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日( )
2010年6月18日(金)
 
今日から筑波
 
 昨日、今日の教材となる生きのこを採集に、川越の保護林と狭山湖畔の緑地を歩いてきた。予測通りきのこの姿は非常に少ない。それでも何とか10〜12種類ほど集まった(a〜j)。例年と比べると、テングタケ属、ベニタケ属、フミヅキタケ属のきのこの発生がひどく悪い。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 今朝は写真(b)のアセタケ属だけじっくり覗いてみた。これから出発して、つくば市で3日間行われる菌学教育研究会の講座に参加。連日埼玉県南部の自宅まで戻るのは辛いので、つくば市に宿泊することにした。帰宅するのは日曜日の夜となる。宿舎にネット環境はない。
 
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(k) 裏面、(l) 縦断面、(m) 傘表面、(n) ヒダ、(o) 胞子、(p) ヒダ断面、(q) ヒダ実質、(r) ヒダの縁、(s) 縁シスチジア、(t) 担子器、(u) カサ表皮:断面、(v) カサ表皮:菌組織

 どうやら、ザラツキトマヤタケ節 Sect. Depauperatae のアセタケのようだ。

2010年6月17日(木)
 
ビールにつられてしまった!
 
 不慣れな写真撮影、文章作成などに気をとられると、キノコの観察がついおろそかになり、調べる時間もなくなる。だから、I. A. さんの「きのこ雑記」に書いたらというお誘いをなるべく断ってきた。いつもながら、観察時のいろいろの疑問をぶつけると「その疑問がいいんだよ書いてごらん」と。今回はついついビールにつられて書くはめになってしまった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 鶏頂山でみつけたチャワンタケ仲間である(a)。追培養が必要かどうかだけ確認したあと、冷蔵庫でタッパーウェアに入れて保存していた。まずは子嚢盤の縁をみようと生のままで切ってみたが案の定もろく、くずれてしまった。そこで子実体の一部を小さくカットし乾燥させた。この状態にすると切片が実に薄切りしやすい(c)。子実下層から托外皮層まで、厚膜の菌糸が伸びているようにみえる(b)。さらにこの菌糸と毛の確認をしようと、生のままのものをおろしたての剃刀でそーっと切ってみたが、厚膜の菌糸を見つけることはできなかった。この子実体は乾燥気味で特に子嚢盤の縁が黒く乾燥していた。そのため毛らしきものは乾燥で欠落してしまったのだろうか。
 子実層はメルツァー液で封入するときれいに全体が青く染まっている(d)。子嚢全体が染まるのがあるんだとぬか喜びしたが、バラしたものを見ると子嚢の先端が染まっているだけである(e)。子嚢が重なっているとこんなふうにみえるのか(e)。冷蔵庫から出したばかりの時はふたを開けても胞子が飛び散ることはなかった。机の上にしばらく置いておいたタッパーウェアを開けると、暑さのためか浦島太郎の玉手箱のように白い煙がでた。ちょっぴりの時間をスライドグラスの上にお椀の一部を置いただけで胞子紋がとれてしまったのには驚いた。しかし子実体が乾燥していたように胞子も乾燥のためまるで赤血球のようにみえる(f)。

 たった一つのきのこをみるのに2日はかかってしまう。記載表をみながら本郷図鑑などを読んでいるとさらに観察不足をみつけ、どんどん時間が過ぎていく。最近は観察終了後も2日くらい冷蔵庫に残すようにしている。
 さあこれから菅平へ出発だ。2泊3日のワークショップのあとは筑波に向かう。(Y. A.)


2010年6月16日(水)
 
ん? ウラベニガサ属!
 
 多摩湖畔の緑地にはウラベニガサ属のきのこがいろいろ出る。ふだん見かけないタイプがあったので持ち帰った(a, b, c)。カサ中心部の表皮がクシャとして粉っぽく、若い個体でもヒダが非常に脆かった。ヒダに触れると簡単に千切れたり崩れてしまう。
 予測通りヒダ切片をうまく切り出すことはできなかったが、縁シスチジアと側シスチジアの存在は確認できる(e, f)。縁シスチジアに2タイプあり、小形で先端が丸いものと大形で卵形〜のう状のものがある(g, h, j)。側シスチジアは紡錘形で先端に小突起がある(i)。カサ表皮の細胞は、匍匐する菌糸の途中から、分枝した円柱状の菌糸が斜上あるいは直立して無造作に突き出す(l)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 何気なく「おやっ!」と思ってそのまま採取してしまったので、フィールド写真はケータイだ(a)。また、4〜5個体あったのだが、採取したのは二つだけだった。観察と検鏡のため一つはすっかり切り刻んでしまった。標本にして再び観察することはないと思われるので、廃棄処分した。

2010年6月15日(火)
 
志賀高原のきのこ
 
 一昨日志賀高原でヒカリゴケの見られた近くで、道ばたの落ち葉から出ていたきのこを覗いて楽しんだ。傘には粘性があり、柄の表面にも軽い粘性があって表面が白色の菌糸に包まれ段だら模様をなしていた。厚い内被膜があって、成熟したきのこのヒダは紫褐色を帯びていた。傘の縁には内被膜の残骸が千切れた状態で残っている。
 胞子紋は紫褐色で、胞子の壁は厚く発芽孔があり(c)、KOHで黄褐色になる(d)。ヒダには無数の虫がいて、切片には虫のギロチンが付着する。なんとか虫のほとんどいないヒダを選んで(e)、先端やら側を確認した。フロキシンで染めてみると、縁シスチジアはなく、クリソシスチジアを思わせる側シスチジアがあるようにみえる(f)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 水道水をKOHで置き換えて軽く押し潰してみた(g)。KOHでは全く変色しないが、どうやらクリソシスチジアのようだ(h, i)。担子器の基部にクランプはない(i)。傘表皮の菌糸は平行に走る(j)。モエギタケ属のきのこなのだろう。今日は終始虫との格闘だった。

2010年6月14日(月)
 
SDカードを認識しない!
 
