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日( )
2009年6月10日(水)
 
海浜植生の消失を実感
 
 久しぶりに千葉の海に行ってみた。5〜6年ほど継続的に定点観測している浜だ。つい2年前にはコウボウムギやハマニンニク、ハマヒルガオなどで植生豊かだった部分がさらに消失してしまった(a)。写真の赤色部分がそれで、一昨年までは、この部分に数種類のケシボウズタケ属やヒメツチグリ属などがみられた。赤色部分の幅は約10mほど。
 年々狭くなる浜では多くの海浜植生が失われ、ケシボウズの発生も次第に少なくなっていることを感じる。昨日は、Tulostoma brumale (ケシボウズタケ)、T. kotlabae など、小さなタイプのものが数十個みられただけだった(b, c)。アバタ、ナガエなどは全くみられなかった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 房総半島の山間部では、例年に比してきのこの発生は悪く、出会ったものは十数種に過ぎなかった。笹混じりの広葉樹林では、広義のホウキタケ仲間(d, e)、ウスタケ仲間(f)がよく目立った。鮮やかな赤色を帯びたホウキタケはずっしりと重かった。これらは、今日の午前中にでも鳥取大学の研究者あて発送しなくてはならない。

2009年6月9日(火)
 
イタチタケの仲間
 
 相変わらずイタチタケの仲間がやたらに目に付く。両手を広げたほどの幅の一角に数十本が群生していたので、すべて同一種だろうと思った。しゃがみ込んでよくみると、肉眼的形態に3タイプがある(a〜c)。幼菌はみなほぼ同じ形をしている(左端写真)。
 胞子紋を取った後で、カサ表皮とシスチジアを調べてみようと思っていた。ところが、いずれもビショビショになりペシャンコになって、たくさんの虫が這い回っていた。こうなると、もはやヒダやらカサ表皮は調べようがないので諦めて処分した。
 
 

(幼菌)
野生の姿 (a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
胞子:水道水 (a')
(a')
(b')
(b')
(c')
(c')
胞子:濃硫酸 (a
(a")
(b
(b")
(c
(c")
 手がかりは胞子だけとなってしまったが、水道水と濃硫酸で封入したものを見ても、やはり3タイプは別の種のような気がする。

2009年6月8日(月)
 
久しぶりのゴムタケ
 
 公園のコナラ樹皮に黒いゴミのようなものが多数ついていた。近寄ってみるとゴムタケだった(a, b)。触れるとブヨブヨで、カッターで切ってみると、内部は粘りの強いゼラチン質が大部分を占めている。胞子には縦にスリットが入っているのだが、合焦位置を変えてみないとわかりにくい。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 生状態からの子実層切り出しは結構やりにくい(g〜i)。子嚢先端の小さな孔の壁は、メルツァー液でしっかりと青変する。未熟な子嚢でも、胞子を放出してしまったカラっぽの子嚢でも、同じように青変する(j〜l)。

2009年6月6日()
 
黄色いきのこの花盛り
 
 近場の公園の腐木やウッドチップでは、イタチタケばかりではなく、このところ黄色のきのこがやけに目立つ。特に多いのがダイダイガサ(a〜c)とキオキナタケ(d〜f)だ。えてして、こういったありふれたきのこほど顕微鏡で覗いてみることはないのだろう(ダイダイガサ:雑記2008.6.17)。
 今朝はキオキナタケを検鏡した(g〜l)。ヒトヨタケ仲間ほどではないが、成菌からヒダを切り出すのは非常に難しい。よしんばうまく切り出せても(h)、カバーグラスをかぶせたとたんに潰れてしまうケースが多い。ヒダ実質は類並列型(i)。縁シスチジアは嚢状とフラスコ状とが混在している(j)。担子器は面白い形をしている(k)。カサ表皮はゼラチン質の中にある(l)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 今日と明日は筑波で行われる菌学教育研究会の「菌類の多様性と分類」講座に参加。今日は国立科学博物館の保坂健太郎博士による「腹菌類の分類」が行われる。先週も筑波泊まりだったが、今晩もまた筑波で宿泊だ。高速を使わないので、am6:00過ぎには出発だ。

