢盤の径は0.3〜1.2mmほどしかない。ルーペで見ると托外皮層と柄には細かな毛が無数に出ている(c)。久しぶりに子嚢盤の一部を切り出してみた。全体が透明で見にくかったが、メルツァー液を加えるとみるみるうちに褐色になった(d)。
 子嚢頂孔は鮮やかな水色に染まるが、托外皮を被う細毛はメルツァーでは染まらない(d, f)。この細毛の表面は短い絨毛のようなものに被われている。S氏のコメントにもあったが、ハゼもウルシと同じ科に属する樹木なので、ウルシの実から発生するキンカクキンと同じものかもしれない。この仲間は培養してアナモルフを確認しないと同定は難しい。今朝は種の同定にかかわる試みはいっさいしなかった。「系統樹」の残りはいったん棚上げだ。

2004年3月18日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 ClustalWには多数のパラメータがあるが、今回はほとんどデフォルトのままとした。配列データはファイルからアップする方法と、指定画面にペーストする方法がある。データ量が少ない場合はペーストするのもよいが(a)、量の多い場合はファイルからアップするのがよいだろう。
 データの準備ができたので、いよいよ [Run] ボタンをクリックする。すると受付けた旨の表示とパラメータ一覧が表示される(b)。そして、「Your job is currently running... please patient」と表示された画面(c)に変わる。patientとあるように、これはかなりの時間がかかる。今回はしくじってデータ量が数百件となってしまったので、3〜4時間ほどかかってしまった。
 数時間後に指定のURLにアクセスするとClustalWの解析結果が表示されていた(d)。この画面でGuide tree fileに指定された拡張子dndのファイルを系統樹作成に使う。今回は系統樹の表示ソフトとしてTreeViewを使った。解析済みのファイルを読み込んで表示させた結果は惨めなものだった(e)。データ量が多すぎて文字がすっかり重なってまるで読めない。本来作ろうと思っていた系統樹(f)はもっとすっきりしたものだった。なお、確からしさの指標であるブートストラップ値は今回作成した系統樹には表示しなかった。
 一般的には、できあがった系統樹をepsファイルに保存し、それをAdobe Illustratorなどのドロー系グラフィックソフトに読み込む。そこで、文字の修正、線の色づけ、ブートストラップ値の表示位置の修正、その他必要な情報付加の作業を行う。

2004年3月17日(水)
 [その2]

 
カラカラ陽気、きのこ無し
 
 昨日、今朝と都内、川口市、さいたま市などのきのこスポットを一通り回った。例年ならば今頃にはアミガサタケ、キンカクキン類、ベニタケ類が見られるはずである。しかしいずこもカラカラ陽気で、何も見られなかった。昨年まで安心してキンカクキンを観察できた紫モクレンはすべて切り倒されてマンション工事現場となっていた。一雨こない限り早朝のきのこ観察は行くだけ無駄であることを再確認した。特に今日は初夏のような気温で風がとても強い。

2004年3月17日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 相変わらず屋外にきのこが出ていないので、今朝もまた系統樹の続きである。調べたいDNA配列と類似配列を持つデータをデータバンクから探し出すのにはFASTAやBLAST(a, b)を使う。これは基本的にデータベースから相同性のある配列を検索するものだ。
 Tulostoma macrocepholaのDNA配列をQueryにしてBLASTで相同性検索をかけた(c)。BLASTだけで十分なのだが、FASTAでも相同性検索をやってみた。両者ともに結果はメールで受け取った(d)ので、そこに記載のデータをデータバンクから抽出しFASTA形式で保存した(e)。これらは昨日からのFASTA形式のRNAデータと一緒にしてテキストファイルにまとめた。
 きちんと根をもった系統樹を作るには、全く近縁関係のない遠いグループ(アウトグループ)を入れることが不可欠だ。欲張ってアウトグループをいくつも入れすぎた。この時点でテキストファイルにまとめたデータは数百件にもなっていた。やや気にはなっていたが、えぇいかまわん、とばかりにそのまま使ってしまった。
 系統樹を作るためにはClustalWをつかう。多重配列比較(マルチプルアラインメント)をするプログラムである。今日は気まぐれに、NCBIやらDDBJを使って作業をしたが、今度はEMBL-EBIのサイトに行き、ClustalWのSubmission Formのページを開いた(f)。

2004年3月16日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 代表的なDNAデータバンクには、米国NCBIのGenBank、英国のEMBL、日本の国立遺伝学研究所のDDBJがある。この三者は基本的に共通のデータをもっているが、フォーマットが多少異なる。その中でもFASTAフォーマット(e)は単純なテキストで最も広範囲に使われている。
 NCBIのGenBankを使ってみた(a)。Databaseでtulostomaを検索してみると、アミノ酸(Protein)データはゼロだが、核酸(Nucleotide)のシークエンスデータが7つあるという(b)。Nucleotideをクリックするとアクセッション番号(Accession)が7つ並んだ。今回は18SrRNAデータを使うことにして、選んでみると2つある。AF097752 T. beccarianum(c)とAF026625 T. macrocephala(d)である。
 この2つに印をつけてから、あらためてSummaryからFASTAフォーマットに変更して、再び表示させてみた。今選んだ2種のRNA塩基配列がビッシリ並んでいる(e)。伝統的に近縁とされてきたBattarreaのデータも同じようにして引っ張り出した(f)。これらのデータをマルチプルアラインメントで比較して、その結果から系統樹を作ろうというのだが、今日はこれまでにしておこう。
 それにしても、やはり特殊な用語の使用が避けられない。塩基配列、シークエンス、FASTA、アクセッション、マルチプルアラインメント、18SrRNA 等々。いずれも生化学・分子生物学などの基本的なもので、いわば「シスチジア」、「担子器」ほどにポピュラーな用語だ。

