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日( )
2008年7月19日()
 
一度は見ておきたい:ヒダ実質
 
 ある鑑定会の場でのこと。指導者らしき方が参加者に「テングタケの仲間はヒダの横断面が散開型です」と話していた。参加者から「散開型って何ですか?」との質問があり、しごく学術的(?)な説明がされ、質問者は納得したようだった。脇でそのやり取りを聞きながら、『講釈師、見てきたようなウソを言い』、『論語読みの論語知らず』という諺を思い出した。
 
(a)
(a)
散開型
 
(b)
(b)
逆散開型
 
(c)
(c)
並列型
 
(d)
(d)
錯綜型
 
  (e)
(e)
キヒダタケ
亜型
(f)
(f)
ヤマドリタケ
亜型
 きのこのヒダの横断面を見たとき、実質部の構造には、散開型(a)、逆散開型(b)、並列型(c)、錯綜型(d)などいくつかのパターンに分けられる。さらにイグチ類では散開型をさらにキヒダタケ亜型(e)、ヤマドリタケ亜型(f)に大別され、分類上でも区別される。テングタケなら散開型、ウラベニガサなら逆散開型、アワタケならキヒダタケ亜型・・・、といった知識は常識となっている。
 長年きのこを顕微鏡で観察してきても、自らの目で実際に錯綜型なり逆散開型などを確認する人は少ないようだ。あまりにも当たり前で今更観察の必要はないということなのだろうか。でも、せっかく顕微鏡が使える環境にあるなら、一度は見ておきたい。

 急遽長野県の乗鞍岳に登ってくることになった。今am2:30。高速道路の深夜割引を使うので、am3:00には出発だ。今夜は乗鞍鈴蘭泊となるので、明日の雑記はお休みとなる。


2008年7月18日(金)
 
昨日朝の野山北公園
 
 今日の講習で使うキノコを調達するため、昨日早朝狭山湖畔の野山北公園に行ってみた。意外なことにキノコの姿はとても少なかった。それでも1時間ほど歩くと、7〜10種類ほどの軟質菌を集めることができた。写真(0〜3)はそのうちの一部で、やたらに目立ったきのこだ。
 
(0)
(0)
(1)
(1)
(2)
(2)
(3)
(3)
 マツ混じりのコナラ林にはクロハツが出ていた(a, b)。現地では縦に切って、肉が赤変するところまで確認した(c)。帰宅してから、色の変化を再度確認すると、肉は黒変していた(d)。FeSO4、グアヤク、フェノール、KOHなどによる呈色反応もやってみたが、どうやらクロハツとしてよさそうだ。ところがこのクロハツ、胞子紋がほとんど落ちなかった(e)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 とりあえずヒダを切り出して(f)、ヒダ先端をみると多数の縁シスチジアがある(g)。縁シスチジアだけをバラして、フロキシンで染めてみた(h)。ついで、傘表皮を切りだしてみた(i)。傘表皮を構成する菌糸は、黒い色素を帯びている(j)。それにしても蒸し暑い一日だった。

2008年7月17日(木)
 
翁臭ハツ:ミクロの姿は美しい
 
 今の時期、雑木林に行くとたいていオキナクサハツを見ることができる(a)。きのこ狩りの人たちも採取しないので、蹴飛ばされない限り、新鮮な姿を保っている。見栄えが悪く臭いもよくないとかで、人気の薄いきのこだが、ベニタケ属の中では、とても印象的な胞子を持っている。一度は見ておいて損のない特異な姿の翼を持った胞子だと思う。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 一昨日川越の雑木林から2本ほど持ち帰っていたので、今朝はこれを覗いて楽しんだ。顕微鏡は対物40倍までで十分楽しめる。油浸100倍レンズを使う(c)までもなく、40倍で胞子を楽しむことができる(b)。いちおうヒダを一枚スライドグラスに寝かせて断面を切り出した(d)。
 以下対物20倍と40倍レンズで、ヒダの先端(e)、ヒダの側面(f)、傘端部の表皮(g)、傘頂部の表皮(h)、柄の表面(i)をみた。ついで、ヒダの一部をKOHで封入し、フロキシンを加えて軽く圧を加えると、組織がバラバラになった(j)。担子器(k)、シスチジア(l)などども明瞭になった。

2008年7月16日(水)
 
