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2003年8月31日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
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(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 一昨日の山梨県西部の山にはビロード状で暗褐色の傘をもったきのこが多数みられた(a)。アメリカウラベニイロガワリだろうと思い、手にとって見た。孔口部はいずれもこげ茶色(b, c)をしているが、管孔部そのものは黄色である。この時点でアメリカウラベニイロガワリの線は消える。触れたり傷つけるとすみやかに青変する(d)。柄の根元付近には黄褐色の菌糸がフェルト状で付いている(b)。管孔の長さは0.5〜1.5mmとニセアシベニイグチのように非常に短い(d)。管孔部の厚みでコゲチャイロガワリの線も消える。胞子紋の採取を試みたが全く採取できなかった。スライドグラス上に採取されたのは白く細長い蛆虫だけだった。
 管孔部を切り出してみると(g)、管孔部実質は平行型(h)、先端には紡錘形の縁シスチジア(i, l)がある。次に管孔部を輪切り(j)にして拡大してみると同じような形の側シスチジアがある。全体に幼菌だったのか、胞子は非常にわずかしか見られない。担子器(k)の先端の胞子もまだ未熟のようだった。それにしても胞子サイズが計測できないのは痛い。
 このイグチ(a〜d)の近くには、キニガイグチ(e, f)、キンチャヤマイグチ、シワチャヤマイグチなども見られたが、全般的に虫食い状態のものが多かった。

2003年8月30日()
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
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(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 昨日の朝、オオムラサキアンズタケに逢いたくて山梨県白州町の山を歩いてきた。このところほかの地域ではきのこの影が薄かったのだが、ここではイグチ類、テングタケ類はもちろん、多くのキノコがでていた。ある所にはあるものだと痛感した。
 今年のオオムラサキアンズタケ(a, b)は例年になく発生量が多く一つひとつの株も大きなものが多かった。直径5〜6メートルの菌輪に沿うように10数株が出ていてみごとだった。ニンギョウタケ(c, d)も何ヶ所かで大きな群落をなして発生していたが、最盛期を過ぎた株が目だった。オオムラサキアンズタケ同様に今年は発生の時期が例年より2週間から20日ほど早い。久しぶりにそれぞれ大きな株を一つずつ(b, d)食用に持ち帰った。
 セイタカイグチ(e, f)は多数出ていたが、ヒゴノセイタカイグチは一個体も見られなかった。こんなことは初めてだった。イグチ類ではニガイグチモドキとベニイグチ(g, h)がとても多く大型で鮮やかな姿の個体が目立った。他にもニワタケ(i, j)や、シロオニタケ(k)とタマシロオニタケ(l)をはじめ、白色系のテングタケ科のきのこが何種類もみられた。
 今回はデジカメの不調がひどく、撮影データの七割ほどはまるで使い物にならなかった。合焦機能の故障らしくいつまでも動きが止まらず電池がすぐに消耗する。すると今度は色調に異常をきたして撮影データはまるで夜写したかのように非常に暗くなってしまう。

2003年8月29日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 去る8月8日に海辺の砂地で採取したキクバナイグチ8月10日の雑記で取り上げたが、その時のプレパラートは生標本から作成したものだ。生のイグチ類から薄い切片を切り出すのはとても難しい。この時もなかなか上手くいかず7〜8枚も無駄なプレパラートができた。切り出した回数は20回ほどになった。休日でもなければ、こんな時間のかかることはやっていられない。
 このキクバナイグチは熱を通しやすくするため傘の部分を4分割して乾燥させた。乾いてしまえば縮まってクシャクシャになるのだから、まるのまま乾燥させてもブツ切り状態にしても大勢に影響ない。案の定、採取時の五分の一以下の大きさに縮まった。
 今朝はその乾燥標本からプレパラートを作成してみた。実に気楽で簡単だった。ピスも実体鏡も必要ない。剃刀の刃の自重を利用して滑らせさえすればよかった。ここに掲げた写真は乾燥標本から作成した切片を覗いたものだ。乾燥状態から戻すのにはアンモニアを使った。(b), (c)は側シスチジア、(e), (f)は担子器だ。乾燥しても胞子付きの担子器(f)は多数見られた。
 多くのきのこでは、生標本であろうと乾燥標本であろうと、ミクロの姿に大差は無い。切り出しは楽でも乾燥標本固有の難しさもある。ヒダの向きなどは生標本では簡単に分かるが、乾燥標本ではわかりにくい。一方、生標本から切り出さないと分からないことも多い。

