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日( )

2004年9月30日(木)
 
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 昨日千葉県富津市の内房の浜まで300kmほど車を走らせ、砂浜を観察して朝のうちに帰宅した。最近発生したと思えるやや小さな群を2個所で確認できた。今月9月9日にケシボウズの発生を確認した所とは別の場所である(雑記2004.9.11)。
 じっと目を凝らして砂浜を歩いていると、ウサギの糞によく似た丸みがあった。大きさも同じくらいである(a)。周辺を掘ってみると、3〜4つほどが一塊りになったケシボウズが次々と姿をあらわした(b)。頭部の径は15〜20mmほどもあり、相対的に柄が太く短い(c)。それらの多くが、頭部は外皮にすっぽりと被われ、孔口はまだ開いていない。これから柄を伸ばして頭部を地表に突き上げる状態のものと考えられる。
 さらに注意深く周囲をみると、白っぽいものがある(d)。砂をどけていくと幼菌が出てきた(e, f)。さわると硬くて、内部は白くわずかに褐色に色づいている。先日の雑記に掲載したと同じような担子器を確認できた(雑記2004.9.27 [その2])。なお、胞子(g, h)は先にひたち海浜公園で採取したものより一回り大きいが、ナガエノホコリタケとしてよさそうだ。
 同じ浜でこれらの群れとは500mほど離れた位置で、発生から1ヶ月ほど経過したと思われる小さなケシボウズも採取した(i)。頭部の径2〜5mmほどで、孔口は筒状である(j)。前述の大型のケシボウズと並べてみるとまるで、小人国の住民とガリバーのようである(k)。胞子などをみるとケシボウズタケ(Tulostoma brumale)ないしT. kotlabaeなどに近いようだ。

2004年9月29日(水)
 
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 今朝も、先日の日光で出会ったきのこについてのメモ。倒木から妙なきのこがでていた(a)。裏側をのぞき込んでみるとサケツバタケのようなツバをもっている(b)。材からはずしてみるとツバの姿が顕著になった(c)。モエギタケ科のキノコならば、時間が経てばヒダの色が暗紫灰色に変わるが、このキノコは数日後も白いままである。
 胞子紋は淡褐色で、胞子は外壁と内壁に分かれ、水でマウントしたものは鮮明な映像は見られない(d)。メルツァーでは特に変色せず(e)、KOHではやや明るい色になり、発芽孔も明瞭にわかる(f)。胞子紋のあちこちに大きな嚢状の組織が散らばっているのが目立った。
 ひだ実質は並行型で、側には大きなシスチジアが多数見られる(g, h)。組織にはクランプは見つからない。アンモニアやKOHで色の変わるシスチジア(クリソシスチジア)はない。紡錘形のシスチジアはとても大きく組織から容易に外れて落ちてしまう(i)。胞子紋に紛れて多数落ちていたのはいずれも、側シスチジアであった(d, e)。担子器(j)と同じような大きさで、先端が球形になったシスチジアがある。まるでコガサタケ属のシスチジアのような形をしている(k)。傘表皮の組織構造は何度か切り出してみたがよくわからない(l)。

2004年9月28日(火)
 
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 先の日光ではミミナミハタケ属のきのこが何種類か見られたが、調べるのが面倒(?!)なので、持ち帰ったのは2種類だけだった。今朝は残りの1種を検鏡した。先のものとは発生地点がかなり離れており、外観からも別種のように見えた(a, b)。やや長くねじれたような柄を持っている(b)。メルツァー液をたらしても傘、ヒダともにアミロイド反応はみられない(c)。
 切片をメルツァーで染めてもヒダ実質は非アミロイド(d)。若いからなのか一晩かけて落としたはずなのに胞子紋はほとんどとれなかった。やむなくヒダに付いている胞子で確認したところ、メルツァーで灰青色になっている(e)。担子器やヒダ実質部はアミロイド反応は示さない(f)。昨日同様、フロキシンと消しゴムを使い菌糸型を確認した。厚膜の骨格菌糸(g)とクランプを持った原菌糸(h)からなる。これもまた種名の同定までにはいたらなかった。
 なお、フロキシンと消しゴムを使って菌糸型(monomitic, dimitic, trimiticなど)を判定する方法については、昨年9月18〜20日の雑記で詳細に記した(雑記2003.9.18同9.19同9.20)。

