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一昨日、千葉県の房総半島中央部の丘陵地帯で、再びクヌギタケ属のきのこ(a〜c)に出会った。これは先に取り上げた(2003/1/19雑記)ものと同じところに出ていたので、たぶん同じ種だろう。かなり腐朽の進んだホソバタブの立ち枯れや倒木からでている。ヒダは直生から垂生であり、柄の基部には根状の白毛に覆われている(c)。発生時期、色、姿などからセンボンクヌギタケだろうとは思うが、傘表皮の構造などをていねいに観察していないので断定はできない。 なお、山渓フィールドブックス「きのこ」ではセンボンクヌギタケを「針葉樹の切株に発生する」と記述されているが、実際には針葉樹に限らず、冬から初春にかけて多くの広葉樹から発生している姿がみられる。これまで見てきた範囲では針葉樹にでるものと広葉樹にでるものを比較しても、ミクロ的な相違は感じられない。多分同一種としてよいのではないかと思っている。 同じタブの腐朽樹からは新鮮なマユハキタケ(d)が多数発生している。なお、ここではエノキタケ、キクラゲなどの大群落も見られた。風がとても強く寒い一日だった。 |
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迂闊だった。昨日千葉県九十九里浜の海岸でケシボウズタケ(a〜c)を観察したのだが、いいかげんな観察しかせず、いいかげんな撮影をして、頭部しか採取してこなかった。てっきり以前観察していたものと同じTulostoma striatumであって胞子には肋骨状の網目を持った隆起があると思っていたからだ(2002/12/17雑記、2002/12/9雑記、2002/12/14雑記)。 帰宅後に持ち帰った頭部をつまんでスライドグラスの上で逆さにして孔口から噴出させた胞子をそのままの状態でみた(d)。この瞬間に「しまった!」と思った。表面には隆起ではなく疣のようなものがみえたのだ。直ちに水でマウントして胞子を見た(e, f)。表面に焦点(e)、輪郭部に焦点(f)を据えたものを並べた。さらに弾糸のあちこちを探しても拳状の節が見つからない。 今回見つけたケシボウズタケは以前見た場所の近辺に7〜8個体、そこから数十メートル離れた場所にポツリポツリと単生していた。全く同一の場所は1月2日に克明に探している(2003/1/3雑記)。このときには無かったから、その後に地表に現れたものだろう。ミイラではなく比較的最近地表に顔を出したものだ。柄はまだ柔らかく、いったん凍結したせいか頭部と柄はいとも簡単に分離してしまった。昨日は愚かにもこの柄の部分を放置してきてしまった。 きちんとしたサンプルを持ち帰っていないので、このケシボウズタケがどの種に属するものなのかはわからない。いずれまたきちんとしたサンプルを採取しに出向かねばならないが、どうやらこの地域には最低でも2種類のケシボウズタケが発生することは間違いない。 |
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昨日夕方、秋ヶ瀬公園の近くまで行ってピスの材料を採取してきた。わずかな収穫はニワトコとキビガラである。細いタケで髄を押し出そうとしたのだが、今回のものは節が多かったためかうまくいかなかった。やむなく樹皮と木質部を剥いて髄をとりだした。この作業には以外と時間がかかり指先も痛くなった。しかし、天然材の髄は発泡スチロールの代用ピスに比べると、適度の柔らかさゆえとても使いやすい。 髄も代用ピスもないときは、しばしばダイコンやニンジンを使うこともある。これはしくじると濡れた切片がダイコンなどにこびりついてはがすのに難儀することになる。やはりニワトコやヤマブキの髄から作ったピスが最も使いやすい。 今日はこれから神奈川県のM夫妻と一緒に千葉県の九十九里浜まで行って来ることになっている。一昨日は終日雨だったので多少は期待できるだろう。まだ暗いがそろそろ出発時間だ。 |
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1月25日雑記のシロカイメンタケについて菌糸写真(1/25 e)を「生殖菌糸しか見つからない」と記述したが、これは初歩的な誤りであった。これは骨格菌糸ではあるまいかと指摘を受けたので、撮影データをよく見ると確かに隔壁がない。つまりこの写真(e)は骨格菌糸でありここには生殖菌糸は写っていない。重なり合った骨格菌糸を隔壁ありと見誤ったものだ。 今朝同一サンプルからプレパラートを作り油浸100倍で撮影した。(a)は対物40倍で見たものだが、ここには原菌糸と骨格菌糸の両者がみえるように思える。(b)は油浸100倍でみた生殖菌糸でクランプも何ヵ所かにみられる。子実層の部分(c)には担子器らしきものが見える。柄付き針を2本使ってこの部分をバラしてみた(d)が、担子器の根本はうまく捕らえられなかった。 それにしても原菌糸、骨格菌糸、結合菌糸のいずれから構成されているかという菌糸型(miticシステム)の判定にはかなりの修練が必要だ。硬質菌は傘と柄をもったきのこに比べると、切片作りは比較的楽だが、内容の判定がとても難しい。隔壁さえ確認できれば原菌糸と判定できると思っていたのにこの有様である。改めてヒダナシタケ目の検鏡の難しさを感じた。 |
