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トップページの写真の件で「××日に表示された顕微鏡写真が間違っています」といった内容のメールをよくいただいた。当初のように左右ともにきのこを表示するように変更した これはcgiプログラムが擬似乱数を使い写真を任意に選び出して表示する仕組みとなっている。だから「××日」にどの写真が出るかは決まっていない。ちなみに、表紙(トップ)ページに戻って、ブラウザ上に並んでいる更新(再読込)のアイコンをクリックされたい。 |
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今年はついにドクカラカサタケに出会えなかった。もしや季節外れの今頃に出てはいまいか、そう思って昨日見沼地区に行ってみた。出会えたMacrolepiota属はカラカサタケらしいきのこだけだった(a, b)。あまりにわかりきったきのこは、採取もせずきちんと検鏡したり確認することもなく済ませてしまうことが多い。しかし、昨日は持ち帰ったので、今朝これを検鏡してみた。多分カラカサタケだろうがもしかすると類似の別種の可能性もある。 胞子はかなり大きいが水でマウントしても発芽孔などがわかりにくい(c)。メルツァーで染めると偽アミロイド反応を示して、発芽孔も明瞭にわかるようになった(d)。担子器の基部にはクランプはみられないが(e)、ひだ実質の一部にクランプがあった。一晩放置してスライドグラスに採取した胞子紋から、胞子堆を少しそぎ落としてフロキシンで染めてみた。発芽を始めているものがあちこちに見られて面白かった(f)。 姿形はほとんど同じでも、担子器の基部にクランプがあれば、それはカラカサタケではなく、類似の別種となる。とりあえずここで取り上げたきのこはカラカサタケとして間違いなさそうだ。 |
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昨日千葉県房総半島内房の浜辺と外房九十九里浜の北部を歩いてきた。富津市の新舞子浜で念願のコナガエノアカカゴタケ(Simblum sphaerocephalum)(a, b)にようやく出会うことができた。ここは、1993年6〜10月に飯塚茂明氏によって国内で初めて発生が確認されたところである。しかし、それ以降ずっとこの地では発生の確認はされていなかった。 発生場所は砂浜でも背丈の低い海浜性植物が生え始めるあたりであった。出会えたのは1個体だけだったが、発生したのが前日らしく柄の部分がやや老朽化し始めていた。さらに頭部のカゴの部分がとても大きく色も黄橙色であり、これまでよくみてきたものとはタイプがやや違う。 この浜では新たに2ヶ所でナガエノホコリタケ(c, d)の発生を確認することができた。つい最近発生したばかりらしく、頭部にまだ孔口が開いていないものが目立った。 外房野栄町の浜では、ウネミケシボウズタケ[仮](e, f)が出始めていた。ここは10月20以降も毎日少しずつ新しい個体が発生を続けていたものと思われる(雑記2003.10.21[その2])。 撮影や採取は全くしなかったが、砂浜にはスナヤマチャワンタケの姿がやたらに目に付いた。また、砂浜ではハラタケ類、アセタケ類、フミヅキタケ類がいくつも観察された。カヤネダケにも久しぶりによくであった。 |
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文化の日(11月3日)に千葉県内房の浜で採取してきたナガエノホコリタケ(a〜f)は以前発生を確認したところとは全く別の場所に出ていた。これは強い雨風の中でかろうじて撮影したものだ。 ナガエノホコリタケは砂地生だが、コウボウムギ、ハマニンニク、コウボウシバ、コマツヨイグサ、ハマヒルガオなどが茂って砂の動きが落ち着いたところに出る。茂った草のところどころにポカっと小さな空間ができて風通しと陽差しを適度に受けることのできる場所を好む。草がわずかしかない波打ち際近くの砂地で大量発生を確認しているが(雑記2003.7.17、雑記2003.7.21)、一般には草がわずかしか生えない見通しのよい砂地にでることはほとんど無い。 千葉県の浜辺ではこれまでナガエノホコリタケ(Tulostoma fimbriatum var. campestre)、ウネミケシボウズタケ[仮](T. striatum)、アラナミケシボウズタケ(T. fimbriatum)、未同定種2〜3種といくつかのケシボウズをみているが、ケシボウズタケ(T. brumale)はいまだに確認できていない。 