2004年9月27日(月)
 [その2]
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 これまで何度かケシボウズタケ属の担子器の写真を取り上げてきたが、いずれもまともに表現できたケースは皆無だった(雑記2003.8.22同2004.6.28)。広く世界に目を向けてもW.C.Coker & J.N. Couch 1928 "The Gasteromycetes of The Eastern United States and Canada" で描かれているTulostoma simulans の担子器が唯一の図である。70年以上前に描かれたものだ。
 ほかにも何点かケシボウズタケ属の担子器を描いた図はあるが、それらのいずれもが構造を説明するための模式図であり、スケッチ的なものではない。公表された写真にいたっては皆無である。先に日本菌学会報45巻(2004年)1号に投稿した「日本産 Tulostoma striatum について」には何点かの写真を載せたが、担子器についてだけは写真ではなく図を使った。どうやっても公表に耐えうるような鮮明な写真を撮ることはできないからである。
 肉眼で微動ノブを調整しながら見ていくと、担子器、担子柄、胞子とそれぞれを鮮明に捉えることができる。しかし、どんなに高性能であろうとも光学顕微鏡で、明瞭に胞子を付けたケシボウズタケ属の担子器の姿を鮮明に撮影することは不可能である(雑記2004.9.18)。しかし、やや不鮮明であることを容認すれば撮影は可能である。
 焦点位置をずらして撮影した7〜8枚ほどの映像データを巧く合成すれば、鮮明な姿を表現することも可能だろうが、ここでは油浸100倍対物レンズでの映像(a〜f)とその一部をトリミングしたもの(a'〜f')をとりあげることにした。あえてしつこいほどに担子器ばかりを並べた。
 いずれも昨日、ひたち海浜公園で採取したナガエノホコリタケの担子器である。もちろん内部がまだ白色の幼菌を使った。大部分は短い担子柄を持つが、中にはかなり長い担子柄を持つものがあることもわかるだろう(f)。ハラタケ目のきのこの担子器とは全く異質の形をしているので、「これが担子器だ」と言われても、「へー、そうですか」としか言いようがないだろう。

2004年9月27日(月)
 
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(e)
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 ひたち海浜公園で砂地生きのこを調査してきた。毎月一度の定例のものだが、昨日は雨と強い風に悩まされた。ケシボウズタケ属、ヒメツチグリ属、ニセショウロ属、ホコリタケ属などそれぞれ数種類の新規発生を確認できた。ヒメツチグリ属は発生の最盛期らしく、新鮮な個体が多数確認できた。他にはツノマタタケ、マツカサタケ、カヤネダケなども見られた。
 ケシボウズタケ属ではナガエノホコリタケ(a〜c)、ウネミケシボウズタケ(e)をはじめ数種類を確認したが、つい最近発生したと思える個体は少なく、少なくとも先月の調査以降に発生したと思えるものだけを10数個体採取してきた。これとは別に全体で10個体ほどの幼菌を採取した。今朝はそれらのうちから、ナガエノホコリタケの胞子(d)、ウネミケシボウズタケの胞子(f)だけをアップした。ウネミケシボウズタケはほとんど地表に出ていなかったので、採取して撮影した(e)。

2004年9月26日()
 
