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2004年11月20日()
 
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(f)
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 さいたま市見沼区にはウッドチップを多量に散布した公園がいくつかある。昨日は雨の中、その公園のひとつを歩いてみた。朝から終日雨だったので、公園は閑散としており、キノコが蹴飛ばされたり踏みつけられることもなく整然とした姿で多数残っていた。
 ウスベニイタチタケ(a〜c)やハタケキノコ(d, e)があちこちで絨毯のように広がっていた。雨のためかツバナシフミズキタケ(f)はまるでヌメリを持った別のきのこのような様相を呈していた(f)。他にはヒトヨタケの仲間、サンコタケ、キツネノタイマツ、ツマミタケなども多数見られた。シロフクロタケは傘径15〜20cmにもなる大きな個体がいくつも無惨な姿をさらしていた。

2004年11月19日(金)
 
興味深いシンポジウム
 
 12月11日(土)に興味深いシンポジウムが行われる。日本菌学会関東支部による恒例のシンポジウムで、テーマは「菌類の多様性とインベントリー」である。会場は、東京農業大学世田谷キャンパス1号館4階メディアホールなので、新宿からも近い。
 演者には出川洋介氏(神奈川県立 生命の星・地球博物館)、木場英久氏(同)、後藤康彦氏(菌類懇話会)、石崎孝之氏((財) 日本きのこ研究所)、細矢 剛氏(国立科学博物館)といった顔ぶれが並んでいる。プロばかりではなく、アマチュアからも菌懇会の後藤氏が招聘されている。締切は11月26日(必着)で、申込先は下記となっている。
 ちなみに日本菌学会関東支部の会員でなくても参加できる。こういったシンポジウムというもの、えてして講演後の懇親会(17:20-19:30)で本音や裏話を聞けることが多い。
申込先   〒305-0005 つくば市天久保4-1-1   国立科学博物館
植物研究部   細矢 剛    Email: hosoya@kahaku.go.jp
申込期限 2004年11月26日(必着)

2004年11月18日(木)
 
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(j)
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 近場の緑地帯やら公園にもきのこの姿がめっきり少なくなっている。しかし、広義の硬質菌であればほぼ通年観察できる。さいたま市の秋ヶ瀬公園に早朝でむいて、やや多汁で柔らかい肉質の白いきのこを採取してきた(a)。コナラの倒木にでていたのだが、表面の密毛が青色を帯びたものもある(b)。切断してみたり(c)、拡大してみた。
 胞子紋は青みを帯びている(e)。胞子を水でマウントしてみたがやはりとても見にくい(f)。フロキシンを加えると若干わかりやすくなった(g)。担子器は思いの外細長かった(h)。菌糸構造は一菌糸型で、実質部にも傘肉部にも大型で目立つクランプがある(i, j)。アオゾメタケのようである。

2004年11月17日(水)
 
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(f)
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 一昨日月曜日に千葉県内房の浜に出向いたのは、コナガエノアカカゴタケの観察が目的ではなかった。ケシボウズタケ属の発生状況の確認が最大の目的だった。最近1ヶ月の間にかなりの数の個体が発生していることを確認することができた。しかし、あまりにも強い雨にほとんど生態写真を撮影することはできなかった。
 ナガエノホコリタケ Tulostoma fimbriatum var.campestre (a, b)は新しい個体が広範囲に発生しているが、昨年7月のような大量発生は見られない(雑記2003.7.17)。おおむね4〜5種類のケシボウズの発生を確認した。ナガエノホコリタケの他には、ウネミケシボウズタケ t. striatum (c, d)、ケシボウズタケ T. brumale と T. kotlabae (e, f)などである。今回は、屋根のある所に非難して、そこで広告の紙の裏にケシボウズを並べて撮影した。黙視でほぼ同定のできる一部を除いて、まとめたのが(e, f)だったが、帰宅して調べてみると2〜3種類が混ざっていた。

2004年11月16日(火)
 
