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茨城県東海村で原研の柵に沿って歩いてみると色々なイグチがでていた。砂地にこれほど多くの種類のきのこが見られることに驚いた。キクバナイグチ(a, b)が出ていたのは、シイ混じりの松林の遊歩道脇で、下地は完全な砂である。ここで出会った個体はやたらにピンク色が強かった。傘表皮(c)はみごとに割れている。黄色の管孔部は触れると直ちに青変した。 最近購入した簡易顕微鏡で胞子を覗いた。400倍で最初は普通に(d)、次に暗視野を作って撮影した(e)。生標本から管孔部などを切り出すのは容易ではない。かろうじて管孔部に水平に切り出して(f)、徐々に倍率を上げていった。縁シスチジア(g)、担子器(h)などを確認した。 この後、顕微鏡を変えて胞子を再度覗いてみた(i, j)。簡易顕微鏡400倍では縦に走る畝状の隆起までしかわからなかったが(d)、1000倍にしてよく見ると畝の表面には横に微細な条線があることがわかる(i)。しかし輪郭部に焦点を合わせると微細な横条はわからない(j)。 |
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先日東海村で海辺の社寺林を歩いたとき何ヶ所かでニセショウロの仲間に出会った。数メートル離れて出ていた群を同一種と思って同じ紙袋に入れて持ち帰った。帰宅してそれらの幾つかを任意抽出して胞子を見たところ、明らかに数種類が混在していることに気がついた。 やむなく昨日あらためて出直してきた。それぞれ新たに全く離れた3ヶ所で採取し、別の袋に入れて持ち帰った。今朝はそのうちの2種類を調べてみた((a, b), (f, g))。上段と下段とはそれぞれ別種のきのこである。胞子((d, e), (i, j))は例によって、焦点位置を変えて撮影したものだ。 それぞれの種について小さな幼菌を探して持ち帰ったのだが、いずれも既に担子器を観察することはできなかった。切断してみるとまだグレバは粉状になっておらず、粘液状であったのだが、すでに遅すぎたようだ。観察できたのは、胞子と偽弾糸、殼皮などの部分だけだった。 どうやら上段はヒメカタショウロ、下段はザラツキカタワタケのようだ。東海村では原研が広範囲に浜辺を占有しており自由に歩ける浜はわずかしかない。クロマツの防風林は、秋にはシモコシをはじめいろいろなキノコが出そうだが、砂浜のきのこ観察には不適当であった。 |
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富士山からツチグリの幼菌(a)をいくつか持ち帰った。星型に裂開した状態のもの(d)を見かけたら、周辺を注意深くみると楽に見つかることが多い。わが国ではツチグリを食用にする風習はないが、東南アジアなどでは貴重な食料として親しまれている。缶詰は日本にも輸入されており、上野アメ横などではしばしばみかける。食用になるのはまだ内部が白色(b)の幼菌で、紫色(c)を帯びだしたらもはや食用にはなりにくい。 一般に腹菌類は成菌になると担子器は溶けて消失してしまう。内部が白い幼菌のグレバ(基本体)の一部を見ると、面白い形の担子器が一様に散在している(e)。担子器の形は球形の風船のようで、表面にいくつかの胞子を座生させている。観察した個体の胞子はまだ未熟でとても小さく表面も平滑だ(f)。さらに、偽弾糸はまだほとんど見られない。 しかし幼菌でもグレバが紫色を帯びた状態(c)になると、もはや担子器の姿はほとんど見られず(g)、偽弾糸の萌芽がところどころに見られる。胞子はまだ小さく表面のいぼも未完成で、いぼというよりも短い糸状にすら見える。 図鑑類には一般に成菌の様子が記述されているので、こういったことは書かれていない。成菌になると胞子の大きさや色は図鑑の記述にあるような姿になる。胞子の色は紫色から褐色に変わってくる(h)。偽弾糸も厚膜となり、ところどころで分岐を見せるようになる(i)。 |
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富士山でやたらに目に付いたフウセンタケ属を一種類うかつにも持ち帰ってしまった(a, b)。傘は径35〜45mmで紫色から紫褐色、湿時わずかに粘性があり、傘表皮はいとも簡単に剥がれる(d)。傘肉は白色。傘の縁には白色の外被膜の名残が付着している。ヒダは直生でやや疎(b)。柄は中実で下部がやや膨大気味、9〜25mm×60〜85mm(c)で繊維状。ツバやらツバの痕跡はない。いわゆる菌臭はあるが、これといった特徴的なにおいは無い。辛味などはない。 さび褐色から黄褐色の胞子紋から採取した胞子(e, f)にはいぼ状突起がある。KOHを加えるといぼの部分がやや鮮明な色を帯びた。胞子表面(e)と輪郭(f)に焦点をあわせたものを掲載した。切り出したヒダ切片(g)にはシスチジアはみられない。ヒダ実質部には頻度は低いがクランプがある(h)。担子器(i)の基部にはクランプを持ったものやら、無いものが混じっている。傘表皮(j)は繊維状の細胞からなっており、高い頻度でクランプをもっている(k)。 以上の特徴からフウセンタケ属のツバフウセンタケ亜属と思われるのだが、どの種に落ちるのかわからなかった。見た目の印象としてはフタイロニセフウセンタケに近いように感じた。フウセンタケ属の同定は難しい。今の自分たちにはやはりまだ全く歯が立たない。ふだんなら、見ても見ぬ振りをして通り過ぎるのに、うかつにも持ち帰ったのが失敗だった。 |