2009年6月5日(金)
 
小さなきのこは難しい
 
 今日はこれから日帰りで筑波行き。利根川を渡る橋が渋滞するので、早朝出発せねばならない。出発前に昨日公園のウッドチップに出ていたヒトヨタケ属 (Coprinopsis) あるいはヒメヒガサヒトヨタケ属 (Parasola) の小さな白いきのこを検鏡した(a, b)。

 カサがいずれも釣鐘型なので、幼菌かもしれない。カサ幅3〜6mmほどしかない。あまりにも繊細できれいなので、うかつにも持ち帰ってしまった。胞子紋は全く落ちなかった。
 

(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 ちょっと手で触れると簡単に崩れてしまう。持ち帰ったことをつくづく後悔した。直ちに捨ててしまいたいところだが、とりあえずカサ表皮とヒダ切片くらいは見てから処分することにした。難儀して傘とヒダを一緒に切り出した切片はかなり分厚い(e)。
 ルーペでみた段階で、カサ表皮や柄には長いシスチジアがあることがわかっていた(d)。フロキシンで染めても側シスチジアらしきものはみえない(f)。ヒダ先端をみたが縁シスチジアの有無はよくわからない(g, h)。カサ表皮は嚢状の細胞が柵状に並んでいる(i)。その間から長い紐状のカサシスチジアが伸びていた(j)。ヒトヨタケ仲間の小さなきのこの検鏡は難しい。

2009年6月4日(木)
 
ありゃりゃ〜??
 
 狭山湖畔の斜面で、腐木からヒイロベニヒダタケ、ベニヒダタケなどウラベニガサ属菌が多数出ていた。そこに1本だけ、黒褐色のウラベニガサ属菌があった(a)。カサの中央部は不規則に隆起した弱い皺があり、カサ周辺には条線がある。ヒダの縁がカサ表面と同色に色取られている。柄の表面は縦条が走り下部には糸くず状の菌糸をつけている(b〜e)。
 遠目にはクロフチシカタケかと思ったが、ルーペで見るとカサ表皮の様子が違う。カサヒダタケのようにも見えるが、カサ表皮に網目状隆起はなく、ヒダに暗い縁があって、柄に粉状物をつけない。何だろうか? と思ってとりあえず持ち帰った。10分ほどで多数の胞子紋を落とした。胞子は典型的なウラベニガサ属のものだ(f)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 ヒダを一枚スライドグラスに寝かせて(g)縁を見ると、茶褐色の縁シスチジアが無数にあった(h)。そこであらためてヒダの横断面を切ってみた(i)。縁シスチジア(j)、側シスチジア(k)が明瞭に捕らえられた。ヒダのカサ縁近くの側シスチジアには茶褐色のものもある(i)。フロキシンで染めると、ヒダ実質の逆散開型がさらに明瞭になった(l)。
 次いでカサ表皮を切り出してみると(m)、ヒダの縁シスチジアとよく似た形の細胞が上表皮を形作っている(n)。さらに、ヒダの一部をフロキシンで染めて3%KOHで封入してから押しつぶしてみた。縁シスチジア(o)、側シスチジア(p, q)、担子器(r)を眺めた。なお、組織にはクランプは見あたらなかった。

 久しぶりに保育社図鑑のウラベニガサ属の項を繙いてみた。三つの節と不明種が列挙されている。観察結果は、カサ表皮は子実層状、シスチジアは薄膜だから、ヒメベニヒダタケ節となる。この仲間には、ヒイロベニヒダタケ(雑記2009.5.16同2008.6.4同2006.6.22)、カサヒダタケ、ヒメベニヒダタケ、コシワベニヒダタケ、ホテイベニヒダタケの名が並んでいる。このうち、後から二つのきのこはまだ見たことがない。
 手元に Pluteus (ウラベニガサ属) のモノグラフなどはない。とりあえず、スイスの菌類図鑑やらヨーロッパのきのこ図鑑など、7〜8点にあたってみたが該当するきのこは見あたらなかった。肉眼的形態は似ていても顕微鏡的形態がまるで違っていたり、その逆だったりする。


