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日( )
2008年7月31日(木)
 
Parasola属のきのこ
 
 早朝、久しぶりにさいたま市の秋ヶ瀬公園を歩いてみた。きのこの姿はほとんど無い。唯一出会った非硬質菌といえば、ウッドチップの撒かれた遊歩道に出ていた、Parasola(ヒメヒガサヒトヨタケ属)のキノコだった(a〜e)。伝統的分類ではヒトヨタケ属(Coprinus)のSect. Hemerobi(ヒメヒガサヒトヨタケ節)として親しまれてきた仲間だ。
 同じような形と大きさだが、色の濃いタイプ(a, b)と、色の淡いタイプ(c〜e)との2タイプがあるように感じたたので、とりあえず分けて持ち帰ってきた。30分もすると胞子紋がとれたが、両者ともに同じような色だった。写真(f)は淡色タイプ(c〜e)の胞子紋だ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 濃色タイプ(a, b)の胞子は長径12〜15μmの楕円形(g)。一方、淡色タイプ(d, e)の胞子は長径8〜10μmの五角形〜卵形で、側面から見ると楕円形(h)。この時点で、濃色タイプはオオカバイロヒトヨタケで、淡色タイプはコツブヒメヒガサヒトヨタケかもしれないと感じた。
 カサ表皮は、両者ともに、1層の透明な嚢状〜棍棒状の細胞が柵状に並んでいる。(i)が濃色タイプ、(j)が淡色タイプだ。濃色タイプの傘には剛毛があり(l)、中央部には多数が密集していた。一方、淡色タイプには剛毛はないと予測していたのだが、傘中央部に剛毛があった(k)。この時点でコツブヒメヒガサヒトヨタケではないことがはっきりした。
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ここまでは順調に作業が進んでいたのだが、コツブヒメヒガサヒトヨタケでないとすれば、何なのだろうか・・・・、などと考えていると、その間にもきのこはどんどん溶けたように崩れていく。採集してきた標本は、すぐにでも乾燥機にかけないとどうにもならない状態となっていた。

2008年7月30日(水)
 
厚壁胞子の姿が楽しい
 
 ヤグラタケの発生がとても悪い。例年だと梅雨の最盛期にも多数発生する。若いうちは傘表面は白色で粉っぽい感触はない。過去に大きなものでは、傘径5cmというものがあった。昨日出会ったものは傘径5〜8mmと、とても小さく傘表面の組織は既にすっかり厚壁胞子(褐色の粉塊)に変わっていた(a)。毎年この厚壁胞子を覗くのが楽しみの一つになっている。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 厚壁胞子は、低倍率の学習用顕微鏡で十分楽しめる(b)。油浸100倍レンズでみると、焦点深度の関係で、かえって全体像が掴みにくい(c)。フロキシンで染めると、壁の内側の球形部分が赤く染まる(d)。ヒダ実質は、細い菌糸が類並列型に走る(e)。あまりにも小さくて、担子胞子の胞子紋はとれなかった。担子器は普通のキシメジ型をしている(f)。

2008年7月29日(火)
 
下手な鉄砲も数撃ちゃあたる
 
 近場にもキノコの姿がほとんど無い。そこで今朝はコケで遊んだ。ピスや実体鏡を使ない薄片の切り出しだ。準備するのは、スライドグラスと半折した新しいカミソリだ(a)。スライドグラス上には、切片を浮かせるために、スポイトなどで水をたらしておく。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 使ったのは、葉を含めた茎の幅が3mm前後、長さ15mmほどのホウオウゴケ属だ(b)。一枚の葉は、長さ2〜3mmだろうか。同定には葉の横断面の観察が必要とされる。小さな葉を一枚だけ押さえるのは難しいので、茎ごとまとめて切り出す。
 カミソリは、利き手の親指と中指で掴み、人差し指をその上に添える。試料を押さえる側の指の爪をガイドに使う。キャベツの千切りの要領で、次々に刃を下ろすと(c)、1/5〜1/20mm幅の薄片が多数得られた(d)。この間3〜4秒だろうか。手元はあまり注視しない。
 この方法は、脆いきのこ小さなきのこの切り出しで、しばしばやってきた。刃物は「引き切り」ではなく「押し切り」だが、封を切ったばかりのカミソリなら組織を潰すことは少ない。指先を切らないように注意は必要だが、目をほとんど使わないので、眼精疲労にはならない。
 得られた薄片群にカバーグラスを載せると、半分ほどが倒れてしまった。しかし、うまく切れている部分を選ぶと、視野には葉の横断面が見られた(e, f)。下手な鉄砲も数撃ちゃあたる。

