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2006年7月28日(金)
 
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(e)
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「キノコのフォトアルバム」を久しぶりに更新した。このところよく雨は降っているのだが、何故かきのこの影が薄い。武蔵丘陵森林公園でもさいたま市の公園でもきのこの発生は非常に悪い。おまけに見かけるきのこの多くが泥で汚れていたり、カビに侵されている。
 元気がよいのはウッドチップ生のきのこばかりだ。さらに、ウッドチップ生のきのこには泥汚れがない。画像はさいたま市にある公園のウッドチップから出ているきのこの一部だ(a〜e)。ひとつ一つの検鏡作業をしている時間はとれなかった。出発時刻である。

 今日から30日(日)までは、仙台で行われている合同合宿(7/27-7/30)に参加のため、また31日(月)は海浜調査のため不在にするので、今月いっぱい「雑記」はお休みとなる。


2006年7月27日(木)
 
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(g)
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(i)
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(j)
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 日光からサナギタケを持ち帰ったことをすっかり忘れて、冷蔵庫にずっと放置してあった(a, b)。久しぶりにこれを覗いて楽しむことにした(雑記2002.8.22)。虫草についてはほとんど何もわからないので、もっぱら顕微鏡で覗いて楽しむことしかできない。
 縦に二つに切ってルーペで眺めてみた(c)。切断面を実体鏡でみると、子嚢殼がみずみずしい姿で並んでいる(d)。顕微鏡で同じものをみた。最初薄く切りすぎたために、内部の子嚢が一気に放出され原型をとどめなかったので、あらためて厚めに切り出した(e)。
 子嚢殼の内部には細長い子嚢が無数にはいっている(f)。3%KOHで封入してフロキシンを加えてみた(g)。メルツァー液で封入したり(h)、フロキシンで染めて遊んだ(i)。子嚢胞子は著しく細長く、やがてこれが小さな断片となる(j)。

2006年7月26日(水)
 
(a)
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(d)
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(e)
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 あらためてキノコの切片作成の難しさを再認識した。このところキノコがないので、身近なコケを覗いて楽しんでいた。コケの世界でも苔類のゼニゴケ目を同定する場合には、葉状体(平べったいコケの本体)の薄切り切片を作らなくてはならない。
 切り出したのはジャゴケ(a)。とても簡単に切片が切り出せる(b)。気室の観察をするため、その周辺の横断面を切り出した(c, d)。他にもあちこちの組織を薄切りにしてみた(e)。今月初めにも蘚類のシノブゴケ属で切片を作ってみた(雑記2006.7.7)。
 被子植物やコケの場合、適当につまんで薄切りにすればよい。ピスを使う場合、しっかりつまんでも組織は潰れない。切片がピス片にこびりつくこともないので、楽に両者を分離できる。
 それに対して、生きのこの場合はかなり事情が異なる。フニャフニャでつかみ所がない上に、ピスを使う場合でも普通につまむと、たちまち組織がペシャンコになってしまう。さらに、切り出した後も、切片をピス片から分離するのに細心の注意が必要だ。
 生きのこ切り出しで培われた切片作成技術は、ひろく応用がきく。特に、ウラベニガサ属、テングタケ属、コガサタケ属などでは、生からの切り出しはとても難しい。でも、これらで練習を積むと、他の種の切片作りが嘘のように楽にできる。

2006年7月25日(火)
 
