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日( )

2007年7月20日(金)
 
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 昨夜払暁に自宅を出発して、早朝の千葉県内房の浜を歩いてきた。先日の台風のために千葉県の海岸は甚大な被害を被った。外房の方がひどいが、内房の浜も予想以上にひどい荒れ方をしていた。浜には大量の漂着物が散乱し、陸側もひろく海水をかぶり、かなり広範囲に草がなぎ倒されたりしていた。
 海浜生の菌類は全滅かと思われたが、かろうじてケシボウズタケ属(a〜c)やホウライタケ属(d〜f)が散見された。ケシボウズは2種が観察されたが、いずれも柄が太くしっかりしていて、最近発生したものと思われた。大きな方は頭部の径8〜12mm(a, b)、小さい方は頭部の径2〜4mmである(c)。ていねいに見ていないが、Tulostoma fimbriatum と T. kotlabae と思われる。
 ホウライタケ属菌も2種類が目立ったが、ひとつはいわゆるカヤネダケ、つまり、スナジホウライタケ Marasmiellus mesosporus、いまひとつは、やや大型で名無しのホウライタケ属のようだった(e, f)。傘と柄をもったきのこは他には何もなかった。

2007年7月19日(木)
 
ネットオークションと顕微鏡
 
 中古の顕微鏡の市場に大きな変化が起きている。従来は大学や研究所、病院などが顕微鏡を買い換えると、それまで使用していた古い顕微鏡は、最終的に整備業者等の手に渡ることが多かった。それらを整備したものが中古顕微鏡として流通していた。ところが最近は、中古の顕微鏡が整備業者の手に入らなくなってきているという。
 中古顕微鏡は、多くの場合、無整備状態だとほとんど使い物にならなかった。レンズにカビが生えたり、コーティングが剥離したり、メカニカル系統が故障したり、光学系統がかなり狂っていたりするものが多い。これらは素人には整備が難しい。したがって、整備業者による中古顕微鏡の価格は、そのほとんどが技術料・交換部品代といってよかった。
 Yahooオークションに代表されるように、昨今はネットオークションがすっかり定着した。顕微鏡にしても、新品・中古品ばかりではなく、対物レンズ、接眼レンズ、コンデンサーなどのパーツまでが日常的に出品されるようになった。リサイクルという観点からもこれはよいことだろう。
 販売業者や製造業者による出品も多いが、個人がパーツを出品するケースも随分増えた。需要があれば、供給ありである。そのせいか、従来だと捨てられたようなパーツすらしばしば出品されるようになってきた。中古品放出市場であった大学や研究所でもネットオークションに出品するようになった。リサイクルが上手く回転するのであれば問題ない。
 そんなこともあり、ネットオークションに出品される中古顕微鏡には当たりはずれが大きい。少なくとも品物の良否をかなりの確度で判断できて、簡単な整備技術をもっているのでなければ、ネットで顕微鏡を購入するのは止めた方がよいだろう。
 昨日、都下の顕微鏡整備業者の作業場で一日を過ごして、あらためてネットオークションに出回る顕微鏡と、中古市場の現状を知り、痛切に感じたことだ。

2007年7月18日(水)
 
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 米沢の上杉神社は松岬公園内にあって、戦国時代の名将上杉謙信を祭神とするという。雨でも参拝客でとても賑わっていたが、きのこもまたいろいろな種類が豊富に出ていた。
 雨に濡れたアセタケが何とも美しかった(a)。コケの上に出ていたため、泥汚れは全くなかった。持ち帰ったものを広げてみると、全体に暗い色となり、柄のササクレも目立たなくなった(b)。柄は上から下までほぼ同大で、基部にはふくらみはない。
 胞子は予測通り大きなコブをもっていた(c)。悪い予感はあたっていた。水で封入すると、ピントがあった部分はやや平面的にみえる(d)。ヒダを切り出してみると、低倍率ではシスチジアの有無ははっきりしないが(e)、少し倍率を上げると、縁にも側にもシスチジアがある(f)。
 縁シスチジアは薄膜で太い棍棒状だが(g)、側シスチジア(i)とほぼ同じ形のものがある(h)。これは側シスチジアが先端付近にまで回り込んでいるだけで、厳密には「縁シスチジア」ではないのだろう。側シスチジア先端にはわずかに結晶物がみられる(i)。
 傘表皮の菌糸は匍匐状で、部分的に立ち上がる。これがササクレにみえるのだろう。柄の表皮にも、ところどころに菌糸の束がみえる(k)。しかし、傘表皮にも柄表皮にも、シスチジアと呼べるような構造物はみあたらない。担子器基部にはクランプをもたないものが多い。

