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早朝、先日採取したツチグリのミクロの姿を覗いて楽しんだ(雑記2004.2.4)。細毛をおびた内皮の内側から粉状の胞子塊をピンセットでつまんでエタノールでマウントしてみた(a)。厚膜で分枝をもつ菌糸が見える。コットンブルーを加えて熱してみた(b)。菌糸壁は染まらない(acyanophilous)から、これは弾糸ではなく偽弾糸ということになる。フロキシンでもこの偽弾糸は染まらない(c)。 胞子は微細な疣に被われ(d)、偽弾糸には色々な形の分枝が見られる(a〜c, e)。保育社の日本新菌類図鑑には「偽弾糸は分岐少なく」(p.195)と記されているが、関東地方のツチグリには分岐が多い。他地域産のツチグリはどうなのだろうか。 なお、腹菌類一般に言えることだが、担子器を観察しようと思ったら、内部がまだ白い幼菌を採取する必要がある。ツチグリの場合も、やっと地表に顔を出したばかりの幼菌で、内部が白色のものでないと担子器は観察できない。内部を切ったときに既に淡紫褐色から暗紫褐色となったものではもはや担子器の観察は難しい。 |
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2月6日の雑記に対して、「それは、お前のPCが感染しているからだ」との避難をいただいた。しかし、このウイルスはWindows系OSにしか感染しない。Mydoom付きメールは昨日も22件。 今朝もひたちなか市の浜で採取したヒメツチグリ属のきのこを覗いて楽しんだ。内皮は柄生(a)、頂孔をむりやり開いて(b)、中から胞子塊をとりだした。孔縁盤の部分は縦溝線が明瞭。 胞子表面には先端を切り落としたような形の大きめの疣が多数みえる(c, d)。弾糸は濃い褐色をしていてクランプはない(e, f)。ごくわずかに分岐している部分がある。メルツァー液では胞子や弾糸の色に変化はないが、KOHでは胞子の色が明るい黄褐色になった。 いくつかのモノグラフなどの検索表をたどってみたが、いずれもしっくりする位置には落ちなかった。この属(Geastrum)に関してはまだまだ未知種だらけ世界なのだろうか。 |
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さいたま市見沼区の公園に早朝行ってみたが、地上生のきのこはほとんど何もない。公園の製造所では連日多量のウッドチップが作られ、広範囲に厚く散布されている。キノコも子実体原基を作り始める間もなく次のウッドチップの下敷きになってしまっているのだろうか。 2月3日茨城県ひたちなか市の浜辺で出会った多数のケシボウズの中にはナガエノホコリタケらしき菌(a, b)も含まれていた。これらはいずれもオニシバとハマアオスゲの繁茂する砂地にでていた。コウボウムギやハマニンニクなどは近くには無かった。 外皮は菌糸状(hyphal)、孔口部はやや房毛状から鋸歯状、柄の表面にはわずかに赤褐色の鱗片が残るものもある。このあたりはT. fimbriatumの特徴と一致する。エタノールでマウントして胞子(c)、弾糸(d)をみた。次にコットンブルーで染めて見た(e, f)。胞子表面はやや粗面から疣状である。これはナガエノホコリタケあるいはアラナミケシボウズタケの可能性が強い。いずれにせよTulostoma fimbriatumかその変種(var.)だろう。 |
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さいたま市の秋が瀬公園のハンノキ樹下には例年多数の菌核菌が出る。キボリアアメンタケア(ciboria amentacea)だ。今年も1月中頃から小さなものが姿をみせていた。昨日行ってみたところ、サイズも大きくなり数もとても多くなっていた(a〜c)。ほんのちょっと歩いただけで80〜100本ほどが見つかった。大きなものは径12〜15mmほどになっている。 今朝はこの菌核菌を覗いた。子嚢盤の一部を切り出してメルツァー試薬で染めると、子嚢先端付近が青色に変わっている(d)。子嚢胞子を放出する孔の壁が水色に染まっている(e)。 ツバキキンカクチャワンタケ同様、今年は発生がとても早かった。この様子だと、朴の樹下に出るキボリニアグラキリペスとか、ニリンソウなどの下に出るアネモネタマチャワンタケ、桑の樹下に出るキツネノワンやキツネノヤリタケなども例年より早く見られるかもしれない。 |
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このところ連日20〜30件ほど、実行ファイル付きのメールが来る。メールのタイトルは hi とか test、hello 等である。W32.Mydoom.A@mmというウイルス(正確にはワーム)の仕業だ。1月中頃から急激に増えた。発信者をみると知人のアドレスがいくつもある。自分のメールアドレスもあった。きのこ関係のサイトにアクセスする人の中に感染者がいるのだろう。 悪用されるアドレスは何もメールソフトのアドレス帳に記載のものに限らない。アクセスしたことのあるホームページなどに記載されたアドレスも対象になる。一時ファイル、履歴ファイル、ログファイル、お気に入りなどに書かれているものすべてが対象になる。 Linux, Macintosh, UNIXには感染しないが、Windowsを使っているのなら簡単に感染してしまう。自分のパソコンが危ないと思ったら、以下のURLなどで正しい情報を得てきちんと対処する必要があろう。さもないと加害者になってしまうばかりではなく、自分のパソコンが外部から勝手に操作されてとんでもない被害に遭遇することだってあり得るのだ。 WORM_MYDOOM.Aの特徴、対応方法など(トレンドマイクロ)こういったウイルス付きメールが来ても、添付ファイルを開きさえしなければ感染することはない。日常的に、以下のような拡張子のファイルが添付されたメールは無条件に削除するようにしておけば感染のおそれはかなり低くなる。 |
