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写真のハラタケ科のきのこ(a〜c)は、公園のウッドチップでいつも見るのだが、いまだに種の同定ができないままでいる。もう何年越しになるのだろうか。梅雨の頃から晩秋まで雨さえ降れば直ぐに顔をだす。昨日午後もやはり多数発生していた。 ヒダは最初白色であるが、やがて赤褐色から暗褐色になる。傘肉やヒダは傷つくとわずかに赤変する。胞子紋は褐色で、胞子はナカグロモリノカサよりも若干小さめである(d)。側シスチジアはなく縁シスチジアは小さく嚢状である(e, f)。担子器の基部にクランプは無い(g, h)。傘表皮は菌糸状でクランプはみられない(i)。 ミクロ的な姿はスイスの菌類図鑑Vol.W p.175に記載のあるAgaricus porphyrizonにも似ているが、マクロ的な記述がどうにも合致しない。昨年も何度かいろいろな文献にあたったがその時点でも結局解決が付かなかった。今回もまた昨年の自分の轍を踏んでいるようだ。 ウッドチップからは実に多様なきのこが出る。しかしその多くがわからないままである。 ☆自然史洋書の佐野書店から現在入手可能な変形菌文献を網羅した変形菌文献紹介がリストアップされた。変形菌に関心のある者には必須の文献が列挙されている。 |
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去る11月2日にいったん紹介したが、再度この場でとりあげることにした(雑記2003.11.2)。「菌類の多様性と分類」の講座は今後は筑波の地を拠点として実施される。しかし、講座の実施の案内などはこれまでのように「国立科学博物館ニュース」などには掲載されない。日本菌学会ニュースレターなどには載るだろうが、これは日本菌学会会員にしか配布されない。今のところ菌学教育研究会はインターネット上に包括的な公式ホームページは開設していない。 そうなると多くのアマチュアは講座内容、開催日時などを知ることもできない。たまたま講座のことを知ったときにはすでに終了していた、などということも起こりうる。 遠方に在住などで今現在は筑波まで行かれなくとも、菌学教育研究会の会員になっていれば講座開催の案内なども送付されてくる。従来のような講座以外にも、文献サービスをはじめ他の事業も計画されているので、地方在住者にとってもメリットは大きい。すでに北海道、東北、中国地方などからも入会の申込みがあるという。 案内書・申込書などの請求は下記(事務局)に連絡されたい。
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昨日早朝千葉県内房の浜を数ヶ所歩いてきた。これまでの浜から数十キロはなれた別の場所にナガエノホコリタケがでていた(a, b)。写真の個体(a)は2〜3週間くらい前に出たと推定される。ナガエノホコリタケは頭部と柄との結合が強く、老菌になっても頭部だけが転がって残っているケースは少ない。しかし、この浜辺では比較的若い菌の頭部がいくつも転がっていた。 スナヤマチャワンタケがやけに目についた(c, d)。1ヵ月半ほど前と比較するととにかくよく出ている。発生の最盛期がかなりずれこんでいるように感じられる。中には径15cmという巨大なものもいくつかみられた。スナジクズタケとその近縁種もまだまだ多数見ることができた。 従来から継続的に観察している浜でもナガエノホコリタケの新しい個体が出ていた(e〜g)。地上にわずかに頭部を現し始めた状態の個体をいくつか掘ってみたが、いずれも既に長い柄ができたものばかりだった。一方2ヶ月ほど前に出た老菌もまだ完全なミイラとはなっていない(h)。頭部は真っ白だが、柄はまだ太く内部は充実していた。 |
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顕微鏡観察にスライドグラスとカバーグラスは不可欠の品だが、これらは消耗品とされている。しかし一度っきりで捨ててしまわず、スライドグラスは7〜8回ほど使っている。カバーグラスは油浸オイルを使ったものは廃棄し、そうでないものは数回使い回している。汚れたスライドグラスやカバーグラスが沢山溜まると、洗うのが大変になる。だから、使用済みのグラスは直ちに中性洗剤入りの缶に放り込んでしまう。これは2週間に一回くらいの頻度で洗う。 洗浄に当たっては韓国製の超音波洗浄器(a)を使っている。そのままカバーグラスをごちゃごちゃにして放り込むと、ガラス面同士が密着してしまい、汚れが落ちない。当初は釘などを利用してガラスが密着しないように互い違いに置いたりしてみたが、どうにも具合が悪い。超音波の作用でガラスが動いて結局密着してしまう。そこで針金を折り曲げて支えを作った(b, c)。 カバーグラスも密着防止のために、小さな剣山を流用している(d)。針の間にカバーグラスを挟むようにして置くだけだが、結構使える。乾燥するにもこれらの小道具は結構役立つ。布巾などの上に小道具を置き、そこに縦にガラス類を置いておくと一時間ほどで乾燥する(e)。 スライドグラスの密着防止のため、当初は金属製の櫛の歯の間にスライドグラスを挟んで使っていたが、結局園芸用針金を折り曲げたもの(c)に落ち着いた。しかし、さらによい工夫をしたり適切な道具を作って利用している人がかなりいるのではないかと思っている。 |
