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日( )

2008年6月10日(火)
 
コケ上にでる小さなきのこ (2)
 
 きのこが小さいので、ヒダ一枚だけを切り出すのは難しい。そこで、カサから柄を切り離し、ヒダを上側にして実体鏡の下に置き(a)、接線方向に切り出した(b)。ヒダ実質は、崩れた類並列型。ヒダの縁にも側面にも同じような姿のシスチジアがみられる(d)。
 カサ表面のシスチジアも類似した形をしている。カサ表皮がパイプ状に見えてしまうので(e)、あらためて90度方向を変えてカサを切り出した。今度は、カサ表皮では菌糸が匍匐しほぼ平行に走っているのが分かる(f)。胞子は水封だと見にくく、フロキシンで染めると眼が疲れない。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
(l)
 面白半分に、柄を横断面で切り出した(g)。柄シスチジアは結構大きい。倍率を上げると、柄の菌糸がパイプ状に見える(h)。シスチジアの部分に合焦すると、柄の横断面の様子は分からなくなった(i)。縦断面で切ると、竹を並べたような菌糸と、シスチジアが見える(j)。
 ヒダを一枚外して、フロキシンで染め、3%KOHで封入して、カバーグラスの上から押し潰した。シスチジア(k)や、担子器などが明瞭に捉えられる(l)。なお、担子器の基部にはクランプがある。とりあえず、このキノコはヒナノヒガサ Gerronema fibura ということにしておこう。

2008年6月9日(月)
 
コケ上にでる小さなきのこ (1)
 
 日光宇都宮道路のパーキングエリアには、一面をハイゴケで被われた土手状の境界がある。そのコケの間から、小さな可憐なきのこが多数発生していた(a〜d)。この4枚の写真には複数種が混じっているようにもみえるが、いずれも同一種のキノコだった。
 いずれもみな、カサ頂部が漏斗状に凹み、中心部は色が濃く、カサの縁には条線がみられ、ヒダは疎で柄に長く垂生し、柄は細長くてとても脆く、地表部と同じくらいの長さがコケの中に延びている。胞子紋は白色で、胞子はいずれも狭楕円形でとても小さい。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
(k)
(l)
(l)
 カサ表面をルーペなどで見ると、微毛があることがわかるが、縦断してみるとさらに鮮明に捉えられる(g, h)。水滴を落とし水レンズを通してみると、拡大されて面白い(i)。ヒダもルーペで拡大してみると、縁シスチジア、側シスチジアと思われる微毛がみえる(j)。柄の表面もルーペでみると、微毛に被われている。これを縦断してみると、明瞭に多数の毛が見える(k, l)。

 小さなきのこの観察は肉眼だけでは難しい。このキノコのカサ径は3〜6mmで、紙袋で持ち帰ったものは、頭部は丸い小さな塊状となり、柄はペシャンコに糸状となっていた。こうなると、ルーペを使わない限り、どこがヒダで、どこがカサの縁なのか分からなくなってしまった。フィルムケースに収めて持ち帰ったものだけが、採取時の姿を保っていた。明日は、このキノコのヒダやカサ表皮、柄の表皮などを顕微鏡で観察してみよう。


2008年6月8日()
 
6月7日(土)の日光
 
 日光では恒例のクリンソウ騒ぎが始まった。土日の混雑は異常で、am8:00には広大な駐車場は満杯となり、バスは朝の通勤電車のような混雑を呈する。今年4月30日とほぼ同じコースを歩いたところ(雑記2008.4.30)、思いの外多くのキノコを観察することができた。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
(l)
 出会ったキノコは、ハラタケ類30数種、子嚢菌10数種、その他10数種といったところ。ホシアンズタケ(a, b)、ヒロメノトガリアミガサタケ(e, f)は出はじめたばかりのようだ。タモギタケ(c, d)はすでに第一陣がほとんど終わりをつげ、多くはバクサレ状態だった。
 コガネヌメリタケはとても美しいキノコだが、低地では既に発生を終え、標高の高いところでミズナラ、ブナなどの倒木にみられた(g, h)。マスタケ(i, j)が食べ頃の柔らかさで大きな群を作っていた。スギの巨木の周りでは、ミヤマトンビマイ(k, l)がみごとな姿をみせてくれた。そのうちから柔らかな成菌一株を採取したが、あまりの大きさと重量感に圧倒された。

