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いよいよテングタケ科のシーズンが始まったようだ。昨日川越市の保護林を歩いてみると、多種多数のテングタケ科のきのこに出会うことができた。1時間半ほどの間に、ざっと数えても10数種類を数えることができた。撮影したのはそれらのうちのほんの一部である。 最も数も多く目立ったのがガンタケであった(a, b)。大きなものでは傘径18cmに及んだ。次に多かったのはアカハテングタケ(タマゴテングタケモドキ)であり、雨のあとで美しい姿のものが多かった(c, d)。さらにこれとよく似たツルタケダマシも目立った(e, f)。 テングタケ科にまで手を出しても、同定作業の時間がとれそうもないので、ごく一部しか採取・撮影はしなかった。(g)、(h)もツルタケダマシの可能性が高いが、まだ同定作業の時間はとれそうにない。(i)、(j)については持ち帰らなかったので、種名は全く不明である。(k)、(l)はガンタケのすぐ近くに出ていたのだが、傘をみるとまるでガンタケのアルビノといった印象である。 なお、ムラサキヤマドリタケはかなり大きく成長していた。カワリハツ、ヒビワレシロハツ、ドクベニタケ、クロハツをはじめベニタケ類はかなり多くの種がみられた。すでにヤグラタケすら発生していた。林内樹下は急に賑やかになってきた。 |
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現地撮影したまま放置しておいたきのこについてのメモである。撮影したのは去る5月22日埼玉県さいたま市である。採取したのは胞子紋だけだったので決定的なことはわからないが、上段のきのこはセンボンサイギョウガサ、下段のきのこはヒカゲタケのように見える。現地にあらためて行ってみても、すでにこれらのきのこの発生は見られない。 以前だとこれらのきのこも自宅に持ち帰って詳細に検鏡したり試薬による反応などを調べることができたのだが、今はそれもかなわない。できることといえば、現地で胞子紋だけを採取して胞子を検鏡することくらいだろうか。あとは外見をつぶさに観察して種の同定の手がかりを得ることがすべてとなってしまった。さらに、こういった不特定多数の閲覧可能なホームページなどに記述するにあたっては、今後ともタイムラグを置いて掲載せざるを得ない。 |
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すでに気づいている方もおられるだろうが、キノコのフォトアルバムでは、コウボウフデの学名を、長年親しまれてきたBattarrea japonicaではなくPseudotulostoma japonicumとしてある。これは入力ミスや引用ミスではなく、最新の学説に準拠したものだ。 Battarreaというのは担子菌のケシボウズタケ科の一属をあらわす学名である。コウボウフデは子嚢菌のPseudotulostoma属の一員であることが判明した現在、Battarreaを使うのは適切ではない。論文も公にされているので、学名表示もそれにならって変更した。学名については議論の余地もあるが、とりあえず今後はこれを使っていくことにしたい。 今ひとつ、ウネミケシボウズタケ(仮) Tulostoma striatum の和名表示から、「(仮)」の部分を削除して、ウネミケシボウズタケ Tulostoma striatumとした。 ケシボウズタケ属についての世界的モノグラフを著したWright(1987)によれば、日本でも採取の事実ありとされる。だから「新産種」とは言えないが、これまでわが国では、このT. striatumについて詳細な記述は無く、広く認知された和名はまだない。胞子表面にウネのように隆起した条線を持つことから、ウネミケシボウズタケの和名を提唱することにした。 いずれにせよ、この両者とも食毒には縁がなく、非常にマイナーなきのこゆえ、多くのきのこファンにとっては、どうでもよい話であろう。 |
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千葉県内房の海浜砂浜に昨年大量発生(雑記2003.7.17)したナガエノホコリタケはその後も毎月観察を続けて、風化による変化を追ってきた。一昨日現在、ミイラとして姿をとどめている個体の大部分はペシャンコになって砂に半ば埋もれた姿をしている(a〜c)。柄が見えた状態で屹立している子実体はきわめて少なくなった(d, e)。 これまでは気づかなかったのだが、ナガエノホコリタケに混じって同じシロのなかに別種のケシボウズがあった(f)。孔口部の形がナガエノホコリタケとは明らかに違う。内皮の構造も異なり、どちらかというとTulostoma adhaerensなどに近い。このシロはとても大きく、大部分はナガエノホコリタケだが、ウネミケシボウズタケ(T. striatum)、アラナミケシボウズタケ(T. fimbriatum)なども一緒に発生していることが確認されている。 また、あらたに別種がほぼ同じ頃に発生していたらしいことが判明したわけだ。 |
