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2007年2月22日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
 さいたま市のトガリアミガサタケもようやく数センチメートルほどの大きさになってきた。暖冬のせいか、今年は2月9日に背丈1.5〜2.0mmほどのものが発生しているのを確認している。その後しばらく乾燥が続き、ほとんど成長していなかったのだが、最近の雨で急に成長をはじめたようだ。アップした写真(a〜d)は、今朝撮影したものだ。(c), (d)はまだ6〜8mmほどの大きさだ。
 2月にトガリアミガサタケの発生を確認したのは、2000年以降では、2004年2月24日以来のことだ(雑記2004.2.25)。このときは、ほとんどが高さ4〜6mmであり、最も大きなものでも10mm足らずだった。雪が多く寒かった昨年は、3月27日だった(雑記2006.3.27)。ただ、このときは、既にかなり大きくなっていたので、発生開始は3月15日以降のことだろう。

2007年2月18日()
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日川口安行地区の緑地と古刹を歩いた。今シーズンは昨年12月にはやばやとツバキキンカクチャワンタケが出ていたが、昨日も相変わらず多数みられた。シデとコナラを主体とした斜面には、干からびたエノキタケ、キクラゲ、シロキクラゲなどがあったが、特に目立ったのがスエヒロタケだ。乾燥して硬くなってはいるものの、到るところで純白の姿をみせてくれた(a, b)。
 歩く先々でスエヒロタケに出会うので、一部持ち帰った。何枚かを30分間ほど水没させた。先端が二枚に裂けたヒダは、乾燥しているときと(c)、湿っているときとでは(d)、これほどまでに違うのかを再認識させられた。乾燥時には、ヒダの側も一面に白毛で覆われていた。
 久しぶりにきのこの顕微鏡観察をした。スエヒロタケのヒダを切り出したが、薄く切り出すのは難しく、適度なところでお茶を濁した(e)。半日間試みたが、胞子紋はほとんど落ちなかった。ヒダを一枚、フロキシンで染めて3%KOHで組織をばらし、担子器(f)、クランプを持った菌糸などを観察した。スエヒロタケを検鏡したのは2005年以来のことだった(雑記2005.6.25)。

2007年2月16日(金)
 
ミクロトーム用カッター
 
 今年に入ってから意識的に簡易ミクロトームを使うことにした。簡易ミクロトームとあわせて使うには、両刃カミソリはデメリットの方が大きい。柔らかい炭素鋼の両刃カミソリは、ミクロトームの孔の部分で、内側に湾曲してピスを抉ってしまうからだ。
 
 
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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 かつては、簡易ミクロトームを使う場合には、専用ナイフや「肥後の守」を使っていた(a)。これらは別のきのこを切るたびに研がなくてはならない。頻繁に使うとなると、いちいち研ぐのは面倒である。さらに、手持ちの炭素鋼製両刃カミソリの活用を考える必要がある。
 昔は宿やホテルなどに使い捨てヒゲそりが置いてあった(b)。しかし、最近はこの型のものはなくなり、T型のものばかりになってしまった。しかし旧来型は「まゆそり(眉剃り)」として販売されている。写真(b, c)上側のタイプは、マツモトキヨシや美容品店・薬局で10本入って240円前後(e, f)、下側のタイプは、100円ショップで5〜6本入りが置いてある。
 これらの刃はいずれもステンレスであり、炭素鋼ではない(d, f)。従来はプレパラート作成用カミソリ=炭素鋼という図式が常識だった。しかし、それは切れ味が問題となったわけではなく、二つに割って使うことに主眼が置かれてきたからだろう。
 あらためて、専用ナイフ(a)と「まゆそり」(c)の両者を使って比較してみた。切れ味はほぼ同一。面倒くささがない分、まゆそりに軍配が上がりそうだ。切れ味が落ちたら、手持ちの炭素鋼製両刃カミソリを二つに割って、挟んで使うこともできる。
 ステンレス刃の「まゆそり」には、外見と価格は同じようでも、はっきりと切れ味の違うものがある。写真(b, c)の上側に置いた商品と下側のそれとでは、刃先は一見同じように見えるが、切れ味に歴然たる違いがあった。写真(f)の貝印カミソリは品質が安定している。簡易ミクロトームと組み合わせて使うには、このタイプの「まゆそり」は相性が良い。