2008年6月7日()
 
夏のきのこいまだし
 
 昨日、所沢の航空記念公園、東京都武蔵村山市の野山北公園、埼玉県川越市の保護林を歩いてみた。航空公園ではウッドチップ生のきのこ、野山北公園では谷地やシイ・カシ林のきのこ、川越の保護林では平地コナラ林のきのこを観察できる。
 航空公園には、ヒトヨタケ、ムジナタケ、イタチタケ、ベニタケ科のきのこがごくごくわずかあっただけだった。狭山湖南岸に位置する野山北公園では、マツオウジ(a)、ダイダイガサ(b, c)がやたらに目立った。クロノボリリュウタケも数ヶ所でみられた(d)。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
 川越の保護林でも、きのこの姿はひどく少なかった。フミズキタケ(e, f)、ベニタケ科のきのこ、イタチタケ類似種、ツエタケ類似種などがみられただけだった。東京都北部から埼玉県南部を見た限りでは、まだ夏のキノコはあまり発生していない様子だった。

2008年6月6日(金)
 
「菌類の多様性と分類」締切間近
 
 菌学教育研究会の講座「菌類の多様性と分類」の申込締切が間近となった。以下は雑記3月24日からの再録である。平成20年度前記講座は4日間で、6月20日(金)〜23日(月)となっている。同研究会の専用施設 筑波センター(茨城県つくば市筑波字外輪町2074-4)を会場に実施される。講座受講の申込〆切は6月10日(必着)となっている。照会先は下記の通り

問い合わせ先
〒300-4352 茨城県つくば市筑波2074-4
菌学教育研究会事務局 土居祥兌 п彦AX 090-5440-6882
E-mail:ydsotowa@ce.wakwak.com
〒190-0182 東京都西多摩郡日の出町平井2196-152 近藤和彦
E-mail:hinodekon@ybb.ne.jp
〒187-0032 東京都小平市小川町2丁目1299-49 布村公一
E-mail:BZG22155@nifty.com

    [講座概要] (敬称略)
6月20日(金) 顕微鏡の使い方 浅井郁夫、土居祥兌
6月21日() 身近に見る黒いコウヤク型の子嚢菌類とその分類 三村浩康
6月22日() 午前:宮崎県のキノコと絶滅危惧菌類「キリノミタケ」の現状 黒木秀一
  午後:「関西菌類談話会」・「幼菌の会」及び「菌類談話会」の
     過去の活動と今後の方針
   −はたして、きのこ会の行事は会員の同定能力向上に貢献しているのか−
森本繁雄・後藤康彦
6月23日(月) 菌類系統分類学とDeep Hypha・AFTOLプロジェクトを
巡る最近の動き
杉山純多
  菌類生物地理学の基礎と最近の進歩 保坂健太郎

2008年6月5日(木)
 
難しい横断切片:Hygrocybe
 
 先日三重県で採取したアカヤマタケを顕微鏡で覗いてみた。アカヤマタケ属 Hygrocybe はヒダ切片やカサ表皮の切片を作るのがとても難しい。脆くてとても水っぽいからだ。おまけに、採取からすでに4日経過している。冷蔵庫に保管しておいたのだが、取りだしてみると予想通り、かなり崩れはじめていた。新鮮な状態でもうまくいかないのだから・・・・。なまじ薄く切ると、ヒダが二つに割れて丸まってしまう。仕方なしに、かなり厚めに切ることになった(a)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 とりあえず、ヒダ実質が並列型であることは何とか分かる(a, b)。ヒダの先端をみても、シスチジアは見あたらない(c)。胞子は結構大きく、非アミロイドだ(d)。カサ表皮は弱いゼラチン質で、菌糸が平行に走っている(e)。担子器は2胞子性で、これまたかなり長い(f)。

 過去に何度もアカヤマタケ属のヒダやらカサの切片作りを試みた。しかし、これまで一度もまともに切り出せたことはない。ウラベニガサ属やヒトヨタケ属の切り出しよりも、ずっと難しいのではないかと感じている。この仲間の切片作りに関しては、青森のS. K. さんの切り出し技術は群を抜いている。薄片切り出し技術と観察能力に関しては、いまだに足元にも及ばない。
 S. K. さんの検鏡写真は、今回展示のものも、非常にすばらしいものだった。このことは、昨年筑波大学でも感じたが、今回三重大学でも痛感した。残念ながら今は、逆立ちをしても、あのような薄くて鮮明なプレパラートを作成することはできそうにない。


