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日( )

2004年12月31日(金)
 
(a)
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(d)
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(e)
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(f)
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 先日茨城県ひたちなか市で採取したウネミケシボウズタケ(tulostoma striatum)を改めて撮影した(雑記2004.12.27)。既に26日のうちに顕微鏡を使って同定作業は終わらせていたが、その折りには撮影はしなかった。同定と記載だけでもかなりの時間が必要だ。
 ケシボウズタケの仲間は一般に外見だけから同定できる種はほとんどない。ウネミケシボウズタケは口孔部が房状で外皮がフリンジ状になって残るという特徴がある(a, b)。ほかにはこのような特徴を持ったものは少ないので、かなりの精度で外見からの判断があたっている。したがって、胞子(c, d)、弾糸(e, f)を観察するまでもなく、おおざっぱに見当をつけられる。

2004年12月30日(木)
 
12月29日:初雪!
 
 昨日は天気予報が当たり朝から雨だった。さいたま市見沼区の公園では、きのこの姿はほとんど見られず、ウッドチップからわずかにヒトヨタケ属が出ていた。そのうちに大粒の雪となってきたので観察は中止した。川口市の自宅に戻ってみても、周辺はすっかり真っ白になっていた。重いビショビショの雪だが、初雪だそうである。
 秋葉原まで出かける予定だったが中止して、手元にたまっていたショウロ、ヒメツチグリ属、ケシボウズなどの同定作業に従事することになった。7〜8種類のサンプルを片づけることができたが、まだまだテーブルの上には未同定のものがいくつも順番を待っている。

2004年12月29日(水)
 
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(d)
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(e)
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(f)
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 ハチスタケは頭部の径が1.5〜3.0mmと小さいので切片の切り出しが思いの外難しい。先日採取してきたものは径1〜1.5mmほどしかない。まず縦切りにして子嚢殼を確認した(a)。切るときに何かにあたったが、よく見ると頭部と柄の境目あたりに白く小さな砂粒をかんでいる。先日この状態のままフィルムケースに容れておいたので、今朝はこれから切片を切りだした。
 さる11月1日にもハチスタケを検鏡したのだが、薄く切り出せなかった(雑記2004.11.1)。今朝は先日に比較するとかなり薄く切り出せた(b)。しかし、あまり薄く切ると子嚢殼の外皮が破れてしまう(c)。メルツァーを加えると子嚢先端がリング状にきれいに青色に染まる(d, f)。これを水なりKOHだけで観察すると、子嚢先端の形状は分かりにくい(e)。これ(e)はフロキシンで染めたものだが、子嚢の中では胞子の周りはゼラチン質に包み込まれている。

2004年12月28日(火)
 
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(e)
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(f)
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 一昨日茨城県ひたちなか市で採取してきたスナヤマチャワンタケを覗いてみた。非常に多量の砂を噛んでいて、どうやってもまともに切れない。カミソリをあてると砂にぶつかり、組織が潰れたり刃先がこぼれてしまう。やむなく適当に切り出したところかなり厚くて視野がとても暗い(a)。やや倍率を上げると托髄層から托外皮にかけての組織が円形菌組織(b)であることは分かるが、子実層面は重なり合いがひどくてまともに見えない(c)。
 あらためて、刷毛を使い、水道水を流しながら慎重に砂を洗い落としら、子実層面だけを薄切りにしてから切片を切りだした。最初からメルツァーでマウントした(d)。子嚢の先端付近がきれいな青色にそまる(e)。このあとふだんは滅多にやらないことをやってみた。カバーグラスの上から強く押し潰してみた。そのときにわずかにカバーグラスがずれた。予測通り胞子が割れたり崩れていた(f)。やはり切片は押し潰さずに薄切りにするのが一番である。

2004年12月27日(月)
 
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(c)
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(d)
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(e)
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 ひたち海浜公園の砂地帯を歩いてきた。先月20日の時点から、さらに松が多数切り倒され景観がずいぶん変わった。遠目には砂丘地帯が復活したかのように見える。ウネミケシボウズタケ(a)、ナガエノホコリタケ(b)、ヒメツチグリ属、ホコリタケ属、スナヤマチャワンタケ(c)は健在であった。ケシボウズの仲間は、先月観察した折りに無かった場所にも発生していたが、新鮮な個体はほとんど無かった。ウサギの糞からは、まだまだ多数のハチスタケ(d, e)が発生していた。

2004年12月26日()
 
CGI → HTML
 
 昨日の午前中、久しぶりにホームページに関わった。といっても [きのこ雑記] ではなく、かねがね、CGIではなく扱いやすいHTMLページとするよう期待されていた優良サイトである。日々綴っていく日記形式ではないので、BLOGページにするには馴染まない。フリーウエアのCGIが生み出す仮想ファイルを、普通のHTML形式に置き換えた。
 かつてきのこ屋(高橋 博)さんがHTML化を試みていたので、その形式を踏襲してイメージも現行のものに準拠した。2時間ほどかけてPerlスクリプトを書いたが、変換処理には2分もかからなかった。手作業だといったいどのくらいの時間が必要だろうか。
 分子系統解析などバイオインフォマティックスの分野では、Perlが事実上の標準言語である。ふだん使わない言語というものは忘れやすい。時々こうした作業をするのもよいものだと思った。なお、大阪大学の竹中要一氏のサイト「BioPrelへの道」はとてもわかりやすくて面白い。
 今日はこれから茨城県のひたち海浜公園に菌類調査である。先月は珍しく一人だったが、今日は仲間6名で行うので心強い。