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11月も半ばになるがウッドチップからは相変わらず多くの種類のきのこが出ている(a, b)。カラカサタケの仲間の白いきのこが多数でていたので、持ち帰った。軽い粉臭があるが、いわば普通の菌臭の範囲である。傷つけると心持ち赤褐色に変わる個体もあったが、大部分が白いままで変色性はない。可動性のツバをもち、胞子紋は白。胞子は偽アミロイド(c)、ヒダ実質は錯綜型(d)。側シスチジアはなく縁シスチジアが多数密集している(e, f)。 一般にカラカサタケ属(Macrolepiota)の仲間では担子柄がとても短いが、このきのこでは特にそれが顕著である。かなり注意して見ないと担子器が無いかのようにすらみえる。担子柄があまりにも短くてほとんど見えないか、ごみが付いた程度にしか見えない(g)。少しの間にも目の前で胞子が次々と担子器から遊離する(h)。胞子には担子柄(?)がそのまま付いている。担子器の基部にはクランプがある。最後に傘表皮の中央部を切り出して(i)、やや詳細に確認してみた(j)。 注意深く観察しなければ、このきのこはやや変色性の弱いイロガワリシロカラカサタケとされてしまうかもしれない。しかしMacrolepiota heimiiなどに近い種のようだ。 今日はこれから川崎市の生田、きっといろいろなきのこが出ていることだろう。 |
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シロフクロタケ(a, b)というきのこは雨さえ降り続けばいつでも発生するかのようだ。元旦の朝にすら見たことがある。今朝シロフクロタケを撮影したのち、ふと目を上げると近くの草むらに、背高のっぽの見たことも無いような姿のきのこがある(c)。近づいてみると柄が華奢で頭部にはヌメリがある。柄の基部には汚緑白色のツボがある。調べてみるつもりでもち帰ってきた。 帰宅すると一番に、この柄の長いきのこを調べてみた。胞子をはかなり大きい(d)。ヒダ切片をみると逆散開型の実質をもっている(e)。担子器もまたとても大きい(f)。同時に採取してきたシロフクロタケ(a)から同じ部分を取り出して比較してみると、ほとんど同じものが見られた。つまり、この柄がとても長いきのこもシロフクロタケのようだ。それにしても傘と柄とのバランスがこれほどにまで異なるケースもあるのかと、不思議な気持ちになった。 |
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[その2] |
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興味深いシンポジウムが11月、12月に開催される。きのこや冬虫夏草などに関心を持つものにとっては見逃すのが惜しい内容だ。いずれも日本菌学会関東支部の主催であるが、会員・非会員を問わず参加できる。 11月24日(祝)の「ミニシンポ」はR.A. Samson(CBS) 博士を迎え「Paecilomyces属の分類と生態」というメインテーマで、あわせて佐藤大樹氏(森林総研)による「クモタケ・ツクツクホウシタケ・白きょう病菌の発生消長」も報告される。会場は東京農業大学グリーンアカデミー。11月15日が申込締切となっている。締切が近いので、メールなどで申し込めばよいだろう。 12月13日(土)の第18回菌学シンポジウムは「アマチュア菌学ノススメ」というテーマで三村浩康氏(菌類懇話会)、吉峰貴司氏(マイクロネット(株))、吹春俊光氏(千葉県立中央博物館)、布村公一氏(菌学教育研究会)らを迎えてプロとアマとの意見交換の場を提供している。会場は玉川大学研究室棟B104。申込期限は11月23日となっている。 プロにとってもアマチュアにとっても非常に有益なチャンスなのでこの場で紹介することにした。いずれも詳細は日本菌学会関東支部の公式ページでその詳細を知ることができる。 |