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昨日の早朝、菌友のS氏と二人で千葉県内房の砂浜に定点観察に行ってきた。海辺の砂浜にスナジクズタケは全くみられず、やや乾燥気味のカヤネダケ、アミスギタケがあちこちに見られた。ナガエノホコリタケは、まだ今年の子実体が発生しはじめた兆候はない。昨年7月大量に発生した個体のミイラはさらに少なくなっていた(雑記2003.7.17)。 これまで全くノーマークだった地点でとても小さなケシボウズ(a, b)をみつけた。昨年のミイラと思われるのだが、いずれも柄と頭部がしっかりした状態で孤生ないし散生している。ざっと数えて30数個体はあった。従来の例からいって、今の時期に残っているミイラの数は最盛期の十分の一程度と思われるので、昨年はかなりの個体が発生していたと考えられる。 頭部の径5〜8mm程度でいずれもとても小さく、孔口部は筒状である(d)。外皮は一見菌糸状にみえる(c)が、ミイラではなく新鮮な個体でチェックしないと、果たして膜質なのか菌糸状なのかは断定できない。胞子は粗面ないし微疣に被われている(e, f)。弾糸には多数の拳状節がみられ(e)、所々に特徴的な菌糸(f)がある。いわゆるmoniliformis(数珠状)というものである。 外皮を膜質と判断すれば、Tulostoma brumale(ケシボウズタケ)に近いが、胞子がケシボウズタケのそれとはやや異なる。しかし、外皮を菌糸状と捉えれば、Tulostoma kotlabae(日本新産種)ないし新種と思われる。今年発生の子実体による同定作業が必須である。 |
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さいたま市秋ヶ瀬公園のウッドチップからは相変わらずツチイチメガサ亜属(Pholiotina)の小さなきのこがでている(a, b)。雑記2004年5月20日(i)で取り上げたものと同一種である。ツバには条線が顕著で上下に動き、簡単に剥落してしまう。胞子紋は黄褐色(c)。 胞子を水(d)、濃硫酸(e)、30%KOH(f)でマウントしてみた。強酸にも強アルカリにも破壊されることなく赤みを帯びただけだった。厚膜で明瞭な発芽孔をもつ。胞子サイズと発芽孔の観察で、ほぼツチイチメガサの線は消える。ヒダ実質は球形気味の細胞からなっている(g)。縁をみてもシスチジアが分かりにくい(h)。ヒダを一枚スライドグラスに寝かせて、倍率を上げてみると、所々にフラスコ型の縁シスチジアがみえた(k)。側シスチジアはなく、担子器の基部にクランプはない(i, j)。傘表皮は先端の膨らんだ棍棒型だが、写真では組織の基部が写っていない(l)。 外見的特徴と顕微鏡所見をもとに検索していくと、Conocybe blattariaという種に落ちた。これにはクサアジロガサという和名がついている。ツチイチメガサと比較すると、胞子が大きく、明瞭な発芽孔をもち、担子器の基部にはクランプがなく、縁シスチジアの基部は膨れている。保育社原色日本新菌類図鑑Tp.182には、クサアジロガサという綴りが一行掲載されているのみで記述はない。今回の同定にはスイス菌類図鑑Vol.3 p.314を手がかりとした。 |
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先にベニサラタケと同定(5/30)したチャワンタケについての補足メモ。チャワンタケの検索表をたどっていくとピロネマキン科まではごく自然にたどりつく。次にピロネマキン科の検索表をたどっていくと、胞子の乳酸反応によって大きく分岐する部分に突き当たる。 胞子の外膜が熱乳酸液中でふくれて遊離するか否かである。ここで外膜が遊離するとベニサラタケ属(Melastiza)ではなく、Cheilymenia属の方に落ちる。だから、正確な同定には熱乳酸液中での反応のチェックが欠かせない。雑記5月30日を記したときは乳酸が手元になかったので、乳酸反応検査をすることができなかった。