 保育社の図鑑でアセタケを検索すると、胞子にコブがあるから、ニセトマヤタケ亜属のクロニセトマヤタケ節となる。そこに掲載された種で図鑑に記述があるのは9種。しかし、それらのいずれも、柄の基部が太くなるか、膨大するタイプばかりである。したがって、保育社の図鑑だけに頼る限り、これ以上のことは分からない。先に進むためには、モノグラフにあたるしかあるまい。

 Stangl "Die Gattung Inocybe in Bayern (1989)" は手元にあるが、小林さんの "The taxonomic studies of the genus Inocybe (2002)" が、数年前から行方不明となって久しい。どこの誰の所に出張しているのか、あるいは、何かの資料の下になっているのかわからない。文献の維持管理も大変である。分類学は歴史学=文献学、できればやはり関わりたくない分野だ。


2007年7月17日(火)
 
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(e)
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(f)
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 台風による増水と激しい雨の中を歩いてきた。15日は、激しい雨と泉源に流れ込む泥流で、露天風呂は泥の池と化し、内湯は湯温が下がり冷泉のようだった。宿のすぐ脇を流れる川は、激しい泥流となり水位が1〜2m上昇し、今にも氾濫するのではないかと思われた(a)。
 16日朝、絶景の露天風呂に浸っていた。露天風呂は写真(b)で宿の上にみえる岩壁の直下にある。突如、眼前に聳える岩壁が剥がれ、大きな落石となり、焦臭いにおいと激しい音がひとしきり続いた。客の中には慌てて風呂から逃げる有様だった。
 激しい雨のため、きのこは泥汚れが激しく、形が崩れてしまったものが目立った。巨大化したきのこも目に付いた。ヒポミケス菌に犯されたものが多数発生していた(c, d)。いわゆるタケリタケであるが、乱立する姿には笑えるものがあった(e)。コケの中から発生しているきのこには、泥汚れはなく、あちこちで鮮やかな姿をみせていた(f)。

2007年7月15日()
 
山形の温泉へ
 
 今朝から仲間5人で山形県の秘湯へ向けて出発である。台風のため、山中の道路が大雨による落石や崩壊などで、閉鎖になっているかもしれない。目的地まで到達できるか否かは、すべては台風次第である。ここ数日ジメジメした日々が続いている。小ぶりになれば、キノコが豊富に見られるかもしれない。いずれにせよ、明日は雑記の更新はない。
 これまでの行動を振り返ってみると、台風直撃に関わらず、予定通り出発し、山の中を歩いてきた。山登りをしていたときの延長で、きのこに関わるようになってからも行動パターンに変化はない。でも、何かあった場合には「無謀な」と非難されることだろう。

2007年7月14日()
 
(a)
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(e)
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 一昨日川崎市の緑地でフタバネゼニゴケの間から、テングノメシガイの仲間が多数でていた(a)。小さいけれども充分成熟しているようすだった。ルーペで見ると、シャモジ形をした頭部の表面には無数の毛がみえる(b)。一晩スライドグラス上に放置すると多数の胞子が落ちた。
 頭部を横に切断してみると、表も裏も同じように子実層がある(c)。実体鏡の下でこれを薄切りにして顕微鏡で覗いてみた(d)。剛毛、先端が弱い鈎状に曲がった側糸、細長い紡錘形の胞子を8つ納めた子嚢がみえる(e)。
 メルツァー液で子嚢先端が青色になる。子嚢から胞子が放出されるのを見て楽しんだ。成熟した胞子には7つの節がある。未成熟な胞子では、長紡錘形の中には、球形の気泡が整然と並ぶだけで、隔壁は見られない。やがて、隔壁ができ始め、気泡がみえなくなる。

2007年7月13日(金)
 
(a)
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(e)
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(f)
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 昨夜はお遊びに終始してしまった。ホシアンズタケ入りの豆腐汁(a)、ヤマドリタケ入りの野菜炒め(b)をむさぼりながら、ミズゴケ類の観察をしていた(c)。乾燥した標本を水で戻し、実体顕微鏡の下で、枝から葉をはぎ取ってスライドグラスに並べた(d)。
 顕微鏡のステージに載せて、観察を始めるとあちこちの葉の上でなにやら動きだした。ミズゴケを観察していると、たいていワムシ、線虫、ケイ藻を見ることになる。いつもと事情が違う。なにやら足のある生き物がのんびり動いている(e)。クマムシだ。
 クマムシは、身近な所にあるギンゴケホソウリゴケハマキゴケなどでは、しばしば見かける。半年以上前に採取したコケの乾燥標本を水で戻して見ていると、小さな樽形のゴミがにわかに動き出したりして面白い。でも、ミズゴケ類で見かけたのは初めてだった。
 カバーグラスをかけて倍率を上げると、クマムシが潰れてしまう。しかし、肝心の時に限ってホールグラス(中央が凹状になったスライドグラス)がない。そこで、単眼の学習用顕微鏡にカバーグラスをかけずに載せて、しばし覗いて楽しんだ(f)。画像(f)は接眼レンズにケータイのレンズを押し当てて撮影したものだ。ケータイでの顕微鏡写真は久しぶりだ(雑記2004.9.1)。

