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高尾山ではイチリンソウ、ニリンソウ、アズマイチゲなどが帯状に大群落をなしていて、今を盛りと咲き誇っている(a, b)。花の群れをかき分けて足元を見ると、小さなアミガサタケがいくつもでていた(c)。視線の先を花の群れの外側に向けると、成熟したアミガサタケが10〜15本ほど乱立していた。今回出かけてきた最大の目的はアネモネタマチャワンタケなので、アミガサタケはそのまま放置して先に進み、次々とイチリンソウなどの叢をかき分けて歩いた。 1時間ほど経過した頃に突如多数のアネモネタマチャワンタケが現れた(d)。その周囲をよく見ると5〜6個ずつの群れがあちこちにあった。大部分は子嚢盤の径12〜15mm程度だが、かなり大きく成長しているものもあり(e, f)、中には子嚢盤の径40〜50mmといった巨大(?)なものもあった。じっと見ていると風が吹くたびに胞子を一気に撒き散らしている。顔を近づけるだけでもたちまち胞子の洗礼を受ける。 |
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川口市の神社仏閣をいくつか回ってきた。目的のきのこはまだ出ていなかった。例年ギンナン拾いをしている場所なので、イチョウ樹下の草むらをかきわけてみた。すると予期したとおり、トガリアミガサタケ(a)がいくつも出てきた。よく見るとかなりの数がある。さらに別の神社では白タイプのトガリアミガサタケ(b)もあった。ここでも草むらの中ばかりである。 いずれの場所でも桜の下にもアミガサタケは出ていたがどれもまだ幼菌ばかりである。他にキノコらしいものもないので、久しぶりにキノコ狩りモードになってトガリアミガサタケの成菌を採取して帰ってきた。10本に1本くらいの割でしか採らなかったのだが、泥のついた部分を切り落として水洗いすると結構な量があった。10本ほどがスパゲッティの具となったり(c)、ラーメンの具になった。残りは一部冷凍に、さらに一部は乾燥させて保存することにした(d)。 いわき市の奈良さんからピスを多量に送っていただいた(e)。15〜20cmの長さのものが数百本もあり、当分は切片つくりに不自由しないですむ。このところ天然ものが入手できないために、発泡スチロールで代用していた(雑記 2002/12/13、同 2003/1/29)。代用品はやはり代用品である。ニワトコやヤマブキなどの髄に比べると使い勝手はかなり落ちる。最近の都会では天然ものを入手できる場所がほとんどない。それにしても、これだけの量の髄をそろえるのはかなりの労力が必要だったろうと思われる。感謝、感謝である。本当にありがとうございました。 |
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採取してきたタマキクラゲから切片を切り出して覗いてみた。最初水でマウントしてみたが、キクラゲ類の常としてほとんどなにもわからない(a)。一段倍率をあげてじっとみているとなんとなく担子器らしきものがみえなくもない(b)。そこで、新たに切片を切り出してフロキシンで染めた(c)。 倍率を上げてみるまでもなく、子実層断面の3層構造がよくわかる。一番外側は褐色の不稔組織、二番目に担子器の層、最も内側に厚いゼラチン質を伴った菌糸層になっている。この仲間のキノコの担子器は子実層面に深く埋没している(d, e)。 このプレパラートを軽く押しつぶして子実層面をバラバラにした。すると担子器のいろいろな成長段階があちこちにみられた。成熟すると隔壁で2〜4室に別れ、その各室から管状の細長い小柄を伸ばしていく。これはかなり長くなりその先端は、褐色の表面組織の外側にまで達していく(f〜j)。その先に細長い担子胞子をつける。 同じヒメキクラゲ科のヒメキクラゲ(雑記 2002/12/25)と比べてみると興味深い。胞子はタマキクラゲの胞子よりやや小ぶりだがよく似た形をしている。このときは、担子器の成長段階の撮影データは取り上げなかったので、今回のタマキクラゲではそれを主にとりあげた。また、キクラゲ科のアラゲキクラゲについては、雑記 2002/12/26で取り上げている。 |