2003年8月28日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 早朝、さいたま市の見沼地区を数ヶ所歩いてみたが、きのこの姿はほとんどない。ただ、ウッドチップからはネナガノヒトヨタケ、クズヒトヨタケなどはでていた。ツマミタケやハラタケ科のきのこもいくつか見られたが、かなり傷んでおり、結局一枚も撮影しなかった。
 クロサイワイタケ科(Xylariaceae)のキノコは国内での調査はとても遅れているようだ。よく見るとXylariaは身近なところに結構ある。ここで取り上げたものはつい先日、日光で採取したものである(a, b)。典型的な姿からはややはずれているが、クロサイワイタケ(Xylaria hypoxylon Grev.)である。保育社「原色日本新菌類図鑑2」ではクロサイワイタケについては、非常に簡単に「...(中略)...以上のほかX. hypoxylon Grev.なども日本に産する。」とたった一行書かれているだけで、クロサイワイタケという和名すら全くでてこない。
 実体鏡写真(c)の右側の個体を輪切りにしてみると、球形の子嚢殼が多数並んで見える(d)。子実体中心部の白っぽい部分は柔らかい。胞子(e)には発芽スリットが明瞭に見られる。メルツァー液で染めると子嚢先端に鮮やかな水色の円筒形の構造が見られる(f)。
 今回の個体は全く自信がもてなかったこともあり、森林総研の阿部恭久氏に同定をお願いした。以前科博の菌学講座で教えを受けて以来、つい最近もオオミコブタケの同定でもすっかりお世話になってしまった。ありがとうございました。

2003年8月27日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 さる8月17日にソライロタケを観察した折に、クワイ型をした面白い塊(a)がいくつも見られた。切断してみると内部はまだ真っ白なスポンジ状であった(b)。あたりには成菌は一つも無いが、ヒメツチグリ科の幼菌だろうと思い、いくつか持ち帰った。
 持ち帰った幼菌のうちの一つを湿らせたキッチンペーパーの上に据えて食卓に置いた。ところが1週間たってもいっこうに変化がない。このぶんでは成菌の姿はみられないだろと思い、冷蔵庫の幼菌はすべて捨ててしまった。忘れ去られたままテーブルの上に放置されていた幼菌が今朝になって急に裂開していた(c)。触ると頂部から茶褐色の胞子を噴出する。
 口縁盤の先端は繊維状である(d)。まさか成菌になるとは思っていなかったので、担子器の観察はしなかったわけである。やむなく胞子(e)と弾糸(f)、外皮、内皮などを観察することになった。水でもKOHでもメルツァーでも、胞子や弾糸の色に全く変化は無い。
 内皮は座生、外皮は2層になっており、外側はとても強靭な繊維質、内側は球形細胞からなりとても脆い。手もとの資料からはどの種に落ちるのか結局わからずじまいである。
 以前キヌガサタケのタマゴを持ち帰って自宅で培養(?)した折もそうだったのだが、忘れてしまった頃に急に成長するケースは結構あるようだ。

2003年8月26日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日の雑記でウスキモミウラモドキ?(a, 8/25c, 8/25d)としたきのこを今朝検鏡した。ソライロタケ同様にこのきのこも薄切り(b)が思いのほか難しい(雑記8.18)。ヒダの縁を高倍率で見ると先端が乳首状の縁シスチジア(c)がみえる。側面にも同様の形のものやさらに細長いストロー状の先端を持った側シスチジア(d)が多数みえる。胞子(e)は多角形で典型的な姿をしている。この胞子を水も何も使わずカバーグラスをかぶせてみると六面体を思わせるような姿が見えてくる。このきのこは「?」をはずしてウスキモミウラモドキとして扱ってよいだろう。
 