2007年2月15日(木)
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
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 2月12日(月)は、寸又峡温泉から大井川源流の林道を走った。たいていの林道に「通行止め」の表示と柵があったが、鎖や扉は無かった。「事故を起こしても当局は関知せず。自己責任だ」と理解して、かまわず林道に入った。かなり荒れてはいたが、なんとか通行できた。
 標高1,200〜1,400mほどの尾根からは、聖岳だろうか南アルプス南部の山や、富士山の雄大な姿を見ることができた。そこから、標高で300mほど下り、道脇の落ち葉をかき分けてみた。落ち葉の中から、杉枝に出たキンカクキン(a)、キチャワンタケの様な微小盤菌がでてきた(d)。
 久しぶりの子嚢菌だったので、今朝はこの2種類の検鏡をしてみた。杉のキンカクキンは、子実層托実質が円形菌組織、托外皮層が平行気味に絡み合った菌組織で(b)、メルツァーでは、子嚢先端の頂孔とその周辺が綺麗な青色に染まる。
 一方、キチャワンタケ近縁の盤菌(e)は、子実層を切り出してみると、まだ全く子嚢ができていなかった。メルツァーで染めると、子実層と子実下層の部分がやや青みがかった黄褐色になった(f)。この他にも傘と柄をもったきのこがひとつだけ見られた。

2007年2月14日(水)
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
(e)
(f)
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 2月11日(日)に静岡県御前崎市の浜岡砂丘を歩いてから、南アルプス南部の寸又峡温泉に行って来た。富士サービスエリアで朝日に輝く富士山を仰いでから浜岡砂丘に向かった(a)。
 新たなきのこの発生は少なく、わずかにアバタケシボウズタケ(仮) Tulostoma adhaerens、ドングリタケ Disciseda subterranea 等が見られた(b, c)。この他にも、数か月前に発生したと思われるケシボウズのミイラが見られた。ショウロの森では、あちこちでショウロが顔を出していた。表面の松葉を少しどけると丸い姿を現してくれる(d)。切ってみるとまだ若くて中は真っ白だ(e)。
 浜岡砂丘から寸又峡温泉までは、意外と距離がある。例年なら雪と氷のため、凍結注意とされる山峡の細道も、全く雪も無ければ凍結もなく、温泉にたどり着いてしまった。30年前苦労して徒渉した大井川源流も、今は立派な吊り橋がかかっていた(f)。

2007年2月10日()
 
奈良一秀博士「菌根菌について」
 
 2月18日(日)に菌類懇話会による講演会が開催される。菌類懇話会会員ばかりではなく、一般の方の聴講も歓迎である。事前申込みは不要で、当日直接会場に行けばよい。
 日頃きのこを見ては、何気なく腐生菌であるとか菌根菌であるといった用語を口にしている。しかし、はたしてどこまで菌根菌というものについて理解しているだろうか。また、一度でもフィールドなどで菌根そのものを観察したことがあるだろうか。
 奈良博士は、東京大学アジア生物資源環境センターで菌根の研究に携わっておられる。この機会に、この講演会に参加してみてはどうであろうか。菌根についての基礎的なことや、最新の研究成果などについての話は、菌根について理解を広げるよいチャンスとなるだろう。

講 師奈良一秀博士 (東京大学アジア生物資源環境センター)
テーマ菌根菌について
日 時2月18日()   14:00〜16:30
場 所駒込地域文化創造館 (旧駒込社会教育会館)
 東京都豊島区駒込2-2-2
 電話:03-3940-2400
交 通JR山手線駒込駅北口下車2分
参加費用資料代500円