急に出てきた夏のきのこ
 
 昨日早朝、寝不足の目で川越の保護林を歩いた。テングタケ科やイグチ科のきのこが多数出ていたのに驚いた。特に多かったのが、フクロツルタケ(a, b)、キヒダタケ(e, f)、チチタケ(k)、ミドリニガイグチ(g)、アカヤマドリ(h)、クリイロイグチといったところだった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ほんの30分ほどの間に、30種類以上のきのこに出会うことになった。シロオニタケ(c, d)は薄暗い中、遠目にもはっきりとわかった。クロチチダマシ(j)、アイタケ(l)、コオニイグチ(i)にも数ヶ所で出会った。夏のきのこが一気に多数発生したかのようだ。
 ムラサキヤマドリタケヤマドリタケモドキだが、ブヨブヨで大きくて虫だらけの個体ばかりで、綺麗な成菌には一つも出会うことはなかった。キノコ狩りの人たち数名に出会ったので、彼らが大形食用菌はおおかた採集してしまったのかもしれない。
[pm4:30修正]   (a)と(b)の写真について、フクロツルタケと書くべきところをシロフクロタケと書いてしまった。友人のキノコ屋さんから指摘があって誤記に気がついた。ありがとうございます。

2008年7月15日(火)
 
二つのシロホウライタケ属
 
 昨夜は言い難いほどの猛暑の夜だった。一晩中扇風機を回しながら、汗にまみれて寝苦しい時を過ごした。今日は完璧に寝不足の一日となりそうだ。保管しておいたキノコを取り出すために、さきほど冷蔵庫の野菜ケースを開けた。束の間の冷気にホッとした。

 土曜日の日光では、Marasmiellus(シロホウライタケ属)の小型菌がやたらに目立った。数種類を持ち帰っていたが、多くは胞子紋がほとんど落ちなかった。紙袋に入れて冷蔵庫の野菜ケースに保管しておいたが、既に傘はカラカラに乾いており、湿らせても元の姿には戻らなかった。
 

(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(a')
(a')
(b')
(b')
(c')
(c')
 シロホウライタケ M. candidus かもしれないと思った2種(a, a')についてミクロの姿をみた。両者のヒダ先端をみると、一方(a)には縁シスチジアが全くなく(b)、もう一方(a')には多数の縁シスチジアがあった(b')。両者とも胞子の形は似ているが、そのサイズは全く違う(c, c')。もっとも、(a)では胞子紋がほとんど落ちなかったので、ヒダの周辺に漂う胞子をみたので、未成熟な胞子を見ているおそれはある。(a')では、胞子紋から採取した胞子だ(c')。
 時間経過とともに(a')では、柄の基部が黒くなってきたのにたいして、(a)ではすっかり乾燥しても白色のままだった。両者ともに菌糸にはクランプがある。傘表皮は両者とも並列気味に菌糸が匍匐している。シロホウライタケと同定してよいと思えるのは、(a')の方だけか・・・。

2008年7月14日(月)
 
シスチジアで化粧
 
 どこに行ってもケショウハツによく出会う。暗い道の法面に出ていたケショウハツを持ち帰って顕微鏡で覗いて遊んだ。あまり程度のよくない個体をひとつだけ持ち帰り、放置しておいたせいか、白いウジ虫紋がとれただけで、胞子紋はとれなかった。やむを得ずヒダを一枚スライドグラスにこすりつけ、虫をよけて、メルツァー液を加えて胞子を観察した(c)。
 ヒダを一枚切り出して(d)、すぐにカバーグラスの脇からフロキシンを少し加えた(e)。たちまち側シスチジアが鮮明にみえるようになった。縁シスチジアは、側シスチジアよりやや小振りで細く、まるで爪楊枝の集団のように多数群れている(f)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 3%KOHで押し潰してフロキシンを加え、ヒダの縁近くをみた。折りよく、縁シスチジアと側シスチジアが視野に入っていた(g)。傘表面にも(h)、柄の表面にも(i)、ヒダの縁シスチジアと同様の形のシスチジアが見られる(正確にはシスチジアとは言わないのかもしれないが・・・)。油浸×100レンズにして担子器を確認した。視野一杯に側シスチジアがみえ、画像には一部しか入りきらなかった(j)。ケショウハツは、ヒダばかりではなく、傘表皮や柄にも、多数のシスチジアで化粧しているかのようだ。それにしても、今朝はウジ虫を縦横に切るハメになった。

2008年7月13日()
 