2009年6月3日(水)
 
イタチタケばかり
 
 雨が降り多くのきのこが出てき始める兆候が見え始めたので、生教材採取を主目的として埼玉県南部の保護林を歩いてみた。あちこちで大きな群落をみたが、いずれもみなイタチタケばかりだった(a〜d)。幼菌から老菌まで豊富に見られた。この仲間のきのこは非常に脆く短時間の内に崩れてしまうので、初心者の検鏡には不適としかいえない。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 イタチタケ以外のきのこは意外とすくなく、テングタケ類、ツエタケ類、小さな脆いきのこ、腹菌類などが少数見られたが、しっかりした作りの大形菌はほとんどみられなかった。

2009年6月2日(火)
 
アオキオチバタケ
 
 見かけによらず面白いきのこがたくさんある。アオキオチバタケもその一つだ。5〜7月頃にアオキ Aucuba japonica 樹下をみれば、落ち葉からまず確実に発生している。学名の Marasmius aucubae は、灌木のアオキ属に由来している。針金のように細長くて黒っぽい柄の先に、疎らにヒダをつけた小さな褐色のカサをつける(a)。他に目に付く大形のきのこが出ていれば、そちらに気を取られて振り返られることのないちっぽけなきのこだ。ヒダの数は8〜12枚しかない(b)。
 実体鏡の下でカサとヒダをまとめて切り出した(c〜e)。ヒダの先端をみると、妙な姿のシスチジアがみえる(f)。フロキシンで染めて合焦位置を変えると、どうやら2タイプの縁シスチジアがあるようだ(g)。あらためて、ヒダを一枚スライドグラスに寝かせて薄切りにしてみた(h)。縁を軽く押しつぶすと、一画面に明瞭に2タイプのシスチジアを捕らえることができた(i)。
 無理して小さなきのこのヒダを切り出す必要などさらさらない。ヒダを一枚寝かせて縁をみれば、シスチジアの有無や形はすぐにわかる。ヒダ1枚を取り外してフロキシンで染めた(j)。縁をみると、2タイプの縁シスチジアがあることがわかる(k, l)。水を3%KOHに置き換えて軽く押しつぶした。縁シスチジアの全貌がよく分かる(m)。なぜか胞子紋が落ちなかった。組織をバラしている途中で、ふと胞子らしき塊を見つけた(n)。8〜10μmほどの長さがある。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
 カサの上表皮が面白い姿をみせてくれる。熱気球の球体部分に無数のイボをつけたような形の細胞が柵状に並んでいる(o)。KOHで組織をばらすと、そのひとつひとつが明瞭に捕らえられる(p)。この細胞は縁シスチジアのひとつのタイプとほぼ同様の形をしている。
 ホウライタケ属やクヌギタケ属の小さなきのこには、カサ表皮に面白い姿をした構造をもっている種があって楽しい。キシメジ科のきのこは、胞子だけみてもすぐに飽きるが、カサ表皮やシスチジアは変化に富んでいるものが多数あって興味深い。

2009年6月1日(月)
 
きのこが出始めた
 
 土日の二日間筑波で過ごしてきた。茨城県ではまだカンゾウタケが出ていた。例年ならばとっくにおわっているきのこだ。10数cmほどの子実体を薄切りにすると、霜降り肉のような独特の模様がでてきた。しかし、食べてみると、まだ未成熟らしく酸味も味もほとんど感じられなかった。
 筑波大学周辺の緑地ではテングタケ属、ベニタケ属などの菌根菌を始め、ホウライタケ属、コガサタケ属、フミヅキタケ属、ナヨタケ属など多くの種類のきのこを見ることができた。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 先週まではずっと乾燥気味で、カサと柄をもったきのこをみることは無かったが、このところの雨でようやく多くのきのこが発生しはじめたのかもしれない。

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