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日( )
2009年11月30日(月)
 
えっ、こんなシスチジアが・・・
 
 先日ニセマツカサシメジで遊んだので、マツカサキノコモドキも覗いてみることにした。何とも滑稽な姿のシスチジアがみられるはずだ。胞子を水(d)、メルツァー(e)、フロキシン+水(f)、コットンブルー(g)で封入した。非アミロイドだ。ニセマツカサシメジと同じくヒダをまとめて切り出すと、瘤のような形のシスチジアが散在している(h, i)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 よく見慣れた光景なので気にせず、ヒダ実質(j)やらカサ表皮(k, l)を一通りみた。カサ表皮に柵状に並ぶ細胞がまるで電球のバルブのようだ(l)。棒状のカサシスチジアがある(m)。フロキシンで染めて押しつぶすつもりで、ヒダの断片をスライドグラスにおいた。
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 押しつぶして担子器(n)やシスチジアをみた。頭部に結晶状の帽子をかぶり丸みを帯びた厚膜シスチジアが散在している(o)。棍棒状のシスチジアもある(p)。さらに細長い棒状のシスチジアもある。何か様子が違う。そこで、あらためてヒダを一枚スライドグラスに寝かせた(q)。ありゃりゃ・・・、ヒダの縁に見慣れない棒状のシスチジアがある(q, r)。ヒダの縁でも、カサの外周側ではなく、柄側に多くみられる。何枚かのヒダを確認してみたが、結果は同じだった。

 わが国でまつかさ(松毬)から発生するマツカサキノコ属 Strobilurus としては、マツカサキノコモドキ S. stephanocystis の他、マツカサシメジ S. esculentus が知られている。マツカサキノコモドキはシスチジアが類球形だ。一方、マツカサシメジのシスチジアは細長い紡錘形だ。この両者は胞子サイズが若干違うが、縁シスチジア以外は実によく似ていて、外見的からはほとんど区別できない。今日観察したきのこは、これらの中間的形態を示している。さらにかさシスチジアとよく似た姿の縁シスチジアをもつ。これはマツカサキノコモドキではないのかもしれない。


2009年11月29日()
 
子嚢菌:イソジン有効
 
 スナヤマチャワンタケが次々に発生している。今の時期は、関東地方の浜辺では、若い菌から緑藻を帯びた古い菌まで見ることができる。組織の薄切りは微細な砂粒との格闘となり、カミソリの刃がすぐにこぼれてしまう。作業前に筆などを使って可能な限り砂粒を落としておく。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 メルツァー液で子嚢先端のアミロイド反応を確認(f, g, h)したあとで、メルツァー液の代わりにうがい薬のイソジンを使った(i, j)。子嚢菌の場合はおおむねメルツァー試薬の代用品として利用できる(雑記2008.5.14同2003.12.19同2002.12.21)。
 一方、先日のコザラミノシメジでは代用品として使えなかった(同2009.11.22)。さらに一番肝心のベニタケ属、チチタケ属では、残念ながらイソジンは役に立たない(同2004.8.4)。

2009年11月28日()
 
ニセマツカサシメジ:胞子アミロイド
 
 房総や鹿島の海浜防風林では、松ぼっくりからニセマツカサシメジとマツカサキノコモドキが多数発生していた。関東地方では例年11〜12月頃には、この両者が同じように多数みられ、1〜2月になると、ニセマツカサシメジはすっかり姿を消して、マツカサキノコモドキだけになってしまう。ごくまれに、一つの松ぼっくりに両者が混生していることがある。
 ひさしぶりにニセマツカサシメジ(a〜d)で遊んだ。最近は海辺で採取したきのこのプレパラートを作っていなかったので、砂粒とのバトルを忘れていた(雑記2005.11.13同2005.11.12)。胞子と同じか若干大きめのミクロレベルの微細な砂粒に悩まされた。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 胞子は小さくてほぼ透明だ。水で封入するとコントラストが低く目が疲れる(e)。メルツァー試薬で灰青色に変わり少しみやすくなる(f)。実体鏡下で砂粒を取り除いてから数枚のヒダを一緒に切り出した(g)。フロキシンで染めてもシスチジアの有無や形はよくわからない(h)。
 ヒダを一枚スライドグラスに寝かせてフロキシンで染めた。縁には薄膜紡錘形のシスチジアが多数ある(i)。そのまま押しつぶすと、視野の中には多数のシスチジアやクランプを持った担子器があった(j, k)。カサ表皮をうまく撮影するのは難しい。今朝もまた失敗だ(l)。

