Top | since 2001/04/24 | back |
|
||
きのこについて基礎的・基本的なことを体系的に学ぼうとしたとき、国内には適切な書籍が全くないことに気づく。保育社「原色日本新菌類図鑑」にも基礎概念や用語の解説はほとんど無く、本文中で突然使用される。そしてそれらについては索引もない。 ハラタケ目について日本語で書かれたものといえば、吹春俊光氏による講座テキストくらいしかない。テキスト中の基礎概念や図版などは、菌類の教科書として有名な D.L.Largent らの "How to Identify Mushrooms to Genus" のシリーズがベースとなっている。 一方、腹菌類(Gasteromycetes)についても、日本語で読めるものは故吉見昭一氏の講座テキストくらいしかない。テキストは多数の分冊に分かれ、基礎概念を説明したものというより、専門分野ごとの説明が主となっている。ただ、テキスト中に引用された図には、この分野の教科書として著名な O.K.Miller らの "Gasteromycetes: Morphological & Developmental Features" が多数とりあげられている。薄い書籍であるが、腹菌類についての基礎的な概念・用語が非常にわかりやすく記述されている。 久しぶりにきのこ抜きの遠出をすることにした。今夜は雪の温泉泊まりとなるので、明日(1/31)の雑記は休みとした。好雪菌でもあると面白いのだが...。 |
||
|
||||||
今朝も手元に保管してある腹菌類をコットンブルーで染めて観察した。試料には昨年8月8日に茨城県東海村で採取したヒメカタショウロをつかった(a)。暑い季節に砂地に密生して出ていたものだ(雑記2003.8.9)。この種のきのこは数年経過しても姿形がほとんど変わらない。 水やらエタノールでマウントすると透明から茶褐色の菌糸が多数みられる(b)。コットンブルーを加えて熱すると全体がかなり青くなる。しかしよく見ると染まっているのは、菌糸の内容物だけであって菌糸壁は全くそまっていない。菌糸全体が全く染まらないものもある(c, d)。ニセショウロだとクランプがあるのだが、このキノコではどこにもみられない。さらに、あちこちに分枝がみられる(e)。この菌糸は偽弾糸(paracapillitium)ということになる。 |
||||||
|
||||||
このところ色々な腹菌類のグレバの内部にある菌糸組織を覗いているが、今朝は昨年1月18日に千葉県一宮町で採取したヒメツチグリ属(Geastrum)(a)をみた。採取から一年以上経過しているが、この仲間は採取時と姿形はほとんど変わっていない。 頂部の穴から柄付き針を差し入れてグレバ内部の繊維状のものを取り出した。水でマウントしたときの色は茶褐色だ。直ちにコットンブルーを注いでライターであぶった。全体が鮮やかに青色に変わった(b)。繊維組織の種類は弾糸(capillitium)である。大部分はやや厚膜で分枝はどこにも見られない(b, c)。 しかしよく見ていくとややタイプの違った太めで内容物のある組織(d)もみられ、これらは所々に分枝がある。多量に見られるcapillitiumの方にもごくわずかではあるが分枝しているものも見つかった(e)。paracapillitiumは全く見られない。したがってクランプを持つ菌糸はないだろう。これはGeastrumの特徴でもあるようだ(cf: 雑記2003.1.20)。 |
||||||
|
|||||||
クチベニタケの仲間(Calostoma)はCapillitiumが無く、幼菌においてParacapillitiumが見られるのが特徴とされる。つまり、幼菌のグレバ内部の毛状の菌糸壁はコットンブルーでは染まらないことになる。そこで昨年10月4日に鬼怒川で採取した若い菌を観察してみた。採取から3ヶ月強経過した乾燥標本(a)は、頭部の皮膜(mesoperidium)がとても硬くて、蟹の甲羅のようである。割ってみると内皮は縮んでとても小さくなり、頭部はほとんど空洞と化している(b)。 最初にKOHでマウントすると透明な厚壁の組織が見える(c)。ちょっと見たところcapillitiumのようである。次にKOHを洗い流してコットンブルーを注ぎ、1時間ほど放置してから再び観察した(d)。菌糸壁は全く染まっていない。さらにライターで煮える直前まで熱してみた。低倍率で見ると、胞子がすっかり青くなり、菌糸組織の壁も青く染まったかのように見える(e)。しかし倍率を上げてみると、染まっていたのは内腔(lumen)の部分だけであり、菌糸壁は全く染まっていない。内部にコットンブルーが浸透したために、クランプの存在も非常にわかりやすくなった。 |
|||||||
|
|||||
2日前の24日から佐野書店の文献案内が更新されている。今月新紹介の4点はいずれも上級者向けだが、昨年12月に紹介の Arnolds, E. "Rare and interesting species of Psathyella" (希産または興味深いナヨタケ属) が好評で、追加注文中であるという。 先日パソコンの修復に無用な時間を費やした(雑記2004.1.22)が、それに対して「どうしてOSまるごとバックアップをとっていなかったのか」といったメールを何件もいただいた。 従来から非常時に備えてシステムのバックアップは定期的に行ってきた。常にDrive Image(a)とNorton Ghost(b)の両者を併用して定期的にDVD-R等にバックアップをとっていた。しかしここ半年ほど前からいずれも途中でエラーとなって中断してしまう。Drive ImageをV2i Protectorに変更しても症状は変わらない。開発元にも照会したが明確な回答は得られなかった。そして、手元には陳腐化して使い物にならないバックアップDVD-Rしかなかった。 夜、北欧産のシャグマアミガサタケの缶詰(c)をあけて和風ロールキャベツ(d)にして食べた。今の時期にシャグマを食べるのは久しぶりだった。 |
