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2003年7月31日(木)
 
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 だいぶ前からいわき市の浜ではスナヤマチャワンタケ(a)がでていると聞いていたが、先日(7月27日)いわき市四倉の浜に行ってみると幾つもの個体がみられた。スナジクズタケ、フミヅキタケ属なども出ていた。ケシボウズタケの仲間は1時間ほどの探索では見つけることができなかった。しかし、いかにも発生に適した環境の浜であることは確認できた。
 今朝は久しぶりにさいたま市の見沼地区に行ってみた。いつもどおり何種類かのヒトヨタケ属、コガサタケ属、フミヅキタケ属のきのこが目立った。強烈な匂いに引かれて近づくとツマミタケ(b)だった。近くには幼菌(タマゴ)が何個もあったので、そのうちの一つを切ってみた(c)。ハラタケ科のきのこが何種類もあったが、発生数が多かったのはオニタケ(d, e)、ナカグロモリノカサ、ナカグロモリノカサ近縁種(f, g)、ツブカラカサタケ(j)、ザラエノハラタケ、カラカサタケ(h)などだった。シロフクロタケ(i)は相変わらず発生している。
 佐野書店から7月文献案内が届いた。また、2003年7月 臨時菌類文献案内で紹介した「石川県のキノコ」は予定部数に達し締切ったということである。

2003年7月30日(水)
 
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 昨日たまたまマルミノノボリリュウのことがあるところで話題となったので、忘れないうちに初めて胞子を覗いたときに感じたことなどを記しておこう。
 一般にアミガサタケシャグマアミガサタケオオシャグマタケなどの大型盤菌の内部は空洞で、頭部や柄は意外と肉厚である。紙にたとえると厚手のボール紙製品である。マルミノノボリリュウに初めて出会ったとき、茶褐色の頭部の質感、トキ色の柄の美しさにほれぼれしたが、何よりも驚いたのは、まるで障子紙で作り上げたかように全体がとても薄いことだった。ちょっと強く触るとすぐに全体が壊れてしまいそうだ。だから形を崩さずに持ち帰るのに非常に気を使った。帰路の運転ではなるべく振動を与えないように細心の注意が必要だった。
 顕微鏡で覗いてみてさらに驚いた。胞子が完全な球形をしていたからだ。一般に大型盤菌類の胞子は楕円形をしている。球形の胞子を持ったものがあるとは思ってもいなかった。スライドグラスの上に30分間ほどきのこを放置するとガラス面に胞子堆ができた。これを覗いてみると球形の胞子(a)が見えた。完璧な球形である。メルツァー液を注ぐと胞子に黒い影が現れた。浸透圧のせいで球の一部が凹み気泡ができたようだ(b)。さらにそのまま5分ほど放置すると胞子が崩れだした(c)。胞子の膜はとても薄いようだ。ちなみに20%KOHを注ぐと直ちに胞子は崩壊した。
 切り出した切片を覗いてみると色素を帯びた側糸と8つの胞子を持った子嚢が見える(d)。子嚢盤の裏側、つまり托外皮層は円形菌組織、髄層は絡み合い菌組織をなしている(e)。メルツァー液に浸った子嚢をよくみると、胞子の凹んだ状態がよくわかる(f)。ちょうど柔らかいゴムボールの一部を指先で押してへこましたような姿が見える。

2003年7月29日(火)
 
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 雨はそこそこ降っているにもかかわらず、首都圏ではきのこの影が薄い。さいたま市の秋ヶ瀬公園も例年とはずいぶん様子が違う。今朝は群生していたツネノチャダイゴケ(a)を少し持ち帰った。カップの頭部が膜で被われた幼菌を切断すると白い菌糸層の中にペリジオール(小塊粒)が埋没している(b)。すっかり成長したペリジオールをもった成菌も切断してみた(c)。
 成菌からペリジオールをつまみ出し、底面を上にして4つほど並べてみた(d)。左上と右下のものをみるとへそのようなものが見える(d)。右上の個体は白い太目の紐がでている。左下の個体からは細い紐が長く伸びている。これらは「へそのお」ともよばれている。カップの中に雨粒があたると、内部のペリジオールが勢いよく飛び出してくる。その際にたたまれていたへそのおが長く伸びる。そして、周囲の草などにこのへそのおをまきつけて絡みつく。
 このペリジオールを一つ切断した(e)。へそのおが下面にみえている。これを顕微鏡に載せてみた(f)。へそのおの部分は細かい糸状の組織が密生している(g)。縁の部分は面白い形をみせてくれる(h)。中央部付近には空洞部分がある(i)。胞子(j)はハタケチャダイゴケに比べると圧倒的に小さいが、コチャダイゴケよりは若干大きめである。