T. brumaleは国内はもとより世界中に最も広く分布するとされている。これまで多くの場所でいろいろなケシボウズに出会っているにもかかわらず、ケシボウズタケ(T. brumale)に出会えないのが何とも不思議だ。 国立科学博物館の標本庫(TNS)にはケシボウズタケのサンプルがいくつかあるが、いずれも千葉県以外の地域で採取されたものばかりだ。千葉県立中央博物館(CBM)にもT. brumaleはない。あるのは京都産のウロコケシボウズタケ(T. squamosum)と千葉産のウネミケシボウズタケだけである。 |
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11月1日に菌友の坂本氏が新潟県の海浜地域の砂地で採取してきたケシボウズをやっと調べることができた。三島郡磯部町でニヶ所(1, 2)、寺泊町で一ヶ所(3)、計三ヶ所で採取したとのことで、それぞれ別の容器に入った状態で3日に受け取っていた。 いずれも頭部は柄から簡単に分離する。それぞれ外皮、内皮、孔口、柄などの特徴を観察したのち、胞子と弾糸を見た。どれも胞子表面には肋状の条線が走っている。拳状節はさほど大きくならない。(1)〜(3)はすべてウネミケシボウズタケ[仮](Tulostoma striatum)としてよいだろう。 これまで直接発生を確認したのは千葉県と福島県だけである。新たに新潟県が加わったわけだが、これは前々から予測されていた。かつて新潟の浜のきのこを調査された松田一郎氏がケシボウズタケ(T. brumale)と思って記述した中に、これが混じっていたらしいからだ。 採取した松田氏はそのことには気づかずに国立科学博物館(TNS)に納めたのだろう。その後、同館を訪問したJ.E.Wrightは、松田コレクションの中にT. striatumが混在していることに気づき著書 "The Genus Tulostoma(Gasteromycetes)-A World Monograph, 1987" でT. striatumがTNSにあると記述した。しかし、T. striatumのサンプルはTNSには存在しない。やはりこれ(T. striatum)は新ためて日本新産種として報告すべきものだろう。 |
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千葉県房総から成熟したマユハキタケ(a)ひとつと半未熟状態の個体を持ち帰ったが、今朝それを覗いてみた。調べてみたのは半未熟状態の方である。これまでみてきた若い菌の姿とは何となく違う雰囲気が漂っていた。もしかしたらアナモルフ(無性時代)とテレオモルフ(有性時代)が混在しているからではあるまいかという、甘い期待を抱いてのことだった。 アルコールでマウントして、最初に子嚢が残っていないかどどうかを探った。ところどころに消失性の子嚢が残っていた(b)。次に3%KOHでマウントしたものを作り胞子表面の模様を確認した(c)。さらに別のプレパラートを作りフロキシンで染めると胞子表面の模様がさらに明確に捉えられるようになった(c)。よくみると小さな紡錘型の細胞のようなものが見える。分生子のようである。 あらためて、菌糸層の一部を取り出してよくみると、あちこちに分生子柄が見られた(e, f)。アナモルフにみられる独特の美しい姿である。カキノミタケの分生子柄よりやや小型で、アオカビの姿を髣髴とさせる。ラセン状の隆起に囲まれた卵型の胞子といい、分生子柄の姿、分生子の形といい、Talaromyces luteusのそれとそっくりである。予測どおりアナモルフとテレオモルフが一個体に同居したものだった。 |
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昨日千葉県房総半島中央部と内房の浜を歩いてきた。薄暗い森の中で多数のマユハキタケ(a, b)を観察することができた。以前にはマユハキタケ本体の他に無性世代の分生子座をみることができたのだが、昨日は一つも見られなかった。 内房の浜では雨の中を歩いて、計4ヶ所で何種類かのケシボウズに出会うことができた。浜を歩いて最初に出会ったのがウネミケシボウズタケ(Tulostoma striatum)[仮](e, f)であった。2〜3週間ほど前が最盛期だったと思われ、柄から分離してしまった頭部が多数転がっていた。