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先に採取して持ち帰った小さなニガクリタケはそのまま冷蔵庫に保管しておいた。写真では大きく見えるが、傘径は6〜12mmほどである。今朝それを見るとまだ未熟な幼菌だと思っていたのだが、胞子(a)、担子器(b)、クリソシスチジア(c)ともにすっかりできあがっていた。 視野を動かしていくと妙なものにぶつかった。あらためて倍率を下げてみると、きのこの組織ではなく虫だった(d)。どうやらダニらしい。観察を中断して10分後くらいに再びプレパラートを覗くと、すでに視野に虫はいなかった。まだ生きていて、プレパラートの外に移動してしまったようだった。さらに低倍率にして探したが、結局みつからなかった。この虫にすっかり気勢をそがれて、今朝はこれ以上の観察はする気になれなかった。 相変わらずウイルス付きメールが連日30件以上やってくる。特に昨日は80件以上もあった。ほとんどがW32.Netsky系である。これらの馬鹿げたメール群のために、肝心の重要なメールの受信がなかなかできない。これにはいい加減うんざりしている。 |
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朝食前にあらためてトガリアミガサタケを顕微鏡で覗いてみた。採取から3日目だが、冷蔵庫野菜ケースでの保管状態は新鮮そのものだ。 トガリアミガサタケの子実層托の部分は円形菌組織をなし(a)、側糸には隔壁がみられる(b)。倍率を上げたところ(c)でメルツァー液を加えると(d)、側糸の部分が赤茶色になる。子嚢頂部が破れて胞子が放出されるまでをじっくり観察した(e)。 KOHでマウントしてからフロキシンを加えると、胞子が鮮やかな色に染まる(f)。この写真は3/28撮影のものだ。標本は観察後に朝食の具となった。油炒めにすると案外美味しく食べられる。プレパラートにしたものは無論そのまま廃棄処分にしたことは言うまでもない。 明日が締め切りの原稿にようやく手を付け始めた。1ヶ月ほど前から分かっていたことなのだから、本来ならばとっくにできあがっていて当然のものである。しかし悲しいことにこれが現実というものだ。これから悪戦苦闘して深夜にはなんとか書き上げて、朝のうちに速達だ。 |
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昨日、千葉県内房の浜を観察してから、房総半島の内部に入り久留里城址と市原市民の森を歩いてきた。快晴の花見日和とあって、あちこちで観光客の車がごった返していた。早朝自宅を出て昼過ぎには帰宅していたので、渋滞を横目に見ながらのんびり帰宅できた。 富津市の浜では昨年発生したミイラがまだきれいな姿で多数残っていた(a)。強風に砂がとばされてナガエノホコリタケが2本並んで柄をさらしていた(b)。この2本の柄の表面をみると、まるで別種のようにみえる。さすがにまだ今年の新しい菌は一つも発生していなかった。 久留里城址は自然公園になっている。遊歩道ではチャムクエタケモドキ近縁種、イタチタケ近縁種をはじめ、クロハナビラニカワタケ(c)、クロハナビラタケ(d)などが見られた。ハイキングコース脇の斜面では樹木の根からシイタケ(e)が出ていた。その脇にはタマキクラゲやらヒメキクラゲ(f)が新鮮な姿をみせていた。シイタケとヒメキクラゲは食用に持ち帰った。 |
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このところやっと雨らしい雨があったので、さいたま市でもようやくトガリアミガサタケ(a〜d)が最盛期を迎えている。8〜16cmほどに育ったトガリアミガサタケのなかには、自重のために頭をペコリとさげたものもあった(c)。数本を採取し、そのうちの2本から子嚢盤を切り出して(d)、カバーグラスの上に30分ほど放置して、落下胞子をフロキシンで染めて見た(e, f)。 いつ見てもアミガサタケ属の胞子は愛嬌があって楽しい。それは、胞子の長径の両端に小さな粟粒状の気泡が多数群がっているからのようだ。他の子嚢菌でこういった特徴を持ったものはないように思う。これをKOHでマウントしてからフロキシンを注ぐと、胞子の内容物がきれいな赤紫色に染まる。しかし、だからといって新しい情報を得られるわけではない。 |
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先に再投稿した日菌報への原稿が、一昨日午後戻ってきた。今度は [再審査不要] で訂正指示は少なかったので、すぐに最終稿の形に整えて、正副4通をWordファイルで出力し簡易書留で編集委員会に送った。最終原稿ファイルを添付したメールを編集委員会あてに出した。どうやら45巻1号(6月刊)に間に合いそうだ。査読担当者に感謝である。 菌類関係ばかりではなく、Wordで投稿することを推奨する学会が増えてきた。また、講演など、何らかの発表をするにあたっても、PowerPointを使うことがしばしば義務化される。いまやOHPやらスライド映写機は、前世紀の遺物のようである。Windows上のワープロソフトも、一太郎がすっかり凋落して、Wordがデファクトスタンダードになってしまった。 今年に入ってからは「Windowsは嫌いだから使いません」とか、「ウイルスの標的になりやすいOSは使いません」とも言っていられなくなってきた。WordやらPowerPointによるファイルを作成しなくてはならない。Linux一本だったノートパソコンのOSをWindowsに入れ替えての作業だった。といっても、ハードディスクを交換すればいつでもLinuxに交換できるようにはしてある。 |