2008年6月4日(水)
 
ちょっぴり苦い想い
 
 先日狭山丘陵で採取したヒイロベニヒダタケ(a, b)の顕微鏡下の姿だ。カサ表皮は、楕円形〜洋梨形の細胞が子実層状に並ぶ(c)。また、ひだ実質は逆散開型をしている(e, f, h)。薄膜のシスチジアが多数みられる(e, f, j, k)。担子器は短くてずんぐりしている(l)。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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 ヒイロベニヒダタケは罪作りなキノコである。ウッドチップベースの地表から出た色鮮やかな子実体をみると、まるでアカヤマタケ属 Hygrocybe のキノコを思わせる(b)。図鑑のヌメリガサ科をみると、ベニヤマタケとかヒイロガサといった、よく似たキノコがいくつも並ぶ。
 しかし、これらの種についての解説を読むと、いずれもしっくりこない。それもそのはずで、ヒイロベニヒダタケは、ウラベニガサ属 Pluteus の仲間であって、アカヤマタケ属などとはかなり遠い位置にある。この属の胞子紋は褐色であり、アカヤマタケ属の胞子紋は白色だ。

 7〜8年ほどまえ、色鮮やかな赤色のカサを持ち、ヒダが白い幼菌を採集した。てっきりヌメリガサ科のキノコだと思って、図鑑をさんざん探したが該当種が見つからなかった。「きのこ屋」さん(高橋 博氏)に話すと、「ウッドチップから出てたんじゃないの? それって、ヒイロベニヒダタケだよ。ヒダの色が違うよ」と一言で片づけられてしまった。「きのこ屋」さんには、昔からいろいろ教えられたが、当時の自分には、胞子紋を観るという視点が欠如していた。

 保育社や山渓のキノコ図鑑では、ハラタケ類の配置はSingerの分類に準拠している。おおざっぱには、胞子紋が明るい色から暗い色の順に並ぶ。胞子紋が白色のヌメリガサ科は図鑑のヒラタケ科に継いで2番目の位置に置かれる。一方、ヒイロベニヒダタケなどを含むウラベニガサ科は、テングタケ科の次、ハラタケ科の前に置かれている。
 胞子紋、ないしヒダの色をみれば、写真のキノコ(a, b)がヌメリガサ科でないことはすぐ分かる。さらに、腐朽木からでていることで、ウラベニガサ科を想起させられる。顕微鏡で覗くと、ひだ実質が逆散開型であることから、ヌメリガサ科でないことは決定的となる。アカヤマタケ属ならば、ひだ実質は並列型だし、ヌメリガサ属ならば散開型であり、いずれの担子器もとても長い。

 ということで・・・・、ヒイロベニヒダタケにはちょっぴり苦い想いがある。キノコが [単なる山菜] だった頃、絵合わせだけで種名をテキトウに決め、食毒を判定して頃の姿が思い出される。「きのこ屋」さんからの指摘がなければ、保育社図鑑に [肉眼的形態と観察要点]、[顕微鏡的形態]、[子実体の菌糸構造]、・・・などの解説があることも知らなかった。近年大きく分類体系が変わったとはいっても、保育社図鑑は基本中の基本を教えてくれる。


2008年6月3日(火)
 
三重県で遊んだ
 
 土曜日から昨日月曜日まで、三重県で遊んできた。出会ったきのこは予測通りとても少なかった。6月1日午前中に三重県庁前の偕楽公園で、いくつかのキノコに出会った。ありふれたものばかりだが、アカヤマタケ(a, b)、クルミタケ(c, d)などがよく目立った。亀山市ではクチベニタケの仲間(e, f)が遊歩道脇に多数でていた。ゼラチン質の足の部分が長い個体が多かった。
 
(a)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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 1日夜から2日午前中は、三重県のきのこ関係者にすっかりお世話になってしまった。亀山市の山の中では、2日の午前中に、ウラグロニガイグチやカンゾウタケ、コウボウフデのミイラなどをみることができた。楽しい三日間だった。三重県のMさん、Kさん、Tさん、ありがとうございました。

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