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さいたま市の秋ヶ瀬を一回りしてきた。ヒラタケ、エノキタケを削ぎ取った跡があり、その脇には大きなアラゲキクラゲが群れをなしていた。ハタケチャダイゴケが霜柱に押し上げられながらもしぶとくペリジオールをとばしている。他にはヒダナシタケ目の硬質菌しかみられない。 久しぶりにコウヤクタケの仲間(a)を持ち帰った。半背着生で縁の方では傘をつくって狭い棚状をなしている(b)。子実層面を薄く切り出すと結晶に覆われたシスチジア(c)が目立ってみえる。拡大してみると厚膜で(d)、しばらくKOHに浸して放置していたら結晶は溶けてなくなってしまった。他の部分を切り出して再確認してみると、このシスチジアは子実層の底の部分から伸びていて(e)、多くは子実層面に埋まっている。担子器や胞子は見つからなかった。 組織は単純で原菌糸のみからなっている(f)。いわゆるモノミティック(monomitic)で、クランプはない。子実層表面近くの組織には手を広げたような姿に分岐しているものもある(g)。 採取したときは色あせたカミウロコタケだろうと思っていたが、この仲間には類似のものが多数あるのでよくわからない。コウヤクタケの仲間は、外見はパッとせず絵になりにくいが、顕微鏡下には興味深い世界が広がっている。胞子の形も異形細胞も実に変化に富んでいておもしろい。 |
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1月19日の雑記で紹介したクヌギタケ属のきのこを少し詳しく調べてみようと思い、まずはいろいろと観察してみることにした。ヒダの付き方は垂生気味にみえた(a)のだが、ルーペでよく見るとどうやら直生(b)のようである。カバーグラスに落とした胞子をのぞいたところ、透明なのでそのまま撮影してもわかりにくい。そこでメルツァーを少量たらしてから撮影した(c)。 きのこは先日採取した後フィルムケースに入れた状態で冷蔵庫に保管しておいた。このため採取時とほぼ同じ状態を保っていたのだが、ヒダの三分の一ほどが虫に食われていた。ヒダ(b)をよく見ると微小な黒い虫が動き回っているのが見えた。採取から1週間になる。無理もない。 ヒダ切片を切り出そうと試みたのだがみごとに失敗した(d)。何度も試みているうちに時間切れとなり、今朝はヒダの詳細な観察は断念した。子実層やら担子器などは観察できたが、切片が厚すぎてデジカメでの撮影はできなかった。久々に5,6枚の切片すべてが失敗である。 こういった小さなきのこのヒダ切片は実体鏡の下で作業をしないとうまく切り出すことはむつかしい。今回は、2.5倍レンズのついたヘッドルーペをかぶって、傘を指先で掴みそこに直接カミソリを当て切り出しを試みたのだが、結局厚すぎて使い物にならない切片となってしまった。面倒がらずに、最初から実体鏡を引っ張り出してその下で作業をすればよかった。 |
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先日(2003/1/18)千葉県南部の神社に寄ったとき、スダジイの老木から白い大きなキノコ(a)が何株も美しい姿をみせていた。一見したところ乾燥したマスタケかシロカイメンタケのように見えた。比較的低い位置に出ていた株の一部を持ち帰って観察したので結果をメモしておこう。 乾燥してひだの縁(b)は内側に巻き込んでいた。割ってみる(c)と傘肉は稠密な組織からなっており淡橙色をしている。管孔部の長さは20〜30mmほどある。管孔(d)は小さく3〜4個数/mmある。触った感触は、乾燥したニワトコの髄のようでとても軽い。この時点でシロカイメンタケだろうと見当をつけたが、検鏡してみないとなんともいえない。 最初管孔部から組織の一部を切り出して覗いたが、生殖菌糸しか見つからない(e)。結合菌糸は見つからない。傘肉部の組織(f)をみると骨格菌糸が見つかった。水だけだとほとんど何も見えないのでメルツァー液で染めた。さらに倍率を上げて見たところ、所々にクランプのようなものも見える。油浸100倍は使わなかったので胞子の観察はしていない。 マスタケあるいはアイカワタケならば、結合菌糸を持ちクランプは無いはずだから、姿形がよく似たシロカイメンタケだろうと判断した。乾いたときの感触もマスタケとは少し違う。 森林総研の服部氏にみていただいたところ、シロカイメンタケということであった。その中でも南方系のタイプで本州では採取例は少ないらしい。なお、シロカイメンタケの学名はTyromyces(Piptoporus) sambuceusというが、Sambucusというのは潅木のニワトコのことである。乾燥するとニワトコの髄の様な感触になることが学名の由来なのだろうか。 |