(a)
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(d)
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(f)
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 昨日早朝千葉県内房の浜を歩いてきた。雨が強くてカメラがビショビショになってしまい、撮影には非常に難儀した。スナジクズタケカヤネダケスナヤマチャワンタケのきれいな姿が多数見られたが、撮影するゆとりは全くなかった。
 久しぶりにコナガエノアカカゴタケ(a〜f)にであった。このきのこは、1993年6〜10月に飯塚茂明氏によって千葉県富津市の海岸で初めて発見され、2000年には、本多澄夫氏によって愛知県渥美半島の海岸で2例目が発見されている。さらに、2001年には千葉県外房の一ノ宮町で3例目が発見された。その後は、千葉県白子町、長生村をはじめ、外房のいくつもの浜で見つかっている(千葉県のコナガエノアカカゴタケ)。さらに茨城県ひたちなか市でも発生が確認された。
 千葉県富津市の浜で再びコナガエノアカカゴタケが確認されたのは、2003年11月のことである(雑記2003.11.8)。最初の発見から10年ぶりのことであった。しかし、このとき確認された個体はたった一つである。昨日は、7〜9つほどの新鮮な個体を確認することができた。発生場所も1キロメートルほど離れた数ヶ所にわたっていることが分かった。

2004年11月15日(月)
 
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 昨日の早朝さいたま市の秋が瀬公園に行ってみた。先の台風による大雨と冠水の痛手が大きかったのか、相変わらずきのこの姿は非常に少ない。それでも、キクラゲの仲間、テングタケ属、ナヨタケ属、ホコリタケ属、硬質菌はみられた。
 遠くから見てムジナタケのように見えるきのこがあった(a〜c)。しかし傘表皮は比較的なめらかで繊維状の鱗片はない(b)。傘裏にはクモの巣状の被膜に被われている(c)。
 ヒダを切り出してみると実質は並行型、側シスチジアと縁シスチジアをもち、いずれも同じようなスリコギ形をしている(d, e)。水でマウントしたままで担子器(f)、胞子(g)などをみた。傘表皮は子実層状被ではなく、並行に菌糸が走っている(h)。

 担子器のサイズを計測したり、基部のクランプを確認するにはいろいろなやりかたがあろう。ふだんは、担子器の基部のクランプ(basal clamp)は観察するだけで、ほとんど撮影はしない。正確な記載を必要とする場合とか、何かに投稿する場合には撮影することがある。要は、担子器を潰さず、重ならずにバラバラにしてしまえばよい。今朝はその過程を撮影してみた。
 やや濃いめのKOH(5〜10%)でプレパラートを作成する。なるべく薄い切片を作ると作業が楽である。組織が脱色されて透明になってしまうことが多いので、KOHにはフロキシンを溶いておくとよい(i)。次にカバーグラスの上から軽い圧を加える。この作業は顕微鏡のステージの上にプレパラートを載せたまま、枝付き針の針先を使って行っている。
 ポイントは一度に強く押しつけるのではなく、数回に分けて少しずつ圧を加えることだ。対物20〜40倍の低倍率で覗きながらやると確実だ。すると重なり合った部分の担子器やシスチジアなどが飛び出してくる(j)。強すぎると組織を潰してしまう。あとは観察に適した担子器をみつけ、倍率を上げて観察すればよい(k, l)。合掌位置を変えて担子器の基部に焦点を合わせれば、basal clamp の有無などを確認することができる。

2004年11月14日()
 
(a)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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 る10月30日に千葉県外房の浜で採取したウサギの糞(a)を、タッパウエアに入れて室内に放り出しておいた。湿らせたクッキングペーパーを下に敷いて密閉した。ひさしぶりに蓋をあけてみると、16個ほどの糞のうち3つか4つは白い菌糸にすっかり被われていた(b)。
 一部の糞からは、ハチスタケがいくつも発生していた(c)。頭部が白い粉状のものでおおわれた部分(d)には多数の分生子がみられる。分生子を作る部分の組織をみていると、ケシボウズタケの担子器を思い起こさせられた(e, f)。
 ウサギに限らず草食性動物の糞を適度の湿り気を保った状態で維持すると、いろいろな菌がでてくるので、とても面白い。今回はチャワンタケの仲間の発生は見られなかった。

