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日( )

2003年10月20日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(l)
(f)
 ウネミケシボウズタケ(仮称)にSEM(走査電子顕微鏡)による胞子の電顕写真を加えた。右2枚(e, f)は普通の光学顕微鏡でみたもの。これは胞子表面に焦点を合わせて撮影したので、全体の輪郭はぼけている。一方、左4枚(a〜d)はSEMでみたものである。加速電圧 5Kv、倍率はおのおの5,000倍から15,000倍である。それぞれ用途や解像度が違うのだから当然だが、SEM画像では胞子表面に走る肋状のウネが明瞭にわかる。
 J.E.Wrightがその著書の中で「(胞子表面のウネは)...光学顕微鏡で容易にわかる...」("..., easy to observe under L.M.,...") と記述しているように、このケシボウズの場合、胞子表面に走る肋状のウネが最大の特徴であり、普通の光学顕微鏡でも明瞭に捉えることができる。
 センボンキツネノサカズキの自宅サンプルがすっかり黴にやられてダメになっていた。昨年、基物のコナラ材と一緒に乾燥標本にしたものだった。今年の7月には無事だった。今朝他の標本をしまうつもりでケースの蓋を開けてみると、すっかり黴に侵されて水滴まで帯びていた。
 このきのこは樹皮が残っている状態のナラから発生するが、内部が生木に近い状態のものからでも発生する。だから材ごと保管すると内部まで十分に乾燥が行き届きにくい。今回黴に侵されたのもそういったケースの標本だった。泣く泣く廃棄することにした。

2003年10月19日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 福島県のコナラ林でホテイタケ属のきのこを見つけた(a)。柄の下部が膨大していることからゴンゲンタケではなさそうだ。発生地に針葉樹はほとんどないから、ホテイタケの線も薄くなる。
 水でマウントしてみたところ白黒で濃淡がはっきりしないため、とても見にくく目が疲れる(b)。直ちにメルツァーを加えてみると、子嚢が非アミロイドであることは分かるが、あまり見やすくはならなかった。そこでフロキシンを使ってプレパラートを作り直した(c)。
 側糸は糸状で先端は膨大していない。全体に屈曲したものが多い(d)。胞子は細長く糸状であり、大きさのばらつきが大きい。よく見ると胞子の中央部がくびれて細くなっている(e)。写真からはやや分かりにくいが、焦点位置をずらしていくと中央部の狭窄が明瞭にわかる。さらに、やや成熟したと思われる胞子からは、類楕円形をした二次胞子らしきものがぶら下がっている(f)。これらから、オオホテイタケとしてよいのだろう。
 
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 同じ森でセンボンキツネノサカズキをみることができた(g, h)。一部を切り出すと(i)外側の白い毛は厚膜で隔壁を持った組織からなっている(j)。胞子は表面が平滑で大きな油球をもっている(k)。メルツァー液で染めてもアミロイド反応はマイナスである(l)。

2003年10月18日()
 
(a)
(a)
(b)
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(c)
(c)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 昨日武蔵丘陵森林公園を歩いた。数日前に雨も降ったにもかかわらず、相変わらずきのこの姿はとても少ない。また、植物は全般的とても元気がよく、とても10月後半とは思えないような色合いだ。木の葉や草の茂り具合は例年の9月中旬を思わせる。
 多数見たものから順に掲げてみた。あちこちによく出ていたのはハタケシメジ(a)、ナラタケモドキ、スギタケ(b)、オニタケ(c, d)だった。花壇にはハタケコガサも多数みられた。土の道の両側にはサナギタケ(e, f)が目立った。掘り出してみると、ふだん見るものよりも大きなさなぎが多かった。竹林ではスッポンタケのタマゴ(g, h)がやたらにたくさんある。しかし不思議なことに、成菌の姿は一つも見られなかった。写真のタマゴは径が9〜10cmほどもあった。
 道脇の石ころだらけの斜面にはニセショウロ科のきのこが何種類も見られた。写真のもの(i〜k)はコナラ・クヌギ主体の雑木林の縁の法面に多数でていたものだ。胞子(l)を見るとかなり大きく、刺状の突起も2μm前後かそれ以上の長さを持っている。すでに担子器は見られなかったが、ヒメカタショウロかその近縁種と思われる。

2003年10月17日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 先日コウボウフデの幼菌を探していたらツチダンゴがでてきた(a)。思いがけない副産物だった。切断面をみるとまだ子嚢が残っていそうだった。早速ピンセットで一部をつまみ出して低倍率で覗いてみると、透明な若い胞子を収めた子嚢が多数みられた(b)。軽く押しつぶしてみると、玉砂利をしいた遊歩道を思わせるきれいな模様が浮かび上がってきた(c)。あらためてフロキシンで染めてみた(d)。サイズを計測するために油浸100倍レンズで覗いてみた(e)。成熟した胞子の大きさはバラツキが大きい(f)。あいにく手許にツチダンゴの文献は無いし、よしんばあったとしても同定能力がない。残念だが、このツチダンゴがどういう種に落ちるのかはわからない。
 
