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日( )

2004年12月10日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 砂嵐の跡の防風林内で、松かさから発生しているきのこを何本か採取してきた(a)。外見的特徴から大きく二通りに分けることができる。左側(A)のグループはヒダがかなり密で柄は全体に白っぽく、柄の基部は松かさに潜り込んでいる。それに対して右側(B)グループはヒダは密だが(A)グループほどではない。柄は上部が白く中間から基部に向かって黄色から黄褐色。柄の基部から長い菌糸束が出てその先が松かさに入り込んでいる。
 今朝は(A)グループを見た(b)。松林で見たときは柄がやや褐色を帯びたようにも見えたが、持ち帰ると白っぽくなっていた(c)。ヒダを切り出してみたが、側シスチジアはほとんどみられず、ヒダの先に薄膜で紡錘形のシスチジアがあった(d)。水だけで見たので透明なシスチジアがほとんど写っていない(e)。フロキシンで染めて子実層を見た(f)。胞子は小さく担子器の基部にはクランプはみあたらなかった。ニセマツカサシメジとしてよさそうだ。

2004年12月9日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日早朝、千葉県外房の九十九里浜に行ってきた。12月5日(日)の激しい暴風雨のために、浜の砂が多量に吹き上げられて、新たに5〜10cmほども堆積していた。浜辺のきのこを観察に歩くと、すっぽりもぐってしまい、足跡が深い穴になって残るほどだった(a)。
 定期的に観察していた一帯は無数の波頭を連ねたような砂の造形がみられ、植物の先端だけが顔をだしていた(b, c)。この一帯も歩くと厚くひび割れ、足跡は深い穴となる(d)。ケシボウズや腹菌類は完全に厚い砂の層の下になってしまった。10cmほど掘り下げるとケシボウズの老菌がかろうじて一本だけ見つかった。頭部は砂で押しつぶされていた。
 あきらめて防風林に入ったが、ここも砂嵐が吹き荒れたらしく厚い砂に被われていた。マツカサキノコモドキ(e)もニセマツカサシメジ(f)もすっかり砂に被われていた。観察は不可能と分かった時点でもはやこれまでと、行程130kmを舞い戻り早い時間に帰宅した。

2004年12月8日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 先日の千葉県でマユハキタケの発生地点近くで、倒木に小さな丸いきのこが無数に付いていることに気が付いた。遠目にはまるでチャワンタケのようにみえた。近づいてよく見ると丸く平べったいボタン状のきのこが材にへばりついて多数でていた(a, b)。成菌の径は1.0〜2.5mm(a)、幼菌は淡黄色で径も0.3〜1.0mmほどであった(b)。ルーペで見ると子座に子嚢殼が埋まっているように見える(c)。柄は持たず、厚みは0.2〜0.3mmほどしかない。
 断面をみると、肉は白いが、表面近くに黒くて丸い子嚢殼が見える(d)。薄切りにして低倍率で見ると子嚢殼の中は無数の子嚢に埋まっている(e)。メルツァーを加えると子嚢胞子は緑褐色に染まった(f)。油浸100倍レンズでみると、子嚢胞子表面には微細な疣がみえる(g, h)。胞子は類球形から長円形をしていて、一つの子嚢には16個の胞子が入っている(i, j)。
 どうやらこれは、核菌類の肉座菌の仲間のようだ。目立たない小さなきのこでも、ミクロの世界に入ってみると、興味深いものをいろいろと楽しめる。

2004年12月7日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日の雑記にも記したが、日曜日に千葉県の神社境内でタブノキの根本にマユハキタケが多数発生しているのを観察した。よく見ると、成菌の周辺にはたいてい茶褐色をした径1〜5mmほどの丸いものがゴミのように付いている。マユハキタケの分生子座であり、基部はマユハキタケと同じようなドングリ状の樹幹となっている。
 先日は分生子座も採取してきたが、径1.5mmほどしか無く現地での撮影はできなかったので、帰宅後にルーペを介して撮影した(a)。中央部の裂け目は検鏡するためにピンセットでつまみ取った跡である。大きなものでは径5〜7mmほどになり、小型のノウタケ老菌を思わせる。
 この分生子座にはペニシリン(カビ)に見られるのと同じ形の分生子柄が見られる(b, c)。フロキシンを加えて軽く押しつぶすと視野の中はまるで花が咲いたようになった(d)。一方、完全世代の頭部マユハキ部分は胞子であふれている(e, f)。今回採取した中には子嚢の姿を明瞭に捉えられるものは無かった。今朝は胞子をメルツァーで染めて遊んだ。マユハキタケを覗いたのは実に一年ぶりだった(雑記2003.11.5)。

2004年12月6日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日早朝千葉の浜に定点観察に行ってきた。激しい風のために、浜を歩くことはほとんど諦めざるを得なかった。ふだん歩いている浜は高波と高潮のためすっかり海面下になっていた(a)。砕けた波頭が砂混じりで数十メートルも飛んでくる。砂粒を交えた海水が顔や衣類にぶち当たりとても痛い(b)。数分ほど浜を歩いているだけですっかり濡れ鼠となってしまった。
 やや高台になったところにかろうじて最近発生したナガエノホコリタケが残っていた(c, d)。このあたりも冠水した跡が無惨であった。他のケシボウズ類の発生地点は海面下になってしまったり、高い波浪のために近づくことすらできなかった。数分間カメラを出しているだけでレンズもすっかり濡れていた。濡れに弱いので、故障が心配だ。
 海辺観察は20分間ほどで諦めて、内陸部のタブの森に入った。ここでも樹木が多数倒れ、足下には折れたりとばされた枝が折り重なって、とても歩きにくかった。久しく見ていない内に、新たなマユハキタケが多数発生していた(e, f)。一年ぶりの再会だった。

