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一昨日の菌懇会ゼミで思いがけない、しかしいかにももっともな質問があった。「(腹菌類の)弾糸は胞子をはじき出す役割を果たしているのか」というものだった。また「偽弾糸と弾糸は何がどう違うのか、いったい何を基準に分けているのか」ということも話題となっていた。 確かにこういった疑問はいかにももっともだ。訳語が一人歩きして本来の意味合いと違ってしまうケースは他にもきっとかなりあるのだろう。慣例に従って使ってはいるが、腹菌類でしばしば使われる弾糸、偽弾糸という用語はこれまでもずっとあまり適切ではないと感じてきた。 弾糸capillitiumは細毛体とも訳される。一方、偽弾糸paracapillitiumは偽細毛体とか細毛様体とも訳される。では、capillitiumとparacapillitiumとは何を基準に区別されるのかというと、意外と知らずに使っている人が多いことに気づく。 でもこの概念をきちんと説明しようと思うと、菌糸型とかmiticシステムということに言及せざるを得ない。あわせて、cyanophilious(cyanophilic)という概念も説明しなくてはならない。この用語はアミロイドとか非アミロイドといった用語に比べると影が薄い。 高校やら大学教養で菌学の基礎教育が全く行われない日本では、自らその気になって基本を習得しようと考えない限り、常識的な基本概念は得られない。相手と同じ土俵で話をしているつもりで、その実、まったくかみ合わない議論をしていることはきっとかなり多いのだろう。 |
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昨日は恒例の菌懇会ゼミ。筑波大学の糟谷大河氏による「ホコリタケ類の分類学」に参加した。菌類分類学の変遷・意義から始まって分類学者養成の急務を説くあたりは老成した学者の話を聞いているようでもあった。テーマが非常に専門的なこともあり、居眠り組も多々みかけたが、非常に内容の濃いアカデミックなゼミとなった。腹菌類というマイナーなきのこの分類学であったにも関わらず30名以上の出席があった。久々にとても充実した一日であった。 しかし、会場の生田周辺は昨夜の雪であたりがうっすり白く、ホコリタケの仲間はむろん、軟質菌はほとんどみられなかった。カメラはもっていたが、結局一枚も撮影はしなかった。 |
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ガチャガチャというオモチャをご存知だろうか(a)。何日か前に初めて知ったのだが、16種類の毒キノコからなる一連のシリーズが話題となっているという(b)。ミニチュアのできばえもよい。面白いのは、一般的な毒キノコに混じって非常にマニアックな毒キノコが選ばれていることだ(c)。毒キノコを16種あげよといわれたら、何を列挙するだろうか。クロハナビラタケとかタマゴタケモドキ、サクラタケといった名がすぐに思い浮かぶ人はあまりいないのではないか。 100円の子供向けオモチャということであるが(d)、子供向けの注意書きに並んで「ポイズン・衣笠の素人向け『毒キノコワンポイントアドバイス』」という記述がある。ここには振り仮名はついていない。内容はというと適切で的を得たものだ。このシリーズの本当の狙いはキノコ好きの大人かもしれない。でも、16種をすべて揃えようと思ったらかなりの出費を覚悟せねばなるまい。 |
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昨日の夕方さいたま市の秋ヶ瀬公園に行ってみた。例年の一月半ばと比べても乾燥の度合いが強いようだ。アラゲキクラゲ、エノキタケ、ヒラタケがすっかり乾いてカラカラになっていた。他には硬質菌6〜7種類を見ただけだった。 去る10日に千葉県富津でであったケシボウズ(a〜c)についてメモである。このケシボウズの特徴は孔口が筒状(c)、外被が砂粒を多量に織り込んだ菌糸状(f)、内被が最後まで露出しないことだ。他の個体も内被と外被の結合がとても強く、内被を表にさらしている個体はなかった。柄は表面に赤茶色のササクレがあり、基部には菌糸束が見られる(b)。頭部外被からも菌糸束が出ている(c)。胞子は円錐形の疣に覆われ(d)、弾糸にはわずかに膨らんだ節がみられる(e)。ミクロの姿はケシボウズタケ(T. brumale)などと似通っている。 |
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「ドキッときのこ」の竹しんじさんが、「きのこ探して」2004.1.12で「遊々きのこ」のフジタケさんの手になる特製レフ板を紹介している(「遊々きのこ」→「きのこ日記」2004.1.9)。きれいな写真を写そうと思えばレフ板は必須だが、何もカメラ専門店に出向いて購入しなくても身近な材料でいくらでも作れる。この「特製レフ板」はその典型的なよい事例だろう。 もう随分前からウチワにアルミを貼ったものをレフ板として使ってきた(a)。宣伝でもらったプラスチック製のウチワに、やはり広告品のアルミシートを切って貼り付けただけのものである。製作コストは限りなくゼロに近い。裏面の文字を白く塗りつぶして両面をレフ板として使えるようにしている(b)。裏面はデジカメでホワイトバランスをプリセットするときにも利用する。 ウチワのレフ板は柄を地面にさして使う。これを複数持参しているととても便利だ。日常は、いつも持参している小型アルミシート(c, d)とウチワのレフ板で、たいていの場面は間に合ってしまう。このウチワ利用の方法はさいたま市のY氏からいただいた知恵である。 |