2004年12月25日()
 
菌類研究の基本文献
 
 きのこ研究の基本的書として最初に取り上げられるのがThe Agaricales in Modern TaxonomyとDictionary of the Fungiである。この2冊は最も基本的な教科書と辞書という位置づけを与えられている。しかし、Singer本には検鏡図を含めて図版はとても少ない。
 詳細な検鏡図を取り上げたものとして、スイスの菌類(FUNGI OF SWITZERLAND: Vol.1〜5)や、ヨーロッパの菌類(FUNGI EUROPAEI: No.1〜10)のシリーズが次に必須とされる。スイスの菌類は英語版があるが、ヨーロッパの菌類はフランス語版しかない。ついつい、読むのが億劫になり、テクニカルタームだけを拾い読みすることになる。
 日本語の文献が無いのがさみしいが、これが現実である。保育社「原色日本新菌類図鑑」はSingerの体系にそって書かれてはいるが、あくまでもこれは図鑑である。菌学の基礎を学ぶには、これまた英語のHOW TO IDENTIFY MUSHROOMS TO GENUS(No.1〜4)が定番である。この小冊子を必読文献としてとりあげる人も多い。
    [参考]   今日の雑記  2004.1.302004.2.12004.2.3
佐野書店 外国の菌類基本文献のご案内

2004年12月24日(金)
 
(a)
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 Rolf SingerのThe Agaricales in Modern Taxonomyといえば、ハラタケ目のバイブルともされる古典的な基礎文献として、あまりにも有名である。ハラタケ目を勉強しようと思ったら、一度は目を通さねばならない必読文献でもある。しかし、誰もが持っているが、誰もが読んでいない(?)文献でもある。Singerの英文は一文がとても長く、使われている語彙も難解である。A5版でたかだか300ページ前後の保育社「原色日本新菌類図鑑」とは違い、B5版で1000ページにも及ぶ。通読するにもかなりの覚悟が必要である。いわばきのこ世界の資本論である。
 青木 実氏はこの書を眼光紙背に徹すほどに何度も何度も目を通している。どのページを開いてもアンダーラインと書き込みが溢れている(c〜f)。第二版でも第三版でも同様であり、両者の変更部分などについても詳細に書き込みがされている。自宅の書棚に目をやると、Singer本は書店の棚に並んでいるときと変わらず、きれいな状態のままである。あぁ〜情けない。

2004年12月23日()
 
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 昨日千葉県立中央博物館を訪問した。ここで日本きのこ図版の著者である青木 実氏の使っていた顕微鏡を再びじっくりと見てきた(a, c)。2月の雑記でも一度、青木氏の顕微鏡について触れたが(雑記2004.2.14)、昨日は実物を箱から出して撮影した(a, b)。
 Olympus製の簡素な単眼顕微鏡で、メカニカルステージもついていない。内蔵光源はなくミラーを使って外部反射光を利用するタイプである。青木氏はここに簡易光源(c)を置いて使っていた(b)。そのままでは外部光源を定位置に設置できないので、ゴムを削って穴に嵌め込んで使うように工夫されていた(d)。補助的に使用していたと思われる学習用顕微鏡(e)や、氏が使用していた一眼レフカメラはすっかり手あかにまみれ、よく使い込まれていたことを感じさせられた(f)。
 先日お会いしたときの氏の笑顔を思い出しながら、顕微鏡やカメラ、各種の文献類などを見ている内に時間は思いの外早く過ぎ去っていった。吹春先生ありがとうございました。  

2004年12月22日(水)
 
最近のPC環境
 
 パソコンがあってインターネットに接続できることは当然のようになってしまった。E-mail環境はあって当たり前、Excelは関数を使えて当たり前、PowerPointでプレゼンテーション資料を作れて当たり前、最近はそういった雰囲気が支配的だ。気になるのはこれらがすべてMicrosoftの製品ばかりということだ。寡占化の先にはろくでもない結末が待っている。
 幸いなことにはAccessとWordはいまだ標準的な地位を獲得してはいない。FileMakerやら一太郎はいまだ大きなシェアを保っている。個人的にはPerlやPostgreSQLでほとんど用が足りているので、ふだんExcelやAccessを使うことは全くない。ただ、菌類関係では、Excelデータが添付されたメールをしばしば受け取る。それにしても、最近の若い菌学者は大変だ。

2004年12月21日(火)
 
(a)
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 さる10月23日に神奈川県川崎市で採取したカキノミタケをフィルムケースに入れたまま、すっかり忘れて冷蔵庫に放置したままになっていた。今朝何気なく冷蔵庫の奥をみて気がついた。蓋を開けるとやや甘酸っぱい臭いとともに、やや退色したカキノミタケが5つほどでてきた(a)。採取時には短かったものが、冷蔵庫の環境でも成長を続けていた(b)。
 既にかなり傷んでいると思われたので捨てることにしたが、その前に一通り覗いてみることにして先端部付近を切り出した(c)。ささやかな期待があったのだが、有性世代の子嚢や胞子はやはりできていなかった。分生子柄ばかりが見える(d, e)。分生子の大きさにはかなりのバラツキがある(f)。カキノミタケの子嚢は今年もついに見ることができなかった。

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