2003年7月28日(月)
 
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 一昨日の雨でアラゲキクラゲが生き生きしている。倒木、立ち枯ればかりではなく、生垣からも多数のアラゲキクラゲがでている。注意してみると一見元気そうな樹木の上の方にはキクラゲがあちこちに見られる。落枝にはヒメキクラゲタマキクラゲが相変わらずでている。タマキクラゲというと春のきのこという印象が強いが、今年は各種のキクラゲが同時に見られる。
 今朝はアラゲキクラゲを覗いて楽しんだ。意外と短時間で白い胞子紋が得られた。水だけでマウントしてみるととても見にくい(a)。そこでフロキシンを追加した(b)。さらに照明方法を少し変えると立体的に見えてきた(c)。
 組織の薄切りは案外作りにくい。厚いゼラチン質の層が薄切りに抵抗する。いったん乾燥させてからコリコリになったものの方が切りやすい。今朝は生のプリプリのものから切り出した(d)。最初からフロキシンで染めて見やすくした。裏側の毛は低倍率でも明瞭に捉えられる(e)。子実層面を見たが、担子器の姿を明瞭な形でとらえるのは難しい。担子器をきちんと捉えようと思ったら、一度乾燥させてから切り出すと比較的楽にできる。
 菌懇会合宿に参加している間じゅうずっと雨だったので、結局カメラは全く使わなかった。イグチ類が比較的少なかったものの、かなり多数のきのこが観察された。ホンシメジ、アカモミタケ、シモフリシメジなども既に顔を出していた。

2003年7月26日()
 
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 団地の落ち葉から毎年多数でているきのこなのに、同定に今ひとつ自信がもてないものを取り上げた(a, b)。昨日団地で採取したものである。傘表面はなめし皮のような色合いをしていて、不規則な放射状のシワを持ったものが多い。湿っている時は条線がある。ヒダは疎、柄は中実で下半分は白〜淡黄色の密毛に被われている(b)。齧ってみるとやや辛みがある。
 胞子紋を採取したのだが、うっかり忘れて一日放置してしまった。このため観察した胞子は半分近くが菌糸を伸ばしていた(c, d)。いわば種子が新芽を出した状態である。(d)はメルツァー液に浸してみたものだ。ヒダ実質はとても細かい細胞からできており、平行気味の錯綜型をしている(e)。側シスチジアも縁シスチジアも無い(e, f)。傘表皮は複雑にもつれているが、基本的には平行菌糸からなっている。モリノカレバタケ属(Collybia)のアマタケ節まではよいのだろうが、現在の自分たちのレベルでは種名まではわからなかった。昨年も迷って、結局今朝も同じことを繰り返していた。きのこの会の採集会などの場にこのきのこが持ち込まれたら、やはりワサビカレバタケという名がつくのだろうか。それともこれは正真正銘、ワサビカレバタケなのだろうか。
 そろそろ出発時刻になる。昨日から始まっている菌類懇話会の合宿に今朝から参加である。早朝の常磐道は車も少ないから快適に走ることができるだろう。

2003年7月25日(金)
 
