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2004年5月31日(月)
 
(a)
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(e)
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(f)
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 昨日は真夏のような暑い一日だった。川崎市の生田緑地にもあまりきのこは見られず、わずかにベニサラタケ(a, b)、フウの実からでるクロサイワイタケ科のきのこ(c, d)、フウノミタケ(e)、ヒポミケスに犯されたチチタケ属(f)、すっかり干からびてしまったイタチタケ属のようなものしか見られなかった。状況は5月16日の観察時とほとんど変わっていない。今朝はHypomyces sp.を顕微鏡で覗いて楽しんでいるうちに出勤の時間となってしまった。

2004年5月30日()
 
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(i)
(i)
(j)
(j)
 5月16日に生田緑地でチャワンタケ(a)を預けられてしまった。雑木林の泥の上からでていた紅色の小さなものだ。径8〜20mmで柄を持たず、子嚢盤は厚いところで2mmほどあった。現地には5〜6個の群生が多数見られた。当日は、昼前に現地を離れたのだが、目ざとく事務局のGさんに捕まってしまい、このチャワンタケを預けられてしまった。
 ずっとフィルムケースにいれたまま冷蔵庫に放置してあった。ようやく調べてみた。実体鏡でみると子実層は赤く、そのすぐ下の子実下層は橙色であり、白い托髄層はやや厚めで、無柄の托外皮層はやや茶褐色を帯びている(b)。薄く切りだしてみた(c)。子実下層は絡み合い菌組織、托実質は円形菌組織(d)。托外皮層からは茶色の毛が出ている(d, e)。
 子実層を見ると色素顆粒をもち先端がやや膨大した側糸と、子嚢がとても美しい(f)。胞子は表面に粗い編み目のようなものがみえる。メルツァー液を加えると、側糸がアミロイド反応を示すが、子嚢や胞子は非アミロイドである(g)。倍率を上げ、水でマウントした状態で子嚢をみると、胞子の表面の装飾紋はまるでヒロメノトガリアミガサタケの頭部を彷彿とさせる(h)。
 メルツァーで染めた状態のプレパラートでも倍率を上げてみた(i, j)。子嚢に納まった状態のまま、胞子の表面付近(i)と輪郭部(j)に焦点を合わせてみると、胞子がかなり特徴的な装飾紋をもつことがわかる。胞子の乳酸反応試験はしていないが、ベニサラタケとしてよさそうである。
 盤菌類の検索・文献について、そしてこのきのこの同定に関して、国立科学博物館の細矢博士に貴重な示唆とご指導をいただきました。深く感謝いたします。

2004年5月29日()
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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 ひたちなか市の海浜の松林にはアワタケ属やチチタケ属のきのこ(a)が何種類かみられた。今朝はこのきのこの胞子を使って遊んだ。最初に水でマウントして胞子を観察した。撮影したのは表面付近(b)、輪郭部(c)に焦点を据えた。次にメルツァー試薬で染めてみた(d)。
 ふだんベニタケ属とかチチタケ属のきのこの胞子を見る場合、最初からメルツァー試薬を使って検鏡してしまうので、水でマウントしてみることは滅多にない。写真(b)は胞子表面付近に合焦したもの、(c)は輪郭部に合焦して撮影したものだ。同じ胞子でもメルツァーを加えた状態とでは随分と印象が異なる。写真(c)を突然見せられたら、まさかこれがベニタケ科のきのことは思えないだろう。時間不足のために、種の同定作業に必要なチェックはまるでできなかった。
 
 
 
(e)
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(f)
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(g)
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 砂浜の定点観測(5/26)に関わるメモである。先日砂浜に見られたナガエノホコリタケのミイラの姿である(e〜g)。観察できる個体数は、発生最盛期の100分の1以下になった。これらはおそらく発生から10〜11ヶ月ほど経過しているはずである。砂浜ではアミスギタケがやたらに多かった。当たり前であるが、ちょっと掘ってみると流木、倒木などが必ずでてくる。