2004年3月15日(月)
 
自分で系統樹を作る
 
 ゼミ資料に使うつもりでケシボウズ(Tulostoma)をメインにした系統樹をつくった。最初に欲張ってあれもこれも比べてみようと、カンゾウタケやらクチベニタケをはじめ、多数の担子菌・子嚢菌のデータを放り込んだ。そのあげくは数が多すぎて失敗した。文字や分岐線が重なってしまいまるで読めない。後日のために失敗の経緯を数回に分けて記録しておくことにした。
 DNA塩基配列のデータから系統樹を作ることは、難しくてアマチュアには無理だという誤解があるようだ。狙い通りにものを作ろうと思うなら分子生物学の基礎的な知識は不可欠だが、とりあえず「それなりのもの」を作るのなら簡単だ。インターネット接続環境さえあればよい。
 DNA/RNA塩基配列の解析方法にはいろいろあるが、基本は生物学/化学の基礎知識と配列の比較を組合せたものだ。配列の類似性からタンパク質の類似性が推定され、さらには機能や構造も類似しているだろうとの仮定に基づいている。
 配列の相同性を比較することで、進化的関連性の解析を推定しようとする試みは、系統樹という形にすると理解しやすい。最近では、形態による分類とDNA解析結果による分類とは車の両輪と位置づけられている。その結果、Dictionary of the Fungiも第8版と第9版とでは、ずいぶんと大きな変化があった。明日はDNAデータバンクにアクセスするところから始めよう。

2004年3月14日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
 関東地方では、今年のアミガサタケは全般的に小振りのようだ。昨日さいたま市で観察したトガリアミガサタケ(a〜d)は、いずれも例年の同時期のそれよりもかなり小さい。さらに発生数もとても少ない。やはり少雨がかなりたたっている様子だ。発生そのものは2月25日と早かったが、その後の成長はあまり芳しいものではない(雑記2004.2.25)。
 昨日撮影していると、すぐ近くでポリ袋をもった老紳士がしきりにアミガサタケを採っていた。小さなものばかりだ。小指の先ほどの小さなものも手当たり次第に採る。たずねてみると、「孫への土産だよ。いつも3月10日ころにくるんだ。今年は少ないね。」という。
 ここ数年発生数が急激に少なくなったと感じていたが、何となく納得したような気持ちになった。撮影した個体はいずれも落ち葉の下に隠れていたものばかりで、大きなものでも8cmほどしかない。ちなみに、川口市ではまだ全く見ていない。

2004年3月13日()
 
メールアドレス sarcodon
 
 今さら変更するつもりもないが、やはりメールアドレスの選択を誤ったと思う。@マークの直前に来る部分の文字、つまり現在使っている sarcodon のことである。このために、主たる関心がコウタケとかイボタケであるかのように思われてしまった(ように思う)。
 第一から第三希望までを列挙して、それらの中からまだ使用されていないものを割り当てる。それが加入プロバイダのメールアドレス割当のやり方だった。この記述を誤ったわけである。
 当初、第一希望 tulostoma、第二希望 queletia、第三希望 sarcodon として希望をだした。まさか tulostoma がはねられるとは考えてもおらず、第二、第三希望は場当たり的にかなりいい加減に書いて出した。ちょうどこの日は、採取したばかりのコウタケ(Sarcodon aspratus)が目の前にあったので、何も考えず第三希望欄に書いた。ところが、同じプロバイダですでに tulostoma、queletia を使っている人がいた。結果割り当てられたのが、sarcodon だった。
 菌懇会では分野別研究担当制をとっている。今さら嘆いてみてもはじまらないが、気がつくとイボタケ科にしっかり組み込まれていた。

2004年3月12日(金)
 
(a)
(a)
-→ほぼ10日後-→
(b)
(b)
 昨日は福島県で一面雪に覆われた石灰岩台地を歩いてきた。目的のきのこについては何ら成果が無かったが、久しぶりに懐かしい顔にであったり、菌友との歓談を楽しむことができた。それにしても暖かいを通り越して暑いくらいの一日だった。雪の山ではしおれたシイタケやら面白い姿をしたクロコブタケなどにであったが、結局一枚も撮影はしなかった。
 去る3日に栃木県葛生町でツバキキンカクチャワンタケ(a)を採取したが、翌朝検鏡した後は、採取時の容器、タッパウエアに入れたまま放置してあった。今朝その蓋をあけてみると、大型個体はややしなだれたような姿になっていた。しかし、他の普通サイズのものはいずれも深い腕形から皿形になり直径も2割ほど大きくなっていた(b)。以前から何度か感じていたが、フィルムケースなどのように密閉できて湿気が失われない環境におくと、採取後にも成長を続けるようだ。それにしても既にとっくにしおれていると思ったのに、成長までしていることに驚いた。

過去の雑記
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2004
2003
2002
2001