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日( )
2010年6月30日(水)
 
イグチ3種の食感
 
 武蔵野の雑木林で採取したムラサキヤマドリタケ(a)、アカヤマドリ(c)、ヤマドリタケモドキ(e)を、油を少々使った同一の調理法で味付けした。食べてみた感触としては、ムラサキヤマドリタケが最も味わいがあった(b)。一方ヤマドリタケモドキはお世辞にも美味しいとは思わなかった(f)。アカヤマドリは調理法によっては結構いけるのかもしれない(d)。
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
(e)
(f)
(f)
 それにしても今年のキノコ発生時状は例年とはかなり違うような気がする。6月半ば過ぎまで非常に悪かった。それが、6月末になって猛暑に合わせて急に大発生が始まった。
 
(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
(l)
 先日の筑波の植物園でもそうだったが、テングタケ属ではガンタケばかりが異常によく発生している(g, h, i)。テングタケもよく出ているが、フクロツルタケの姿はまだほとんど見られない。イグチ類では、ミドリニガイグチがよくでているが(j, k, l)、キアミアシイグチの姿は全く見られない。

 顕微鏡専用カメラ(Olympus E-330)と実体鏡専用カメラ(同 E-410)がともに挙動不安定だ。今朝は撮影を諦めた。いよいよきのこが多数発生するシーズンだというのに!


2010年6月29日(火)
 
大形菌が大発生
 
 一昨日筑波の植物園では大形のイグチ類やテングタケ類が多量にみられた。気候条件のよく似た武蔵野の雑木林でもおそらく似たような状況だろうと思って、コナラ・クヌギ林を歩いてみた。ちょっと足を踏み入れただけで、非常に多種多様なきのこが乱立していた。
 大形菌だけをざっと数え上げたところ、ベニタケ属10〜12種、テングタケ属6〜7種、ハラタケ属5〜6種、イグチ類12〜13種、モリノカレバタケ属7〜10種、フミヅキタケ属3〜4種があった。さらに、コガサタケ属2〜4種、アセタケ属5〜7種、などなど、途中で数えるのはやめにした。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
(q)
(r)
(r)
 ムラサキヤマドリタケ(a〜f)、アカヤマドリ(g〜l)、ヤマドリタケモドキ(m〜o)といった大形菌では、30〜50本からなる大きな菌輪がいくつもみられた。幼菌、成菌、老菌と一通りの成長段階のものが揃っていた。ムラサキヤマドリタケでは色のバリエーションも豊かだった。
 大形菌による壮大なフェアリーリングは迫力がある。猛暑の中その存在感に圧倒されて、標本採取はほとんど行わず一部のキノコを撮影しただけとなった。キツネノハナガサも成菌(p)、幼菌(q)と多数みられた。1週間前に径1〜2mmと小さかったヤグラタケはすっかり大きくなり土台のクロハツが重みに耐えかねて倒れていた(r)。

2010年6月28日(月)
 
予想外の発生状況
 
 昨日筑波の植物園で行われた菌懇会観察会には予想以上に多くの参加者があった。参加者の顔ぶれも多彩で面白かった。園内には大形のイグチ類、テングタケ類をはじめ多数のきのこが発生していた。幸いほとんど雨にも遭遇せずにじっくりと観察を楽しめた。午後からの研修室では、久しぶりにボルトナット製簡易ミクロトームでアセタケの切片を作った(雑記2008.11.2)。次々に、楽にきれいな切片ができあがった。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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 帰路高速道路に乗ったが事故渋滞の発生を知り直ぐに次のインターで一般道に降りて帰宅の途についた。結局常磐道を走ったのは一区間だけだった。順調に家路につき、夕方にはビールで乾杯していた。今朝もそうだが、非常に蒸し暑い一日だった。

2010年6月27日()
 
マニュアル第三版
 
 分子系統樹作成のマニュアルとして有名な「PHYLOGENETIC TREES MADE EASY A How To Manual」の第三版を購入した(a)。8〜9年ほど前に読んだ初版とは内容が大きく変わっていて驚いた。本書の大部分は Windows 上の分子系統解析統合ソフト MEGA4 の操作手引き書となっている(b〜e)。全体を通してわかりやすいマニュアルとなっている。
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
(e)
(e)
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 初版(2001)で解説されていたのは Macintosh 上のアプリだけだった。第二版(2004)でようやく、UNIX / Linux や Windows 上のアプリについても言及されるようになった。それが、第三版(2008)ではついに Windows 上のソフト MEGA4 のマニュアルに特化していた。
 7〜8年ほど前には、Windows上で動く統合ソフトによいものがなく、Macintosh や Linux 上のソフトを使って処理をしていた。当時は自宅マシンもメインには Linux を使い、サブマシンとして Macintosh を使っていたので全く違和感はなかった(雑記2002.7.15同2001.7.4)。
 いつの間にかほとんどの分子系統解析アプリが Windows 上にも移植されていた。昨今広く使われている MEGA4 はインターフェースもわかりやすくなり、マニュアルのPDFファイルも229ページに及ぶ。MEGA for Mac もあるが Windows 版の使い勝手には及ばない。それで本書第三版では MEGA4 をメインとしたのだろうか。ベイズ法については、MrBayes が解説されるが、Windows 版ではなく Macintosh 版で説明されている。

