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2005年9月9日(金)-14日(水)
 
9/9−9/14 夏休み

 9月9日から9月14日まで「今日の雑記」を休みます。カメラ・顕微鏡は担いでいきますが、目的地周辺はいずれもネット接続環境の全くない地域ゆえ、日々の更新は無理と判断しました。あわせて「雑記 戯れ言」もお休みです。

2005年9月8日(木)
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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 今朝は乾燥標本にしたテングタケ科のヘビキノコモドキ(a)を観察した。去る8月10日に採取したものだ。いったん乾燥させてしまうと、ヒダを一枚取り出すのに難儀する。何とかヒダ切片を作った。気泡が多量に入ってしまったが、子実層の組織も適当に膨潤してくれた(b)。しかしヒダ実質部の散開型は分かりにくい。ひだ実質の構造観察はやはり生状態の時に限る。
メルツァーを加えて子実層をみた(c)。別途スライドグラスに採取しておいた胞子紋から一部をそぎ落として、胞子をみた。アミロイドである(d)。乾燥標本のヒダ切片を材料にKOHを使って担子器をバラそうと試みたが、うまくいかなかった(e)。
 顕微鏡を使っての観察も、採取後すみやかに実施するのが楽だ。いったん熱乾燥させてしまうと、縮まってクシャクシャになってしまい、生状態に近い姿への復元は難しい。

2005年9月7日(水)
 
(a)
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(b)
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(c)
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 楽しい本が出版された。大作晃一著『山菜&きのこ採り入門』(山と渓谷社)だ(a)。昨年の大作・吹春著『きのこワンダーランド』につぐものだ(雑記2004.9.9)。山菜ときのこの「見分け方とおいしく食べるこつを解説」してある。エッセイ部では雪をかぶって半分凍り付いたヒラタケの写真などもあり(b)、大ちゃん得意のパスタはもちろん [きのこクッキング] も充実している。
 特筆すべきは佐野書店を大きく1ページ割いて紹介していることである(c)。山菜狩りやきのこ狩りの入門者では知らぬ人もあろうが、菌類やきのこ関係者で知らぬものはほとんどいない。これは大ちゃんから佐野書店へのエールである。
 池田良幸著『北陸のきのこ図鑑』は最近まれにみる良書であるが、自費出版でもあり発行部数が非常に少ないために、一般の書店には並んでいない。確実に入手するためには佐野書店に注文するのが間違いない。いっぽう、大ちゃんの著作は広く一般の書店に平積みされている(本体1,600円)。amazon.co.jpからも購入できる。
 千葉県立中央博物館 秋の展示 きのこワンダーランドの案内をお知らせに載せた。

2005年9月6日(火)
 
(a)
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(d)
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(e)
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(f)
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 自宅団地の外周にはコナラ、クヌギを主体とした林が帯状(糸状?)に広がる。そこにアセタケが多数出ている(a, b)。傘径3〜4cm、表面はかなりささくれだっている。ヒダの付き方は湾生から離生(b)。胞子紋は汚褐色、胞子は類楕円形(c)、ヒダ実質は並列型(d)。
 いくつかの個体から何枚かのヒダ切片を切りだしたのだが、なぜか途中で折れ曲がっったり、割れてしまうものが多かった。原因は刃物だった。使ったカミソリ片は、すでに数種類のきのこを何枚も切っている。いわば、なまくら包丁で刺身を切っていたわけだ。
 縁シスチジアは薄膜(e)で多数あるが、側シスチジアは全くみあたらない。担子器の基部にはいずれもクランプが明瞭にみえる(f)。アセタケと判断したら、本来なら、傘表皮と柄の上部のシスチジアの確認が必要だ。しかし、今朝は傘表皮も柄表皮もみなかった。コバヤシアセタケに限りなく近いと思われるが、掘り下げて追究するのはやめにした。

2005年9月5日(月)
 