|||||
|
|||||||||||||||||||
腹菌類(Gasteromycetes)における弾糸と偽弾糸の定義を簡単に整理してみると、おおむね次の様になるのだろう。重要なのはコットンブルーで染めた時の反応である。 ちなみに、capillitiumという語のcapillusは集合的に [毛] (hair)、-itiumは [帯びた、持った] (with, having) といった意味を添える語尾である。
今月21日、24日と観察したケシボウズの2種類の菌糸組織は、ちょっとみたところ薄膜の偽弾糸と厚壁の弾糸のようにみえるが、薄膜の菌糸はいずれも偽弾糸(paracapillitium)ではない。 コットンブルーはなかなか染まりにくいので、蒸発しないようにコップなどをかぶせて一昼夜放置するとか、ライターなどで煮えないように注意して熱を加える必要がある。 |
|||||||||||||||||||
|
|||||||
今朝は、先日(雑記2004.1.21)とは別のケシボウズでコットンプルー染色性をみた。素材は2002年12月31日に愛知県の伊良湖岬で I 氏によって採取されたものである。昨年12月4日に伊良湖岬で採取したものの中にほぼ同一種(Tulostoma adhaerens)が見つかった。ここではコットンブルー染色性の素材として扱っているだけなので、種の詳細についてはとりあげない。 対物40倍でみても、成菌にも厚壁タイプと薄膜タイプの2種類の菌糸があることがわかる(a)。薄膜の菌糸は、先日ナガエノホコリタケ幼菌の中にみたものとはタイプが異なるようである。最初にコットンブルーを注いで1時間ほど放置した(b)。厚壁タイプの菌糸はかなり青くなっているが、薄膜タイプは殆ど染まっていない。染色反応を促進させるためにターボライターでスライドグラスごと熱した。するとみごとに鮮やかな青色になった(c)。 同じものを対物100倍の油浸レンズでみたのが(d)〜(f)である。両タイプの菌糸ともにコットンブルーで青くなっているが、薄膜の菌糸は表面の粒点こそ明瞭に染まるが、菌糸そのものの染色性はかなり弱い。 |
|||||||
|
|||||||
昨日川口市のツバキとサザンカ樹下に出ていたツバキキンカクチャワンタケを撮影した(a〜c)。今年は例年よりも発生が早く、1月10日ころから川口市やさいたま市で何度か見かけていた。(b)の個体はサザンカ樹下に出たものだ。お茶の樹下にはまだ出ていなかった。まだ発生数は少ないが陽当たりのよい暖かいところにはかなり出ている。 久しぶりにピスを使って子嚢盤を切り出した(d)。メルツァー液を注ぐと全体の色がかなり変わった(e)。子嚢の周辺を拡大してみると、胞子を放出する穴の部分がきれいに青く染まっている(f)。採取した個体はほとんどが未熟だったので胞子サイズなどは計測しなかった。 |
|||||||
|
||
昨日の朝さいたま市見沼区の公園と秋ヶ瀬公園に行ってみた。大きな干からびたヒラタケ、硬くコチコチになったキクラゲとウッドチップからわずかに出ていた数種類のヒトヨタケ科のきのこが軟質菌のすべてだった。冬場はきのこの基礎的な勉強をせよということだろうか。 帰宅してパソコンの電源をいれてみたところ、Windowsがウイルスにやられてまともに使えなくなっていた。このところウイルス付きのメールが毎日ほぼ20〜30件来てうんざりしていた。これらの中に犯人がいたのか、直接OSのバグから忍び込んだものかは分からない。いずれにせよ、アンチウイルスソフトでは駆除できないタイプだった。 結局Windows本体の再インストールから始めて、さらにOSのUpDateをしてやっと復旧したが、この作業のために何時間もが無駄となり、午後の予定はキャンセルとなった。一時はこの雑記も数日間休みかと思われた。最近はWindowsのUpDateのお知らせは無視していたが、どうもそれが裏目にでたようだ。OSのUpDateはやはりこまめにやらないといけない。 |
||
|
|||||||
ナガエノホコリタケの幼菌を顕微鏡下で覗いてみると、胞子の他に2種類の菌糸が含まれている(a)。上部に厚壁を持った菌糸、中央部にゴチャゴチャした薄膜の菌糸が見えるが、全体にやや透明でとてもわかりづらい。これは対物40倍で見たものだ。 最初にコットンブルーで染めてみた(b)。厚壁の菌糸も、薄膜の菌糸も最初殆ど染まらないが、長時間放置するといずれの菌糸もかなり青くなった。次にフロキシンで染めると菌糸の姿がさらに明瞭になった(c)。厚壁の方は内腔(lumen)にも液が浸透して色がついているが、菌糸そのものは全く染まらない。それに対して薄膜の菌糸はすっかり着色されている。 次に対物レンズを油浸100倍にしてみた。コットンブルーでは厚壁の菌糸はわずかに青く染まるだけだが(d)、薄膜の菌糸はすっかり青くなっている(d, e)。コットンブルーは染色に時間がかかる。さらに長時間放置するか、ライターなどを用いて熱したら両者の菌糸はもっと青くなるだろう。フロキシンでは細胞の内容物が直ちに染まる(f)。 今朝は久しぶりに乾燥標本から観察した。使ったのは昨年千葉県で採取したサンプルだ。 |
|||||||
|