          
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 日曜日の秩父ではニセキンカクアカビョウタケ(g)らしき菌がかなりでていたので、少し持ち帰った。これも今朝薄切りにして顕微鏡で覗いてみた(h)。対物40倍でみても細長い胞子を収めた子嚢はよくわかる(i)。じっと見ていると子嚢先端から胞子が次々に飛び出してくる。
 あらためて胞子が飛び出す様子を撮影しようと、対物100倍にしてじっと追っかけてみた。既に大部分の胞子を放出して最後の一つとなった子嚢(j)に注目した。数秒見ていると胞子が外に出始めた(k)。さらに数秒たったろうか、ほとんど胞子は外部に出た(l)。途中でカバーグラスの下に水を補充しながら見ていたので撮影位置を固定できなかったが、様子はわかるだろう。
 ふだん子嚢が胞子を放出する様子はしばしば見ているのだが、なかなかその過程を撮影するチャンスはない。今朝は久しぶりに珍しい姿を撮影することができた。最初から胞子放出の瞬間を撮影するつもりで準備しておけば連続写真のようなデータを得ることもできるだろう。さらに進んでビデオで撮影したら貴重なデータが得られるだろう。

2003年8月25日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 昨日の早朝秩父の石灰岩地帯(ハイキングコース)を歩いたが目的のきのこには全く出会えなかった。そこでミューズパークの音楽堂と音楽寺周辺の斜面を覗いたがきのこの姿は非常に少ない。大型菌は全く見られなかった。遊歩道の竹林脇斜面でソライロタケを1本だけ見つけた(a)。周辺にはキイボカサタケ(b)、ウスキモミウラモドキ?(c, d)などもチラホラ見られた。帰路、道路脇の常緑樹の根元に鮮やかな黄色のアセタケ(e, f)がでていた。
 他に出会ったきのこといえば、クリイロイグチ、キアミアシイグチ、ツルタケダマシ、アカハテングタケ、イタチタケ、キツネノカラカサくらいだった。いずれもあまり状態のよいものではない。東松山市から小川町周辺は自転車のロードレースのため道路規制がしかれひどく渋滞した。
 今朝黄色いアセタケ(e, f)を検鏡してみた。ヒダを切り出してみると(g)、側面には多数のシスチジアが見られる(h, i)。胞子は類球形(j)、担子器(k)は意外と捉えにくかった。傘表皮は中心から放射状に伸びる繊維状の組織(l)からなっている。どうやらこれはタマアセタケのようだ。

2003年8月24日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 先にソライロタケを見た斜面にとても奇妙な姿のきのこが広葉樹の樹皮についていた。すっかり忘れて冷蔵庫に放置していたのだが、今朝ようやくそれを取り出して調べてみた。一見したところ明るい茶褐色のガムを樹皮になすりつけたような姿をしている(a)。裏面には放射状のシワがあり(b)、基部は細い茎で樹皮に付着していた。革質で弾力性を持ち全体にしっかりしていて、チャワンタケやノボリリュウタケなどとは全く異質である。
 ルーペで表面を拡大してみると小さなブツブツが見える(c)。どうやら子嚢殼を埋没させているようだ。断面をルーペで見ると全体が子座をなして表面近くに子嚢殼がみえる(d)。フロキシンで染めて子嚢殼を顕微鏡でのぞいてみた(e)。内部の肉厚の部分は細い厚膜の組織からなっている。子嚢は細長く60〜80μm程度の長さで非アミロイド、中には16個の胞子が見られる。胞子の大きさは非常にバラツキがあるが、おおむね小さく球形のものとやや大きめで楕円形のものがある。胞子表面をよくみると微細なイボのようなものが見える。
 肉座菌科(Hypocreaceae)のきのこらしいことはなんとなわかっていたが、採取時は属名まではわからなかったがオオボタンタケなどに近いのではないかと考えていた。。キノコ栽培の書をみたところ、ヒポクレア・ペルタータという肉座菌科の害菌について触れてあった。それによればシイタケ栽培の害菌の一つだという。どうやらこれはHypocrea peltata (Jungh.) Sacc. のようだ。

