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3月13日に採取したもののうちの柄が短い方のケシボウズタケ属を再検討した。もっとも気になっていたのが胞子の表面であった。あらためて確認してみるとどうやら疣状突起に被われているとみてよさそうである(a, b)。今回はフロキシンで着色した5%KOHでマウントした。 最初簡易顕微鏡で窓際光を使い斜光照明気味にしてみた(a)。自然光でみても胞子表面は疣状突起に被われていた。次にプレパラートを別の顕微鏡にもって行ってケーラー照明による斜光照明で胞子表面付近に焦点を合わせてみた(b)。やや長い疣状突起は染色剤を変えたり、照明方法などを変えると崩れた網目模様のようにもみえる場合のあることが判明した。先の観察ではそれが強調されてみえたようだ。 別の個体からの胞子の輪郭部に焦点(c)をあわせた後、暗視野照明にしてみると胞子が黄金色(d)に輝いてとても美しく印象的だった。 明瞭な根状菌糸束を持っていることや孔口周辺に襟帯を持っていること、弾糸に多くの拳状隔壁などを持つことなども考慮すると、これはアラナミケシボウズタケではなく、ナガエノケシボウズタケ(ナガエノホコリタケ)としてよさそうである。 |
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久しぶりに、というか「きのこ雑記」開設以来はじめてトップページの写真を取り替えた。長いこと表紙に使っていた花瓶型の白い小さなきのこはいまだにその素性は明らかではない。今日から新しく使うことにした写真はケシボウズタケ属のTulostoma striatumである。写真をクリックすると「トップページのきのこ」という記事に飛ぶのは従来と変わりない。なお、背景、全体の雰囲気などは以前とまったく同じである。 久しぶりに「キノコのフォトアルバム」にケシボウズタケ属1としてTulostoma striatumを新規に追加した。あわせて、「顕微鏡下の素顔」にもミクロの姿を追加した。 菌類の海外文献・書籍専門店の佐野書店から3月の文献案内が届いた。申し込み締め切りは4月5日(土)となっている。 |
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きのこの姿があまりにも少ないので、商品として販売されているマッシュルーム(a)を先日もらったので、これを覗いて楽しんだ。縦に切断してみる(b)と、いかにもハラタケ科のきのこといった様子で、傘と柄がすぐにでも分離しそうだ。離生のヒダやら膜質のツバもよくわかる。 ヒダ切片を見ると子実層は平行型(c)でクランプはない。縁シスチジア(d)は明瞭に捕らえられるが、側シスチジアは見つからない。担子器(e)は大部分が2担子型である。まだ傘が全く開いていなかったこともあろうが、胞子(f)はやや小振りであった。 最近刊の小川真著「キノコは安全な食品か」(築地書館)を読むと、マッシュルームは薬漬けで、消費者不在ともいえる方法で生産されていることがわかる。公開資料だけに基づいて記述されているにもかかわらず、商品としてのきのこが如何に危険な不健康食品であるかを知らされる。通読すれば「きのこはちっとも健康食品ではない」ことがわかる。きのこ生産者や行政にとっては目の上のたんこぶのような書籍だろう。 |
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3月13日に2番目に採取した柄の長いケシボウズも検鏡してみた。これは最初からすぐに油浸100倍でみた(a, b)。焦点を胞子表面(a)に合わせ、次に輪郭部(b)に合わせて見た後、弾糸の拳状節(c)を確認した。昨日に引き続きこれもフロキシンで染めたり、メルツァーで染めてみたが、ここではメチレンブルーで染め、胞子表面から輪郭部まで焦点を徐々に下げて撮影したものを取り上げた(d〜f)。エタノールで処理した後メチレンブルーで染めたのだが、途中で電話やら来客があり、しばし放置しておいたらすっかり青みが強くなってしまった。 孔口部と外皮はやや異なるものの、検鏡結果は先日のもう一つのタイプ(雑記 2003/03/14)とよく似ている。こちらのケシボウズは柄が長く基部にむかって膨らみ、その先には根生菌糸束がある。最初これはナガエノホコリタケ(ナガエノケシボウズタケ)かもしれないと考えていたのだが、胞子表面の様子が単純な疣状でもなければ刺状でもない。 |