2008年7月28日(月)
 
千葉菌観察会にて
 
 昨日は千葉菌類談話会の観察会、会場は佐倉市の国立歴史博物館だった。すさまじい猛暑の中、かなり多くの会員が集まった。当初のんびりやっていた受付も途中からかなり忙しくなっていた(a)。全般的にきのこは少なかったが、いろいろと興味深い種類もでていた。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 カビや他の菌におかされたきのこが多かったが、テングタケ科をはじめ、一通りの種類のきのこが出ていることに驚いた。撮影したのはそのうちのごく一部だ。ツバをもったマツオウジ(b)、キヒダタケ(c)などがあった。クモタケ(d)は最盛期らしく多数の個体が乱立していた。
 興味深かったのはタマノリイグチだった。一個体を縦断面で切ると、すぐに青変し(e)、30分後には褐色になった(f)。採集者と一緒に採集地に行ったが、小さな幼菌らしき個体が一つ残っているだけだった。なかなか生態写真をとるチャンスには恵まれない。なお、歴史博物館では初採集、千葉では2例目だという。

2008年7月27日()
 
毛むくじゃらの脚
 
 アマタケらしいきのこが落ち葉に群生していた(a, b)。このきのこは柄全体が一面に微毛に覆われることが大きな特徴とされている。したがって、まともな写真を撮るのであれば、幅狭く密なヒダと柄が表現されている必要がある。確かに柄の表面をルーペでみると、上から下まで毛むくじゃらだ。1本だけポケットにいれて持ち帰った。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 いつもと趣向を変えて、柄の縦断面(d)と横断面(e)を切って楽しんだ。ヒダの断面なども切ってみたが(f)、胞子紋は採らず、カサ表皮なども観察しなかった。
 今日は千葉菌の総会と観察会。会場の佐倉城址公園はわが家からはどうやっても行きにくく時間がかかる。当初公共交通機関を使うつもりだったが、二人分の交通費に驚いた。ガソリン高騰の今でも車の方がはるかに安く済む。これから出発だ。

 PV製簡易ミクロトームの製作がかなり遅れている。最終注文をされた方々には申し訳ないが、製品完成時期は今のところ、いつになるか皆目検討がつかない状況だ。


2008年7月26日()
 
締切間近:10月11日(土)〜13日(祝) 大山合宿
 
 申込み締め切り日が近づいた。いわずと知れた10月の一大イベント「鳥取大山合宿」である。正確には「2008年度日本菌学会菌類観察会・講習会」で、日本菌学会・幼菌の会・菌類懇話会の三者共催で、全国のきのこの会に参加を呼びかけた画期的な行事のことだ。
 実行委員には以下の様にプロ・アマのそうそうたるメンバーの名が並んでいる(敬称略)。
前川二太郎(委員長),岩瀬剛二,森本繁雄,松井英幸,後藤康彦,長谷部公三郎,長沢栄史,玉井裕,小林久泰,須原弘登,安藤洋子,橋屋誠,柴田靖,白山弘子,名部光男,名部みち代,牛島秀爾,折原貴道
 申込期限は2008年7月31日(木)必着、募集人員は150名(先着順)、参加費は23,000〜24,000円(日本菌学会の会員か否かによる)。詳細は日本菌学会の公式ホームページの案内を参照されたい。すでにかなりの申込みを受け付けているという。
 青森の工藤伸一氏、仙台(じゃなかった鳥取)の安藤洋子氏、富山の橋屋誠氏、愛媛の沖野登美雄氏など一度は会ってみたい著名人とじっくり話をできるよい機会だろう。他にも、プロ・アマを問わず全国各地から、著名な指導者の方々が参加される。

