Top  since 2001/04/24 back


日( )

2003年8月20日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日午前中、親しい仲間と千葉県内房の浜にケシボウズの観察に行ってきた。7月に出向いた折にやっと出始めたばかりの幼菌(雑記2003.7.17雑記2003.7.21)が一ヶ月間でどの程度まで成長しているのかを観察するのが最大の目的だった。
 案の定、一ヶ月前にはほとんど地中にあった幼菌のほとんどが地表に姿をあらわしていた(a, c, e)。孔口の開いたものが目立った。地表に柄をあらわしている個体もいくつか見られたが、多くは頭部だけが地表にでていた。砂をどけてみると赤褐色のダンダラ模様の柄が現れた(b, d)。中には胞子で頭部が気褐色の粉だらけのものも見られた(e)。掘り出してみるとまだ若い菌が多く、頭部の孔口も開いていない個体がかなりある(f)。一方で、頭部がペチャンコに潰れたり、頭部と柄が分離して転がってしまっているものもかなり見られた。
 これまで内房のこの浜ではナガエノホコリタケだけしか観察されていなかったのだが、新たにTulostoma striatumとおぼしき子実体が見られた。外見からしてナガエノホコリタケ(a〜e)とは明らかに違う。これは今までは外房でしか確認されていなかったものだ。さらに、昨日観察した個体の中には、ウロコケシボウズタケではあるまいかと思われる個体もあった。

2003年8月19日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
 昨年(雑記2002.8.20)に引き続いて今年の日光でもオオカボチャタケ(a, b)がよく出ている。現地で傘表面に10%KOHをたらすと、すぐに濃赤色に変色した。消毒用アンモニアでも同じ現象が見られるが、KOHと比較すると赤変までにやや時間がかかった。分厚い肉部の断面(c)にはまるで年輪のように環紋がみられる。裏面の管孔部(d)から最初に組織を切り出した。
 硬質菌の検鏡では、薄めに切り出した組織片を、とにかくどこまでもほぐしていくことが基本だという。先端を研いでさらに細くした柄付き針2本を使ってほぐした。色々な場所から採取した組織のどこを探しても原菌糸(generative hyphae)しかない。いわゆる一菌糸型(monomitic)である(e)。薄膜の細胞壁の外側には小さな粒子がごみのように付いている。担子器(f)を取り巻く周囲の組織は棍棒状をしている。
 次に厚ぼったい肉部から剃刀で表面をわずかに削いで、同じく徹底的にほぐした。対物40倍でみると比較的大きな粒子が細胞壁の外側に多数付いている(g)。子実層面のそれよりもやや大きく密度も高い(h)。この部分もやはりmonomiticである。傘表皮から肉部、子実層面のいずれも一菌糸型で、大きなクランプが目立つ。硬質菌を検鏡するのは実に久しぶりだった。

2003年8月18日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 きのこ屋(高橋)さんからソライロタケ(a〜c)がでているとの情報をいただいたので、昨日朝現地に行ってきた。6月から7〜8回通ったのだが、その折には全く出ていなかった。傘表面ばかりではなく、ヒダから柄まで空色をしている(d)。柄の基部は白い菌糸で被われている(e)。触れたり傷つくと次第に黄色くなるが、摂氏50度で30分ほど乾燥させたらずいぶん色の感じが変わった(f)。
 胞子(g)の確認は楽だが、ヒダ切片(h)の切り出しにはとても難儀した。縁シスチジア(i)は棍棒状のものが多い。ヒダの子実層(j)がどうやっても鮮明に見えない。剃刀で切りだすとまるで納豆をつまみあげた時のように、色素を帯びた糸状の液が周りにまとわり付いてくる。ヒダ実質部の菌糸(k)は多数の水泡のようなものに満たされている。カラカラ寸前に乾燥した個体のヒダ実質にも、同じような多数の水泡状のものが見えた。子実層を明瞭に捉えるのが難しいので、軽く押しつぶして担子器(l)を引き出して撮影した。
 これまではイッポンシメジ科のきのこは比較的楽に切片を作ることができた。しかし今朝のソライロタケでは非常に難儀した。少なくとも数十回は剃刀をあて、カバーグラスも10数枚は無駄にしてしまった。ヒトヨタケ属の切り出しでもここまでの苦労はなかった。
 ソライロタケの出ている斜面には、他にも多くのイッポンシメジ科のキノコが出ていた。ウスキモミウラモドキやトガリウラベニタケ、ヒメコンイロイッポンシメジ、コキイロウラベニタケにそっくりなものが幾つもみられた。しかし、持ち帰って昨日直ちに検鏡した結果はいずれも近縁種ではあるが別種であった。確実だったのはキイボカサタケのみだった。