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昨日秩父まで出かけるつもりで出発したが、渋滞に辟易して秩父行きは放棄し嵐山町の少し先でわき道に入った。結局その周辺の里山の雑木林を歩いて戻ってきた。例年なら出ているイッポンシメジ科のきのこは見られず、シイタケ(a)をはじめ、タマキクラゲ(a,b)、ヒメキクラゲ、キクラゲ、クロハナビラニカワタケ、ハナビラダクリオキンなどのキクラゲ類ばかりが目立った。 久しぶりにタマキクラゲを手持ちのタッパウエアに一杯採取して持ち帰った(c)。自宅でさっと湯通しした後、蜂蜜をかけてデザート(d)にして食べた。やわらかいカンテンが口に中でジワーッととろける感じでとても美味しい。知らずに目を閉じて食べたら、決してきのことは思えないだろう。見かけは悪いが、ヒメキクラゲもデザートにとてもよく合う。 |
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カシタケの胞子を覗いて遊んだ。スライドグラスに堆積させた胞子紋は白色。最初にカバーグラス上に採取した胞子紋を、水も何も使わずスライドグラスに置いて覗いた。いわゆるドライマウントである。低倍率でみると胞子表面は無数の刺に被われ(a)、まるで、服などにくっつくキク科植物のオナモミ(Xanthium strumarium)の実のようだ。油浸100倍にしてみると刺から疣に変わって見える(b)。スライドグラスに採取した胞子紋は専ら保存用である(「胞子紋のこと」)。 顕微鏡のステージの上で注射針を使って、カバーグラスの脇から微量のメルツァー液を注ぐと、青い点描模様があらわれた。胞子表面に焦点を合わせると疣だけが青く染まって見える(c)。ついで合焦位置をやや下げて表面と輪郭部との間に焦点を合わせてみた(d)。さらにマウント液として水を加えてから、今度は視野を少しずらして別の部分の輪郭部に焦点を合わせてみた(e)。カバーグラスに採取して観察を終えた胞子紋はいつもそのまま廃棄してしまう。 同じ個体から採取した成熟した胞子でも、その大きさにかなりのバラツキがある。ベニタケ科なのでシスチジアは持たず、ヒダには担子器がビッシリ並んでいる。その一部を見ると、意外と長くて折れやすい端子柄がついていた(f)。 |
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高尾山に行くつもりがバスを乗り間違えてしまった。気がついて下車したところは陣場高原近くの集落で、あたり一面は杉植林ばかりであった。バス停近くの神社で立枯れ樹の洞の奥に立派なエノキタケ(a)がでていた。しかし稜線に出る道が無い。ええいままよとばかりに細い仕事道を拾って歩き出した。しかしどこまで行っても杉ばかりである。 進むにつれ道はか細くなり、そのうちに踏み跡も消えてしまった。やむなく杉の急斜面を登って稜線に出るとヤブツバキの群落が現れた。樹下には多数の大きなツバキキンカクチャワンタケ(b)、その群れに混じって小さなトガリアミガサタケ(c)が出ていた。両者を採取袋上に並べてシャッターを切った(d)。持ち帰ったのは杉の葉や実からでる白い小さな盤菌(e)だけであった。 杉の実から出ていた盤菌だが、チャワンの部分の直径は0.2〜1.5mm程度のとても小さなものだ。例年今の時期には多数見られる。実体鏡の下でみると、平らな円盤状のものや杯状のものがあり、全体がゼラチン質からなっていて(f)、いずれも明瞭な柄をもっている(g)。メルツァーで染めると頂孔の部分がきれいに青く染まった(h)。側糸は細長い糸状(i)で、胞子は紡錘形(j)をしていて大きさにはかなりのバラツキがある。キンカクキン科(Sclerotiniaceae)の盤菌だろうが、手許の資料・文献などからは属レベルまでも落とせなかった。 |
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川口市でもアミガサタケが出はじめた(a〜c)。桜の樹下に出るいわゆるイエロー(ホワイト)モレルである。昨年とほぼ同じ時期に顔を出した(2002/4/2 雑記)。網目の凹部が黒いもの(b)やら白色〜淡褐色のもの(c)などがみられた。よく見ると落ち葉の下から頭を覗かせはじめている個体があちこちに見られた(d)。頭部の網目部分(e)はとても繊細に作られている。大きなものでは背丈15cmほどに育っていた。しかしすべてが未熟個体で、胞子のできている個体はひとつも無かった。もっとも食用にするには未熟でも成熟でも味はほとんど変わらない。 近くのウッドチップからはネナガノヒトヨタケ(f)、クズヒトヨタケが、切り株からはアラゲキクラゲ、エノキタケがあちこちで見られた。昨年(2002/4/2 雑記、2002/4/4 雑記)と違って今年はまだ桑の花は咲いていない。念のために樹下を見たがキツネノワンはまだまったく音沙汰が無い。しかし、あと1〜2週間もしたらキツネノワン、キツネノヤリタケなどがでてくるだろう。 |