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一昨日茨城県ひたちなか市の浜辺で出会ったTulostoma striatum(ウネミケシボウズタケ:仮)と思われた菌(a〜d)を今朝検鏡してみた。このケシボウズのstriatumとは(胞子に)「条線のある」という意味であり、類似の胞子をもったものは、孔口が筒状の T. nigerienseしか知られていない。このT. striatumの特徴のとして孔口が房毛状(b, d)、頭部が柄と簡単に分離してしまう(d)といったことがあげられる。ケシボウズの中ではたやすく同定できる数少ない種のひとつだ。 発生状況、外皮の様子、孔口部の姿などから、現地でT. striatumと見当をつけてはいたが、胞子をあらためて確認した(e, f)。フロキシンで染めて、同じ場面を二ヵ所の位置で撮影してみた。(e)と(f)との違いは、同じ胞子表面でも上面(e)と下面(f)である。胞子表面に肋状のウネがみごとに走っている様子がわかる。 これまで千葉県内房、同外房、福島県いわき市、新潟県寺泊などで T. striatumの発生が確認されているが、茨城県では未だに見つかっていなかった。今回の確認で、千葉から福島までの海岸線がようやく繋がった。きっと仙台あたりまで分布しているはずだ。 |
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昨日茨城県ひたちなか市の浜辺を歩いてきた。キシメジ科の地上生のきのこ、ホコリタケ科の大型菌、ツチグリ(a)などがかなり見られた。ヒメツチグリ科の小さなきのこ(b, c)の群生も砂浜にかなり見られた。これらは頭部の径2mm〜8mmほどであった。頭部が青黒色のヒメツチグリ科のきのこにもであった(d)。こちらは単生で柄が長く前者のそれとは明らかに別種と思われる。 当初の目的であったケシボウズタケ属のミイラには数百本であうことができた(e)。これらは昨年8〜10月頃大量に発生したらしく、数種類が見られた。何ヶ所かでこういったケシボウズの群れにであったが、それらの中にはナガエノホコリタケ、ウネミケシボウズタケ(仮)なども見られた。他にはアカキクラゲ科らしき菌をみることもできた(f)。冬場の海辺の砂浜にはいろいろなキノコがでている。今回も防風林や松林の中は全く観察せずに帰宅した。 |
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知らない人もいるようなので図版入りの菌学用語辞典を紹介しておこう(a〜e)。菌類関係のやさしい用語集といえばこの本をおいて他にないだろう。 こころみにcapillitiumという用語を引いてみた(b)。語源の由来、用語の説明、何枚かの写真(c)がある。参照項目としてpseudocapillitiumとparacapillitiumがあげられている。これに従ってparacapillitiumを引いてみた(d)。ここでも語源、説明、図(e)と基本的なことがわかりやすく示されている。すべての項目に冗長なほどに詳しい語源の説明が必ずついている。 日本語や英語での言い回しなどがわかりにくいときには、日本菌学会「菌学用語集」で英−和、和−英を確認してから上記辞書にあたるとさらに理解が深まる。 |
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2月15日に埼玉きのこ研究会恒例の講演会が行われる。講師は国立科学博物館の土居祥兌博士。きのこと分類体系(仮題)、皇居のきのこといった興味深い話を聞くことができそうだ。広く開かれた講座として開催されるので、会員・非会員を問わず参加できる。若干の参加費は必要かもしれないが、事前申込などは不要だ。以下に案内を記しておこう。
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昨日までの2日間、雪の温泉地ではきのこの仲間に出会うことはなかった。すべてが雪の下、そして材上生の硬質菌もすっかり雪をかぶっていた。 一昨日の雑記で書いたきのこ(学)の基本書(英語文献)2点についての補足である。 (1) D.L.Largent 他 "How to Identify Mushrooms to Genus" のシリーズ(a〜d) 大学に入ったばかりの学生さんが対象となるシリーズと、かつて紹介された著名な教科書。対象はハラタケ目きのこ。第一巻(1986年刊)はマクロ的形態に関するもの、第三巻(1977年刊)は顕微鏡下のミクロ的形態に関するもの。出版は古いが内容はほとんど陳腐化していない。 (2) O.K.Miller 他 "Gasteromycetes: Morphological & Developmental Features"(e) 伝統的に腹菌類と呼ばれてきたきのこについての、最も定評ある著名な初心者向け教科書。これも刊行は1988年と古いが、基礎概念がとてもわかりやすく説明されている。これを読むと腹菌類についての総合的な概念がつかめる。 いずれも比較的薄い本で、高校初年級の英語で書かれており、価格は各々2,000〜4,000円。佐野書店やネット上の書店から購入できる。今日現在、上記(d)は版元品切れのようだが、(a)〜(c)、(e)は入手可能だ。 |
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