2004年11月13日()
 
(a)
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 大型のワカフサタケ属のきのこの群れにであった(a, b)。5〜8本ほどが束生した株がハイキングコースの両側に広範囲に広がっていた。傘表皮にはヌメリがある。この仲間のきのこもかなり多くの種類が見られるにもかかわらず、和名のついたものはごくわずかしかない。
 胞子をみると、表面の疣と形は典型的なワカフサタケ属を思わせる(c, d)。ヒダを切り出してみた(e)。縁シスチジアは細長い筒状であり(f, g)、側シスチジアも多数みられ、これも同じような形をしている(h, i, k)。これらシスチジアの基部にはクランプが見られる。担子器(j〜l)の基部にはクランプがあり、傘表皮は並行に菌糸が走っている。
 この属で側シスチジアを多数もつものは少ないようだ。スイス菌類図鑑でHebelomaにあたってみると、ほとんどが "no pleurocystidia seen"、つまり側シスチジアは見られない、とある。いくつかの検索表をたどってみたが、該当種にはぶつからない。新産種の報告はまだしも、新種記載は面倒だ。気まぐれに持ち帰ったHebelomaだが、朝食後このキノコは廃棄してしまった。

2004年11月12日(金)
 
(a)
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(e)
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(i)
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(j)
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 先日秩父で採取したフウセンタケ属は、観察する時間がとれずそのまま冷蔵庫の野菜ケースに放置したままになっていた。今朝、取り出してみるとほとんど傷んでいなかった。幼菌のクモ膜も温存されていた(a)。
 胞子は表面に疣を持ち、三角おむすびの一端をやや尖らせたような面白い形をしている(b, c)。ヒダを切り出してみたが、シスチジアはみられない。ヒダ実質は菌糸が並行に並んでいる(d)。低倍率で子実層面を見てから(e)、倍率を上げてみると、担子器には二つの柄がついている(f)。傘表皮は並行に菌糸が並ぶ(g)。
 さらに一枚ヒダを切り出してフロキシンで染めてみると(h)、クランプが見られた(i)。担子器をバラして基部を確認するつもりだったが、失敗した(j)。KOHでなく水でマウントしてフロキシンを加えたために、担子器がうまく分離してくれなかった。今朝はこのフウセンタケを検索表で追究する時間はとれなかった。いずれにせよ本郷図鑑には掲載されていない。

2004年11月11日(木)
 
(a)
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(c)
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(d)
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(e)
(e)
(f)
(f)
 テーブル上のフィルムケースが次々に増えていく(a, b)。ケシボウズのサンプルである。処理するよりも新規に加わるものの方が多く、いつになっても片づかない。特に最近数ヶ月は気温が高く雨が多かったので、観察できずにテーブル上のフィルムケースに放置しているうちに、雑菌に犯されてダメになってしまうものが多い(c)。結局これらは泣く泣く廃棄処分することになる。
 本来なら、検鏡し記載を終えたものは直ちに紙袋にいれてそのまま、冷蔵庫に数ヶ月入れて乾燥させる(d)。乾燥したらシリカゲルと樟脳を加えて、種ごとに別々のケースに収める(e)。他の人から届いたものなどは、別ケースに入れて納めている。これらはさらに大型の密閉プラスチックケースに納める。そして、随時博物館などの標本庫に発送することになる。
 とりあえず乾燥させてしまってから後日観察し記載すればよいではないかと、何人にも指摘されたが、ケシボウズの場合、これが意外とやっかいだ。狭い範囲に外見のそっくりな複数種が混在していることが多いので、現地ではこまめにフィルムケースなどに分けて採取する。同一種だろうと思って胞子を覗いた途端に、期待を裏切られることはしょっちゅうある。さらに新鮮な状態での観察記録がとても重要だ。熱乾燥してしまうと皆同じになってしまうのだ。

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