 ふだん使っているパソコンに4GBのSDカードを挿入したら、カードをまったく認識してくれない。これまでコンパクトデジカメの記録媒体には2GBのSDカードを使っていて、認識しないということはなかった。SDカードは2GBを超えるとSDHCという別の規格となることは知っていた。
 しかし、サブマシンとして使ってきたACERのノートパソコンでは8GBのSDHCカードを日常的に使っている。製造年はメインパソコンよりも古い。だから、メインのパソコンは当然SDHCカードを読み書きできるものとばかり思っていた。メインPCはDellのVOSTROシリーズという2007年製のスリムタワーで、「13メディア対応カードリーダー/ライター」が内蔵されている。
 ドライバーソフト類を最近のものに更新してみたが何ひとつ改善されない。そこでやむなくSDHCカードリーダーをあらたに購入した。ところが、USBポートに差し込んだカードリーダーに、4GBのカードを挿入するとエラー表示が出るばかりでまったく読み出せない。USBポートに問題があるのかと思って、I/OインターフェースやBIOSをアップデートしたが症状は変わらない。
 とりあえず、4GBのSDカードに記録した画像は、カメラ本体をPCに接続して取り込んだ。いちいちカメラをPCに接続するのは面倒で時間もかかる。やむなく2GBのSDカードを購入した。

2010年6月13日()
 
谷川岳から志賀高原へ
 
 昨日、上越の谷川岳南面の沢に入った。廃道になった細径を歩いていてヒルの襲来に遭い、嫌になって下山した。何とも中途半端な時間だ。さてどうしようと思案した結果、草津を経て志賀高原に向かうことにした。いわゆる「日本ロマンチック街道」をひたすら西に向かい、暮坂峠を越えて草津に入った。白根山頂を間近に見る標高2,172mの峠周辺は観光客で溢れかえっていた。熊ノ湯を経てさらに奥志賀に向かい、原生林にもぐり込んだ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 大岩からミズゴケが垂れ下がる小洞窟がいくつもあった。残雪と岩を踏み越えて近づき、中をのぞき込むとヒカリゴケが群生していた。ミズゴケが岩から長く垂れ下がる光景も珍しければ、冷気に満ちた洞内のヒカリゴケは一服の清涼剤だった。昨日出会ったきのこはたったの1種類だけ、落ち葉の堆積する斜面に散生していた。それにしても暑い一日だった。

2010年6月12日()
 
縁シスチジア or 縁細胞
 
 所沢や多摩湖畔の緑地には何種類かのナラタケ類が出る。カサ表皮が暗緑色〜緑褐色で中央部に黒色の微粒を付着するタイプがある。ナラタケないしキツブナラタケなどに近い仲間なのだろうか。昨年11月の雑記にも記したが、この仲間には縁シスチジアがある。縁シスチジアといってよいものかどうか、昨年の雑記でも記している(雑記2009.11.12同11.13)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 今年もまた同じタイプのナラタケ類が出ているので、再度ヒダの縁を確認してみた。ヒダの縁を拡大して見ると何となくシスチジア様の構造がみられる(c)。ヒダの断面を切ってみると、先端がモヤモヤしている(d, f)。フロキシンで染めるとやや鮮明になる(e, g)。この部分をバラしてみると(h, i)、明らかに担子器や偽担子器とは異なる(j)。

2010年6月11日(金)
 
プレパラートの気泡
 
 カバーグラスをかけたところ気泡が入ってしまった。こんな場合どうしたらよいだろう。
  (1) 慎重にカバーグラスを外して、再び載せなおす:(a) → (b)
  (2) さっさとあきらめて、切片切り出しからやり直す:(a) → (c)
  (3) 観察に支障がなければそのまま検鏡したり撮影する:(d, e, f)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 たいていの場合、(1)はうまくいかずに失敗する。きのこの菌糸はとても脆くて弱いから、ただでさえカバーグラスの重みで簡単にペシャンコになりがちだ。なまじうまく薄く切れた小片ほど潰れやすい。だから、現実的な対応策は(2)か(3)となる。きれいな検鏡写真がどうしても撮りたいとか、観察に支障が出るほどの気泡なら、(2)のように再び切り出すのがよいだろう。
 「きのこ雑記」の基本姿勢は、いちいち気にせずそのまま観察・掲載である。たまに切り直しからやりなおすことがあり、そんな場合はその旨、記すこともある。雑記2010.5.18(d)同2010.4.13(j)同2009.5.28(b)同2008.10.1(g)など数え上げればきりがない。

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