2004年5月28日(金)
 
(a)
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(i)
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(j)
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 先日(5/19)秋ヶ瀬公園で採取したコザラミノシメジ属(a)を調べてみた。採取したサンプルはその日の内に乾燥標本として保存したおいた。遠くからちょっと見た目にはやや白っぽいコザラミノシメジのように見えた。しかしヒダの付き方が垂生である(b)。柄は暗褐色で繊維状条線がありねじれている。柄の基部も色は変わらずやや膨らんでいる。そのほかはコザラミノシメジの特徴とほぼ同じである。胞子紋は白色。コザラミノシメジ属には間違いない。
 胞子はアミロイド、コザラミノシメジの胞子とほぼ同じようなサイズだが、やや丸みが強い(c, d)。乾燥標本からのヒダ切り出しは久しぶりだ。生からの切り出しに比べるとかなり楽だ。ヒダ切片を切り出した時点でコザラミノシメジなら独特のシスチジアが見えるはずである。しかし、このきのこにはそういったシスチジアはみられない(e, f)。倍率を上げてよくみると、ヒダ先端に細長いシスチジアがみえる(g, h)。ごくわずかに、側にも同様のものがある(i)。担子器の基部にはクランプはない。他の組織にもクランプは見られない(参照:雑記2003.11.13同2003.4.17)。
 スイスの図鑑を始め、手元の諸文献にあたってみたが、このコザラミノシメジ属に該当するきのこが掲載されたものは見つからなかった。時間がないので、これ以上の追究はやめにした。

2004年5月27日(木)
 
(a)
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(c)
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(g)
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 昨日、仲間4名でひたちなか市の海浜に発生するキノコの定点調査に行ってきた。防風林の外の砂浜にはほとんどキノコの姿はなく、ミイラ化したナガエノホコリタケ、ヒメツチグリ属のキノコの他には、アミスギタケばかりが目立った。
 松林にはかなり色々なきのこが豊富にでていた。それらの中でザラミノシメジ属(a, b)、ササタケ属(e, f)、チチタケ属などが目立った。他にもアセタケ属、フウセンタケ属、ホコリタケ属などのキノコをはじめ、海浜地域の樹林の下には多くのキノコが観察された。
 今朝はかろうじてザラミノシメジ属(a, b)と、ササタケ属(e, f)を観察できた。ザラミノシメジ属にはシスチジアが見つからなかった。したがって、コザラミノシメジとかオオザラミノシメジではない。胞子(c, d)の姿はこの属に典型的な姿をしている。ササタケ属のほうはどうやらササタケそのもののようだ。ひだ実質などに独特の色素塊がある。胞子(g, h)表面には微疣がある。
 けさは両者とも何とか胞子写真を撮影する時間だけを確保できた。

2004年5月26日(水)
 
(a)
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(c)
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(e)
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 日光で目立ったきのこにミミナミハタケ属(a〜c)があった。かなり腐朽の進んだ倒木にはいたるところに見られた。ちょっと見たところはイタチナミハタケかと思えた。ヒダは密で縁がわずかに鋸歯状である。イタチナミハタケにもヒダが密なタイプがあるので、さほど気にしなかった。
 今朝検鏡してみると、胞子は小さく類球形をしていてアミロイドである(c, d)。胞子表面には小さな疣がある。この段階ではイタチナミハタケに思えた。なお、特にこれといった特徴的なにおいはない。傘の基部付近には毛はなく、全体に非常に強靱である。
 次にヒダを切り出してメルツァー反応をみた。非アミロイドである(e)。クランプを持ちシスチジアはない。担子器も実質と同じく非アミロイド(f)。となると、これはイタチナミハタケではない。保育社:原色日本新菌類図鑑の検索表(Tp.36)と照合しても該当するものはない。ではなにか? 出発の時刻である。今朝はこれ以上調べている時間がない。