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昨日富士山に行ってきた。ハナビラタケ(a)、ヤマドリタケモドキ(b)、アンズタケ(c)、カノシタ、タマゴタケ、ベニテングタケ(f)は例年並に多数発生していたが、フジウスタケ(d)は数えるほどしか見られなかった。それに対してウスタケ(e)は7月初めから相変わらずよく発生している。 フサクギタケ(g)、キイロイグチ(h)、ニカワジョウゴタケ(i)、ヘラタケ近縁種(j)、コチャダイゴケ(k)、ケロウジなども広範囲に見ることができた。アセタケ属、フウセンタケ属はとても多くの種類がみられた。なかでも美しいくも膜(Cortina)をもった大型の幼菌(l)が幾つもみられた。また、イボタケ属のきのこがやけに目立つ。特に色鮮やかな幼菌がとても多かった。 それにしても今年の富士山ではテングタケ属、イグチ類の発生はきわめて悪い。県や地元鳴沢村のパトロールの職員が、今年はきのこの発生がとても悪い、とぼやいていた。 写真上段(a〜d)のきのこ、ニカワハリタケ、カノシタ、タマゴタケを食材として持ち帰ったので、夜はフランス料理風にして楽しんだ。特にヤマドリタケモドキがまるでヤマドリタケのような味わいを感じさせてくれた。かつて伊勢丹で行われた大イタリア展の折に購入して味わったヤマドリタケと、姿・味ともよく似ていた。写真(b)からはわかりにくいが、柄の上部には網目がある。網目部分などやずんぐりむっくりした姿の個体も撮影したのだが、デジカメ不調で、最終的にこの一枚しか残らなかった。 |
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茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園にケシボウズタケがでているという情報を7月中に2ヵ所から得た。すぐにでも行きたかったがなかなか行かれず、昨日ようやく出かけてきた。園内の広大な砂丘はケシボウズがどこに出ても不思議はないような地勢をしている。 摂氏40度に近い炎天下、熱射病に冒されながら砂浜を3時間ほど歩いたが、結局ケシボウズタケを見つけることはできなかった。しかし、これまで千葉県でしか見られなかったコナガエノアカカゴタケ(a)が発生しているのを確認した。 ひたち海浜公園に行く前の早朝に、東海村で社寺林とそれに続く浜を観察した。浜には意外なきのこがいろいろでている。砂浜と防風林との際あたりの砂地にテングタケ科のきのこ(b〜d)がでていた。鱗片に被われたダンダラ模様の柄はまるで鞘をかぶっているかのようだ(b)。ヒダは最初白いが触れるとゆっくり赤変する。なお防風林はシイ・カシ混じりの黒松林である。 社寺林に戻ると道端にムラサキナギナタタケが多数群生していた(e)。オニイグチモドキ(f)を初めイグチ類、テングタケ属、ササタケ属、ホコリタケ科のきのこも何種類か出ていた。 今朝は昨日採取したテングタケ科のきのこ(b〜d)を検鏡した。胞子はアミロイドで全体が灰青色に染まる(g)。ヒダ切片(h)にはシスチジアの類はない。ヒダ実質をさらに拡大すると非常に肌理の細かい散開型構造がみられる(i)。子実層(j)を検討した後、担子器(k, l)を確認した。傘表皮は砂と渾然一体となっており、結局観察することはできなかった。どうやらこれはフクロツルタケの可能性が高いように思う。まさかこんなきのこが砂浜に出るとは考えてもみなかった。 |
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早朝の日常観察では、もっぱら小型の簡易顕微鏡を使ってきた。気楽にどこにでも運べるので、睡眠中の家人を起こすことなく利用できる。食卓に置いてパンを齧りながら使ったり、キーボードのすぐ脇に置いて覗きながら結果を入力をする(a)、といった使い方が多かった。小型で軽いので外泊する場合などはいつも車に搭載して持ち歩いた。 対物レンズを上質なものに換え、コンデンサも交換して愛用してきた。入手時の価格こそ数万円だったが、自分でバラして整備し、対物レンズなどを上質のものに交換したりしたので、最終的にはかなりの出費となった。日常最も頻繁に使用してきたが、デジカメを接眼部につけるとやや不安定という難点があった。 性能はほとんど同じだが、少し大きめで土台が広く安定したもの(b)を購入した。最近は車に積んで泊りで外出する機会も減ったので、携帯性はさほど問題とならない。徹底して整備してもらったので、価格は当初予算の倍になってしまった。それでも安いものであった。長いこと使ってきた小型の愛機(a)は友人に譲ることになった。 新しい顕微鏡で子嚢などの観察をするつもりで、家の近くからマメザヤタケ(c)を採ってきた。大きな割にはとても柔らかい。断面をみると案の定、未熟である(d)。成熟個体では子嚢殼が明瞭に他と区別でき真っ黒に見える(f)[2002.9.21撮影]。念のために低倍率で覗いてみたが子嚢は非常に未熟で胞子はほとんどできていない(e)。今朝はこれ以上の観察は放棄した。 |