2003年8月23日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
 昨日、川越・三芳・所沢の保護林を歩いてみたが、きのこの姿はほとんど無かった。かろうじて出会えたのは少数のアカハテングタケ、ムラサキヤマドリタケ、クロハツだけだった。
 梅雨の頃から初秋にかけての頃によく見かけるのだが、気がかりなままに今ひとつ自信がもてないきのこがある。シロキクラゲ科のロウタケ(a, b)である。およそキノコといったイメージからは外れている。その名のとおり幼菌はロウソクをたらした様な姿をしている。これといった形を持たず植物の茎やら葉を芯にしてその周りを包み込むように成長する。幼時は純白であるが、成熟すると縁の方から褐色に変わるようだ。写真は先日日光で採取したものだ。
 自信が持てなかった理由は、いつも担子器がみつからないからである。今度こそと思って何度か持ち帰ったがこれまで一度も見られなかった。今朝もまたダメだった。全体に菌が若いからなのかもしれないが、それにしては胞子(c, d)がわずかながらできている。ということはどこかに担子器があるはずである。フロキシンで染めて何度か探してみたが、やはり見つからない。色素の塊のような、何かが崩れたような形の組織(e)が見つかっただけだった。
 ちなみに、ネット上でロウタケの写真を掲載しているのは、国内ではpicoさんのMash Roomだけである。picoさんの撮影したような成菌であれば、担子器を確認することはできるだろう。海外でも数ヶ所しか写真を載せているサイトは無く、いずれも幼菌の姿である。

2003年8月22日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 とても珍しく興味深い(?)ものを取り上げてみた。といってもかなりマニアックといわれそうな代物である。ケシボウズの仲間の担子器である。W.C.Coker & J.N. Couch "The Gasteromycetes of The Eastern United States and Canada" には、ケシボウズの一種であるTulostoma simulans の担子器の姿が描かれている(a)。腹菌類の担子器には面白い形をしたものが多いが、ケシボウズのそれは際立っている。以前、雑記2003.7.21でも一度だけ担子器を取り上げている。
 ケシボウズの担子器を見るためには、まだ柄が全くできていない状態で地中に眠っているものを採取しなくてはならない。そして、グレバがまだ白色スポンジ状をしているうちだけである。たとえ柄がまだできていなくても、グレバが黄褐色になるとかなり難しい。幼菌を見つけることが最初の難関である。やっとのことで地下の幼菌を見つけても多くはグレバがすでに黄褐色になっている。だからだろうか、ケシボウズの担子器の形状について触れた専門書はほとんど無い。
 ここで取り上げたものは、8月19日にかろうじて一つだけ採取したナガエノホコリタケの幼菌のものである。最初水でマウントして対物40倍で見た(b, c)。担子器自体がかなり三次元的な立体構造をなしているので、微動ネジを上げ下げすれば図(a)のような姿を確認できるのだが、撮影するとなるとそのうちの一場面を切り取ることしかできない。次にフロキシンで染めてみた(d〜f)。若い個体の頭部は担子器だらけである(d)が、とても分かりにくい。さらに、この個体はまだあまりにも若いせいか、胞子がほとんど未熟でとても小さい。
 いずれにせよ、胞子をともなった状態の担子器を撮影するのは非常に難しい。胞子が成熟する頃には担子器はほとんど溶けてしまっているのだから。

2003年8月21日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 一昨日千葉県内房の浜で多数のナガエノホコリタケに混じって、わずか7〜8個体ではあるがTulostoma striatumと思われるもの(a, b)があった。子実体のサイズはナガエノホコリタケに比較するとはるかに小さい(c)。概観からは外被膜の残り方、柄の表面模様が明瞭に異なる。孔口部もよく観察するとやや異なる。この小さめのケシボウズに関しては砂上に発生している姿は撮影しなかった。帰宅して直ちに胞子(d)を観察すると表面には肋状の隆起がある。弾糸の拳状節(e)は比較的少ない。これらはいずれもフロキシンで染めた。
 浜にはケシボウズ以外にも、チャダイゴケの仲間やホウライタケ属のきのこが多数発生していた。カヤネダケも5月に引き続いて新たな若い個体が再び発生し始めていた(f)。

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