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日( )


2006年3月10日(金)
 
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(f)
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 先日埼玉県小鹿野町で採取してきたキクラゲは大部分を食用に回してしまったが、一部をそのまま放置して乾燥させておいた。今朝はその乾燥キクラゲから切片を作って観察した。
 カンナ削りの要領で子実層を切り出した(a)。フロキシンを加えると、担子器などを明瞭にとらえることができる(b, c)。キクラゲ類の観察にはフロキシンは必須である。
 多数の担子器が重なり合って、構造が分かりにくい場合、子実層をバラしてしまうと楽に観察できる(d)。担子器を一つだけ選り分けてしまうと、さらに観察は楽になる(e)。久しぶりに、キクラゲ特有の姿をした担子器をいくつも確認することができた(c, f)。
 子実層をバラすには、3〜5%のKOHで封入して、カバーグラスの上から軽く圧を加え、左右に軽くずらすとよい。これには柔らかい針を備えた柄付針を使っている。要はゼラチン質部分を子実層部分と切り離しさえすればよい。ただし、力の加え加減は重要である。上記(d)〜(f)はそのようにして、担子器部分だけを分離して観察したものだ。

2006年3月9日(木)
 
南埼玉 春はまだ
 
 昨日、さいたま市から所沢市、川越市の雑木林などを歩いてみた。出会ったきのこはキクラゲ類と限られた硬質菌ばかりだった。例年今頃からトガリアミガサタケが見られるさいたま市のポイントは、重機ですっかり整地され、下草がほとんど取り除かれてあった。幼菌もみられないのはそれと関連があるのかもしれない。所沢の公園のウッドチップからも、さいたま市の公園のウッドチップからも、ほとんどきのこは出ていない。川越市の保護林でも、きのこの姿はない。

2006年3月8日(水)
 
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(f)
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 先日採取してきたキヒラタケを覗いて遊んだ。胞子紋はピンク色である(a)。胞子は短めのソーセージ形をしている(b)。フロキシンで染めると形が明瞭に捉えられる。ヒダ実質は一般に類並列型とされるが、今回観察した個体では、渦を巻いた様な姿をしている(c)。担子器の基部には多くがクランプを持っている。かさ表面の毛(e)の様なものは、厚膜で均一な細長い菌糸からなっていて、多数のクランプを持っている(f)。

 今年に入って初めて「キノコのフォトアルバム」を更新した。といっても、3月初めに川崎市で撮影したものを若干追加しただけで、新しい種を加えたわけではない。長いこといじっていなかったので、すっかり忘れていて、各種検索表(INDEX)の更新に手間取った。

2006年3月7日(火)
 
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(f)
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 一昨日の日曜日に川崎市から持ち帰ったフウノミタケは、部屋に放置しておいたらすっかり小さくなって皺だらけになってしまった。少量だが、なんとか胞子紋はとれた(a)。胞子は平滑で、発芽孔などはみられない(b)。しわくちゃになって小さくなった個体からヒダを切り出したが、なかなか上手くいかず、きれいな切片は作れなかった。
 ハラタケ目のヒダを切り出したのは1月13日以来久しぶりだった(雑記2006.1.13)。ひだ実質はやや並行気味に菌糸が走っている(c)。同じ実質部でも切断面を90度ずらすと、円形菌組織からなるようにみえてしまう(d)。幅の広いヒダの切片作りでは注意が必要だ。
 担子器や偽担子器の基部にはクランプがあるものも、ないものもある。ひだ、かさ、柄の組織には、いずれもクランプが多数みられる。

2006年3月6日(月)
 
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 昨日、校正作業のために川崎市の緑地行って来た。園内は多数の家族連れで溢れていた。ヤブツバキの周辺にはいたるところでツバキキンカクチャワンタケが最盛期を迎えている(a, b)。落ち葉をどけずとも楽に見つけることができる。フウノミタケが早くも顔をだしていた(c, d)。さらにサクラの倒木からはキヒラタケが出ていた(e, f)。春はすぐそこまでやってきている。

 平成18年度「菌類の多様性と分類」前期講座(菌学教育研究会)の講座内容が発表された。5月19日(金)〜22日(月)に、つくば市の菌学教育研究会筑波センターを使って行われる。概要と問い合わせ先は、お知らせに記しておいた。なお、詳細は佐野書店ブログで紹介されている。
 新宿の科学博物館分館で講座を開催していた頃から今日まで、布村公一氏が菌学教育研究会の事務局を努めてこられたが、今年度を最後に事務局を離れることになった。これにともない、今回の講座では、布村氏とのお茶を飲みながらの懇談も予定されている。

2006年3月5日()
 