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 一方、同じ頃いわき市の海岸砂浜には多くのきのこが発生していた。スナジクズタケ、スナヤマチャワンタケ、ナヨタケ属、フミヅキタケ属、アイゾメヒカゲタケ属などのきのこが見られた。
 ここで取り上げたのはそれらのうちの一つである(g, h)。胞子紋は暗褐色(i)、胞子は微疣に被われているようにみえる(j)。縁シスチジアは嚢状をしている(k)。側シスチジアはみつからなかった。傘表皮は子実層状被。写真には写っていないが担子器(l)の基部にはクランプがある。
 これは、いわき市に住む在野のキノコ研究家奈良俊彦氏がスナジナヨタケという仮称で呼んでいるきのこだろう。

2003年10月16日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
 高速道路のサービスエリアにはいろいろなキノコが見られるのでとても興味深い。ここで取り上げたキノコ(a〜b)もあるサービスエリアについ最近、乾燥に耐えて発生していたものだ。柄に触れると青く色が変わり、根元には白い粗毛がある。
 その場でヒダを一枚だけ切り出して、車載の顕微鏡でのぞいた(c)。側シスチジアはないが、面白い形の縁シスチジアがみられた(d)。全体は紡錘型であるが非常に長い首を持っている。先端が分岐しているものもある。胞子には明瞭な発芽孔がある(e)。車のトランク上で自然光を使って得た影像をデジカメで撮影したので、影像がいまいちであるが、屋外では大体わかればよい。
 近年一部のきのこを採取・保管することが全面的に禁止されてしまった。このためアマチュアには全く手を出すことができない。日本のキノコ研究は、ただでさえ海外から大きく遅れをとっている。この法律のために、さらに遅れてしまうことはとても残念だ。
 これはアイセンボンタケなどのPsilocybe属のきのこだろうから、採取して同定するわけにはいかない。見てみぬ振りをしてそのまま放置してきた。プレパラートはその場で土に戻し、スライドグラスは処分した。この仲間のきのこは持ち帰って同定作業をすることができないので、最終的な種名にまでたどり着けるケースはますます少なくなってしまう。

2003年10月15日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 高速道路のサービスエリアにツチスギタケが多数でていた(a〜c)。胞子紋は黄褐色(d)。ヒダを切り出して倍率を上げてみると、実質部は並行に走り、側にも縁にも多数のシスチジアが見られる(e)。5%KOHでマウントしてみると一部のシスチジアが黄金色に染まる(f)。クリソシスチジア(黄金シスチジア)だ。そのまま縁シスチジアや担子器などを撮影しようとしたところ、濃淡の輪郭がはっきり捉えられない。あらためてフロキシンで染めてシスチジアやら担子器を確認した(g, h)。縁も側も同じような形のシスチジアである。担子器の基部にはクランプが見られる。傘表皮の組織は薄膜の糸状の菌糸からなっており、クランプも確認できる(i)。
 胞子を三通りの液でマウントしてみた。最初に水(j)で確認した。KOHでマウントしたものは明るい色に変わる(k)。メルツァー液では表面がやや黄褐色っぽくなるだけだ(l)。
 なお、菌類関係者の間では常識となっているが、山渓カラー名鑑「日本のきのこ」にツチスギタケとして掲載されている写真は、スギタケなどの誤りである。スギタケは材上からも地表からも出る。また山渓フィールドブックス「きのこ」の索引からツチスギタケを引くと、なぜかスギタケ掲載ページにたどり着く。そこにはツチスギタケの写真やら説明はない。
 ツチスギタケの正しい姿と適切な説明が掲載された市販書には、北国新聞社「石川のきのこ図鑑」、グラフ青森「青森のきのこ」、家の光協会「きのこ図鑑」、無明舎出版「東北のキノコ」などがある。しかし、他の多くの図鑑では山渓きのこ図鑑の誤りをそのまま踏襲している。

2003年10月14日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日の昼頃、福島県いわき市の浜でケシボウズを見ることができた(a〜c)。外見の特徴からはウネミケシボウズタケ[仮称](Tulostoma striatum)が疑われた。全体に色白であり、頭部と柄の結合がとても不安定ですぐにギロチン状態となる。孔口は房状をしており、柄の表面は平滑である(c)。外皮の残りがカラー状に頭部に残る(d)。全体に小ぶりであり、地表部には柄のごく一部しか露出しない。これらから推測できる種の代表はウネミケシボウズタケである。
 顕微鏡下の姿を確認してみると、胞子表面には明瞭な肋状の畝が見て取れる(e)。弾糸の拳状節の部分を考慮して見ても(f)、このケシボウズはウネミケシボウズタケとしてよさそうだ。それにしても、この浜には必ず出るはずだと踏んでから見つけるまでにはほぼ半年以上を要したことになる。だが、同じように懸案事項となっている浜はほかにも数ヶ所ある。

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