2003年8月17日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 昨日の早朝、日光を歩いて昼過ぎには帰宅した。先の台風と数日来の雨のせいか広範囲に冠水しており、川の推量はいつになく豊富だった。折れたり倒れた樹木がやけに目に付いた。興味をそそるきのこは少なかったが、馴染みの食用きのこはいろいろ出ていた。
 道を歩きながら遠くに目をやるとあちこちに白い塊がみられた。ハナビラタケ(a, b)であった。昨年に引き続き今年も豊作のようだ。タモギタケ(c, d)も相変わらずよくでているが、ホシアンズタケは低温が影響したのか、よい状態の個体は少なかった。ネコノシタ(ニカワハリタケ)(e, f)は大きく成長したものが目立った。スギタケモドキ(g, h)、ヌメリスギタケ(i, j)、ヌメリスギタケモドキ、ヒラタケ(k)、オシロイシメジ(l)、アンズタケカノシタなど「きのこ刈り」の対象となるようなきのこは豊富だった。テングタケ類・イグチ類は予測どおり少なかった。
 タモギタケ、ハナビラタケ、オシロイシメジ、ヤマイグチなどを少量持ち帰ったので、夜はキノコ鍋を楽しんだ。冷夏のせいだが、まさか8月にきのこ鍋をするとは考えてもいなかった。

2003年8月16日()
 
終日MSBLAST騒動
 
 コンピュータウイルスMSBLASTの駆除と感染防止対策は思いのほか面倒だ。駆除するだけなら無償駆除ツールをダウンロードして、ネットから切り離して実行すればよい。しかし、ネットにアクセスした瞬間にまた感染してしまう。感染するとせっかく起動したWindowsが数分のうちにシャットダウンされてしまう。さらに16日からはMSBLASTはMicrosoft社のサーバー攻撃を始める。だからMicrosoftのサーバーにはますますつながりにくくなる。やっとのことでつながってもOS修正プログラムのダウンロードに膨大な時間がかかる。ダウンロードが始まると次の瞬間にはOSがシャットダウンされてしまう。WindowsXPの場合はセキュリティレベルを「高」にすれば、シャットダウンまでの時間を多少は稼げるようだが、Windows2000やNTの場合にはそれも効かない。
 昨日も結局ウイルス駆除の作業に明け暮れた。早くきのこに専念できる環境に戻りたい。非生産的な作業で忙しいのは疲れる。まだ真っ暗だが、今日はこれから出かけてこよう。しかしお盆休みが明けたころに最も大きな混乱と困惑が待っていそうだ。

2003年8月15日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 先日の千葉県外房の浜辺でスナジクズタケらしいきのこに幾つも出会った。そのうち一株を持ち帰った(a, b)。胞子紋は黒紫褐色で、胞子(c)は水でマウントしてみると暗赤褐色をしている。ヒダ切片(d)を低倍率でみたところ側シスチジアらしき姿はみあたらない。
 しかし倍率を上げてみると面白い姿の側シスチジアが多数ある(f)。薄膜で透明な紡錘形のものと、先端に結晶物を帯び茶褐色で厚膜ものがある。なお、ヒダには多数の塩化ナトリウムの結晶のらしきものが無数に含まれている(e)。この結晶が邪魔して薄い切片を切り出そうとすると組織を潰したり、引きちぎってしまう。担子器(g)を確認した後、あらためて結晶を持った側シスチジア(h, i)をよくみると、基部が子実層の中まで深く伸びている。
 ヒダの縁には紡錘形やらボーリングピンのような姿の縁シスチジアがあるが、場所によっては先端に結晶を帯びた側シスチジアと同じものが見られる(j, k)。しかし、子ヒダの中には、縁シスチジアが全く見られないものもある。傘表皮の組織(l)は風船形や紡錘形の組織からなっている。
 採取した折はてっきりスナジクズタケ(Psathyrella ammophila)とばかり思い込んでいたのだが、どうやら別種のPsathyrellaのようだ。Psathyrella ammophila (Dur. & Lev.) Ortonの記述には確か結晶を帯びたシスチジアについての記述は無かったように記憶している。

2003年8月14日(木)
 
MSBLASTウイルス
 
 MSBLAST (WORM_MSBLAST.A, W32/Lovsan.worm, W32.Blaster.Worm, RPC DCOM WORMも同じ) による被害が広範囲に及んでいるようだ。7月17日に発見されたWindows(XP,2000,NT)の脆弱性「MS03-026」を利用して感染を広げるトロイの木馬型ウイルスだという。しかしなぜか8月12日に急激に被害が広まったようだ。昨日のマスコミ報道でもしつこいくらいにこの件を報道していたが、身近に何件もの被害があって、対岸の火事というわけには行かなくなった。
 一昨日から始まって昨日も被害にあった知人らから、何とかして欲しいといった要請があり、早朝から振り回されてしまった。友人宅でも購入間もないパソコンを設定しようとインターネットにつないだ瞬間にMSBLASTに侵された。対処・駆除などに思いがけず時間をとられた。
 お盆の帰省から戻ってインターネットにアクセスしたとたんにパソコンが異常終了してしまい途方にくれる人がかなり出そうだ。WindowsXP/2000/NTを使用している場合には、早めに対処しておく必要がある。なおWindows98/Meなどは感染することは無い。
 昨日・今朝はこのMSBLAST騒ぎのために、キノコ観察は全くできなかった。それにしてもまるで秋霖のような陽気だ。マツタケ豊作とか晩秋のキノコの発生が報道されている。10月のきのこはどうなってしまうのだろうか。

