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日( )
2009年8月10日(月)
 
難しい管孔部実質の確認
 
 きのこをていねいに観察しようとすれば、子実層托実質の確認が欠かせない。子実層托実質がどんな構造をしているのか、シスチジアでもあれば、それが子実層托に由来するのか托実質に由来するのかなどを明らかにする必要がある。
 ヒダを持ったきのこでは、比較的簡単にヒダ実質を切り出すことができる。しかし、イグチ類のように管孔をもったきのこでは、管孔部の実質を切り出すことになる。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
(l)
 今朝は、つい最近採取したばかりのオニイグチモドキ(上段:a〜f)と不明種(下段:g〜l)で、新鮮な生の状態から管孔部実質を切り出してみた(e, f; k, l)。同じ散開型とはいってもずいぶんと違うものだ。さらに、ヒダを持ったきのこの切り出しがいかに楽かを思い知らされる。

2009年8月9日()
 
昨日の富士山
 
 急に思い立って友人等5名で富士山を歩いてきた。am4:00頃埼玉県を出発、富士山一合目あたりに到着したのは、am5:40頃だった。一合目ではきのこの発生は悪く、二合目近くのシラビソ林には予想外に多くのイグチ類がでていた。ここでは、ツチダンゴを掘ったり、樹木の幹を這い上がるミズゴケをみたりして楽しんだ。タンポタケ類の掘り出しには難儀した。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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 三合目あたりまで登るととても涼しく快適だった。きのこの発生は非常によい。なかでも、イグチ類、テングタケ類が圧倒的に目立ち、アセタケ属、フウセンタケ属のきのこも多かった。
 ここでは、富士山を象徴するようなきのことして、毒茸とされるフジウスタケ(a)・ドクヤマドリ(b)・バライロウラベニイロガワリ(c)、優秀な食菌としてしられるハナビラタケ(d)・ショウゲンジ(e)、特徴的な味わいでしられるムラサキフウセンタケ(f)だけを取り上げた。写真は掲載しなかったが、実に久しぶりにキツネノサカズキにも出会うことができた。

2009年8月8日()
 
「奇妙なきのこ」の正体
 
 3週間ほど前にコナラの根元から菌塊状に出ていた「奇妙なきのこ」(雑記2009.7.15)が、すっかり成長していた(a〜f)。「奇妙なきのこ」として掲載した7月15日に、いわき市の吉田健二さんから、オオワライタケに間違いないと思うとの意見をいただいていた。
 結果的には吉田さんのご指摘通り、オオワライタケないしその近縁種に間違いなさそうだ。先の株も今回確認採取した株も、ともに(独)森林総研究の根田博士に送付した。先の若い塊状のきのこを送付したときに、Gymnopilus のようですとの見解をいただいている。
 
(a)
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(c)
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(e)
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(f)
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(g)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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 念のために胞子紋をとり、ヒダやカサ表皮などを検鏡してみた。まだ十分成熟していないこともあって、胞子紋として落ちた胞子は少なかった。それでも、胞子の形や表面模様、シスチジアの形、カサ表皮の様子はオオワライタケを示唆している。
 なお、写真(j)は、ヒダを一枚スライドグラスに寝かせて、フロキシンを加え3%KOHで封入して、ヒダの縁をみたものだ。さらにこれを押しつぶすと、縁シスチジアの形状がよくわかる(k)。写真(l)はカサ表皮。広義のオオワライタケとして取り扱っておくことにした。

2009年8月7日(金)
 
きのこがあふれてる
 
 長雨と連日の猛暑のためかやたらときのこの姿が多い。カビにおかされた個体も多いが、きれいな子実体が多数みられる。昨日、多摩湖畔の緑地をちょっと歩いただけでも、多数のきのこに出会った。ヒダに暗色の縁取りがあるテングタケ類(4, 5)、幼菌だが大型でしっかりしたヘビキノコモドキ(0, 1)、コタマゴテングタケらしいきのこ(2, 3)は印象的だった。
 
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 一日に記載できるきのこはせいぜい2つ。簡易記載シートなどを利用して観察項目を最少限に絞っても4〜6つ。冷蔵庫に保管可能な日数は、種類にもよるが3〜4日が限界だ。数多く採集すれば、直ちに乾燥標本にするか、大半を腐敗させて廃棄処分することになる。
 乾燥標本からは得にくい情報がある。生標本からしか得られない情報を記録したら直ちに乾燥器に放り込み、後日乾燥標本から不足のデータを記録する。以前は、そうやっていた時期もある。しかし、効率主体の記録工場のようでもあり最近はやっていない。

2009年8月6日(木)
 
安比高原フォーレ、参加申込み
 
 安比高原で10月10日(土)〜12日(月・祝)に行われる2009年度日本菌学会菌類観察会(日本菌学会・日本菌学会東北支部・菌類懇話会共催)の申込締切 [2009年8月21日(金)必着] が近づいた。自らの指名手配種を求めて、今秋東北地方に出かける予定にしていたので、日程を安比高原フォーラムに合わせることにして、正式に参加申込みをした。きのこよりも、日頃なかなか会えない各地の友人・知人らに会えるのが最大の楽しみだ。
 時期はやや遅いが、指名手配種に出会う確率は高い。それらのきのこについては、出先で生標本から検鏡写真を撮影する必要がある。このため、面倒で重いが、関連文献・大型の顕微鏡・顕微鏡撮影装置・プレパラート作成セット・パソコン・小型乾燥器などを車に積んでいく。
 高速道路の最寄りインターは松尾八幡平ICか安代ICだという。夜中に出発して、せっせと走るにしても、初日の受付に間に合うように着くのは結構しんどそうだ。安比高原フォーレの後は、東北に残って、青森県か岩手県で採集と検鏡撮影を続けることになるんだろうなぁ。