数日前に注文しておいた乳酸が届いた。 今朝は熱乳酸液に子嚢胞子を落とし込んでやや放置してから検鏡した(a〜f)。胞子表面から輪郭部まで焦点位置を変えて撮影した。結果は、胞子外膜が膨れることもなく、外膜が遊離することもなかった。したがって先日のチャワンタケはMelastiza属にまちがいない。なお、写真(a, b)は子実層の一部を摂氏60〜80度の90%乳酸液に7〜8分間ひたした後作成したプレパラートだが、透明でとても見にくい。そこでフロキシンで着色処理してから同じように熱乳酸液処理を施して作成したプレパラートが(c)〜(f)だ。ずっと見やすくなっている。色や形が似ているアラゲコベニチャワンタケは、胞子の熱乳酸反応を試みると外膜が膨らみ遊離する。 |
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昨日の朝、さいたま市の公園を歩いてみた。ウッドチップからは相変わらず常連のきのこが多数発生していた。前日の雨でまた一気に増えたようだ。その一方で、乾燥していたところに雨のため、形がすっかり崩れてしまったものも多かった。 最も多いのがヒトヨタケ属(a〜f)のきのこだ。美しい姿をしたヒメヒガサヒトヨタケ節(d)、傘が反り返るザラエノヒトヨタケ(c)、成長につれて傘の端から溶け出していくネナガノヒトヨタケ(b)、コキララタケらしきものもいくつも見られた(e)。溶けかけていた傘が雨で一気に洗い流されて、頂部のみが残り棒状に突っ立ったキララタケ節の姿が異様であった(f)。 ツマミタケ(g〜i)が大量発生し、あたり一面に異臭を放っていた。ツバナシフミズキタケやハタケキノコなどのフミヅキタケ属(j)は相変わらず広範囲に群れをなしている。オキナタケ属(k)やナヨタケ属なども目立った。さらに倒木にはキクラゲ(l)がいたるところに見られた。 |
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去る5月11日に担子菌のウメウスフジフウセンタケの胞子を使って、焦点深度による見え方の違いを楽しんだが(雑記2004.5.11)、今朝は子嚢菌の胞子を使って同じことをやってみた。素材に使ったきのこは先日(5/30)川崎市生田緑地で採取されたとても小さなベニサラタケだ。 今回も、微動ネジの操作で合焦位置をほぼ1〜1.2μmずつ下げながら、胞子表面から輪郭部周辺までを順に撮影した。胞子は見やすくするためにフロキシンで染めた。顕微鏡を覗いているときは、無意識に微動ネジを操作しながら、全体像を観察している。こうして部分撮影をしてみると、あらためて人間の目の補正機能というものは優れたものだと痛感する。 「自分の顕微鏡は安物なので、図鑑に描かれているような胞子の姿をみることができない」といった話をよく聞く。図鑑類や論文などに描かれた図は全体像が分かるように表現されているのであり、顕微鏡の視野の中に図に描かれたような像が見られるわけではない。 |
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秋ヶ瀬公園のウッドチップからはヒメヒガサヒトヨタケ節のきのこが多数みられる。今朝は雨の中、5月19日の採取地と同じ場所から採取してきた(a, b)。今日の雑記5月20日(c)で取り上げたものと同一種であろう。コツブヒメヒガサヒトヨタケのように感じていたものである。 低倍率でみた胞子からはコツブヒメヒガサヒトヨタケとしてもよさそうに見える(c)。正確なサイズを出すために油浸100倍にした(d)。コツブヒメヒガサヒトヨタケの胞子よりもひとまわり大きい。傘表皮の一部を削ぎ取ってみると厚膜の剛毛が多数みえる(e)。この時点でコツブヒメヒガサヒトヨタケの線は完全に消える。 あらためて傘表皮とヒダの一部を切り出した(f)。剛毛がはっきりと見える(f, g)。剛毛の基部をみると、透明な球形細胞から突然のように厚膜の組織に繋がっている(h, i)。傘の上表皮層は透明で熱気球を並べたような形をし、下に続く表皮層とは明瞭に区別できる(j, k)。 側シスチジアは太い棍棒状をしている(l)。傘表皮に剛毛という典型的な特徴をもっているから、このきのこはオオカバイロヒトヨタケとしたいところだが、胞子サイズと形がかなり違うので、変種ないし品種ということになるのだろうか。 それにしても雨の日の自転車通勤は憂鬱だ。雨合羽をかぶると内側からの蒸れで20分も走るとビショビショになってしまう。 |
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