2007年7月12日(木)
 
(a)
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(i)
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(j)
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 昨日の雑記で、ベニタケ科とは関わり合いを持ちたくない、と書いたが、舌の根が乾かないうちにチチタケ属を取りあげてしまった。
 チチタケは面白い(a)。新鮮な個体をみると、傘の表面はもちろん、柄も何となくベルベットのようだ。これは、まるで全身を武装しているかのように、無数の槍(厚壁で針状の組織)に被われているからだ。傘シスチジア、柄シスチジアといったところだろうか。
 この仲間は、傷つけると白いベトベトした粘液を出すので、プレパラートを作るのが面倒だ。だからかどうか、メルツァー液でアミロイド反応を示した胞子はみても、その他の組織をみる人は案外少ない。多分、一目ですぐに同定できるから、いちいち検鏡などしないのだろう。

 最初に実体鏡の下でヒダを切りだした(b)。指先がベタベタになった。次にピスに挟んで切ると、ピスやらゴミが一緒に着いてきた(c)。カバーグラスの脇からメルツァー液を注ぐと、ゴミとピスは離れた(d)。ヒダ実質をみると、球形細胞は目立たず、乳管菌糸が目立つ(e)。縁シスチジア、側シスチジアともに、槍の穂先を思わせるように、厚壁で鋭く尖っている。
 傘表皮も同様に、やや厚壁のシスチジアに被われている(g)。こちらは槍の穂先のようには尖っていない(h)。同じように、柄の上部表面をみると(i)、ここでもやや厚壁のシスチジアが乱立する(j)。胞子だけではなく、傘表皮や、柄表皮を観察すると面白いきのこは意外と多い。
 ヒダの横断面(b, c)を比較すると分かるように、実体鏡下で切り出すのは案外難しく、一定の修練が必要だが(b)、簡易ミクロトームを使うと、短時間のうちに、簡単に薄切が切り出せるようになる(c)。傘や柄の表面はヒダに比べると、さらに簡単に切り出せる。


2007年7月11日(水)
 
(a)
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(i)
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 コケ観察で歩いているとき、コナラ林のハイゴケ中からベニタケ属クサハツ節のきのこが多数でていた(a)。霧吹きで表面を湿らせてみたが粘性はあまりない。ヒダは密でわずかに枝別れもみられる(b)。ここで止めておけばよいのに、なぜか持ち帰ってしまった。
 きのこ関係でふだん使う薬品類(試薬、染色剤)といえば、メルツァー、KOH、濃硫酸、コットンブルー、フロキシンでほとんど用が足りている。ところが、ベニタケ類の同定となると、硫酸第一鉄(FeSO4)、グアヤク(Guaiac)、フェノール(Phenole)による呈色反応は必須だし、検鏡するにも、さらにスルフォベンズアルデヒド(SBA)などが必要となる。
 最近では、こういった薬品類は、ほとんど使わないので、手持ちの試薬は古くて使い物にならない。滅多に使わない試薬を少量作るのも面倒だ。そんなこともあって、ベニタケ類やチチタケ類は一部の例外を除いて、見なかったことにして通り過ぎることにしてきた。

 とりあえず、手元にあるものだけを使って観察してみた。持ち帰ったものは触れたところが汚褐色になっていた。不快臭はほとんど無い。傘周辺部の溝線は、縁の部分では乳頭状の突起となっている(c)。傘上表皮は以外と楽にはぎ取れる(d)。味はやや辛みがある。
 胞子は、多くが 8 x 7μm 前後の類球形(表面模様を除く)で、表面には荒い疣状突起があるようにみえる(e)。ヒダを切り出してみた(f)。子実層には、担子器や側シスチジアらしき構造物がみえる(g)。側シスチジアは着色され、先端は小さな球形となっているものが目立つ(g, h, k)。
 習慣で、傘表皮も眺めてみた(i, j)。SBAを使っての反応は当然やっていない。フロキシンとKOHで担子器やシスチジアをバラしてみた(k, l)。
 一見クサハツのようだが、何だろうか。ベニタケ属を持ち帰ったことを後悔するのみである。キシメジ科とベニタケ科とは、できれば関わり合いをもちたくない。


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