2003年8月13日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日早朝から昼にかけて千葉県外房の浜を何ヶ所か歩いてきた。どこの浜も海水浴客とサーファーであふれており、駐車スペース探しに思いのほか苦労した。一つの浜で頭部の径2mmほどの小さなケシボウズを見つけた。周辺を探索すると5〜6個の新鮮な個体が見つかった。いずれも柄がまだ柔らかく真っ白で、つい最近発生したものであることをうかがわせる(a〜c)。径2mmほどの個体はあまりにも小さいために不調のデジカメでは撮影できなかった。
 先日の台風による大雨のせいで砂が洗われて柄をあらわにしていた個体(b)がいくつか見られた。まだ孔口が開かず地表にやっと顔をだした個体(c)を一つ掘り出して持ち帰った(d)。外見からはTulostoma Striatumそのものに思われた。念のために顕微鏡で胞子(e)と弾糸(f)を確認したところほぼ間違いない。先月に引き続いて、8月にもTulostoma Striatumが発生することを確認したわけだが、まさかこんな暑い夏に発生するとは考えてもみなかった。
 この他に、スナジクズタケコナガエノアカカゴタケカヤネダケスナヤマチャワンタケ、ホコリタケの仲間、ニセショウロの仲間、ベニタケ科などが何種類か観察された。
 それにしても直射日光下の浜辺歩きはかなりしんどい。かろうじてケシボウズとスナジクズタケなどわずかなサンプルのみを採取して帰宅した。ビールがとても美味かった。

2003年8月12日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 今朝、冷蔵庫の野菜ケースから玉ねぎを出し、ふと見ると片隅に小さな採集袋が2つ残っていた。袋になぐり書きされたメモによれば8月5日富士山で採取されたものだ。すっかり忘れられ野菜の下になり、半分押しつぶされていた。残っていたのはヘラタケの仲間(a)と、コチャダイゴケ(b)だった。しまったと思ったが既に遅すぎた。このところの高温と湿気のためにかなり傷みが進んでいる。かろうじて切片を切り出すことができたので、一部を覗いてみることにした。
 ヘラタケの仲間(a)の子実層(b)はそのままではどういう構造をしているのかわかりにくい。メルツァー液を加えてみると、糸状の細長い胞子を8つ持った子嚢(c)がびっしりと並んでいる。側糸も同じような姿をしているので、よく見ないと間違えそうだ。
 コチャダイゴケについては、過去にも取り上げたが(雑記2002.9.9)、最初に実体鏡の下に置いて(d)、ペリジオール(小粒塊)の表裏を確認した。裏側にはへその緒はない(e)。チャダイゴケの仲間は大部分がペリジオールにへその緒をもっている。しかしコチャダイゴケにはない。それが大きな特徴だ。この小粒塊を切ると多数の胞子が飛び出してきた(f)。大きな胞子を持つハタケチャダイゴケは別として、ツネノチャダイゴケの胞子よりもやや小ぶりだ。

2003年8月11日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 海辺の砂地に出ていたイグチを数種類持ち帰っていたが、多くは冷蔵庫の野菜籠にそのまま放り込んだままとなっていた。今朝はそのうちの一つ(a, b)を検鏡した。傘表面はビロード状で粘性はなく、管孔部は白色で強く触れても変色しないが、一晩経過するとその部分が赤褐色に変色していた。柄は幼時から成菌になっても中実、傘とほぼ同色で網目や条紋などは無い。基部はやや膨らみ白色の菌糸に包まれている。
 胞子(c)は予期していたものとは全く違った形だった。念のためにKOHでもマウントしてみたが、色に変化は無かった。管孔部の実質は平行型でクランプは見つからなかった(d)。次に管孔部に平行に切り出した(e)。ちょっと見た目には側シスチジアらしきものは見えなかった。しかし倍率を上げていくと、担子器よりわずかに大きめのシスチジア(f)が多数見られた。縁シスチジアも同じようなサイズと形をしている。このイグチもまた不明種のまま放置されることになりそうだ。
 「顕微鏡下の素顔」は今年の4月29日に更新したままで、取扱種も134種にとどまっている。最近雑記で取り上げた、キクバナイグチヒメカタショウロツチグリの胞子なども掲載されていない。「キノコのフォトアルバム」に掲載の536種については、せめて胞子の姿だけでもすべての種について掲載したいとは思っている。しかし、ファイル容量と作業量は膨大なものになる。それに、約400種も追加と思うとつい億劫になって、なかなか取りかかる気になれない。

過去の雑記
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2003
2002
2001