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(l)
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 自宅団地の駐車場近くでコチャダイゴケを見つけた(a)。コチャダイゴケは、チャダイゴケの仲間のうちでは変わり者である。明瞭な表隔膜はないし、ペリジオール(小粒塊)にはへその緒がなく、コップの中に雑然と配置されている(b, c)。
 多くのチャダイゴケの仲間では顕著なへその緒があり(へその緒:ツネノチャダイゴケハタケチャダイゴケ)、これでコップの内側に結びつけられている。したがって、ペリジオールの配置も整然としている(断面:ツネノチャダイゴケハタケチャダイゴケ)。
 ペリジオール(e)は小さいので切断は結構面倒だ。縦と横に切ってみた(f, g)。これを顕微鏡でみると面白い(h)。倍率を上げると何層かになっていて、最も内側に胞子が充満している(i)。コットンブルーで染めるまでもなく、厚い膜を持っている(j, k)。
 ペリジオールの外皮にはキンチャクタケに類似のイバラ状突起を持った組織が見られる(l)。こういった組織は、他のチャダイゴケの仲間ではほとんど見られない。コチャダイゴケについて、今朝はこれまでとはやや違った切り口で眺めて楽しんだ(同2002.9.9同2006.6.27など)。

2006年7月24日(月)
 
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(l)
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 先日カレエダタケらしいきのこを採取した(a, b)。胞子紋をとりメルツァー液(c)とコットンブルー(d)で封入してみた。カレエダタケかどうかを知るには、担子器の観察が不可欠である。水で封入して子実層をみた。担子器がみえた(e)。中には二次隔壁らしき構造も見える(f)。
 あらためて担子器をフロキシンで染めてみた(g, h)。担子器の基部にはクランプのないもの(g)もあれば、クランプの見られるものもある(h)。フロキシンは細胞内容物をよく染める。したがって、隔壁の両側が同じような成分であれば、隔壁を明瞭に確認することは難しい。
 コンゴーレッドをつかってみることにした。コンゴーレッドは細胞壁や膜をよく染める。したがって、二次隔壁があるのならば、明瞭に区別できるはずである。多くの担子器は二次隔壁を持たない(j)。しかし、明瞭な膜で仕切られた担子器も多数みられた(i, k)。
 菌糸の至るところにクランプが見られる(l)。担子柄は大部分が2つである。ところどころに1つしか担子柄をもたないものもある。これは、カレエダタケとしてよさそうだ。
 従来だとこのきのこをカレエダタケとするには、かなりの躊躇があった。だからカレエダタケとはしてこなかった。しかし、昨日の雑記(2006.7.23)に記したように、担子器にこの程度の二次隔壁が見られれば十分だろう。二次隔壁の確認にはフロキシンよりもコンゴーレッドが適している。

2006年7月23日()
 
理解の誤り−カレエダタケ−
 
 保育社の原色日本新菌類図鑑(II)が出たのは、スイスの菌類図鑑Vol.2(1986年刊)が出た3年後の1989年である。そして巻末の「参考文献」にはスイスの菌類図鑑Vol.2が掲載されている。つまり、保育社の図鑑執筆にあたっては、スイスの図鑑Vol.2が参照されていることになる。このことが頭にあるために、しばし大きな落とし穴に落ちてきた。カレエダタケ属についても、つい最近まで完全に思い違いをしていた。
 保育社の図鑑には、カレエダタケ科について「カレエダタケ属Clavulina1属のみ。従来はホウキタケ科に入れられていたが、担子器の構造が非常に特異なことから最近は独立した科として取り扱われる」とある。そして、カレエダタケ属として取りあげられている3種について、それぞれの解説のすべてに「担子器は2胞子をつけ,二次隔壁ができる」とある(p.92)。一方、ホウキタケ属の担子器についての説明には「二次隔壁はない。」とある(p.94)。
 これを普通に読むと、カレエダタケ属の担子器には必ず二次隔壁が見られる、したがって、担子器に二次隔壁が見られなければ、これはカレエダタケ属のきのこではない、そう解釈することができる。つまり、二次隔壁をもつという形質は絶対的な条件であると思いこんでいた。
 過去に何度もカレエダタケではないかと思えるきのこには出会ってきた。しかし、そのいずれも担子器の二次隔壁を明瞭に捉えることができなかった。なかには二次隔壁をもった個体もあったが、大部分の担子器にはみられなかった。あったとしても、5〜6%程度の比率でしか二次隔壁を確認できなかった。
 カレエダタケなら成菌のほとんどの担子器に二次隔壁が見られるはずだ、これまでそう理解していたので、これをカレエダタケとしてよいかどうかに常に一抹の不安があった。したがって、これらにたいしてカレエダタケ属であるとの判断は避けてきた。
 昨日、ふと、スイスの菌類図鑑のカレエダタケClavulina cristataの項目を開いてみた。なんと、担子器について「with 1-2 sterigmata and basal clamp, sometimes secondarily septate」とある(Vol2. p352)。これによれば、二次隔壁は必ずあるものではなく、時として見られる、その程度のものと理解できる。要するに、多くの担子柄(sterigma)は二つだが、一つのこともあり、担子器には二次隔壁を持つことがある、と理解すればよいのだろう。担子器には必ず二次隔壁がみられるとはどこにも記されていない。
 保育社の図鑑にはスイスの菌類図鑑Vol.2が参考文献として掲載されている。きっと、カレエダタケについてスイスの図鑑にも同じような記述があるだろう。そういった短絡反応をしていたわけである。したがって、スイスの図鑑にすらあたっていなかった。もっと早くにスイスの図鑑にあたっていれば、理解のしかたは違っていたはずである。
 しかし、そこで新たな疑問が生じたとしても、関心を持つ一部のキノコ以外では、それ以前の文献にまで遡ることはしていない。文献を原記載までたどるのは一般にとてもやっかいな作業である。しかもやっと入手した原記載があまりにも短く簡単な文章で、なんら解決の糸口にならないことはあまりにも多い。問題としている形質について、原記載では一行も触れられていないことは日常茶飯事である。だから、誤った理解はカレエダタケに限るまい。