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さいたま市で先日数ミリ程度だったトガリアミガサタケの近況である。3月前半の寒さとあたり一面踏みつけられてしまったことなどあって、微小サイズだった幼菌のほとんどは死滅してしまったが、かろうじて生き延びたものは40〜70mmほどに育っている(a〜c)。この周辺には8〜15mm程度まで成長したまま干からびてしまった個体がいくつも転がっている。その脇で、つい最近になって新たに出てきたものが、今ようやく5〜12mm程度に育っている。50mmほどに育った個体をいくつか持ち帰ったが、これらはまだ幼菌であり子嚢などは未完成である(d, e)。それでも3月13日の時点よりはやや発達している様子がわかる。今日はこれから菌懇会の例会があるのでじきに出発せねばならない。 | ||||||
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千葉県内房の浜で3月13日に最初に採取したケシボウズ(a, b)を検鏡した。頭部が柄から切り離されて多数転がっていたので、いっしょに持ち帰った(a)。それらの孔口部(b)をみると小繊維状の房毛をなしていたように思える。管状ないし円筒状をなしていたとは考えにくい。 胞子表面(c)、輪郭(d)などをみると、単純な刺とか疣というより、やや隆起した網目の断片のような模様が見える。弾糸には拳状の節(e)が多数見られる。胞子表面の様子が何とも捉えにくいので、メルツァーやらフロキシンなどで染色してみたが、あまり効果的ではない。何気なくふだんはほとんど使うことのないメチレンブルーを使ってみた。弾糸の青色はメチレンブルーの色だ。 本来ならコットンブルーで染色すべきなのだが、手元にない。そこで、対物40倍にして胞子プレパラートにメチレンブルーを少し注いでみると意外と鮮明に見える(f)。そのまま油浸100倍にかえて、焦点位置を上から徐々に下げながらいろいろな位置で覗いてみた(g〜j)。それらのうちから表面(g)、表面のやや下(h)、胞子輪郭部(i)、それよりやや下(j)の映像を並べてみた。 これは採取当初、外形的な特徴と簡易顕微鏡などで覗いた結果などからアラナミケシボウズタケ(Tulostoma fimbriatum)ではあるまいかと考えていたのだが、それにしては胞子表面の模様がやや違うように思える。光学顕微鏡レベルでは最終的な種の同定は無理かもしれない。 |
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昨日早朝から午前中にかけて千葉県内房の浜にケシボウズを探しに行ってきた。いくつかの浜を歩いたが、そのうち2ヵ所でケシボウズに出会うことができた(a, b, d)。富津岬は過去にも採取実績があり、砂浜と植生からいかにもケシボウズが出そうな条件が揃っているのだが、今回は一つも出会うことができなかった。今回出会ったものは、これまで外房九十九里浜で出会ったいくつかのケシボウズともまた違った種類のようである(雑記2002/12/9、同2002/12/17、同2003/1/3、同2003/2/7、同2003/2/8、同2003/2/11)。 最初に出会った個体(a, b)はハマニンニクが多数生えている砂地に発生していたが、頭部と柄が分離してしまって転がっているものが多数あった。掘り出して3つばかり並べてみると(c)、全体に柄が細い。ややミイラ化していることもあり、孔縁部は筒状というよりはフサ状に近いように見えるが、詳細に観察することはできなかった。 次に別の場所で出会った個体(d)は、周囲にイネ科植物は全くなく水際から予想外に近い砂地に出ていたので、それまでの常識が覆ってしまった。この付近にはコウボウムギやハマニンニクなど全くなく、砂が激しく動いて不安定な場所である。掘り出してみると柄が非常に長い(e)。頭部の径が12〜14mmほどあり、柄の長さは65〜75mmほどもあった。今回採取した両者を自宅で並べて撮影してみた(f)。柄の長さと太さがずいぶん違う。 今の時期に見られるケシボウズタケの多くは昨年11月から今年1月末頃までに発生したのだろう。しかし、今の時期でも頭部の孔口が未だ開かず比較的若い個体もあった。これは2月頃まで新規発生が続いていたことをうかがわせる。ただ、頭部が柄から分離して転がっていた個体をこれほど多く見たことはなかった。この様子だと月末には全く見ることはできなくなるだろう。 |