昨日の日光:いつもと違う
 
 昨日暑さを逃れて、日光、塩原、鬼怒川に遊んだ。早朝の日光は天候不順で、気温は低かったが、雨が降ったり日が射したりと、空模様が目まぐるしく変わった。タモギタケ(a〜c)やホシアンズタケ(d〜f)を至るところで見た。大きく育ってバクされた(流れた)個体も多かった。例年だと必ずといってよいほど見られるきのこがほとんど発生していなかった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 塩原温泉周辺では、シロホウライタケらしい小さなきのこ(h, i)をはじめ、落枝や落葉からは、白色の小型菌がいろいろと出ていが(i, j; k, l)、テングタケ科やイグチの仲間は少なかった。川沿いの水流近くは涼しかったが、日なたは猛暑、林間に入ると蚊の猛攻撃に曝された。日没までたっぷり歩き、鬼怒川温泉でのんびりと湯につかって、夜遅くなってから帰宅した。

2008年7月12日()
 
テトラポット状胞子と樹枝状シスチジア
 
 一昨日狭山湖畔で採取したシロホウライタケ属菌を観察した。アシグロホウライタケの可能性が高いと感じていた。落葉や落枝から発生し、傘径は3〜8mm、柄は暗紫灰色で表面は白色の微粉に覆われる。現地では携帯顕微鏡で三角形にみえる胞子は確認したが、樹枝状のシスチジアを確認できなかった。そこで、昨日の雑記では「アシグロホウライタケ?」とした。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
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(f)
(f)
(g)
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(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 一晩かけて胞子紋をとったが、すでにかなり乾燥しているせいか、カバーグラスに落ちた胞子は数えるほどしかなく、透明で見にくかった。フロキシンを加えると、急に鮮明になった(c)。異形の四面体をなしていて、まるでヒシの実やテトラポットを連想させられた。
 半乾燥状態でクシャクシャになった傘を、そのままスライドグラスに載せて切った(d)。その後コットンブルーで子実層の側だけを染めた(e)。ヒダ実質は類並列型(f)。樹枝状の縁シスチジアがある(g)。フロキシンとKOHでヒダ先端を押し潰すと、シスチジアの姿が分かり易くなった(h)。
 傘表面の構造ははっきりしない(i)。柄表面の白色微粉の正体は樹枝状の組織だ(j)。アシグロホウライタケに間違いなさそうだ。薄い傘肉にも(k)、柄表面にも(l)、ヒダ実質にも、クランプがある。ありふれた小さなきのこもミクロの世界では豊かな表情を見せてくれる。

2008年7月11日(金)
 
狭山湖畔にて
 
 昨日、東京と埼玉の県境にある狭山湖南岸を歩いてきた。予想に反してきのこは少なく、やたらに真っ白なテングタケ属のきのこが目立った。携帯顕微鏡、メルツァー液、KOHを持って歩いていたので、ドクツルタケか否かの判定はできる状態だった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 もっともよく出会ったきのこは、ドクツルタケ(a)と白色のテングタケ属のきのこ(b)だった。小径のど真ん中やら、駐車場にも多数でていた。白色のテングタケ属のきのこについては、傘にKOHを垂らして黄変し、胞子がアミロイドならドクツルタケと判定した。シロタマゴテングタケなどもあったのだろうが、白色のテングタケ属菌は、種名の同定まではできなかった。
 タマゴタケは綺麗な状態のものがなかったので、卵を縦断した状態で撮影した(c)。ツルタケ(d)、カバイロツルタケ(e)もかなり高い頻度で発生していた。発生数は少なかったが、幼菌から成菌までみられたのがムレオオイチョウタケだった(f)。成菌の傘径は30cm以上あった。

 それにしても、昨日は荷物がやたらに重かった。ふだんの荷物の他に、GarminのGPS、一眼レフ2台、レンズ4本、大形三脚、中型三脚、携帯顕微鏡、顕微鏡撮影セット(Coolpix4500)、携帯実体鏡、プレパラート作成用具を持って歩いた。総重量は15kgを超えていた。
 シロシビンを含んだ菌に出会ってしまった時のことを考慮しての装備だった。結果として、ヒカゲシビレタケなどの「ご禁制品」には出会えず、ロウタケとかカゴタケ、アシグロホウライタケ?などに出会っただけだった。イグチには2〜3種類しか出会えなかった。
 さらに悪いことに、帰路径を間違えて、多摩湖を半周ほど回るハメになってしまった。頼みのGPSは電池切れを起こし、自分の現在位置が掴めず、むだに15km程歩き、あげくの果てはタクシーを使って起点に戻るというていたらく。多摩湖周遊自転車道を歩きながら、途中何度もプレパラートを作成し、カミソリまで不足してしまった。これは滑稽と言うほかあるまい。


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