2006年7月22日()
 
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(f)
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 昨日の早朝、川越市の保護林を歩いてみた。新しいきのこの発生はほとんどみられなかった。昨日も強い雨だったが、その前からつづいている連日の強い雨のせいでボロボロになったり、泥汚れでひどい状態のきのこが多かった。
 それらの中で比較的泥かぶりの少ないものをいくつか撮影した。アカヤマドリの成菌はみな泥まみれで傘が転がり落ちていた。かろうじて幼菌が何本かまともな姿をしていた(a)。ヤマドリタケモドキも同様であるが比較的きれいなものが多かった(b)。ミドリニガイグチ(c, d)とクリイロイグチ、キアミアシイグチが多数みられたのだが、いずれも「ドロイグチ」となっていた。
 テングタケ科のきのこも多かった。ツルタケ、テングタケらしき姿も目立ったが、もっとも広範囲にあり、数も多かったのはフクロツルタケ(e, f)だった。

2006年7月21日(金)
 
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 日光市から持ち帰ったムラサキヤマドリ(a)はほとんど食用に回してしまったが、まだら模様の成菌濃紫色の若い菌の2本を残しておいた。採取から1週間になるが、冷蔵庫の中では採取時と変わらぬ色合いで保存されていた。
 胞子は水で封入すると黄褐色だが(b)、3%KOHで封入すると黄金色になる(c)。管孔部実質は典型的なヤマドリタケ亜型である。若い菌では組織が密着しているが(d)、成菌では組織が緩く拡がり、いかにもヤマドリタケ亜型といった雰囲気である(e)。
 縁シスチジア(f, g)も側シスチジア(h)もほぼ同じような形をしていて、大きさにはかなりの幅がある。担子器の基部にはクランプは見られず、大きさのバラツキはかなり大きい(i, j)。傘上表皮は短い菌糸が縦に繋がったような構造をしている。若い菌では紫色の色素顆粒がみられる(k)。大きな成菌では紫色も顆粒もさほど顕著ではない(l)。
 ムラサキヤマドリタケを検鏡したのは、ほぼ3年ぶりになる(雑記2003.7.12)。このときの検鏡写真は、2004年夏のハードディスククラッシュの折りに失っている。したがって、今日の検鏡写真が、ムラサキヤマドリタケでは最初の検鏡データとなる。

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