2009年11月27日(金)
 
久しぶりのケシボウズ
 
 久しぶりに千葉県房総半島の内房、外房、茨城県鹿島灘の海浜ぐるっと回ってきた(a)。内房の浜では、ナガエノホコリタケ Tulostoma fimbriatum var.campestre が新たに多数発生していた。発生から間がないらしく、柄は太く、頭部も充実して、しっかりした個体が多かった(b〜e)。一方では、小形で目立ちにくいケシボウズタケ T. brumale が散発的に発生していた。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 外房の浜ではケシボウズの発生は悪かった。ただ、内房でも外房でもスナヤマチャワンタケやスナジクズタケなどはよく出ていた。
 一般道で内房の海浜まで120kmほどの行程に、早朝にもかかわらずたっぷり3時間もかかってしまった。外房から鹿島灘までの道のりは遠く、最終的には350kmほどのドライブとなった。

2009年11月26日(木)
 
酵母型の発芽:シロキクラゲ
 
 雨の後のシロキクラゲはよく目だって美しい(a)。持ち帰った個体の一部をカバーグラスの上に載せて胞子紋をとった。白色の胞子紋から胞子を水(b)、メルツァー液(c)、コットンブルー(e)で染めて遊んだ。さらに数時間放置すると、面白い姿に変わった。多くの胞子が酵母型の発芽を始めていた(e)。フロキシンで染めて放置してみたが、さらに発芽を続けていた(f)。
 
(a)
(a)
(b)
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(c)
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(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 うかつにもグニャグニャ状態の生から子実層を切り出した。さすがに透明で何も見えないに近いので直ちにフロキシンに浸した(g, h)。これを3%KOHでバラすと担子器と胞子が顕著に見えるようになった(i)。なお、菌糸にはクランプがある(j)。[雑記2006.6.14同2006.6.21]

2009年11月25日(水)
 
iPod 不調
 
 このところ iPod (nano) が不調続きだ。今年の夏頃からイヤホンジャックの様子がおかしくなり始めて次第に症状が強くなってきた。イヤホンを差し込んでも、全く音が出なくなったり、急に左右どちらかの音が小さくなるようになった。さらに電源オフにできなくなることが頻出し、それもあってかバッテリーの持ちも急激に悪くなってきた。
 早朝深夜はもちろん、公共交通機関に乗っているときは、たいていいつも iPod に収録した音楽を聞いている。ここ何年間か、平均すると毎日2〜3時間は利用している。sony のウオークマンと比べて音質がいまひとつ不満だが、iTunes との相性は抜群だし、操作性もよい。

 プレパラートを作ったり顕微鏡を覗くときなどは、iPod を聴きながらの作業が当然になっている。このため、急に音が聞こえなくなったりすると、作業内容に即反映する。今朝も iPod 不調のため、きのこ観察は棚上げ。実体鏡の前に座ってカミソリの刃をあてようとすると、急に mink や Lyrico が途切れる。ついに作業は中止。あぁ・・・。


2009年11月24日(火)
 
ヌルデタケ:人の鼻型
 
 カサ径3〜5mmほどのヌルデタケがコナラの倒木に多数ついていた(a, b)。過去何度か新鮮と思われる個体を採取してみたが、いずれも胞子を落とさなかった。今回も胞子は全く落ちなかった。やむなくカンナ削りの要領で子実体を縦横に切ってみた(c〜e)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
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(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 カサ表面の粉毛はいつみても面白い。ある種の Mycena のカサ表皮や縁シスチジアを連想させられる。薄切り横断面を切り出してみた(g)。子実層托実質や子実層はわかるが、胞子は一つもない(h)。管孔部の縁にはカサ表皮の粉毛とよく似た組織が多数みられる(g, i, j)。よくみると、粉毛状の組織は管孔部表面に付着しているのではなく、子実層托実質の菌糸から伸びている。これまでカサ表皮の粉毛が付着しているものとばかり思っていた。
 フロキシンで染めて組織をバラすと、担子器が明瞭に捉えられた。またかなり硬いきのこにも関わらず、一菌糸型であり、どの部分の菌糸もみな隔壁を持っている。イグチの管孔と違って硬いので、楽に管孔部の薄切りができる(l)。ヌルデタケの検鏡は久しぶりだった(雑記2005.12.15)