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 数日前から気になっていたきのこ(a)があった。センボンイチメガサだとばかり思っていたのだが、柄を見るとツバが無い(b, c)。幼菌を見ても痕跡すらない。雑木林の切り株の根元にかなり目立つ状態で数ヶ所に発生していた。何度かは見てみぬ振りをして通り過ぎていたのだが、ついに撮影して一部を持ち帰ってしまった。
 撮影もした、持ち帰ったとなるといちおう調べなくてはならない。胞子紋から採取した落下胞子をみるとセンボンイチメガサなどとよく似ている(d)。KOHを使うと胞子の色は明るい黄色になったが、メルツァーでは反応しない。ヒダを切り出してよくみても側シスチジアはない(e)。ヒダ実質にはクランプがある。縁シスチジアは薄膜で曲がった棍棒形からやや紡錘形(f)。
 柄にツバが全くないので、センボンイチメガサとはちがう。胞子が平滑なのでコレラタケの線は当然ない。側シスチジアがないのでクリイロイチメガサでもない。
 保育社の図鑑によれば、センボンイチメガサ属(Kuehneromyces)には「世界で9種が知られ」とあり、ヒメアジロタケモドキという名称のきのこが記述されているが、図版も記述もないのでよくわからない。手持ちの文献からは探り当てることはできなかった。

2003年7月24日(木)
 
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 近くの公園で腹菌類だけ探して見て回った。このところチャダイゴケの仲間がやたらに目に付いたからだ。ツネノチャダイゴケ(a, b)とハタケチャダイゴケ(c, d)は大きな群れをなしていた。一方コチャダイゴケは汚れたような小さな群れが一つあっただけだった。今朝はスジチャダイゴケは見られなかった。草むらではサンコタケ(e, f)が異臭をはなっていた。雨の中での撮影はしんどい。結局こられの3種のだけしか撮影しなかった。暗かったのでマクロクールライトを使った。
 昨日八王子から簡易顕微鏡を何台か運んだ。古い単眼だが専門家に徹底して整備・調整してもらった。道路渋滞がひどく本来なら1時間半ほどの行程に4時間以上もかかってしまった。そのため、帰宅してこられの顕微鏡を一台一台見比べているうちに夜中になってしまった。午前中に採取したキクラゲ類を検鏡材料に使った。現在日常的に使用している単眼簡易顕微鏡よりもはるかに見えがよいので、自分でも一台欲しくなってきた。

2003年7月23日(水)
 
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 北海道上川町の佐藤清吉さんからタマムクエタケを送っていただいた(a, b)。一つの菌核から2つの子実体がでている。傘が一つ欠けているのは、佐藤さんが検鏡に使ったからだろう。珍しいきのこではないのだが、ずいぶん長いこと採取していない。今年も何度か出会ったが、掘り出して菌核を確認した時点で納得し、持ち帰ることはなかった。タマムクエタケは顕微鏡で覗かなくても楽に同定できるきのこである。そのためふだんほとんど持ち帰ることはない。
 このきのこは目視だけでも楽に同定できるばかりではなく、顕微鏡で覗くととても楽しい姿をみせてくれる。やや乾燥気味の個体からヒダを切り出した(c)。ヒダの先端には縁シスチジア(d, g)が多数見える。これは特に変わった形をしているわけではない。
 しかし、側をみると面白い形の側シスチジアが見える(e, f)。手のひらやらじゃんけんのチョキ(はさみ)を連想させる。これはヒダの側(e)から付け根の部分(f)まで多数みられる。「顕微鏡できのこを覗いてよかった」と思わせてくれる。見ているだけで楽しくなるので、いくつかをランダムに撮影してみた(h〜k)。胞子(l)はいかにもフミヅキタケ属といった形と大きさだ。

2003年7月22日(火)
 