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タマキクラゲ(a, b)、ヒメキクラゲなどキクラゲ類が最盛期である。この仲間を顕微鏡で見るときにはちょっとしたコツがある。半乾燥状態にすると、楽に薄切り切片を作ることができる。カラカラに乾燥させてしまうと非常に堅くなって、薄切りは難しくなってしまう。昨年4月8日の雑記で取り上げたものは、半乾燥から切り出したものだ。子実層や担子器がきれいに見える。 今朝は、あえて生のグチャグチャのゼラチン質から切り出した(f)。ルーペの下で慎重に切り出したのだが、かなり厚ぼったい。ゼラチン質が薄切りの邪魔をする。子実層面(g)を中心に少しづつ倍率を上げ(h)、担子器(i, j)を見たが、やはり明瞭に捉えるのは難しかった。 キクラゲ類の切片を切り出すとわかるのだが、面白いことに胞子はほとんど見つからない。しかし、カバーグラスなどに1時間ほど放置しておくと、多数の胞子が落ちる(c)。これは高倍率にすると、透明なのでとても見にくい(d)。フロキシンで染めると見やすくなる(e)。 |
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見沼地区に行ってみた。草地の一画で、傘と柄を持ったきのこにやっと出会えた(a, b)。傘径25mmでとても華奢なきのこである。胞子紋は暗紫褐色〜黒色、胞子は水でマウントしたときは明褐色(c)だが、濃硫酸では淡スレート色に変わった(d)。サイズも一回り大きくなり、あちこちで破裂していた。担子器(e)や側シスチジア(f)は豊富に見られる。ヒダ実質は透明で平行に菌糸が走る。フロキシンで染めた切片もつくりクランプを探したが、見つからなかった。 保育社:日本新菌類図鑑のヒトヨタケ科検索表(p162)をみると、まず液化性の有無で分かれ、次に胞子の濃硫酸反応がでてくる。ここで淡スレート色に変わればナヨタケ属(Psathyrella)に落ちる。スイスの図鑑でも同じで、濃硫酸でライラック色に退色すると記されている(Vol.3 p39)。両者ともにSingerの分類(第4版:p515, p523)に準拠しているから、当然といえば当然なのだが、胞子の濃硫酸反応はPsathyrellaの大きな特徴とされる。 つまり、まず濃硫酸ありき、である。メルツァーやKOHのように気楽に持ち歩くことはできない。そんなこともあり、ふだんは外見からPsathyrellaらしいと思うと、撮影・採取は遠慮してしまうことが多い。よほどのことでもなければ「見て見ぬ振り」である。 このところハラタケ目のきのこといえば、ヒラタケ、エノキタケ、シイタケばかりであった。そこで懐かしさが先に立ってPsathyrellaらしいなと思いながらも、ついうかつに持ち帰ってしまったものだ。これはイタチタケ亜属コナヨタケ節のきのこのようだ。 |
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先週はもっぱら系統樹がらみの話題ばかりとなってしまった。さらに、マルチプルアラインメントだとかシークエンスといった用語も登場した。これらは生物学の初歩的な用語集でも解説されている。しかし、ITS領域、18SrRNAとなるとほとんどの用語辞典に載っていない。 こられの用語もまた「いまさら聞けない生物学」基礎語彙のひとつなのだろう。みな分かったような顔をして教えてくれない。しかし、この用語の理解が曖昧だと、専門業者にDNA抽出・シークエンスの依頼もできないほど基本的で重要なのだ。こっそり(?)復習をしておこう。 真核生物の核rRNAは、18SrRNA-5.8SrRNA-28SrRNAがITS(内部介在配列)を介して繋がった一つの転写単位として合成された後、酵素によってITSが切り捨てられて、それぞれが成熟RNA分子になるとされる。このITS領域はとても短い配列だが、機能の少ない部分ゆえ生物の近縁関係を示すと考えられており、系統進化研究にはとてもよく使われている。 いくつかの論文から図版を借りてきたが(a〜e)、それぞれの位置と分析するときの狙いがわかりやすく図式化されている。これらを見ると種の違いを判定するならITSを、科や属の分析するなら28Sや18Sを使うのがよいことなどが分かる(b, d, e)。 ちなみに18Sとか28Sなどの "S" というのは沈降係数 Sedimentation coefficientのことで、単位はS(svedberg)。