2004年5月25日(火)
 
(a)
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(e)
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(f)
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 先日取り上げたきのこの補足メモ。ウッドチップからはよくシビレタケ属(Psilocybe)らしいきのこが出てくる。さる5月19日さいたま市秋ヶ瀬公園でも、何ヶ所かでこの仲間にであった(a, b)。この2枚の写真は雑記2004年5月20日に掲載した写真(5/20:k, 5/20:l)と同一である。
 最初モエギタケ属かナヨタケ属のきのこだろうと思ってそのまま撮影(a)した。次に成菌を7〜8本引っこ抜いて並べて撮影した(c)。そしてふと脇に目をやると、草に埋もれるような形で幼菌の頭部がみえた。草をどけてみると柄が青変している(b)。あらためて先ほど引っこ抜いた成菌の柄をみると手でつまんだ部分が青変していた(d)。
 柄が青変するとなるとこれは所持などが禁止されるきのこということになる。持ち帰って調べることはできないので、カバーグラスを傘の下に20分ほど放置して胞子紋をとり(e)、車載の単眼簡易顕微鏡で撮影した(f)。自然光だし、油浸100倍は使えない。したがって、10μmスケールはあまりあてにならない。使用済みの胞子プレパラートは公園で廃棄した。
 この仲間のきのこを取り扱うには、免許取得と厳格な取扱・管理が義務づけられている。アマチュアにとっては正確な同定はほぼ不可能となってしまった。傘表皮とかシスチジアなどの観察はしていないが、外見的特徴と胞子から、オオシビレタケとしてよいだろう。

2004年5月24日(月)
 
(a)
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 5月12日に引き続いて、昨日再び日光に行って来た(雑記2004年5月13日)。終日肌寒い一日だった。今年はホシアンズタケ(a, b)の発育が悪い。タモギタケ(c, d)はあちこちで見られるが、幼菌と老菌が混在している。この2種類のきのこは常連なのでとりあえず撮影した。
 この10日間できのこの発生状況にもかなり変化がみられる。背丈20cmに及ぶ大きなアミガサタケが多数見られた(e)。先日には見られなかったマスタケも顔を出しはじめた(f)。キイロスッポンタケにはあちこちで出会ったが、面白いことに3個体が一組で発生しているケースがとても多かった(g)。タマゴも多数みられた(h)。山渓フィールドブックス「きのこ」によれば「かなりまれ」と記述されているが、どうもそうではなさそうである。
 先日は幼菌ばかりだったオオワライタケはかなり大きく育っていた(i, j)。最盛期を過ぎたとはいえ、テンガイカブリはまだいくつも出ていた(k)。久しぶりに出会ったのがタマチョレイタケであるが、まだ小さな幼菌であった(k)。
 今回の狙いは3つほどあった。淡紫色のアミガサタケ、マルミノノボリリュウ、ヒロメノトガリアミガサタケである。いずれも、日光で過去に数回みているのだが、昨日は出会えなかった。

2004年5月23日()
 
(a)
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 最近の雨の賜物だろうか、馬糞、牛糞、ウッドチップではきのこが花盛りである。さいたま市や川口市でもウッドチップから20数種のきのこがでている。浦和競馬場近くの馬糞堆では、ジンガサタケ属を始めヒカゲタケ属、ヒトヨタケ属、オキナタケ属のきのこが出ていた(a〜c)。
 公園でもウッドチップに近づくと、遠目にも黄褐色のきのこの群れがいたるところにみえた。ツバナシフミズキタケハタケキノコ、フミヅキタケ属菌の大きな群れであった。それらの間にはネナガノヒトヨタケザラエノヒトヨタケワタヒトヨタケビロードヒトヨタケクズヒトヨタケシロフクロタケなどが一斉に発生している。ハラタケ属、カラカサタケ属も何種類もみられる。
 キオキナタケ(d)、オキナタケ(e)、コムラサキシメジ(f)は実に色々な場所にでていた。それらのなかでナヨタケ属(g, h)の美しいきのこが大きな群れをなしていた。久しぶりにツマミタケ(i)の群落(j)にであった。ハタケチャダイゴケ(k, l)があちこちで絨毯をなしている。検鏡せずとも外見だけから同定でき、ここに名前を載せなかったきのこが、この他に10種類以上みられた。

