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昨日の午前中、雨の日光を歩いてきた。地元の人の話ではここ10日ほどほとんど雨が降らず低温が続いていたという。だからだろうか、きのこの発生は悪く1週間ほど前にはかなり大きくなり始めていた個体も、今や全く面影はない。シャグマアミガサタケは発生のピークを過ぎ、オオシャグマタケの成長は極めて悪かった。目的のきのこは今回も出会うことはできなかった。 人目に付きやすい場所のタモギタケは日曜日にほとんど採取されてしまったが、少し奥まったところでは鮮やかな姿を見せてくれる(a, b)。タモギタケの本格的な発生はこれからだろう。いたるところにやたらに目立ったのがアミガサタケ(c, d)であった。しかしヒロメノトガリアミガサタケはまだみられなかった。成菌のオオシャグマタケ(e, f)は比較的少なく、成長できないまま萎縮乾燥して見る影のない個体やら、小さいまま死滅したような姿のものが多かった。こちらは6月半ば頃が最盛期となりそうだ。シャグマアミガサタケには20個体ほど出会ったが、乾燥気味のものが多く、結局ひとつも撮影しなかった。 シイタケ、コキララタケ、フチドリツエタケ、ナラタケ属、クリタケ属、ウラベニガサ属、クヌギタケ属はあちこちでみられた。気温は午前中8〜10度で雨が降ったりやんだりしていた。 |
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昨日も川崎市の緑地ではヒロハシデチチタケの大きな個体が多数みられた。15日に採取しているので持ち帰らなかったが、この日のものについて、検鏡結果の映像を掲げておくことにした。胞子紋をそのまま水などを使わず覗いてみると、小さな毛糸球のような形の胞子が見える(a)。メルツァー液を注ぎ胞子表面あたりに焦点をすえると、いかにもチチタケ属といった模様が見えてくる(b)。輪郭部に焦点をすえると表面模様が隆起していることがわかる(c)。 ヒダ切片を切り出すと低倍率でも細長い側シスチジアが多数見える(d)。一段倍率を上げてみると細長いシスチジアの形がはっきりする(e)。これはかなり大きいので、1000倍にすると視野に入りきらない。(f)と(g)は一本のシスチジアの上半分と下半物(基部)を別々に撮影したものだ。同一倍率でシスチジアのすぐ脇の担子器をみた(h)。傘表皮の組織(i)のところどころには、まるで剛毛体のような傘シスチジア(j)があった。 なお、(f),(g),(i)はフロキシンで染めた。この仲間は胞子表面に大きな特徴をもっているので、メルツァーで上手く染色して微妙な模様を観察することがポイントだ。やり方をマズると同じメルツァーを使っても明瞭に捉えられない。染色に失敗するとはっきりしない。 |
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さいたま市の秋ヶ瀬公園を歩いてみると、ウッドチップを敷いた遊歩道の両脇には、ツバナシフミヅキタケ、シロフクロタケ、ビロードヒトヨタケ、ナヨタケなどに混じってサケツバタケが異常に目立った。ツバナシフミヅキタケによく似た不明菌は相変わらず最も多く見られる。 サケツバタケ(a)の中には傘径20cmほどにもなる大きなもの(b)やら、柄がとても長い若い菌(c)や柄が非常に太い菌などあり、変異の幅がとても大きい。若い菌と成熟菌とではつばの位置が異なるのが面白い(d)。胞子(e)、担子器(f)を見た後、アンモニアとKOHを使ってクリソシスチジアの形態等を確かめようとしたが、どこにも全く見つからなかった。採取してきた成熟菌とやや若い成菌の両者ともに、クリソシスチジアを見つけることができなかった。このためヒダ切片のプレパラートを20数枚もつくる羽目になってしまった。ついには、傘部をアンモニアに10分間ほど浸してからルーペーでヒダを観察したが、どこにも黄変した部分は見つからなかった。 やはり秋ヶ瀬公園で採取したサケツバタケでクリソシスチジアを持たないものがあったが(雑記2002.10.2)、サケツバタケの中にはクリソシスチジアを持たない系統があるのだろうか。クリソシスチジアの件を除けばマクロ的観察結果も、ミクロ的観察結果もサケツバタケそのものなのだ。 今日は川崎市青少年科学館の生田緑地キノコ観察会、当番月なのでそろそろ出発だ。クリソ騒ぎでかなり時間を無駄にしてしまった。菌友らは今頃日光を歩いていることだろう。 |
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[緊急追記] |