(a)
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(d)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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 時間がとれずに4〜5日放置してあったイグチを検鏡した(雑記2005.9.3)。発生環境と形態的特徴からはクリイロニガイグチではあるまいかと推測していたものだ。あらためて胞子(a)、管孔実質(b, c)、縁シスチジア(d, e, f)などを確認した。側シスチジア(g)も所々にある。実質部の平行に走った細長い菌糸の先を見ると、ここから担子器や、偽担子器、シスチジアができあがる様子がみえるような気がした(h)。担子器も念のために確認した(i, j)。傘表皮(k, l)も柄シスチジアもチェックした。すべての組織に関してクランプは見つからない。形態的データと検鏡結果をクリイロニガイグチの記載文(Mycoscience (2002) 43:397-403)と比べてみると、ほぼ合致する。
 それにしても、日本菌学会の英文会誌を繙かなくても、高橋春樹さんのホームページでクリイロニガイグチ(Tylopilus castanoides Har.Takahashi)の詳細を [日本語で] 読むことができるのはとてもありがたい。なお、フウノミタケとかバライロウラベニイロガワリという命名も高橋春樹さんである。これらに関しても、ネット上から詳細に知ることができる。

2005年9月4日()
 
(a)
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(e)
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(f)
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 昨日早朝、千葉県内房の海浜に定点観察に行ってきた。ウネミケシボウズタケの頭部が砂から頭を現していた(a, b)。一見新鮮で最近発生したもののように見えたが、掘り出してみると、柄はかなり乾燥して水分を失っている(c)。ミイラである。ただ、前回(雑記2005.8.20)出向いた時には何もなかった場所なので、砂の下になっていたのかもしれない。
 ケシボウズタケ(Tulostoma brumale)あるいはT. kotlabaeとおぼしきものが2ヵ所にまとまってでていた(d, e)。これもミイラであるが、発生時期は比較的最近のように思えた(f)。柄は白色で、まだ水分をかなり含んでいた。これは、前回何もなかった場所にでていた。この場所では砂が飛ばされて砂下のケシボウズがでてきたとは考えにくい。

2005年9月3日()
 
(a)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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 8月後半からつい最近まで、埼玉県南部の雑木林で頻繁にであうイグチである(a〜b)。傘と柄は栗色から栗褐色、柄に網目はない。管孔は白色で時間経過とともに赤褐色になる(c)。傘肉は白色で管孔部は柄の周囲で陥入している(d)。変色性はない(d)。柄の表面は密な綿毛状(e)で、傘表皮も同様である。柄の基部は白色の菌糸に被われる(f)。
 この写真の個体は9月1日に三芳町(a)とさいたま市(b)で採取したものであるが、同じものは小川町(8/26)、川越市(8/31)でも頻繁に見られる。いわばごくありふれたイグチである。囓っても苦みはないが、一見したところニガイグチ属と思われる。柄に網目が全く見られないのでチャニガイグチとも違う。クランプはないし、クリイロイグチとは胞子の形がまるで違う。
 先日、埼玉きのこ研究会の上原さんがやってきたとき、ちょうどこのイグチをテーブルに置いてあった。おそらくクリイロニガイグチだろうという意見だった。しばし詳細に検鏡しているゆとりがないので、今朝も冷蔵庫野菜ケースに保存のままである。

2005年9月2日(金)
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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 9月に入ったというのに、相変わらずきのこの姿は少ない。近場の雑木林では夏のきのこばかりがよくめだつ。キアミアシイグチ(a〜c)、フクロツルタケ(d)ばかりはいたるところでみられる。カワリハツ近縁種とツルタケも相変わらず多数でている。
 幼菌が目立つのはテングタケ(e)、アカヤマドリ(f)などであるが、秋のきのこの姿はほとんど見られない。気温が下がり一雨来ないときのこの発生は期待できそうもない。

2005年9月1日(木)
 
(a)
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(c)
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(i)
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(k)
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(l)
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 ニカワウロコタケ(a)は妙なきのこだ。一見したところ大型のアラゲキクラゲのように見える。これをキクラゲと思って食べている人たちには何度もであった。当初は北海道特産とされたが、本州の亜高山帯でハルニレのあるところなら広く分布しているようだ。
 胞子をみると、キクラゲの仲間のようにさえ感じられる(b)。しかし、これはシワタケ科のきのことされる。分厚いゼラチン質の表面に薄く子実層がある(c)。フロキシンで染めてみた(d)。子実層と大型のシスチジアがみえる(e, f)。
 全体が原菌糸だけからなる一菌糸型(monomitic)で、いたるところにクランプがある(g)。子実体上面に無数に生えている細かい毛をみた(h)。これは細長い細胞からなり、あちこちにクランプをみることができる(i)。
 担子器はおもしろい形をしており、じっくり観察しないとどこに担子器があるのか、わかりにくい。とりあえず、3枚の写真をならべてみた(j〜l)。黒色の矢印で示したのが担子器だが、とても長い柄をもっている。これは、つい最近、日光で採取したものだ。

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