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日( )

2007年7月31日(火)
 
一眼デジカメと顕微鏡 (3)
 
 フィルム式顕微鏡撮影装置に装着されているカメラボディは単純である。ファインダーやミラーはなく単純なシャッターだけがある。顕微鏡撮影では、シャッター速度はもちろん、フィルム感度にいたるまで、すべてをコントローラ側で設定する仕様となっている。
 ボディを一眼デジカメに交換するまではよかった。ところがコントローラのAUTOMATICを使うと、ピントが合わず画像もしばしば白飛びする。そこで、MANUALモードでの悪戦苦闘とになった。これは1枚撮影するごとに、コントローラ等の設定をいちいち変更せねばならない。
 露出はフィルム感度(ASA16〜4800)で調整、シャッター速度は最短1/30秒、次に1秒、2秒〜5秒;1分〜5分しか選べない。これとカメラ側のホワイトバランスを組み合わせる。顕微鏡側の光量、絞りを変えると、かなりこまめに両者の組み合わせを変更しなくてはならない。

 一方、一眼デジカメのボディの場合、コントロールボックスに頼ることなく、カメラ側でISO感度やシャッター速度を制御できる。ただし、モードをAUTOにするとシャッターが切れない。そこで、撮影装置のコントローラを常時開放に設定して、カメラ側をMANUALにして、ISO感度とシャッター速度を調整しての撮影となる。これは、市販のデジカメアダプタと同じ方法だ。

 今朝はきのこの顕微鏡写真を数十枚撮影したのだが、最低の水準をクリアできる検鏡画像は最後まで得られなかった。悪戦苦闘はまだまだ続きそうだ。


2007年7月30日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
(j)
(k)
(k)
 ミミブサタケの胞子について、保育社の図鑑には「...(略)... 表面には縦線条模様があるがしばしば不明瞭である」と記される。この表面模様を観察しようと思えば、一般的な水やKOHで封入したのでは、なぜか容易には確認することができない。
 7月半ばに、栃木県の塩原温泉で採取したミミブサタケを使って胞子の表面をみた(a)。帰宅後すぐに採取した胞子紋を利用した。間歇的に噴出された落下胞子である。
 小形単眼の簡易顕微鏡で最初に、横断面を水(b)、コットンブルー(c)で確認したのち、胞子を低倍率でみた。最初にドライ(d)、エタノール(e)、フロキシン入り1%KOH(f)で、主に胞子表面に合焦すると、いずれも表面の縦線状模様が明瞭に捉えられる。
 メインの顕微鏡であらためて、油浸100倍対物レンズでみたのが下段の画像。水で封入した場合、胞子表面付近に合焦すると、全体がぼやけて縦線条模様の確認はほとんどできない。やむなく輪郭部にのみ合焦させた(g)。
 次に3%KOHで封入してしばらく放置してみた。案の定、胞子外壁が溶け出してしまった(h)。乾燥標本から戻して観察する場合、しばしばKOHを用いる。この場合、3%程度でも表面模様の観察は難しいおそれがある。保育社図鑑には「コットンブルー非染色性の縦条...がある」と記されている。しかし、コットンブルーを用いても、表面模様の観察は難しかった(i)。
 あらためて、ドライ状態(j)と70%消毒用アルコール(k)で確認してみた。胞子表面の縦線条模様を明瞭に捉えることができる。5年前の乾燥標本を使って、3%KOH、水、70%エタノールで確認してみたところ、エタノールで観察した場合のみ、縦線条模様を確認することができた。

 一般的に、ドライマウント、つまり水や封入液を一切つかわず、試料にカバーグラスをかぶせただけの状態で検鏡すると、画像が不鮮明になり、輪郭などが曖昧になりやすい。しかし、胞子などでは、封入液を使った場合には見えにくくなるような、表面模様や表面付近の微細構造などはドライの方が鮮明に分かることが多い
 ドライでは画質がひどく悪かったり、輪郭があまりにも不鮮明になるような場合には、エタノール(70%消毒用アルコール)で封入すると、ドライ状態に比較すると、表面模様や輪郭部が鮮明にみられる。しばしば、水やKOHだけでは得られない情報が得られる


2007年7月29日()
 
一眼デジカメと顕微鏡 (2)
 
 顕微鏡撮影専用として購入したNIKONのD100で苦戦中だ(雑記2007.7.21)。機器に装着するまでは、よかったが、最適な条件で撮影するために悪あがきを続けてきた。なかなか、納得のいく影像を得られない。合焦位置、露出の設定が思い通りにいかないためだ。
 古い撮影装置ということもあり、フィルム感度やシャッター速度などを設定するコントロールボックスは大型弁当箱といったイメージだ。COOLPIX990がとても小さくみえる。MANUALとAUTOMATICを選択できるが、コントロールできる範囲は少ない
 NIKONからは、デジタル方式の顕微鏡撮影装置が何種類か販売されているが、いずれも非常に高価である。コントローラ一体のコンパクトタイプで定価50万円、コントローラを分離したシステムでは80〜100万円。おのずと、古い銀鉛用撮影装置を流用して工夫するしかない。