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 双子山の石灰露岩地帯のメモである。双子山はその名の通り東岳と西岳の二つの峰からなっている。股峠はその両峰の間の鞍部。峠の周辺は緩やかだが、山頂部に近づくにつれ非常に急峻になる。石灰露岩地帯は、股峠から山頂近くまで続く。ハイキングコースは大きく迂回しながら山頂に続くが、例年転落事故の多い山でもある。
 以前は股峠に到達するまでに数時間歩かねばならなかった。現在は、股峠直下まで林道が延びている。峠から東岳を見あげると大小の石灰露岩が目立つ(a)。標高をかせぐにつれ急峻となり、最後は垂壁となる(b〜d)。石灰岩地に多い植物群落や菌類も豊富に見られる。
 今のところまだここでは目的のきのこは見つかっていない。今年は、梅雨の頃から初冬の頃まで何回か訪問することになりそうだ。埼玉県なのだが車で3時間半ほどかかる。

2006年3月4日()
 
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 昨日双子山から持ち帰ったタマキクラゲ(a)を覗いて楽しんだ。同じ仲間のヒメキクラゲは今年も2月8日に観察している(雑記2006.2.8)。ソーセージ型の胞子はヒメキクラゲの胞子より一回り大きい(b)。一晩放置して乾燥させたものから子実層を切り出した(c)。
 フロキシンと3%KOHで封入して軽く押し潰すとと、視野の中が劇的に変わった(d)。赤く染まった担子器(e)を明瞭に捉えることができる。菌糸はどの部分でもクランプが多数みられる(f)。
 今の時期は、キクラゲの仲間であれば、どこでも簡単に得ることができる。胞子も豊富に採取できるが、特に担子器や子実層を観察するにはとてもよい季節だ。グニャグニャ状態の生では難しい薄切りも、乾燥させれば、指先でつまむだけで簡単に作ることができる。

2006年3月3日(金)
 
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埼玉県小鹿野町、県境近くにそびえる双子山は石灰岩の山である(a〜c)。この山は全山が石灰岩からなり、登山道の周辺にも石灰岩の露岩が目立つ。昨年からここに何度か通っている。昨日も股峠から東岳の石灰岩地帯を探索した。目的はウロコケシボウズタケ
 霜柱やら凍った路面はとても歩きにくい。山頂直下まで探し歩いたが、何の手がかりも得られなかった。ここには発生しないのか、冬季に発生しないのか、たまたま発生地以外を探してしまったのかは分からない。キクラゲ(d, e)、ヒメキクラゲ、タマキクラゲ(f)ばかりがやたらに目立った。
 それにしても、若い頃には登攀の対象でしかなかった岩峰を、全く別の目的で歩き回ることになるとは思ってもいなかった。標高(1165m)の割に高度感あふれる山である。

2006年3月2日(木)
 
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(e)
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 遠州灘でみられるケシボウズタケ属には、ナガエノホコリタケ、ケシボウズタケなどもあるが、国内未報告種のTulostoma adhaerensが圧倒的に多い。この種は胞子が大きな疣に被われていて、光学顕微鏡でもちょっとみれば明瞭に分かる。
 光学顕微鏡の40倍対物レンズでは、胞子は微疣をもった球形にみえる(a)。そのまま、胞子表面と輪郭部に合焦したものをトリミングして並べてみた(b)。一方、油浸100倍対物レンズでも同じように並べてみた(c)。やはり対物100倍でみると細かい部分がよくわかる。
 電顕(SEM)でこの胞子をみると、焦点深度が非常に深いので、1,000倍で全体像が十分明瞭にわかる(d)。1万倍にしてみると、胞子の疣の構造などもさらに明瞭となる(e)。小型卓上簡易SEMでも、この程度の映像は楽に得られる。
 見慣れると、不思議なもので、光学顕微鏡の対物40倍(a, b)でチラッとみただけで、胞子表面模様の差異をかなり細かいところまで見分けられるようになる。

2006年3月1日(水)
 
電顕セミナー
 
 昨日は「日立ハイテクノロジーズ Bio 電顕セミナー」に参加してきた。知識だけはあったが、FIB(収束イオンビーム)によるSEM内微細解剖の威力をまざまざと知ることができた。SEMのチャンバーに置かれた試料をミクロレベルで解剖しながら観察できるのが興味深い。実例には菌類の胞子割断映像もとりあげられ、生物や微生物分野では大きな可能性を秘めている。実例でこれを知っただけでも参加した意義は大きかった。
 また、卓上顕微鏡ミニスコープの紹介も面白かった。二次電子ではなく、反射電子を利用して低真空、低加速電圧で観察する。1万倍が限度だが、電顕の基礎知識は不要、小学生でもできる簡単な操作は魅力的である。水分をたっぷり含んだ試料をそのまま観察できる。さらに、カタログには載っていないデメリットも確認できたのはよかった。

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