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日( )


2006年9月8日(金)
 
 
 
9/7−9/10 WS・観察会参加日本菌学会関東支部

 長野県菅平で9月7日午後から行われる日本菌学会関東支部のワークショップ・観察会に参加のため、9月8日から9月10日まで、「今日の雑記」を休みます。

2006年9月7日(木)
 
模様替え:きのこ雑記
 
 「きのこ雑記」のトップページから [文献案内:佐野書店] を削除した。佐野書店についてはリンクページの佐野書店ブログを参照されたい。優れた自然史関連文献を紹介・販売している佐野書店については、今後とも支援・購読をお願いします。
 文献案内を削除した後には [コケの観察覚書] という項目を立てた。ケシボウズタケ属のことを知るためには、岩石、砂丘などとあわせて、蘚苔類についての知識が必要となってきた。このため、新たな分野の勉強をせざるをえなくなった。
 蘚苔類については全く無知である。少しでも蘚苔類について理解を深めるために「今日の雑記」と同一形式で、自分のためのメモとして残すことにした。

 これから菅平(日本菌学会関東支部 ワークショップ・観察会)に出発するので、明日から10日まで雑記はお休みである。

[昨日の雑記の修正]
「発芽孔らしき部分からガスが出てきた。」と書いたが、これはガスではなく油脂か水分のようなものだろう。この記述を修正をします。昨日、ただちに「八王子のきのこ」の奥 修氏からていねいな指摘をいただいた。ありがとうございます。


2006年9月6日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ヒゴノセイタカイグチの胞子はとても興味深い表面模様を見せてくれる。胞子表面に合焦すると、一見して疣が多数あるようにみえる(a)。やや焦点を下げると、見え方がまるで異なってくる(b)。この段階で、どうやら疣ではなさそうなことがわかる。輪郭部に合掌すると、小さな孔の開いた厚い胞子壁がみえてくる(c)。数年前に解像度の悪い学習用顕微鏡で覗いた若い胞子の姿とは大違いである(雑記2002.9.14)。このときは、表面模様ははっきりしなかった。
 別の胞子を水で封入して軽く熱してみた。すると、発芽孔らしき部分からガスが出てきた。これも胞子表面(d)、表面直下(e)、輪郭部(f)に合焦した画像を並べてみた。3%KOHで封入して胞子輪郭部に合掌すると、胞子壁の最外層の部分に無数の孔が開いているのが分かる(g)。
 管孔部実質(h)、縁シスチジア(i)、担子器(j, k)、管孔部横断面(l)なども眺めて楽しんだ。なお、背丈30cm以上で、遠くからも聳えているような大きな個体もあった。

2006年9月5日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 セイタカイグチのミクロのすがたを観察したのは実に久しぶりだ(同2003.1.8同2003.1.9)。今回は持ち帰ったサンプルが少ない上に、老菌一本(a)を残してほかは標本庫に送り出してしまった。胞子紋はあまり落ちず、わずかに採取できたものには、雑菌だらけだった。
 夾雑物がややうるさいが、胞子は大きくて、表面には縦に太い隆起が走る(b, c)。胞子の壁はとても厚く、長径の端には発芽孔らしき孔がある。3%KOHで封入すると色が鮮やかになった。管孔部実質の散開型を観察するのは意外と難しい。画像(d)は生標本からのものだが、乾燥標本から切り出せば、そのすがたを明瞭に捉えることができる。
 縁シスチジア(e, f)、側シスチジア(g, h)は似たような形をしていて、縁シスチジアの方が若干大きめだった。担子器の基部にクランプのあるものはすくない(i〜k)が、よく見ると、クランプをもったものがわずかにある。傘表皮は匍匐状だが、ところどころで大きく立ち上がっていた(l)。

2006年9月4日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 土曜日に山梨県西部まで出かけた目的は、ニンギョウタケである(a〜f)。今年の天候を反映してか、ニンギョウタケの色合いは、残念ながら例年のような美しさを感じることはできなかった(雑記2001.9.2同2002.9.12同2003.8.30)。幼菌(e)もまだまだあるが、大きくてしっかりしているにもかかわらず、早いうちからシミができた株もかなりみられた(f)。
 あらためて、脆くて大きなきのこを標本として持ちかえることの難しさを感じた。画像(d)の株は、差し渡し80〜90cmほどある。テングタケの仲間などに比べれば、ニンギョウタケは比較的しっかりしているので楽だ。それでも、ちょっとした衝撃で株は簡単に崩れてしまう。
 乾燥標本にするだけなら、多少形が崩れようとかまわない。しかし、展示用標本として提供するのが目的だと、事情が一変する。形を崩さずに長い距離を運搬するためには、間にコケやら草、木の葉などを詰めて運ぶ。大きな荷物となる。もはや他のきのこは諦めることになる。こうなったら、運の尽き。あきらめて、車に戻って帰宅するのみである。