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さきに胞子に肋骨状の筋(条線)をもつケシボウズタケを「ケシボウズタケ属1」として「キノコのフォトアルバム」に掲載したが、何とも事務的で味気ない、いますこし気が利いた仮称を使ったらどうかという指摘が何件かあった。 種名がはっきりしないきのこの場合、作業を進める上では何らかの名前をつけると仕事がはかどる。このケシボウズタケ属の場合、胞子表面に畝状の顕著な条線がありそれが最大の特徴なので、ウネミケシボウズタケと呼んできた。「ウネ」は「畝」で「ミ」は「実(=胞子)」である。 ちなみに3月25日の雑記で再考したtubariaらしききのこは、ヨモギネッコ(仮)と呼んできた。セイタカアワダチソウの根からもでるのだが、最初にヨモギの根からでていたことが印象的だったので、こんな仮称になってしまった。 確かに「ケシボウズタケ属1」などという野暮ったい名称の代わりに「ウネミケシボウズタケ(仮)」とすることもできるが、安易に仮称・仮名をたてることには抵抗を感じる。だが、作業用の仮称・仮名は大いに楽しんでつけたらよいと思っている。 |
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昨日クロハナビラタケとクロハナビラニカワタケについて、外見上の違いとKOHによる試薬反応をみたので、両者のミクロの姿を比べてみた。低倍率で両者の切片の子実層面をみると、クロハナビラタケ(a)はいかにも子嚢菌ですといわんばかりに整然と子嚢が並んでいる。それに対して、クロハナビラニカワタケはキクラゲ類独特のわかりにくい子実層(e)が見える。さらに悪いことに黒っぽい色素に邪魔されて子実層の部分がほとんどわからない。 倍率を上げてみると、クロハナビラタケでは子嚢の中にソーセージ型の小さな胞子を8つ収めた子嚢が見える(b)。側糸の先端は鉤状というかステッキの柄のような形をしているものが多い(c)。胞子(d)はとても小さく、対物100倍油浸レンズでもなかなか姿を捉えにくい。 一方クロハナビラニカワタケはそのままではどうにもならないので、まずKOHで脱色して(f)、フロキシンで染色した(g)。倍率を上げていくと(h)担子器が見えてきた。担子器の部分を油浸100倍レンズでさらに拡大してみると面白い姿が現れてきた(i)。 |
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クロハナビラタケ(a)とクロハナビラニカワタケ(b)はまったく別種のきのこであるにもかかわらず、和名も似ており乾燥しきった状態では実によく似た姿になる。かたやズキンタケ科の子嚢菌、かたやシロキクラゲ科の異型担子菌である。3月30日の笠間市では両者が同じ広葉樹の倒木からほとんど乾燥した状態で並んで出ており、一目見た程度では区別できなかった。 子実体が湿り気を保った状態のときに両者を並べてみると(c)確かに違いは明瞭にわかる。それぞれのヒダを1枚ずつ並べてみると、クロハナビラタケ(d)の子実層面には独特のしわがある。それに対してクロハナビラニカワタケ(e)のほうは純粋に平滑である。 クロハナビラタケの切片を3〜5%のKOHに浸すと、すみれ色にも似た赤紫〜紫色の色素が滲出する(f)。この反応をIonomidotic反応と呼んでいるようだ。それに対して、クロハナビラニカワタケで同じことを試みると、やや緑がかった薄い褐色から暗い緑色の色素が滲出する(g)。 クロハナビラニカワタケは自然界ではその名とは違って、やや赤みがかったもの(b)やら暗緑色を帯びたもの(h)をしばしば見かける。ただ、これらはからからに乾燥するといずれも真っ黒になり、クロハナビラタケと紛らわしい姿となる。 キクラゲの仲間のクロハナビラニカワタケは海藻のワカメなどによく似た食感があり毒はなさそうだが、子嚢菌のクロハナビラタケは食べると激しい腹痛と下痢を起こすといわれている。乾燥状態のものを採取した折には十分な注意が必要だ。もっともこういった怪しいキノコを食べるのはやめた方がよい。 |
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