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本日をもって自宅サーバーを閉鎖します。これまで自宅サーバーの「きのこ雑記」に直接アクセスしてくださった皆様には感謝するとともにお詫びいたします。以前DoS攻撃の踏み台にされかけ数日休止したことがありましたが、再びクラッカーの侵入を許してしまいました。サーバーの維持に精力を費やすことは、きのこ観察の時間を奪われることにつながります。自宅サーバー閉鎖にともなう諸経費増加はやむをえないと考えるようになりました。 上記措置にともないプロバイダ(Wakwak)のサーバー経由のアクセスにおいても、一部で写真が表示されないケースがあるかもしれません。また、自宅サーバーにアクセスされていた皆様には、今後は以下のURLにアクセスしてくださるようお願いいたします。 |
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一昨日採取したヒイロベニヒダタケは全般的にまだ若く、傘は十分に開いていないし、強い雨で傘の一部が損傷を受けていた。昨日は時間もなかったのでいつも通り同定に必要な最小限の検鏡をしただけで撮影はしなかった。サンプルはまだ良好な状態だったので、今朝あらためてプレパラートを作り直して撮影した。煩雑になりすぎるので柄の検鏡結果などは省略した。 ヒダ切片を切り出して(a)、ヒダ中央部の組織を見るとウラベニガサ属に特有の逆散開型がみられる(b)。傘肉や傘表皮周辺は色素を含んだ嚢状やら太い棍棒状の細胞からなっている(c, d)。切片の切出し方向を誤ったために、この写真ではすべてが球形細胞のように見えてしまう。側シスチジア(e)、縁シスチジア(f)は紡錘形やらフラスコ形、便腹形などさまざまである。 ヒダ切片の端をみると担子器がきれいに並んでいる(g)。拡大して基部をみるが、クランプは見られない(h)。胞子については、カバーグラスに落とした胞子紋を使い、いわゆるドライマウント状態でみた(i)のち、水でマウントしてみた(j)。なお、(e)〜(h)はフロキシンで染色してある。 それにしてもウラベニガサ属の仲間はヒダがとても脆いので、いつも薄い切片作りには難儀する。さらに適度に染色しないと高倍率では輪郭が明瞭に出ないのでとても見にくい。 |
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用事があって川崎市の緑地帯まで行ったので、激しい雨が降ってはいたが少し歩いてみた。ここしばらく雨が降らずかなり乾燥していたが、何種類かのきのこに出会うことができた。フウの実は刺だらけの特異な姿をしているが、それらからホソツクシタケ(Xylaria)の仲間がかなり出始めていた(a)。斜面のシデ樹下にはヒロハシデチチタケ(b, c)が雨に打たれていた。腐り始めた材からはウラベニガサ(d)やらヒイロベニヒダタケ(e, f)が見られた。昨日は久しぶりに終日雨だったので、今度の日曜日あたりには多くのキノコとの出会いを楽しむことができそうだ。 | |||||||
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久しぶりにニワトコの枝から髄を突き出す作業をした。童心に返ってズイ鉄砲遊びを楽しんだ。先にいわき市に出かけた折に佐藤浩氏から髄を突き出すのに絶好の道具(f)をいただいたので、それを使って楽しみながら突きだし作業を行った。 ニワトコの元気よくスクっと伸びた枝を何本か切り出した。これを、20〜30cmほどの長さに切る(a)と、中心部にはピスに最適な髄がみえる(b)。この髄の部分を棒状のものでエイャっと突く(c)と、反対側から勢いよく髄が飛び出し(d)、3〜4mほど先に落下する。以前は細い竹やら丸い木の棒で突いていたが、柄のついた金属棒(f)のおかげで作業が非常に楽になり、面白いように次々にピスが出来上がっていった(e)。これを3cmほどの長さに切ってピスとして使う。 きのこの切片を作るには実体鏡の下で作業をする方法もあるが、ピスに挟んで切り出すのが最も手軽で簡単だ。例年多数のピスを消費するが、これまでの数年間は圧倒的に発泡スチロールの代用ピスが主だった。今年は天然もののピスを多数いただいたので、発泡スチロールの代用ピスに頼らなくても済みそうだ。非常に薄い切片を切り出すと発泡スチロールは切片と一緒に丸まってしまい始末が悪い。天然素材のピスではそういったことはない。天然ものは代用ピスに比べて非常にやわらかくとても使いやすい。 |