2004年5月22日()
 
(a)
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(b)
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(c)
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(f)
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 小川町の自然公園で採取(5/18)してきたベニヒダタケ(a, b)は成熟がかなり進んでいて、持ち帰ったときにはヒダがほとんどビショビショで潰れていた。何とか胞子紋(c)はとれたので、胞子は検鏡できた(d)。やや丸みが強いがウラベニガサの胞子とよく似ている。
 潰れたヒダからの切片作りはかなり難儀した。なかなかうまく切れず5〜6枚目にやっと何とか見られる状態の切片ができあがった。この仲間の特徴としてヒダ実質は逆散開型(e)。ウラベニガサのように多数の側シスチジアが見られない。 ところどころにわずかに見られる側シスチジアはいずれも形が崩れてしまっていたので撮影はしなかった。
 水でマウントした状態で担子器を見たが、透明ではっきりしない。フロキシンで染めるとようやくそれらしい姿が捉えられた(f)。すでにヒダ自体がかなり崩れていて、基部のクランプなどの確認はできなかった。これほど側シスチジアが潰れきったベニヒダタケは初めてだった。

 来週から通勤先が埼玉県北部となった。車にせよ列車にせよ埼玉県を南から北まで縦断することになる。このため、早朝のきのこ観察(フィールド+検鏡)にかなり支障がでそうだ。
 「今日の雑記」には「いついつどこにこんなキノコがあった」といった内容もあるが、元来はきのこ観察に関わるメモである。今後は、フィールドに出る時間や検鏡時間の捻出に苦労することになる。これまでのような形では「雑記」の継続はできないだろう。

2004年5月21日(金)
 
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 所用で東松山市の先まで行ってきた。帰路、武蔵嵐山町でケヤキ樹下にハルシメジをみた(a〜c)。例年より時期はやや遅いようだが、ちょうど今が最盛期のようである。バラ科樹下に出るハルシメジと比較すると、小さくて華奢である。昨年は5月25日に埼玉県武蔵嵐山町で採取したケヤキ樹下のハルシメジとバラ科樹下のハルシメジを比較している(雑記2003.5.29)
 新鮮だったせいか短時間でたっぷり胞子紋(d)がとれた。その一部を水でマウントして胞子を見た(e)。そのまま20分ほど放置するとほとんど水が蒸発してごくわずかになった。あらためて覗いてみると何となく立体感がでている(f)。いわゆるドライマウントの胞子とはまた違う。
 ヒダを切り出し(g)、中間の倍率で実質部の組織(i)、油浸100倍で担子器(j)などを覗いた後、フロキシンで染めた(h)。その後カバーグラスの上から軽く押しつぶすと、担子器があちこちに単独で飛び出してきた(k, l)。こうすると担子器基部のクランプの有無が案外わかりやすい。写真では基部に焦点を合わせていないので分かりにくいが、クランプがある。厚すぎる切片を押し潰しても担子器を他の組織と分けるのは難しい。水でなく3〜5%KOHだとさらに楽にほぐすことができる。
 担子器基部のクランプ(basal clamp)の有無はふだんほとんどフロキシンで染めてから軽く押しつぶして担子器をバラして確認している。しかし、そういった姿を撮影することはない。撮影しても基部のクランプに焦点を合わせると担子器本体部分の姿が不明瞭になる。かといって担子器本体に焦点を合わせると基部の様子が曖昧になる。

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