 フィルム式の専用ボディと一眼デジカメとでは、ボディの厚みが異なる。つまりレンズ面から結像面までの距離が異なる。そこで、合焦位置の調整には、何通りかの厚みのスぺーサーを手作りして、撮影専用レンズ(CFレンズ)の装着位置を調整した。
 顕微鏡写真の撮影装置は、カメラを開放状態にしてコントロール装置側でシャッターを切る。一眼デジカメの場合、マニュアルでBULB(開放)にして、コントロール装置側でシャッターを切ることになる。しかし、手元の旧式撮影装置ではこれがなかなかままならない。


2007年7月28日()
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
(j)
 津市の海浜に、オオシロカラカサタケが綺麗な姿をみせてくれた(a)。当日は雨だったこともあり、濡れてヒダが非常に脆くなっていたが、緑褐色の色合いは残っていた(b)。久しぶりに出会ったので、胞子などを覗いてみるつもりで持ち帰ってきた。まる1週間経過していることもあり、ヒダはさらに潰れていた。胞子紋は何とか落ちた。
 胞子を、ドライ(c)、水(d)、メルツァー(e)で封入した。偽アミロイドのようだ。ヒダを切り出そうと思って困った。ヒダを横に寝かせると、何もせずとも子実層が潰れてしまう。やむなく、傘の裏面を上にして実体鏡の下に置いた。ヒダを潰さないように慎重にカミソリをあてた。
 ヒダが2枚くっついてしまい、無理に話すと組織が壊れてしまいそうなので、そのままヒダ実質などを観察した(f)。次に、ヒダを1枚取り外しスライドグラスに寝かせた。そのうえから、別のスライドグラスを定規として使い薄片を切りだした。子実層がやはり潰れてしまう(g)。
 簡易ミクロトームを使って切るには、ピスに挟んで穴に挿入するので、その時点でヒダが潰れてしまう。薄くて脆いヒダは、半乾燥状態にしてからピスで挟めばよいのだが、面倒なのでそこまではしなかった。側シスチジアは無く、ヒダ実質は平行気味に錯綜している(f, g)。
 切片の先端をみると、薄膜で嚢状の縁シスチジアがみられる。これも油浸100倍レンズにした途端に潰れはじめた(i)。傘表皮は普通にみることができた(j)。今日はプレパラート作成に、簡易ミクロトームは使わず、実体鏡に頼った。

 今日は久しぶりに千葉菌の観察会に出席。佐倉城址公園まで出かけることになる。


2007年7月27日(金)
 
(a)
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(b)
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(c)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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 先日江東区の夢の島でケシボウズを採取したとき、同じ場所にキヌカラカサタケ属ないしキツネノカラカサ属らしいきのこが群生していた(a, b)。何気なく持ち帰ってしまったので、捨てる前に一通り観察してみた。既に3日経過し、かなり傷み始めていた(c)。
 傘の径は4〜6cm、胞子紋は白色系、胞子は偽アミロイド(d)。可動性のツバをもつ(b, c)。ヒダの付き方は離生、傘表皮には溝線があり、柄やヒダは傷つけると赤褐色になる。ヒダを一枚取り外してスライドグラスに載せ縁をみると、薄膜の縁シスチジアがある(e)。
 ヒダを何とか切り出した(f)。かなり潰れていて切り出しは難儀した。子実層托実質は広義の平行型のようだ(g)。担子器には4胞子がついている(h)。ヒダの縁付近を切り出して、3%KOHとフロキシンで潰してみた。縁シスチジアの形は先端部に特徴がある(i, j)。傘表皮の構造ははっきりしないが、細い紐状の組織が傘の上に飛び出している(k)。とりあえず、担子器の基部にクランプはなく(l)、他の組織にもクランプはない。
 キツネノカラカサかイロガワリシロカラカサタケなどに近い種だろうと思っていたが、いずれとも遠い。キツネノカラカサにしては、胞子の形がまるで違う。イロガワリシロカラカサタケにしては、胞子サイズが一回り異なり、縁シスチジアの形がまるで違う。