2004年12月5日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
 11月27(土)から開催されていた今年度の講座「菌類の多様性と分類」が終わった。昨日は最終日で、山口県から山田詳生氏、東京から大舘一夫氏を招いて講演が行われた(a〜d)。それにしても、山口県でのきのこイベントに1,500人もの参加者があることには驚いた。紹介された写真を見るとすさまじい人数が集まっていた。また、大舘氏の会では博物館の実習室を利用して、顕微鏡を使った勉強会を行っている姿なども紹介された。ローカルなきのこの会のあり方を考えさせられた一日だった。懐かしい顔ぶれにも出会え、楽しい一日だった。
 今朝は強い雨風であるが、これから海辺の定点観察である。身勝手なもので、雨は欲しいが観察に歩いている時だけはやんでいて欲しい。

2004年12月4日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
 11月20日に茨城県のひたち海浜公園からウサギの糞を持ち帰り、タッパウエアに入れておいた。湿らせたティッシュペーパーを下に敷き、時々霧吹きで水を補った。糞には採取したとき小さな粒状のふくらみがあり、ハチスタケと思われた。約10日で柄が伸び、頭部は径2〜3mmほどに成長した(a, b)。ティッシュの一部は胞子紋が落ちて黒くなっていた。
 それより前11月14日に川崎市で採取した小さなカキノミタケもかなり大きくなっていた。こちらはフィルムケースに入れて冷蔵庫の野菜容れに保存しておいたものだ。まさかと思っていたのだが、冷蔵庫の中でも成長は続いていた(c, d)。
 ほぼ2ヶ月前の10月2日に福島県で採取したコウボウフデの幼菌も冷蔵庫のなかで成長を続けていた。採取したときはやや長めのタマゴ状だったのだが、すっかり成長して暗緑褐色の頭部を出しはじめていた。頭部を見たが、既に子嚢は全く見られなかった。
 これらのきのこは広く分布し、発生頻度も高いのだが、なぜか希菌とされている。ハラタケ目などのきのこに比較して、寿命も長く冷蔵庫の中でも成長するほどの生命力を持っている。

2004年12月3日(金)
 
アルバムの更新
 
 最近は「キノコのフォトアルバム」の更新をさぼり気味だ。「最新のきのこ」という見出しがあるが、「最新」という看板はおこがましい。最近は月に2度くらいしか更新していないのが現実だ。すでにこのページには数万点の写真データがあり、新たに追加する意味があるのかどうかについては、かねがね疑問を感じている。
 キノコの外見や発生時期などにはかなりの幅あるので、それらを記録しておくことにも意味があるのではないかというのが当初の気持ちであった。絵合わせではなく、検鏡したり必要なら試薬反応なども加味して、間違いないと思った写真だけを掲載してきたつもりなのだが、誤りもかなり混入している。また、見苦しい写真もかなりある。
 しかし、更新をさぼっている最大の理由は、面倒くささである。写真をリサイズして、色々な検索をできるようにリンクを張り、indexも更新するにはそれなりの時間がかかる。アップロードにも時間が必要だ。その時間がなかなか捻出できない。さて、どうしたものか。

2004年12月2日(木)
 
顕微鏡写真とデジカメ
 
 従来は顕微鏡写真を撮るというと、高価な専用装置が必要というのが常識だった。しかも三眼鏡筒を備えた顕微鏡でなければならない。したがって、顕微鏡撮影という行為はアマチュアにとってはかなり敷居の高いものだった。
 しかし、最近はデジカメの普及のおかげでこういった常識は崩壊しつつある。銀鉛フィルムと違って、現像などの経費は考えなくてもよい。したがって、ここ一番という場面に限定して撮影する必要は全くない。多数撮影してピントの合った映像だけを残せばよい。
 気楽に撮れるから、誰にでもすぐに顕微鏡写真が撮れるのかというと、やはりそれなりに条件が必要になる。また、顕微鏡撮影に適した構造のデジカメ、不適なデジカメというのはやはりある。別にNIKONに肩入れするわけではないが、やはり胴体部分が回転するCOOLPIXシリーズが適している。学術論文に掲載する顕微鏡写真としても十分通用する。
 残念なことに、このシリーズのデジカメは既に販売終了となっているので、これを入手するには中古市場に頼らねばならない。できれば、COOLPIX995の後継機を出してくれるとありがたい。形は似ているがCOOLPIX4500は995の後継機ではない。今日は900シリーズ専用の簡易アダプタを注文した(雑記2004.4.29)。数量がまとまると出費が痛い。無駄にならないとよいのだが。

2004年12月1日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
 茨城県つくば市で開催されている菌学講座の前半に参加してきた。北海道から兵庫まで広く各地からの参加者があり、久しぶりに懐かしい顔に出会うことができた。まだすべてが完成してはいないのだが、研修専用棟は広く、一人一人が広いスペースを利用して顕微鏡を使った実習をすることができた。

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