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 今朝は先日の日光で採取したミミナミハタケ属のきのこを検鏡した(a)。現地では明るい色をしていたが、持ち帰って数日冷蔵庫に保管しておいたものは、やや暗い色になり(b)、ヒダも当初の白色から褐色に変わり始めていた(c)。
 傘表皮、傘肉を含めてヒダの一部を切り出してメルツァー液をかけてみた。ヒダ部や傘肉部などにはアミロイド反応は見られない(d)。採取しておいた胞子紋から胞子を見ると小さくてとても見にくい(e)。メルツァー液を注ぐと灰青色に変わった(f)。アミロイドである。ヒダ実質部を拡大してみるがやはり非アミロイドであった(g)。念のために高倍率にして担子器を確認した(h)。なお、ヒダや傘肉部には油脂様の内容物を持った菌糸(gleohypha)がみられる。
 次に切片をKOHでやや浸した後フロキシンを加え(i)、カバーグラスの上から消しゴムでゴシゴシやって、菌糸を解きほぐした。ピンクに染まって隔壁を持つ原菌糸、厚膜で隔壁を持たない骨格菌糸が見られる(j)。二菌糸型(dimitic)である。原菌糸にはクランプが見られる(k, l)。
 ちょっと見た目にはイタチナミハタケのように見えるが、このきのこではヒダ実質が非アミロイドである。したがって、イタチナミハタケとは別種だろう。モノグラフ R. H. Petersen, K. W. Hughes 2004, A preliminary monograph of Lentinellus (Russulales), Belrin, Stuttgart などにあたっている時間はとれなかった。今日はこれから国営ひたち海浜公園で砂浜の菌類調査である。

2004年9月25日()
 
光らないツキヨタケ
 
 昨日(2004.9.24)の読売新聞の夕刊一面に、発光するツキヨタケの美しい写真が掲載された。青森の手塚 豊さんの撮影した写真である。夜、ほのかに青白く怪しい光を放つが、採取して3〜5日ほど経過すると、発光現象が極度に弱くなったり、ほとんど光らなくなる。
 一昨年、日光のミズナラ倒木や立ち枯れから採取したツキヨタケは、持ち帰ったその夜、すでに光らなかった。若い個体から成菌、そして老菌まですべてにおいて発光は全くみられなかった。しかし、深く考えることなくすっかり忘れてしまっていた。
 つい最近日光でミズナラから発生したツキヨタケの大群生にであった。10数個体を採取して、帰宅後直ちに真っ暗な中で確認したのだが、いずれも全く光らない。そこで一昨年日光でミズナラにでていたツキヨタケのことを思い出した。どうやらツキヨタケにも光らないタイプがあるようだ。そういえば、アミヒカリタケにも光らないものがあった。さらに、伊豆半島でかつて採取したシイノトモシビタケにも光らないものがあった。

2004年9月24日(金)
 
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 菌懇会の定例観察会が昨日川崎市の生田緑地であった。このところのカラカラ天気のせいか、きのこの発生はとても悪かった。それでも、背丈40cmにも及ぶハイカグラテングタケ、コトヒラシロテングタケ、コテングタケモドキなどをはじめ、予想外に多くのキノコが出ていた。しかし、それらの多くはやや乾燥気味で撮影に耐えうるものはほとんど無かった。
 はるばる岡山県けからS.Y.さんが、チチショウロ(a)を土産に参加してくれた。20日に岡山県のコナラを主体とするマツ・カシの混生林に切り開かれた法面下部で採取したという。切断するとみごとに白い乳液があふれてきた(b)。舐めて見るとわずかに甘みを感じた。
 実体鏡でみると密度の高い白い泡のように見える(c)。メルツァー液で染めた胞子は疣を帯びている(d, e)。Sさんによれば、熟した個体からはチチタケ類の胞子を思わせる網目状隆起をみることができたという。今回の個体はまだ十分成熟していなかったのかもしれない。
 改めて他の個体を切り出してみた(f)。中には、心持ちチチタケ類の胞子を思わせるような表面模様を持ったものもあった(g)。胞子が並んでいる部分を拡大してみると、チチタケ類の子実層面を見ているかのようである(h)。シスチジアのようにも乳管組織のようにも見える組織もある(i)。よくみると、担子器と思われる組織があちこちにみられた(j)。
 チチショウロを見たのは今回が2度目である。切断すると乳液があふれてくるのですぐに判定できる。以前採取したときていねいに胞子を観察していなかったのが、悔やまれる。

2004年9月23日()
 