2007年7月26日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
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(f)
(f)
 22日に三重県の海岸から持ち帰ったアカハツは、現地でヒダに一本の切れ込み傷をつくっておいた(a)。今朝4日ぶりに冷蔵庫から引っ張り出してみると、傷口はすっかり緑青色になっていた(b)。帰宅後直ちに採取しておいた胞子紋から、胞子を観察してみた。
 最初にドライ(c)、次にメルツァー(d)で封入した。ここまでは何ということはないのだが、うがい薬のイソジンで封入(e)してみた。水で封入した場合とほとんど変わらない。よく知られるように、ヨウ素の入ったうがい薬は、たいていメルツァー試薬の代用となる。
 イソジンなどのヨウ素入りうがい薬は、多くの場合メルツァーの代用品としてかなり強力な助っ人となる。子嚢菌では広範囲にアミロイド反応を確認できる。担子菌でもかなり有効であるが、チチタケ属ではほとんど役にたたない(雑記2003.12.19)。

2007年7月25日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 東京都江東区にある夢の島を歩いてきた(a)。ここはもともと埋立地なので、雑木林や天然林といったものはない。皮肉を込めて、ゴミの島とも呼ばれる。探索したのはユーカリとトウネズミモチが混植された林の樹下である(b)。足下は一面に落葉に被われ、地肌はあまり露出していない(c)。一見したところ腐植土であるが、夏場はかなり乾燥しそうなところだ。
 落葉をどけていくと、土の下からケシボウズが現れた(d)。全体に泥でひどく汚れたミイラが多かった。しかし、周囲のやや膨らんだ土塊を掘ると、柄が太くてしっかりした若い菌がいくつも出てきた(e)。孔口は筒状で、外皮は砂ではなく、泥を織りなして独特の風貌である(f)。とりあえず光学顕微鏡で胞子と弾糸だけを観察した。胞子表面には疣がある。
 情報は、地下生菌を研究している H.S. さんからいただいた。連絡を受けたのは、21日(土)だったが、三重県松阪市にいたのですぐに出向くことはできなかった。ミイラだけではなく、若い菌を採集できたので、詳細に検討することができそうだ。H.S. さん、ありがとうございました。

2007年7月24日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
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(g)
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(h)
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(i)
(i)
(j)
(j)
 先日激しい雨の中で、いわゆるタケリタケ(Hypomyces属菌)と言われる典型的な姿のものに出会った(a)。持ち帰ったものは、そのまま冷蔵庫に放り込んであった。昨日これを引っ張り出して覗いて楽しんだ。この仲間の菌類には全く無知なので、標本は昨夕、専門家に送った。
 ルーペで表面をみると、白いものが多数吹き出していた(b)。現地でルーペで見たときには、表面はただブツブツ状態となっているだけだった。多分、子嚢殼から成熟した胞子が、子嚢と一緒に放出されたのだろう。子嚢殼はラッキョウのような形をしている(c, d)。
 子嚢殼の口から多数の子嚢が放出されている(e)。子嚢に蓋はなく、先端では膜が厚くなり、筒状の穴がある(f)。胞子は表面が疣に被われ、両端が嘴状の突起となり、片側には隔壁があって、2細胞からなっている(g, i)。メルツァー液で封入したが、とくに変化はない(h, i)。子嚢も胞子も、3%KOHでは色の変化はない(f, g)。目が疲れるので、胞子をフロキシンで染めてみた(j)。同定には、アナモルフでの分生子確認が必要だが、Hypomyces hyalinus だろうか。

2007年7月23日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 三重大学裏の海岸砂浜には植林された若い松林が広がっている(a)。その周辺では、ケシボウズの仲間が新しい個体を発生させていた(b, c)。他にも、コツブタケ、アカハツ、オオシロカラカサタケなどが見られた。また三重県北部の員弁市北勢町の山のなかでは、若いウロコケシボウズタケにであうことができた(d, e)。まだ外皮を被った状態で孔口が開いていない。
 それに対して、静岡県浜岡砂丘にはきのこはほとんど見られず、かろうじてコナガエノアカカゴタケが1本だけ観察された(f)。ケシボウズの仲間は、不思議と1個体も出会うことができなかった。これまで、浜岡砂丘には数十回訪れているが、ケシボウズのミイラすらないというのは、全く初めての経験だった。よき仲間との楽しい二日間だった。

2007年7月21日()
 
一眼デジカメと顕微鏡
 
 秋葉原から御徒町の中古カメラ店を歩いて巡った。顕微鏡撮影専用機として、NIKONの古い一眼デジカメ、D100のボディを購入した。部分的に金属部分に錆が見られるが、中古価格は5万円弱で意外と高価だった。ネット上では4万円弱もあったが、状態が不明なのでやめた。
 旧式の顕微鏡撮影装置に一眼デジカメを装着して使う場合、何らかの工夫と妥協が必要だ。マウント方式さえ一致していればどんな一眼ボディでも装着可能かというと、選択肢は意外と少ない。NIKON D100は装着可能だが、撮影条件・露出の設定などは来週以降だ。

 まだ夜中の2:30。これからひたすら東名高速をひた走って、三重県まで行って来ることになった。したがって、今日明日に行われる集会や会合などは欠席することになる。


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