2009年11月23日()
 
ムジナタケでもやってみた
 
 先日ササクレヒトヨタケのヒダをスライドグラスに寝かせて、担子小柄が4つある姿を眺めてみたが(雑記2009.11.19)、同じことを近場の緑地で最近採取したムジナタケ(a, b)でやってみた。まず、ヒダを消毒用アルコールで洗って余分な胞子をなるべく少なくした(c)。これをスライドグラスに寝かせてカバーグラスをおいたのち、担子器を眺めてみた(d〜f)。
 担子小柄の基部がササクレヒトヨタケのように濃色ではなく、よく見ないと小柄がわかりにくいのだが、4胞子性であることがよくわかる。発芽孔が先端にあることもわかる(d, f)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 いちおう型どおりに、胞子を眺めて、適当にヒダ横断面を切り出して、その縁を眺めてみた。担子器(i, j)やら側シスチジア(k)、クランプ(l)などをみておいた。

2009年11月22日()
 
コザラミノシメジ:イソジン不可
 
 公園から持ち帰ったコザラミノシメジ(a, b)の胞子で遊んだ。水(d)やフロキシン(f)、サフラニンなどで封入したものでは、胞子表面のざらざらがわかるだけだ。メルツァー液で封入するとザラザラ部分が青く染まって綺麗な模様が現れる(e)。
 メルツァー試薬の代用品として知られるイソジンで封入してみた。アミロイド反応の検出は全くできず、ただ全体が何となく淡褐色を帯びただけだった。7年ほど前の古いメルツァー試薬を使っても青く染まったのに、新しいうがい薬は残念ながら代用にならなかった。
 
(a)
(a)
(b)
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(c)
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(d)
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(e)
(e)
(f)
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(g)
(g)
(h)
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(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ヒダ実質は横断面で類並列形のようだ。縁シスチジアも側シスチジアも同じ形で、先端に結晶状の付着物がついている。ヒダ横断面にも(g)、ヒダを寝かせた縁にも(h, i)シスチジアはみられる。フロキシンで染めて3%KOHでバラしてみると、大方の結晶は溶けたりわかりにくくなった(j)。カサ上表皮には色素顆粒のようなものがついた細い菌糸がある(l)。クランプはみつからなかった。コザラミノシメジは久しぶりだった(雑記2004.11.5同2003.11.13)。

2009年11月21日()
 
シロフクロタケが累々と
 
 珈琲豆がなくなってきたので見沼まで買いに行った。ついでにすぐ近くの公園に寄ってみた。この公園はウッドチップを過剰な頻度で散布するので、最近はずっと足が遠のいていた。河川沿いは柵で帯状に仕切られ、ウッドチップの散布も数ヶ月ほど停止状態のようだった。
 歩き出してみて驚いた。いたるところにシロフクロタケが出ている。幼菌、成菌から老菌にいたるまで揃っている(a〜f)。幾つくらい出ているのか数えてみた。100をこえたあたりで嫌になって数えるのをやめた。場所によっては足の踏み場もないほどシロフクロタケが乱立している。これはもう異様としかいいようがない。ここまで多数発生している光景は今まで見たことがない。
 
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(c)
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(k)
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(l)
(l)
 ムラサキシメジも多数出ていたが、多くは紫色ではなく紫褐色をしていた(g, h)。ウスベニイタチタケに出会ったのも実に久しぶりだった(i, j)。ハタケキノコもあちこちに大群落を作っていた(k, l)。他には、ムジナタケ、ウシグソヒトヨタケ、ザラエノヒトヨタケ、キコガサタケ、アシナガタケ、ツブカラカサタケ、コザラミノシメジ、ツマミタケ、アラゲキクラゲなど多数のきのこがみられた。

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