2009年8月5日(水)
 
久しぶりにテングノメシガイ
 
 虫草祭で参加者と一緒に山を歩いたときに、松混じりのコナラ林でテングノメシガイを採集した(a)。この仲間を採集したのは久しぶりだった。ここ何年間かは、出会っても採集することはあまりなかった。現地でルーペで見た限りは頭部表面に剛毛は見られない(b)。
 
(a)
(a)
(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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 フィルムケースに格納して持ち帰り、今朝まで冷蔵庫に保管してあった。蓋を開けると、ケースの内側は黒い胞子紋に被われていた。その一部を覗くと、七つの節がある(c, d)。改めて子実層の一部を切り出してみた(e, f)。剛毛はない。子嚢の全体像もよくわかる(g)。
 子実層の表面を削いで、スライドグラス状で押しつぶしてみた(h)。これを3%KOHで前処理し、水洗した後、メルツァー試薬を注いだ。子嚢先端がきれいな青色に染まる(i)。よく見ると細い通路がわかる(j)。KOHによる前処理をせずとも、アミロイド反応はよくわかる(k, l)。しかし、KOHで前処理し、水洗した方が、より鮮明に反応を捉えることができる。ナナフシテングノハナヤスリらしい。

2009年8月4日(火)
 
胞子・担子器に2型あり
 
 8月2日、福島県土湯峠周辺の湿地で、せっかく間近にクマが現れたのに、カメラの設定が間に合わず撮影できなかった。そこで、帰路再度現れて消えたクマを再三待った(雑記2009.8.3)。近くに潜んでいる雰囲気で、周囲にはクマの足跡、黒い毛、新鮮な糞が残っていた。

 不要な音を立てずに、耳をこらして静かに待つというのは、意外と退屈だ。手持ちぶさたなので、クマの足跡を目で追っていると、あちこちに赤色の Hygrocybe (アカヤマタケ属)のきのこが出ていた(a〜c)。カサにも柄にも粘性はなく、カサには微細な鱗片がある。
 

(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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 保育社図鑑の検索表によれば、ベニヤマタケ節、ザラツキキヤマタケ亜節のきのこらしい。アカヌマベニタケだろうと思った。現地でわかるのはそこまでだった。帰宅してカバーグラスに落とした胞子を見ると、大小2つの胞子が入り交じっている(a)。コンタミ(contamination:汚染)だろうと、軽く考えて再度胞子を確認した。しかし、どのきのこにも、大小2つの胞子が入り交じっている(f)。非アミロイド(e)。アカヌマベニタケではなさそうだ。
 子実層托実質は並列型(g)。子実層をよく見ると、担子器にも大小ある(h, i)。この時点で、ようやくネッタイベニヒガサ H. firma かもしれないと気づいた。あらためて、ヒダの一部を押しつぶして確認してみた。大きな担子器には大胞子が、小さな担子器には小胞子がつく(j, k)。カサ表皮は菌糸が平行に走っている(l)。ネッタイベニヒガサとしてよさそうだ。

 今年は、すでに何度か目の前でクマに出会っているのに、一度も撮影できていない。35mmマクロレンズを装着、ミラーアップ、セルフタイマー、マニュアルフォーカスに設定した状態の時に限ってクマさんは目の前に現れる。こちらが笑って対面しても、慌ててすぐに逃げてしまう。さぁ、撮影してくださいと、待っていてくれるクマさんはなかなかいない(雑記2004.8.9)。


2009年8月3日(月)
 
湿原とクマさん
 
 7月31日から8月2日まで、福島県奥土湯で行われた虫草祭に参加した。懐かしいメンバーや親しい友人等と楽しい時を過ごすことができた。参加者と一緒に山を歩いたが、それに加えて、周辺の湿原や湿地を巡って、ミズゴケ上に生えるきのこを観察して回った。
 湿原ではミズゴケタケがよくみられた(a〜c)。今朝になって胞子を確認した(d)。また、湿原の周辺の道脇には赤〜黄、緑色のアカヤマタケ属のきのこが多数見られた。標高1,700〜1,800mの針葉樹林帯では多くのイグチ類に出会った。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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 土湯峠近くの湿原で、草が倒されミズゴケが踏みつけられていた。ミズゴケから出るきのこ撮影していると、突然すぐ脇でバリバリと大きな音がした。数メートル離れた藪から突然クマが飛び出した。人に気づいてビックリしたのだろう。カメラを構えるまもなく、クマは対岸の藪を目指して走り去った。湿原の踏み跡の主はクマだった。
 1時間ほど後に帰路につき同じ道を戻った。先ほどクマのいた湿原にさしかかるあたりでは、クマを驚かさないように静かに歩いた。20メートルほど離れた位置にクマはいた。カメラを構えている間に姿を消した。付近で静かに10分ほど待ったが、再び現れる気配はなかった。
 あきらめて車に戻ることにした。15分ほど経ったころ、道脇の藪で黒い影が動いた。クマだった。人に気づくと、慌てて山を駆け上っていった。撮影のチャンスはなかった。

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