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昨日に引き続き元旦のケシボウズについての記録の最後のひとつである。 今朝は(4)のタイプ(雑記2004.1.7)のケシボウズ(a〜c)の検鏡画面を撮影した(d, e)。このタイプが他の3タイプと最も異なるのはそのサイズである。とにかく小さく、頭部の径2〜6mmほどであり、多くは3〜4mmくらいである。柄の長さも12〜25mmほどで、他のタイプと並べるとガリバーと小人ほどの差がある。内被膜の外観は紙質であるが、ざらついた状態のものも多い。 当初はこられは他の3タイプの幼菌だろう、くらいに考えていたが、どうも違う。他の3タイプの幼菌もかなり採取したが、それらとはまるで大きさが違う。また、このタイプの幼菌は頭部の径1〜2mmほどしかない。広大な砂浜で幼菌を見つけるのは至難の業だ。 胞子(d)、弾糸(e)の様子は、他の3タイプとやや異なる。胞子表面の疣はとても小さく、中にはほとんど疣のない平滑なものもある(e)。ここに掲げた写真ではわかりにくいが、弾糸表面にはガラス状の結晶がわずかにみられる(f)。
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先に中断したままになっていた元旦のケシボウズの残りの記録である。今日と明日の2日に分けて検鏡写真も撮って記述を残しておくことにした。 今朝は(3)のタイプ(雑記2004.1.7)のケシボウズ(a〜c)の検鏡画面を撮影した(d, e)。このタイプは、内被膜の外観がほかの3タイプとはかなり異なっている。他のタイプはどちらかというと紙質であるが、このタイプでは軽石の表面を思わせるような姿をしている(b)。「キノコのフォトアルバム」掲載のケシボウズタケのうち、このタイプはいったん削除しなくてはなるまい。 (1)や(2)のタイプが成長過程の途中で風化作用を受けた結果、内被膜の表面がアバタ状になったとも考えられるが、それにしてもいくつか疑問が残る。タイプ(1)と(2)の内皮膜は薄くて比較的強靱であるが、このタイプ(3)ではやや厚みがあり意外と脆い。やはり他のタイプの内被膜とは性質が異なるように思える。しかしこれも胞子(d)、弾糸(e)を見る限り他のタイプと大差ない。
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元旦に遠州灘で採集したケシボウズのタイプ(3)と(4)についてのメモが棚上げ状態となっているが、14日、15日の両日で記述しておこう。 [Tulostoma brumale] 覚え書き 海外ではケシボウズタケ(Tulostoma brumale)は石灰岩地帯や有機土壌で採取されたものが多い。砂漠地帯での採取例はほとんどないが、海辺砂地のサンプルはある。一方国内ではもっぱら海辺の草地や砂地などで採取されている。しかし、西欧のような石灰岩地帯での採取例はほとんどなく、そこではウロコケシボウズタケ(T. squamosum)だけしか報告例がない。 ケシボウズタケの特徴として、全体に小振りで、明瞭な孔縁盤(peristome)をもち、それは周囲より暗い褐色を帯び、弾糸はクリスタル片を帯びるとされている。だから文献によっては [同定は容易] と記されたものも多い。ところが、国立科学博物館(TNS)などの標本を見る限り、これらの条件を満たしたサンプルは少ない。また、各地でケシボウズタケとされたサンプルや、自分たちで採取したものにも上記の特徴を備えたものはあまりない。 となると、これまでT. brumaleと同定されてきたものは、再検討の余地があるのかもしれない。そういえば、J.E.Wrightも、ケシボウズタケの同定は容易だが、同じ群れに同定困難な面倒な連中やら、T.melanocyclumなどの別種がしばしば混生している、と記していたっけ ...?! |
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昨日のスライド大会は、常連が何名も欠席だったこともあり、静かではあったがやや物足りないものを感じさせられた。恒例の新年会を終えて帰宅したのは例によって午前様。今朝はのんびり過ごすことにしたので、早朝のきのこ観察は休みにした。 ここ数日、スパムメールとウイルスが滅多やたらにやってきたのはどう考えればよいのだろうか。今朝もおためごかしのスパムメールが30数件来ていた。 |
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昨日千葉県房総半島南端に位置する平砂浦の砂浜を皮切りに内房の浜を何ヶ所も歩いてみた。ケシボウズの仲間には全く出会うことができなかった。昨年発生していればミイラが必ず残っているはずである。いずこの浜も砂の動きが激しくて棲息には不向きなのかもしれない。 このあと定点観察を続けている富津市の浜に行ってみた。ここはナガエノホコリタケをはじめ4〜6種類のケシボウズがみられる貴重な浜である。ナガエノホコリタケのミイラ(a)は昨年12月19日に見たときとほとんど変わらなかったが、風化で数が減っていた(雑記2003.12.20)。 形を保っている個体も30数個あったが、風化作用の影響か内皮が紙質から軽石状になっていた(b, c)。また、孔口の形が最盛期の房状からしだいに平面的な破れ孔に変わっていた(d, e)。掘り出してみると柄の色とササクレは残っていて、全体が菌糸に包まれていた(f)。 この浜では昨年12月19日にも孔口が筒状の種をいくつかみたが、今回もさらに別の場所で類似のケシボウズをみた。ひどい風邪を引いてしまい、今朝は検鏡は全くできなかった。今日はこれから千葉菌類談話会のスライド会・新年会である。 |
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