2008年7月25日(金)
 
フクロツルタケばかり
 
 昨日朝、埼玉県南部の狭山と川越の雑木林を歩いてみた。このところの猛暑と雨無しのせいか、きのこの姿は非常に少なかった。やたらに目立ったのはフクロツルタケで、老若・大小とりまぜて数十個体に出会った。立ち止まると、たちまち蚊との戦いに悪戦苦闘した。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 他のきのこといえば、小型で黄色いテングタケ科のきのこ(a, b)、しっかりした大きなマツオウジ(c)、すっかり菌におかされたムラサキヤマドリタケ(d)、白色のカビに半分ほど冒されたアイタケ(e)、そのそばに転がっていたベニタケ属(f)、などだった。
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ベニタケ科の傘上表皮層の構造について、しばしばアイタケ型という用語が用いられる。偽柔組織の最上部の細胞上に直立したシスチジア状の末端細胞があるものをいう(g〜i)。アイタケをはじめ、ヒビワレシロハツ、カラムラサキハツ、クロチチタケ、クロチチダマシ、ウスイロカラチチタケ、ヒロハウスズミチチタケなどがアイタケ型の傘上表皮層をもつとされる。
 一方、ドクベニタケ節(Russula)、チチタケ節、ツチカブリ節、ヒメチチタケ節(以上Lactarius)では、決してアイタケ型を示すことはないとされる。

 ところが、アイタケ型を自分の目で直接確認したことのある人は意外と少ない。アイタケのカサ表皮を薄切りにすれば、確かに様子はわかる(g)。フロキシンで染めてKOHで封入するとより分かり易い(h)。しかし、カサ表皮を剥がして、KOHで封入しフロキシンで染めてもアイタケ型であることはわかる(i)。要するに薄片を作らずとも、アイタケ型か否かは判定できるということだ。
 アイタケの近くに蹴飛ばされて転がっていたベニタケ属のきのこ(f)で試してみた。最初にカサ表皮の薄片を切り出してフロキシンで染めてみた(j)。次に、傘上表皮を剥ぎ取ってKOHで封入し、軽く押し潰してフロキシンで染めてみた(k)。上表皮の構造が一目瞭然にわかる。アイタケ型に近い構造がみられる。これは、シスチジアや担子器などを観察する場合と同じだ(l)。


2008年7月24日(木)
 
散開型のオンパレード
 
 今年は例年ほどテングタケ科のきのこに出会っていないが、それでも、ここ1ヶ月の間に十数種類に出会った。先月、しつこく散開型を確認しているが(雑記2008.6.26)、あらためて、今朝は散開型ばかりを並べてみた。上段のきのこのヒダ横断面を下段に配置した。
 一般に、新鮮な生標本から切り出したものでは、綺麗な散開型をみることができる。鮮度の落ちるものとか乾燥標本から切り出したものだと、崩れたり多数の気泡が入りがちだ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(a')
(a')
(b')
(b')
(c')
(c')
(d')
(d')
(e')
(e')
(f')
(f')
(g')
(g')
(h')
(h')
 これまで、数十種類のテングタケ科のきのこに出会っているが、いずれも、ヒダ実質は例外なく散開型だった。もっとも、成長のステージによっては散開型が出来上がっていなかったり、崩れていることもある。テングタケ科のきのこにも、ヒダ実質が非散開型のものがあっても不思議はないのだが、これまでのところ出会っていない。でも、きっとあるんじゃないかと思っている。

2008年7月23日(水)
 
ドクベニタケの仲間
 
 去る20日に富士山から1本だけ持ち帰ったドクベニタケと思われるキノコを少しばかり調べてみた。ドクベニタケとされる Russula emetica にはいくつもの変種が報告されているが、写真の個体もそれらのうちのいずれかのようだ(a)。
 湿らすとカサ表皮には軽い粘性がある。傘周辺部にはわずかに溝線がある。表皮は簡単にはぎ取ることができ、その下の肉はやや紅色をしている(b)。現地で4種の試薬を使って呈色反応を確認した(c)。胞子紋をメルツァー液で封入してみた(d)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 ヒダの横断面を切ってみると(e)、どうやら縁シスチジア(f, h)、側シスチジア(g, i)があるようだ。フロキシンで染めてKOHで封入して押し潰してみると、それぞれのシスチジアの様子がよく分かった(h, i)。簡単にはぎ取れる傘表皮の正体を確かめた。これまた、色が薄くて見にくくなるので、フロキシンで染めてみた(j)。広義のドクベニタケとしてよさそうだ。