2007年2月6日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 ピスとカミソリだけを使って超薄切片を作れる人はいるかもしれない。しかし、ちょっとした小道具を使って同じようなことが可能であれば、職人芸的な技能の修得に時間を費やす必要などないと思う。使い勝手のよい簡易ミクロトームを利用すればよい。
 これまで何度か簡易ミクロトームを取りあげてきた(「簡易ミクロトームのこと」)。そこで何度か池田製ミクロトームを紹介した(a下, f)。これは故池田和加男氏が、マイクロメータベースと金属筒を組み合わせて、手作りで20台ほど作成したもので、非常に使い勝手のよいものだった。

 池田製ミクロトームは現在ではもはや入手不可能だが、現在新たな簡易ミクロトームが試作段階にある(a上, b左)。これを試用する機会を得たので、簡単に紹介しておこう。池田製より若干大きめで、非常に精巧にできている。手に取った感触は芸術品といった趣がある。
 池田製の最大の欠点はピスの固定方式にあった(b)。試作品ではV字型のピス押さえ金具と精密ネジで押さえ圧を微調整できる(c, d)。これは池田製の欠点を完全に払拭している。試作品では、孔径の異なる天版と交換できるようになっていたが(e)、製品版ではこれはどうなるかわからない。手に取った重さも適切で、スムーズにカットできる。
 今の時期、生きのこは少ないので、蘚類の葉の横断切片を切り出した。厚さ15〜20μm程度のものが楽に切り出せた。ピス固定が適度な圧で安定してなされているので、試料の送り出しが非常にスムーズであった。現在、安定してきのこを切り出せるよう改良作業中である。
 製品版ができあがったら、再びこの場で紹介して、取扱い先なども記すことにしたい。ただ、大量生産される品物ではなく、あくまでも一台一台手作りとなるので、注文から入手までに多少の時間が必要となるだろう。いまは、完成が待ちどおしい。


2007年2月4日()
 
不正確な表現の削除
 
 2月1日の「雑記」の前半部を昨日バッサリ削除した。「雑記」のご意見番でもある識者の方から、厳しいご指摘をいただいて気づいた次第だ。迂闊にも、気楽に書き流してしまう怖さを痛感した。建設的・批判的コメントありがとうございます。

 いただいたコメントから一部を引用しておくことにした。
 新種を報告するにはまず国際植物命名規約の条文を満足した形で報告する必要があります。発表媒体というよりは「命名規約に則った新種記載」が新種として認められるためには必須です。
 各地の会誌・会報へ国際植物命名規約に則った新種記載を発表すれば、それは新種とし認められます。学術誌である必要はありません。学術誌(学会誌)に発表するのが望ましいというだけのことです。ただ、他の研究者が容易に見る(入手する)ことが困難な雑誌類に新種を発表するのは控えるようにと命名規約では勧告されていたと思います。
 新種の発表媒体が学術誌に限るということはありません。単行本に新種が発表された例もあります。


2007年2月1日(木)
 
初心者のための論文執筆講座
 
 3月24日(土)〜25日(日)に、日本菌学会が初心者のための論文執筆講座「Mycoscienceに分類論文が出版されるまで」という講座を東京で開く。案内には「主として菌類の分類や新種記載等に興味を持ち,また論文を書いて投稿したいという意欲をもったアマチュアや学生,大学院生,若手研究者等,中でも特に意欲のあるアマチュア研究者を対象」とある。
 各地で指導者的な立場にあるアマチュア研究者にとって、種の記載論文を書くことは避けて通れないだろう。しかし、論文を書くには、それなりの知識と経験が必要だ。日本菌学会による「初心者のため」の論文執筆講座は、参加資格に制限はなく、菌学会非会員でも参加できる。
 学名のこと、国際植物命名規約のこと、菌学ラテン語について、体系的に学ぶことができそうだ。さらには、一流の分類学者がどのようにして種の記載論文を書いているのかを、具体的に知ることができよう。意欲的なアマチュアなら是非とも参加してみてはどうだろうか。
 なお、詳細については、日本菌学会のホームページに記されている。会場の田町付近のビジネスホテルに宿泊すれば、安心して懇親会にも参加することができそうだ。

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