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昨晩味わったカンゾウタケの調理についてのメモ。最初採取してきたハマボウフウと一緒に薄切りにして刺身を楽しんだ(a)。成菌ではかなりの酸味を持っているが、若い菌ではわずかの酸味しかない。刺身にするには幼菌よりも、酸味が強く多少癖のある成菌の方がよい。次にベーコンなどと一緒にソテーにしてみた(b)。この調理をしたものが最もうまかった。以前は刺身が最も旨いと感じていたが、最近は油を使って表面を軽く炙ったものが気に入っている。こうすると酸味はかなり消えるが、カンゾウタケの持ち味はしっかり残っている。ワイン煮にしつらえたものは上品な味わいを持っている(c)。最後に刺身と似通っているが、サラダにして食べた。さっぱりした淡白な味わいを楽しめる(d)。 久しぶりに「きのこの話題」に2つの記事を追加した。といっても他で既に発表したものだが、ともにコナガエノアカカゴタケに関わるものである。ひとつは埼玉きのこ研究会会誌「いっぽん」16号に投稿した「稀菌コナガエノアカカゴタケ」、いまひとつは菌類懇話会第二回総会で発表した時の資料「千葉県のコナガエノアカカゴタケ」である。 佐野書店ではきのこ関係だけではなく海外の自然史関係の洋書を扱っているが、入手の難しい変形菌関係の文献も扱っているので、今回から「変形菌文献紹介(1)」として取り上げていくことにした。 |
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千葉県房総半島の内房から外房にかけていくつかの浜を歩いてきた。目的のきのこには今回も出会うことはできなかったが、久しぶりにコナガエノアカカゴタケ(a)が浜辺に屹立している姿にであった。周辺の植物をあらためてよく見るとコウボウムギとハマニンニクである。外被膜(卵の皮)を頭に載せて籠の部分がわかりにくい。掘り出して見るとまだ若い成菌である(b)。砂の上に少しだけ顔をだしているもの(c)があったので砂をどけていくと地中から柄がでてきた(d)。浜には他にはアミスギタケくらいしか見あたらなかった。帰路丘陵部にある神社でスダジイの根元近くをみるとカンゾウタケ(e, f)がでていた。触ると血のような赤い汁が手にべったりとついた。裏面は明るく鮮やかな朱色をしていた。このカンゾウタケは酒の肴になった。 | |||||||
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シャグマアミガサタケとオオシャグマタケとは外見から明瞭に区別できると記されている図鑑類があるが、見ただけでは区別できないことも多い。先日の日光で観察したものから、あえて紛らわしい個体を二つとりあげた。左側上下の個体(a, g)は5mも離れていないところに発生していたものだ。環境はコメツガ、モミ、カラマツ、ヤマザクラなどの混交林である。 上段がシャグマアミガサタケ(a)、下段がオオシャグマタケ(g)である。頭部から切片を作り(b, h)、倍率を上げて托外皮層や托髄層を比べたがほとんど差異はない。さらに倍率をあげてみると、胞子の中の油球の姿形が異なり、胞子の両極の様子も異なることがわかる(c, i)。 油浸対物100倍で見ると両者の違いがはっきりする(d, j)。さらに明瞭に胞子の姿などを捉えられるようにフロキシンで染めてみた(e, k)。さらに、オオシャグマタケの胞子両極の嘴状突起はKOHでいとも簡単に溶けてしまう(l)。 この両者は検鏡後に炒めて朝食時に食べた。生の時はとても脆いが、熱処理を加えるとコリコリとした食感に変わる。無論毒抜きをしてから調理したが、シャグマの方がオオシャグマより味はずっと上である。どうやら贔屓目ばかりでもなさそうだ。 |
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早朝さいたま市見沼区のウッドチップ帯を歩いてきた。出会ったのはいずれも代わり映えのしないキノコばかりであったが、やや変化が感じられたのは腹菌類の卵が出はじめたことだった。10数種類のきのこが見られたが、ツブエノシメジ(a)、束生したシロフクロタケ(b)、ツバナシフミヅキタケ(c)、キオキナタケ(d)、ワタヒトヨタケ(e)、ビロードヒトヨタケ(f)などを撮影しただけで、ひとつも採取することなく帰宅した。ただ、シロフクロタケが5本も束生する姿(b)は初めて見た。多くは単生しているものであり、傘径15cm以上に大きく育ったものなどを含めて10本以上のシロフクロタケに出会った。ネナガノヒトヨタケ、ザラエノヒトヨタケ、クズヒトヨタケ、イタチタケ、ウスベニイタチタケ、オキナタケも広範囲に発生していたが、全般的にやや乾燥気味であった。 | |||||||
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