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昨日は休みを取っていたので、久しぶりに川越方面に車を走らせた。途中から雪となり道路はひどく渋滞し、やっとのことで現地に到着すると一面真っ白であった。そこでキノコ観察は放棄してニワトコやヤマブキを求めて歩き回った。結果は徒労であった。ピスを入手するのも楽ではない。ニワトコの樹も民家や公園にならあるのだが、雑木林や荒れ地などではなかなか見つからない。帰りもまた激しい道路渋滞がまっていた。やはり当分の間は、発泡スチロールの代用ピスを使うしかなさそうだ。明日は東急ハンズに寄って発砲スチロールを買ってこよう。 | ||
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トップページに新たに「文献案内(佐野書店)」という項目を設けた。佐野書店といえば、知る人ぞ知る菌類関係のもっともホットで信頼の置ける情報源である。 きのこを始めた初期の頃には、名前を調べるのに山渓カラー名鑑「きのこ」や保育社「日本新菌類図鑑(T,U)」など日本で発行された図鑑だけに頼っていた。きのことの関わりが深くなってくると、国際社会ではすでに名前が付いているにもかかわらず、国内では名無しのままであったり、誤った概念が平気で通用している事実を否応なしに知らされる。さらに正確な検鏡図が掲載された図鑑にいたっては国内にはほとんどない。 そんなときに非常に役立ったのが海外の菌類関係の文献であった。多少なりとも深く掘り下げて調べようとすれば、日本語の文献で期待に応えてくれる書籍は、残念ながらほとんどない。ジャンルごとの専門書ばかりではなく、HOW TO IDENTIFY MUSHROOMS TO GENUSシリーズのような、基礎的で重要な概念をやさしく体系的に記した書籍などは皆無である。 外国のきのこ文献を紹介してくれたり、他よりも安く入手できるよう斡旋してくれる存在は何者にも代え難い。たしかにAmazon.comや丸善などを通じて文献を購入することもできるが、それには広範な情報収集能力と深い知識が必要となる。だから、毎月「きのこ文献情報」を流して斡旋してくれる「佐野書店」はとてもありがたい。菌類はいうに及ばず該博な知識を持ち国際感覚豊かな佐野悦三氏にして初めて可能な営みだろう。 現在は「佐野書店」はまだ「きのこ雑記」の中に仮住まいの状態である。だが、いずれ装いも新たに独立したホームページとして開設されることになる。 |
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ようやく一昨日雨が降ったので、今朝久しぶりにさいたま市の見沼地区に行ってみた。例年だとたいていヒトヨタケ属のきのこがでているのだが、ウッドチップからは何もでていない。切り株、立ち枯れ、倒木などにはエノキタケ(a, b)、ヒラタケ(c)、アラゲキクラゲばかりが目立つ。最近はこれらのきのこは見つけてもほとんど持ち帰らない。落枝にタマキクラゲ(d)がみられたが、ポツリポツリと一つずつ離れて発生している。こういう形での発生はあまり見たことがない。その同じ枝にはクロコブタケ(e)が比較的若い状態で多数ついている。一つをナイフで切断してみるとまだ柔らかい。乾燥のために干からびて縁が丸まっていたスエヒロタケ(f)も雨のおかげか元気を取り戻して楽しい姿で並んでいる。期待していた馬糞堆からは何も発生していなかった。 | |||||||
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昨日の雑記(2003/1/20)でヒメツチグリ科のキノコについて、「弾糸は厚膜で途中には分岐などもみられない」と記述したが、何となく気になったので今朝再び少していねいにさがしてみた。まず柄付き針で弾糸を少し取り、スライドグラスに乗せてみた(d)。この範囲をすべて調べてみようと思い、倍率を上げて探してみると、2カ所に分岐がみられた(e, f)。ただ、(d)の視野の中のすべての弾糸についてたった2ヵ所にしかないほど分岐は少ない。クランプらしき痕跡がないかと探してみたがこれは見つからなかった。ついでKOHとメルツァー液で色がどのように変わるかもみたが、特に茶褐色に染まるとか黒くなるといったような反応はない。Geastrum fornicatumに近いような気がするが、とりあえず、内皮基部の柄の様子と孔縁盤付近を中心に撮影したものを再度取り上げておいた(a〜c)。 | |||||||
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