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コムラサキシメジは若いうちは傘の色が紫色をしているので間違えにくいが、成長につれて色は淡灰褐色となり、老熟するとかなり白っぽくなる(a〜c)。ムラサキシメジと比較すると群生する度合いも強いようだ。今朝のオモチャはコムラサキシメジである。 胞子紋は層が薄いと白色、やや厚めに採取すると淡ピンク褐色にみえる。胞子は表面が粗で非アミロイド(d)、フロキシンで染めてもみやすくはならない(e)。次にヒダ切片を作った。 ヒダを一枚切り出して、ピスに挟む。そして、ピスを軽く指で支えごくわずかの力でつかむ。この段階で力が入りすぎるとひだはペチャンコにつぶれてしまう。その上で、新らしい剃刀を使い、剃刀自体の重みを利用して、表面を撫でるようにピスごと切れば、薄い切片が作れる(f)。しかしこれらの条件が一つでもかけると、潰れたり引きずったりして崩れてしまう(g)。 なお、ピスは3〜4cmほどの長さに切断し、深く切れ込みを入れて使う。切れ込みが浅いと圧が強すぎて、洗濯バサミで挟んだような状態となり、何もせずともヒダがペチャンコに潰れてしまう。生標本の切り出しはやはり難しい。 倍率を上げてみると子実層面と実質部の詳細がよくわかる(h)。さらに一段倍率をあげるとクランプがあることもはっきりわかる(i)。担子器の根元にはクランプがあるのだが、写真ではわかりにくい(j)。それにしても担子器の基部を見るのは難しい。薄切り切片を軽く押しつぶすと担子器が飛び出してきて楽に観察できることが多い。 |
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今朝は見沼の公園から持ち帰ったコザラミノシメジ(a, b)を覗いて楽しんだ。胞子を水だけでそのまま覗いてみても、ざらざらの実(胞子)がよくわかる(c)。メルツァーで染めるとザラザラ部分が青く染まる(d)。胞子観察はメルツァーのみで十分なのだが、フロキシンで染めて遊んだ(e)。 ヒダ切片を低倍率でみても大き目の側シスチジアを持つことがよくわかる(f)。水でそのまま倍率を上げると先端は結晶に被われている(g)。これまたフロキシンで染め直した(h)。見えるものは変わらないが、目の疲れがずいぶん違う(i)。しばらく放置しているとフロキシンがしっかり浸透して胞子も担子器もすっかり濃いピンク色に染まってしまった(j)。 今朝の作業は観察ではなく、完全に遊びである。撮影こそしなかったが、いろいろな食紅類やコットンブルーなどで染色して楽しんだ。コザラミノシメジは今の時期ウッドチップなどを敷いた公園などではかなりの頻度で発生するようだ。特に変わった特徴をもっているきのこではないのだが、ミクロの姿は実に豊かな個性を感じさせられる。 |
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昨日の午後さいたま市見沼区の公園に立ち寄ってみると多くのキノコが出ていた。コムラサキシメジ、コザラミノシメジ、シロフクロタケ、ツバナシフミヅキタケ、ハタケキノコ、ハラタケ、ナカグロモリノカサなどが多数みられた。ザラエノヒトヨタケをはじめヒトヨタケ科も数種、ツマミタケなどの腹菌類、キクラゲ類もあちこちに出ていた。 薄暗い竹林の下に白い大型のキノコが菌輪をなして出ていた(a〜d)。傘にヌメリはなく、これといった特徴的な臭いもない。数個体を持ち帰り、一晩スライドグラスの上に放置しておいた。今朝見ると胞子紋は白色である。今朝これを顕微鏡で覗いてみた。胞子は非アミロイド(e)。メルツァーでは見にくかったのでフロキシンで染めると明瞭に見えた(f)。 ヒダ切片(g)を切り出して縁やら側をみたがシスチジアはみられない。ヒダ実質は錯綜型(h)と並行型(i)が混ざりクランプを持っている。傘表皮は並行に走っており、クランプがある(j)。メルツァーで染めた状態で担子器をみたがとてもみにくい(k)。あらためてフロキシンで染めてみた(l)。この後軽く押しつぶすと担子器が飛び出してきた。基部にはクランプがある。これらの観察から、このきのこはシロノハイイロシメジとしてよさそうだ。 |
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かなり前の話だが、さる10月26日に採取会で渡された宿題についてのメモである。広葉樹の樹皮に小さなものが膏薬状にビッシリついていた(a)。ルーペでみるとチャワンタケ型の小さなきのこが密集しているように見える(b)。一つひとつの直径は0.3〜0.8mmほど。 拡大してみると表面やら縁には白っぽい毛が無数にはえている(c)。ピンセットでつまみとり顕微鏡の下に置いて低倍率で見て(d)、この縁を切り出した(e)。表皮部分には濃橙色の剛毛体のようなものが無数に生えている(f)。チャワンの縁をみると剛毛ともシスチジアとも見えるものに被われている(g)。剛毛部分を拡大してみると小さな結晶に被われている(h, i)。 子実層を探したがどこにもない。子嚢菌ならばみられるだろうはずの子嚢もどこにもない。何度か別の個体から切片を作った。しかしどの個体にも子嚢は全くない。しかし、胞子紋は落ちた。淡褐色をしていた。きつねに騙されたような感覚で胞子を見ると、子嚢菌らしからぬ形の胞子である(j)。組織を潰して作成したプレパラートにも同じような形の胞子が無数にみられた。 結局これはチャワンタケの集合体ような形をしていはいるが、子嚢菌ではなかった。かといって、担子器ないしそれと思われる器官を見出すこともできなかった。これ以上の探究には文献と資料にあたる必要があるが、今回は不明菌として報告した。 |
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