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先日さいたま市で顔を出しはじめたトガリアミガサタケ(雑記 2003/3/5)は、その後の低温やら犬の散歩などによる攪乱のためか、成長具合は芳しくない。3月5日以来連日の低温で、幼菌が霜柱に押し上げられて倒れているものがいくつもあった。その結果、地下の菌糸と子実体が切り離されてしまったように見える。成長が止まってしまったのはそのせいだろうか。7日に大学構内に出てきたもの(雑記 2003/3/7)も同様である。 少しだけ大きくなったもの(a)を無駄を承知で顕微鏡で覗いてみた。予測通りに子嚢盤はほとんど未成熟(b)であり、胞子は全くできていない。側糸になると思われる部分も未分化の状態である。気温上昇後に子実体原基を作るものが今後成長を始めることになるのだろうか。いずれにせよ成菌のトガリアミガサタケを見られるのは今月末あたりからだろう。 |
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さいたま市の秋ヶ瀬公園でも所沢市の航空公園でも、ウッドチップからは全くキノコが出ていない。数日前にはさいたま市見沼地区のウッドチップからも何も出ていなかった。最近何年ものあいだ3月12日ともなれば、ウッドチップからはいろいろなきのこが出ているのが常だった。雨は適度に降っているから気温がかなり影響しているのだろうか。ここしばらく例年になく寒い日が続いている。そういえば自宅団地のモクレンもまだつぼみがとても固い。 航空公園のウッドチップの一画にホコリタケが乾燥状態で一面に広がっていた(a, b)。いつもはホコリタケの仲間をていねいに検鏡することもないので、久しぶりに覗いてみることにした。胞子(c, d)は球形で表面に疣状突起が見える。弾糸(e, f)は厚膜で所々に小さな孔があり、ところどころで分枝している。弾糸に隔壁というか節はない。 |
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今の時期の松林にはマツカサキノコモドキが多数見られる。傘の色は白っぽいものから、茶褐色、黒褐色に近いものまで実に変化に富んでいる。柄を見るとヒダの付近は白色だがすぐに黄色〜橙色となり、先端がマツボックリにつながっている。 よく似たものにニセマツカサシメジがあるが、こちらの柄は傘表面と似たような色をしているものから白色まであり、多くは柄表面が白粉におおわれている。ただ、その白粉は成熟した菌や老菌では失われていることが多い。 だから現実に出会うものは、傘・ヒダ・柄を見ればすぐに分かるような典型的なものばかりではない。11月、12月の頃には、一つのマツボックリからニセマツカサシメジとマツカサキノコモドキの両者が混生して出ていることも珍しくない。 先日鹿島市で採取してきたマツカサキノコモドキのヒダを切り出してみた(a)。ヒダの周囲にゴミのようなものがついているが、これはシスチジアである。ヒダ先端(b)と側の一部(c)を拡大してみると、低倍率でもゴミが多数ついているような姿をしたシスチジアが見える。倍率を上げてみたり(d)、フロキシンで染めてみると(e, f)さらに明瞭にわかる。 シスチジアの先端が分泌物におおわれていれば、ニセマツカサシメジではないと言い切ることができる。ヒダの疎密、柄の色・長さや基部の白毛の状態だけでは両者を見分けられない時などは顕微鏡が威力を発揮する。 |
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