(a)
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 今の季節、雑木林や芝生などを歩くと、紫色の小さなイッポンシメジ科(Entoloma)のきのこがいろいろ観察できる。コキイロウラベニタケ、コムラサキイッポンシメジ、ヒメコンイロイッポンシメジ、アオエノモミウラタケなどのアオエノモミウラタケ亜属(Leptonia)の仲間だ。いずれも傘や柄に紫色の色素を含んでおり、柄は長く繊細で脆い。
 先日高速道路のパーキングエリアで10分間ほど観察したところ、この手のきのこが5〜7種類ほど見られた。それらのうち明瞭に姿のことなる3種類を持ち帰った(a〜f)。胞子紋はその日のうちにすぐに採取しておいた。いずれも新鮮なうちはヒダの色は白いがやがて肉色にかわっていく。傘表面の紫色も老菌になると紫褐色から茶褐色に変わっていく。
 今朝は冷蔵庫に保管しておいたこれら3種類のきのこを観察しはじめた。最初にヒダ切片をみるといずれも同じようなシスチジアをもっている。サイズも形も実によく似ている。胞子にいたっては形といいサイズといい、ほとんど同じようにみえる。ちなみに(a, b)の胞子が(g)、(c, d)の胞子が(h)、(e, f)の胞子が(i)なのだが、これらを比較するかぎり違いはほとんど感じられない。これら3種とも傘表皮の構造もほぼ似通っているし、担子器やヒダにはクランプは見つからなかった。(j)は(e, f)の老菌の姿である。
 ヒダや傘表皮の様子は、いずれも2003年7月8日の雑記で紹介したものとほぼ似通っている。ただ、これら3種には側シスチジアがみられた。当初はこられ3種のそれぞれに「××ではあるまいか」と推定していたのだが、検鏡を進めて行く過程で、疑問だらけとなり、これ以上の探索は断念することにした。記録・撮影も膨大になりそうなのでやめにした。
 この段階で三つの選択肢がある。ひとつはEntolomaの専門家に観察データをそえてサンプルを送ること、今ひとつはさらに時間をかけて自分で徹底的にしらべること、もう一つはここで放棄してしまうこと。今回は(も?)最も安直な第三の道、つまりサンプルも記録も廃棄する道を選んだ。作成したプレパラートの撮影もしなかった。
 昨夜相当飲んだらしく、まだアルコールが抜けていない。仕事の前にシャワーでも浴びて酔いをさまさねばなるまい。

2003年7月21日()
 
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 内房の浜で先日ナガエノホコリタケが多数発生しているのを確認したが(雑記 2003.07.17)、昨日早朝あらためて菌友のS氏と同所を訪れた。
 発生地は水際から20〜30メートルほどの位置にありコウボウムギとコマツヨイグサが疎に生えている。頭部を砂表に現している個体は7〜8個(a)あるが、その大部分は先日周囲の砂をどけておいたものだ。(a)の個体は先日孔口を開きはじめたばかりだったが既に形が崩れている。
 これはと思う場所を選んで(b)、表面の砂を少しずつどけていくとウサギの糞のような丸い形が見えてきた(c)。さらに砂をどけていくとケシボウズの柄がみえてきた(d)。ここから先は霧吹きを使って砂をどけた(e)。最終的には根状菌糸束を伴った個体が7〜8つ群れていた(f)。掘り出したものを紙の上に並べた(g, h)が、根状菌糸束は柄の基部ばかりか頭部からも出ている。
 あたりをつけた場所を掘っていくと次々にケシボウズが姿をあらわしてくるが、それらの大部分は長い柄を持っていた。担子器の姿を確認したいので幼菌を探した。柄ができていない幼菌は容易には見つからなかったが、なんとか探し当てた若い菌を並べてみた(h)。
 幼菌から成菌まで4つほどを半切した(i)。これらはいずれも孔口は開いていない。帰宅後、柄のまだほとんどできていない幼菌からグレバを取り出して覗いてみた。ところどころに担子器ではないかと思えるものがみえる(j)。これらは薄膜の菌糸(k)の側面から短い棒状のものが出てその先に4胞子をつけている。この菌糸は厚膜の偽弾糸(l)とは明らかに違っている。この薄膜の菌糸(k)や担子器はごく若い幼菌にしかみられない。成熟にともなって溶けてしまうようだ。
 なお外房の九十九里でも小型のケシボウズ(Tulostoma striatum)が新たに5〜6個発生しているのを確認した。そこから2kmほど離れた位置で昨年冬に発生を確認した大型のT. striatumは全く発生していなかった。付近にはドングリタケの新鮮な個体が4つほどみられた。

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