遠心分離機を用い、沈降速度に基づいて計算される。一般にこの数値が大きいと分子量も大きい。真核細胞のリボソームは分子量約420万(沈降係数80S)で、78種類のタンパク質と4種類のrRNA(18S, 28S, 5.8S, 5S)からなる複合体粒子だという。 引用図版:(a) Plant Molecular Biology Reporter. 15:326-334.1997、(b) Bio WAVE vol.24 User's Report "DNA塩基配列解析による真菌の同定"、(c, d) TIMM "宇宙ステーション環境下における病原真菌に関する研究", 2001(帝京大学)、(e) NCIMB Japan "微生物同定概要・菌株分譲料金表:試験・分析 分類階級表", 平成15年10月v3.0 |
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今朝は、先日茨城県笠間市で採取した小さなmycenaを覗いてみた。最初に作成した切片(a)はひどく厚いため細部がまるでわからない。久しくヒダ切片を切り出していなかったことや、極度の視力低下などが原因しているのだろう。メルツァーを注ぐと見るに耐えない(b)。あらためてルーペの下で再び切り出した。そこから5〜6枚目にようやく見るに耐える厚さに切り出すことができた。切片は直接メルツァー液でマウントした(c)。傘表皮の切り出しも同じ有様であった。 傘径4〜8mmで、傘には条線があり、中央が窪んでいる。傘表皮の組織は平行菌糸。柄の上部には縦に条線がみられるが、それより下は平滑で、基部は白い菌糸に被われる。ヒダは垂生、縁シスチジアは棍棒形、ヒダ実質部は5%KOHでも色の変化はない。メルツァー液を加えると子実層先端部が鮮やかな青色に変わる。胞子紋は白色、胞子はアミロイドで表面は平滑。子実層は平行型でクランプがある。 保育社の日本新菌類図鑑ではクヌギタケ節になるが、それ以上は不明だ。Mycena d'Europaの検索表をたどってみたが時間切れで、どの節に落ちるのかまでは分からなかった。切片切り出しに手間取ってよけいな時間をとられてしまったことが今朝の敗因だ。 |
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土曜日(3月20)日に、茨城県中部の海辺を歩いてきた。大洋村から鹿島市にかけては砂浜とスダジイの林だけを見てきた。カシタケにはただの一つもお目にかかれなかった。このあたりはよい砂浜が続いているのだが、あまり芳しい結果は得られなかった。 笠間市では谷スジにシイタケ(a)、ヒラタケ(b)、ニガクリタケ(c)、mycena の仲間(d)などが見られた。例年ドングリからピンクの盤菌がみられるのだが、今年は数も少なく全体に小さかった(e)。薄暗い中に巨大なコフキサルノコシカケ(f)が胞子をまき散らしていた。 高橋春樹氏が「八重山諸島のきのこ」というホームページを開設された。 Fungi Gallery では沖縄・八重山諸島の珍しいキノコがいろいろと紹介されている。見落とせないのが「高橋により記載されたハラタケ目菌類」だ。氏によって学術専門誌に発表された新種は多数にのぼる。それら43種について写真と図版を伴った詳細な記述に触れることができる。 佐野書店から3月の文献案内がでた。今月の目玉は、オーストラリアで発行されている「Fungi of Australia」(オーストラリアの菌類)既刊4冊と先に取扱った「The Genus Rhizopogon in Europe」(ヨーロッパのショウロ属)だ。 |
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今朝は3月14日に山口県で採取されたベニヤマタケ(a)を覗いて楽しんだ。秋吉台の山焼きの跡の台上で採取されたものだという。届いたのは3月17日夕方だったが、そのまま冷蔵庫に保管してあった。鮮度は全く落ちていなかった。 切り出したヒダをみると、実質部はやや不明瞭な並行型(b)で、側にも縁にもシスチジアは見られない(b, c)。この仲間の担子器はとても長い(d)。傘表皮にはクランプをもった菌糸が平行に走っている(e)。一晩かけて胞子紋を採取したが、わずかの胞子しか得られなかった。はじめ水でマウントした(f)。メルツァー液を加えると油球がみえなくなる(g)。フロキシンでは明瞭にみえる(h)。 保育社「原色日本新菌類図鑑1」における科の取扱にはかなりのバラツキがあるが、ヌメリガサ科については、とても詳細な記述がみられる。属の検索表から始まって、節の検索表、亜節の検索表まで詳細を極める。ベニヤマタケ亜節の検索表は胞子サイズとヒダ形状(i)がキーになっている。これらによれば、写真のきのこは典型的なベニヤマタケということになる。 昨日は鹿島灘北部の海辺を観察してきた。今日は菌懇会ゼミ、いわき市の奈良俊彦氏による「海辺のきのこ」である。 | ||||||||||
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