ソライロタケのこと
 
 先日職場で同僚から「朝日新聞で取り上げられていた水色のきのこ、きれいですね」といわれた。また、20日の高尾山観察の折りにも同様の話題が持ち上がった。読売新聞しか購読していないので、当初話が見えなかった。9月17日の朝日新聞にソライロタケが掲載されたのだという。確かに独特の色合いをもった美しいきのこである。
 記事中に「キノコの研究者でも野生ではめったに目にすることのない」とあるが、アマチュアのきのこ愛好者の間では、しばしば観察される比較的ポピュラーなきのこである。どこにでも見られるきのこではないが、珍しいきのこというわけではない。ちなみにネット上で検索をかけてみると、写真を掲載したサイトがいくつもある。
 きのこ研究者とて頻繁にフィールドに出るわけではなく、他の人たちの採集したサンプルや標本庫に納められたサンプルなどを基に研究していることが多い。だから、「キノコ研究者にとって珍しい」=「一般にも珍しい」という図式はなりたたない。
 とはいえ、水色とか紫色、緑色のきのこというのは、人を引きつけるものがある。ソライロタケばかりではなく、ナスコンイッポンシメジ、コンイロイッポンシメジ、ワカクサタケなどは何度見ても美しい。残念だが「キノコのフォトアルバム」にはソライロタケしか載っていない。

2004年9月22日(水)
 
(a)
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(c)
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(d)
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(e)
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 日光に行って来た。狙いはオドタケツノシメジの撮影と採取だったのだが、今回もまた目的を果たすことができなかった。一昨年の7月以来何度も同一目的で通っているのだが、今年もまたダメだった。期待は来年へつなぐしかないだろう。
 皮肉なことに、昨日はいろいろな食菌に出会ってしまい、夜は汗をかきながらきのこ鍋となってしまった。持ち帰ってきたのは、ムキタケ(a)、クリタケ(b)、ナラタケ(c)、ヌメリスギタケモドキ(d)、ヌメリスギタケスギタケ、ホシアンズタケ(e)、オシロイシメジ(f)、キシメジシモフリシメジ、などなどかなりの種類と量になってしまった。
 日光では気温こそ平年よりも高かったものの、終日快晴でカラッとした快適な一日だった。きのこも考えていたよりもいろいろのものに出会うことができた。ツキヨタケの大群落、ミズナラに出たムキタケ(a)、キシメジなどは想定外だった。また、ホシアンズタケの幼菌にはあちこちで出会った。この分だと11月まで出会うことができそうだ。

2004年9月21日(火)
 
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(e)
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(f)
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 昨日高尾山で行われたきのこ観察会に同行してきた。裏高尾といわれる日影沢のコースは静かで、とても休日の高尾山とは思えないほど人が少なかった。しかし、きのこは少なく新鮮な状態のものはほとんど無かった。かろうじて、沢沿いのやや薄暗い場所で、ツチナメコ、紅色のチャワンタケ(a)、オオゴムタケ、オニイグチモドキなどが観察された。尾根沿いのドクツルタケやベニタケ類はすっかり干からびたり、ナメクジに囓られているものが多かった。
 山頂に着くとあまりの人の多さに圧倒された。山頂の屋台にはいつもなら、ナラタケ、チャナメツムタケ、ウラベニホテイシメジなどが沢山ならんでいるのだが、昨日は貧相なウラベニホテイシメジとホウキタケの仲間、ヌメリスギタケが少し並んでいるばかりであった。
 沢沿いの腐朽材や地表からは紅色のチャワンタケが数ヶ所でみられた(a)。断面をみると裏側や縁に毛はない(b)。子実層面を低倍率でみるとみごとに赤い(c)。しかし、プレパラートの脇からメルツァー液を注ぐとみるみる色がかわった。メルツァーが届かない部分の色は紅色のままであるが、子実層の表面付近は黄色っぽくなり、子実層の基部付近は青く変色した(d)。倍率を上げてみると、側糸の中に含まれた粒状の部分の青変が顕著である(e)。子実体が未熟だったせいか、胞子は大きさにバラツキが大きく、表面に模様などはない(f)。

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