胞子全体に大きな肋状のウネが走っている(e, f)。拳状節(g, h)はあまり明瞭ではなかった(i, j)。 途中から風雨が激しくなり、撮影はしなかったが、新鮮なナガエノホコリタも出てきた。1週間ほど前から出始めたようだ。他に別種と思われるケシボウズ(k)を採取した。胞子(l)などからウネミケシボウズやナガエノホコリタケとは別種のようだ。同定作業は後日の仕事に回した。他にも新潟産のケシボウズが同定作業を待っている。 昨日目だったのは、多くのスナヤマチャワンタケ(c, d)と無数に発生するスナジクズタケであった。激しい雨のために撮影は控えたが、スナジクズタケは汀近くの草などが殆ど生えていない砂浜に束生するものが多く、実にみごとな光景だった。 |
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団地周辺にもハナビラニカワタケがあちこちについている。胞子はかなり大きいが、透明なので見ていると目がつかれる(a)。フロキシンで染めると鮮明に見える(b)。胞子紋をそのまま適度の湿度を保ち少しの間放置すると一部の胞子が発芽を始めた。 グニャグニャの花びらから一部を切り出してフロキシンで染めた。線虫がゼラチン質内部に潜り込む姿が見えた。水でマウントしてもよく見ると担子器の並んでいる様子はわかる(c)。しかしこれもフロキシンで染めた方が見やすい(d)。さらに倍率を上げて、軽く押しつぶすと担子器の姿がよくわかる(e, f)。まだ担子柄を伸ばしていないものやら、かなり長い柄を伸ばしたものが混在している様子がわかり、とても面白い。 キクラゲの仲間は、生からであろうと乾燥標本からであろうと、切り出した切片をいくら覗いても胞子はほとんど捉えられない。しかし生のサンプルをカバーグラスなどに放置してやると白い胞子紋が得られ、そこには多量の胞子が見られる。今朝は生標本から切り出したが、この仲間のきのこはやはり乾燥させてから切った方がずっと楽だ。 外が薄明るくなってきた、そろそろ千葉の海辺へ出発の時刻だ。 |
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菌学教育研究会が装いも新たに再出発をすることになり、入会の募集を始めた。これまでは国立科学博物館新宿分館を会場に「菌類の多様性と分類」の講座を開催してきたが、これからは筑波の地を拠点として活動を続けていくことになる。講義・実習のための専用棟、簡易宿泊施設など専用の施設の建設も始まるようである。 従来は平日に講座を開催し内容も専門的な各論が主だったが、今後は休日に比較的平易な講座を開くことも検討されている。従来のような講座以外にも、文献サービスをはじめ他の事業も計画されているので、地方在住者にとってもメリットは大きい。菌類関係の専門家ばかりではなく、アマチュアにとってもこれは非常に有用なのでこの場でとりあげることにした。 これまでの講座参加者や各地のきのこ関連団体などには、案内状と加入申込書などが発送された。案内書・申込書などの請求は事務局に連絡されたい。
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この秋は全般的にきのこ不作だといわれる。しかし、10月後半以降になるとハタケシメジ、コガネタケは例年並み、あるいはそれ以上によく発生しているようだ。つい先日も面白い形をしたコガネタケに出会った(a)。傘の中央が濃色で突き出している。 スライドグラスとカバーグラスに胞子紋を採った。スライドグラスの胞子紋は保存用だから2時間以上はかける。カバーグラスにも胞子紋を採取するのは、直ちに落下胞子を観察するためだ。こちらは5分もかければ十分なことが多い。胞子は微細な点におおわれている(b)。 ひだ切片を切り出してみると並列型のひだ実質にはクランプがみられる(c)。倍率を上げると担子器の根元にもクランプが確認できた(d)。封入剤に水を使っても見えるが、目が疲れないよう見やすくするためにフロキシンで染めた。 コガネタケを顕微鏡で覗いて何が楽しいかというと、きな粉のような粉の姿である。イメージは豚の玩具である(e, f)。胞子などと比較するととても大きいので低倍率で十分楽しめる。形も大きさも実に変化にとんでいる。中にはルーペで突起を確認できるほど大きなものもある。 |
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