2006年9月3日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 ほぼ1ヶ月ぶりに山梨県白州町の森を歩いてきた(雑記2006.8.7)。1ヶ月の間に様子は随分変わっていた。セイタカイグチ(a〜c)はごくわずかしか出会えなかったが、ヒゴノセイタカイグチ(d〜f)には数十個体であうことができた。それぞれ、幼菌、若い菌、成菌を並べた。
 天候にも恵まれ、八ヶ岳、鳳凰三山、甲斐駒ヶ岳などが屹立する姿をみたのは久しぶりだった。目標はニンギョウタケを採取することだった。例年だとシャカシメジやウラベニホテイシメジがかなりみられるのだが、これらには出会えなかった。傘の径30〜35cmという巨大なニセアシベニイグチの群生にはビックリした。
 久しぶりにのんびりと温泉に浸ってから帰宅した。夜は、ニンギョウタケ、セイタカイグチ、ヒゴノセイタカイグチなどが煮物となって食卓を飾った。

2006年9月2日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 やはり1週間は持たなかった。日曜日に落ち葉の上から出ていた微小サイズのクヌギタケ属である(a)。ちょっとみたところ、キュウバンタケを思わせる様な姿をしている。傘の径3mmほどで、傘表皮にゼラチン質はみられない。フィルムケースに入れて持ち帰った。
 冷蔵庫に入れておいたフィルムケースを開けると、ほとんど原型をとどめていなかった。ビショビショになり、ヒダは潰れていた。かろうじて一枚ヒダを取りだしてフロキシンで染めた(b)。画像(b)で上側がヒダの縁、下側は傘表皮だ。胞子はほとんど見つからなかった。
 ヒダの縁をみると、コブを持ったり、枝分かれをしたりといった形をした縁シスチジアが無数にみられる(c, d)。傘表皮は、微細ないぼに被われた細長い菌糸が平行に走り、指先状の突起を10〜12本備えた球形の傘シスチジアがみられる(e, f)。
 Mycena(クヌギタケ属)の微小菌を調べるのは大変だ。各パーツを検鏡するには、実体鏡の下での解剖作業が必要となる。また、乾燥品ではヒダと傘とを見分けることにも難儀する。でも、この仲間の傘表皮は興味深い形のシスチジアを持ったものが多く、楽しめる。

 最近2ヶ月ほどのメールの大半が失われてしまった(経緯は昨日の「雑記 戯れ言」)。最近数日間に受信して、まだ返信をだしていなかったメール7〜8通も失われてしまった。申しわけありませんが、連絡の必要な方は、再度メールをください。


2006年9月1日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 日曜日の菌懇会例会、生田緑地の遊歩道脇、ジャリ混じりの泥斜面からイッポンシメジ属のように見えるきのこがポツリポツリと計8〜10本ほど出ていた。手にとってヒダを見るとイッポンシメジ属にも見えるし、ウラベニガサ属にも見える(b)。若い子実体のヒダは白いが、成熟したものでは淡紅色で、柄とは完全に分離してリング状になっている。
 採集した直後に現地で見ると丸い胞子がみえた。この時点でイッポンシメジ属の可能性は全く否定された。外見的特徴からはウラベニガサ属に間違いなさそうだ。同定のための展示を終えたものを紙袋にいれて持ち帰り、そのまま冷蔵庫の野菜ケースに入れておいた。
 今朝紙袋を開いて愕然とした。きのこはほとんど形をとどめず、バクサレ状態(いわゆる流れた状態)となり、白いウジ虫が無数に蠢いていた。腐敗臭が鼻を突く。そのまま捨てようと思ったが、よく見ると、ところどころにごく僅か、ヒダや傘らしきものが残っている。
 ダメで元々と思って、今朝はこのヒダ残骸と傘残骸から観察してみた。ヒダ残骸をスライドグラスに載せ、その直後にヒダを取り除くと多数の胞子が落ちた。これを水(c)、メルツァー(d)で封入した。このヒダを何とか切り出した。子実層托実質の構造はよくわからない(e)。ただ、側面にボーリングピンのような形の側シスチジアがあることが分かる(f, g)。
 次に、同じヒダ断片をそのままスライドグラスに載せて水で封入した。縁シスチジアが見える(h)。3%KOHで置き換えてフロキシンを加えると明瞭になった(i)。形もサイズも側シスチジアとよく似ている(j)。担子器の基部にクランプはない。傘表皮は色素を帯びた組織が平行に走っている(l)。傘にも柄にもヒダにもクランプは見つからなかった。
 保育社図鑑にあたると、ベニヒダタケ節に落ちる。クロベニヒダタケとして記載されたものに比較的近い。スイスの図鑑にはこれに近いものはみあたらなかった。検鏡している間にも、小さなウジ虫がさらに活発に動き回り、きのこはグシャグシャになってしまった。こうなれば後は捨てるのみである。ウラベニガサ属の不明種であるが、もはや証拠も何もない。臭かった。

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