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さいたま市の秋ヶ瀬公園を歩いてみると、コナラやシデの幹にはセミの抜け殻がやけに目立つ。地上に目をやるとハナサナギタケを思わせるような虫草(a)や何だろうと思うような姿の虫草(b)が多数でている。ふと視点を変えると地表に白い花を咲かせたような姿のセミの成虫の死骸がころがっていた(c)。最初に見たものなどを掘り出してみると、セミの蛹やら成虫の姿がでてきた(d)。どうやらこれらはみなツクツクホウシタケのようだ。 ウッドチップの遊歩道の脇には何種類かの腹菌類がみられたが、最も鮮やかな姿をみせてくれたのはサンコタケ(e)だった。他にはツマミタケ、スッポンタケ、カニノツメ、ハタケチャダイゴケ、ツネノチャダイゴケが何ヶ所にもでていた。テングタケ科のきのこは相変わらず少ないが、アカハテングタケ(f, g)だけは幾つも見ることができた。イグチ類には一つもお目にかからなかった。 アカハテングタケの胞子(h)や担子器(k)はツルタケダマシと形・サイズともほとんど同じだ。ヒダを切り出してよくみてもシスチジアらしきものはみあたらない(i)。やや倍率を上げてみるとテングタケ属特有の散開型の実質が見える(j)。ツボの組織には球形で先端が房状になった面白い形のシスチジア(?)がみえる。傘表皮(l)は繊維状の細長い毛が絡んだような細胞に被われている。 |
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サーバー用に使っていたブック型パソコン(a)が突然動かなくなった。数日前からなんとなくプラスチックが焼けるような臭いが部屋に漂っていたが、臭原はこのパソコンだった。ケースを開けてみるとマザーボードの一部が焦げていた。ことは急を要する。マザーボードだけ購入するつもりで秋葉原に出向いた。旧型FlexATXタイプなので3000〜4000円も出せば楽に購入できるという算段だった。しかし装着可能なボードは1万5千円ほどすることがわかった。 ならば、いっそのこと気分転換に小さなキューブタイプにしてしまえと考えて、なるべく安いベアボーンキットを探した。よくしたもので、CPU(VIA C3)付きで2万円以下のものがあった。ダメになったブック型パソコンからハードディスク、CD-ROMドライブ、FDドライブ、メモリを流用して、新たにキューブタイプの小さなパソコン(b)を組み立てた。Celeron換算600MHz相当の能力だが、従前のCeleron333MHzに比較すれば格段に早い。サーバー停止は半日だけですんだ。 今日は午後から菌学会関東支部の「夏の集い」、写真コンテストに「風の悪戯」として当初、海辺のケシボウズタケの乱立群を出品の予定だったのだが、まともに写っていなかった。デジカメの合焦機能が不調で、砂上に屹立しているナガエノケシボウズタケはすべてピンボケだった。何度か修理に出したが、数ヶ月で再び同じ状態を繰り返す。やむなく急遽、キヌガサタケでお茶を濁すことにした。出品など恥ずかしいような写真だが、もはや後には引けない。 |
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何日か前に、千葉県立中央博物館から不明種で入っているケシボウズタケ属(a, b)を取り寄せた。標本番号(CBM FB-30241)は与えられているがまだ種名は明確になっていない。以前からこのサンプルはTulostoma striatumではあるまいかとの疑念を持っていたが、これまでは確認していなかった。採取地などの情報は採取者から直接詳細に聞いていた。同じ地点で、2002年12月7日〜2003年3月21日と5回にわたって観察したものはいずれもT. striatumだった。 FB-30241を詳細に検討すると、予測どおりT. striatumであり、2002年から2003年にわたって観察したものと同じ結果を得た。詳細についてはここでは省略したが、ここには2003年2月9日に採取したもの(g, h)とそのときに観察した胞子、弾糸の写真から一部を取り上げた。検鏡写真は、上段がFB-30241、下段が2月9日採取したものである。胞子表面(c, i)、胞子輪郭(d, j)、弾糸(e, f, k, l)のいずれを比較してみても同一とみなせる。 これらの結果から、2000年11月にFB-30241が採取された場所では2003年2月にも同一種が続いて発生を続けていることが確認できた。せっかく借り出したのに、しばらく見ることができず放置していたが、千葉中央博にはFB-30241についての観察結果をそえて昨日返却(郵送)した。 |
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