2008年7月22日(火)
 
邦訳書籍はありがたい
 
 昨日は、「不在配達票」の入っていた荷物を、4〜5件受け取るため、ほとんど外出できなかった。中には、何度もの不在配達が重なり、保管期限ギリギリの物もあった。昼前後に立て続けに配達された。幸いにも生ものや壊れ物はみな無事だった。

 受け取った配達物のなかには amazon.com から購入したジュディス・E・ウィンストン[著] 馬渡俊輔・柁原 宏[訳]『種を記載する−生物学者のための実際的な分類手順』もあった。以前、どうしても分類の論文モドキを書かねばならず、何人かの専門家に相談した。その折りに、是非とも読むようにすすめられた書籍が2点あった。それは以下の英文書籍だった。

(1) Robert A. Day et al. "How to Write and Publish a Scientific Paper" 5th. edition, Cambridge University Press, 1998
(2) Judith E. Winston "Describing Species: Practical Taxonomic Procedure for Biologists", Columbia University Press, 1999

 両書とも典型的な「ハウツー本」で、科学的論文の書き方や、種の記載の方法などについて、比較的平易な英語で、素人にも分かるように、具体例をあげて詳細に解説されていた。しかし、やはり外国語でかかれたものは、そのまますんなりとは頭に入ってこなかった。
 上記の(1)については、邦訳はないが、準ずるものとして、酒井聡樹著『これから論文を書く若者のために』(共立出版、2002)などがある。(2)については、これといった手頃なものがなかった。この邦訳がついに出たわけだ。[2008年6月30日発行]
 訳者代表の馬渡俊輔氏は「動物分類学の論理−多様性を認識する方法−』(東京大学出版会、1994)や、『菌類・細菌・ウイルスの多様性と系統』(裳華房、2005)を含む「バイオディバーシティ・シリーズ」の監修者の一人としてもよく知られ、分かり易い日本語に仕上がっている。定価は本体7,800円とやや高価だが、内容はすばらしい。あらためて、じっくり読んでみようと思う。

2008年7月21日()
 
避暑と温泉の旅
 
 暑さを逃れて、19日から20日にかけて乗鞍岳、富士山に行ってきた。乗鞍岳はマイカー規制のため、長野県側からも岐阜県側からも、山頂直下の畳平まで、シャトルバスに乗り換えて行かねばならない。山頂近くの雪渓では夏スキーを楽しむ人たちが多数いた(a)。夏休み最初の休日、しかも連休で晴天ということもあってか、山は大勢の観光客で溢れかえっていた。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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 乗鞍高原の鈴蘭周辺(標高1400〜1600m)でも、例年に比べてキノコは少なかった。岐阜県の安房平でも、例年とは大きく異なりキノコはほとんどなかった。塩尻峠の塩嶺公園(御野立公園)まで来ると、ようやく数種類のキノコに出会うことができた(b)。
 山を降りるとあまりの暑さにたまりかねて、富士山に避難した。スバルラインの混雑とは裏腹に、林道は静かで閑散としていた。しかしキノコは少なく(d〜f)、オニノヤガラ?ばかりがやたらに目立った(c)。目的が避暑だったので、暗くなるまで富士山で過ごした。
 帰路についたところ、高速道路は大渋滞、すぐに大月インターで一般道に降り、秩父の峠道を経て奥多摩経由で帰宅した。車の少ない夜の峠道は快適だったが、市街地近くでは夜遅くまで渋滞が続いていた。まる二日間、早朝から深夜まで留守にしたせいか、留守電と不在配達がいくつも入っていた。腐敗していなければよいのだが・・・・

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