 今日は筑波実験植物園で行われる菌懇会の例会に参加するためam7:00には出発だ。高速料金節約のため、一般道をトコトコ走っていくことになる。


2010年6月26日()
 
やはり半乾燥がよい
 
 川越市の保護林でひとつだけ採取したアワタケは成菌からやや老熟しかけていた(a)。持ち帰って冷蔵庫に放り込んであったが、今朝取り出すと管孔部から白いウジ虫が多数顔を出して蠢いていた。白色の紙袋にはきのこから滲み出した汁がベッタリついて黄色いシミが広がっている。採取当日一晩放置して採取した胞子紋は虫紋ないし虫糞紋と化し、使い物にならない。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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 縦切りにしてしばらく放置すると部分的に青変していた(b)。虫と糞をよけて胞子を撮影するまでにかなりの時間が必要だった(c)。カサ表皮は楽に切り出せた(d)。孔口や管孔部の先端をうまく切り出すことはできなかった。シスチジアと担子器はフロキシン+KOHで押し潰した(e)。
 カミソリで管孔部実質を切り出すまではよかったが、カバーグラスを載せるとペシャンコになり、実質の構造はわからなくなってしまった(f)。老熟気味のイグチから管孔部実質を切り出すには、半乾燥状態にして処理するのが楽だ。例によって大量に虫をギロチンしてしまった。

2010年6月25日(金)
 
大きな縁シスチジア
 
 埼玉県川越市の保護林ではクロハツはまだ出始めたばかりだった。傷つけたり切断すると、白色だったカサ肉や柄が赤くなって(a)やがて黒くなる(b)。赤変したり黒変に要する時間は、成長段階、湿度と温度によってかなり幅があるようだ。傷つけたとたんに赤くなることもあれば、10分以上経過してようやく赤くなることもある。黒変についても同様で、一晩経過してようやく黒くなることもある。この日のクロハツは、切断すると直ちに赤色になり、数分で黒色になった。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(g)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
(l)
 クロハツは顕微鏡初心者にとって扱いやすいキノコだ。比較的しっかりしているので、ヒダ切片の切り出しはとても楽だ(d)。大きな縁シスチジアがあり(g, i, j)、球形細胞からなるヒダ実質も顕著にわかる(e)。子実層の確認も楽だ(f)。
 切り出したヒダのプレパラートの端からフロキシンとKOHを注ぎ込んで反対側から濾紙で吸い出した。縁シスチジアが明瞭となった(g → h)。担子小柄(ステリグマ)をもった担子器がなかなかみつからない。やっと見つけたものは基部がよくわからない(k)。カサ表皮の組織は細長い(l)。
 クロハツは毎年のようによくメモっている。雑記2009.6.30同2008.7.18同2006.6.24等々。

2010年6月24日(木)
 
きのこ虫とのバトル
 
 埼玉県三芳町の多福寺でアセタケを採取した。マツ混じりのクヌギ林、砂利と泥でうず高くなった暗い場所に散生していた。コンパクトデジカメを手持ちで撮影したところ、やはりピンボケ写真となった(a)。アセタケの仲間の多くは見た目こそパットしないが、ミクロの世界は楽しいものが多い。特に胞子に瘤のあるタイプでは、シスチジアも興味深い姿をしていることがある。
 
(a)
(a)
(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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 この仲間の採取にあたっては、柄の基部を壊さないように注意深く掘り出すことが必須となる。種名を知るのに基部の膨らみ具合が大きな手がかりとなる。このアセタケはわずかに膨らみがある(i)。カバーグラスにとった胞子紋から、胞子の撮影をした。まず、封入液を使わずスライドグラスに載せ(c)、次いで脇から消毒用アルコールを注いだ(d)。ふだんは水を注ぐ。
 ヒダをスライドグラスに載せて縁をみた(e)。縁には頭部に結晶を載せたやや厚膜で大形のシスチジアと小形で薄膜のシスチジアがある。場所によっては薄膜風船形のシスチジアはない。久しぶりにヒダ断面を切り出した(f)。ヒダの側にも、縁と同形のシスチジアがある(g, h, j)。結晶を載せた頭部はカッパの頭を連想させる(h)。カサ表皮には菌糸がほぼ平行に走る(l)。
 コブアセタケに近い種なのだろう。ヒダの間には、体長0.5〜1.0mmの小さな虫が無数に潜んでいた。テーブルに紙を敷いて、そこにキノコを置くと、紙の上にはたちまち灰色の点がみるみる広がった。不思議と胞子紋には虫糞などは落ちなかったが、ヒダの切り出しでは多数の虫のギロチン姿があった。梅雨時のキノコ観察はしばしば虫とのバトルとなる。

2010年6月23日(水)
 
ベニタケ類がようやく
 
 川越市の保護林ではようやくきのこがいろいろと見られるようになってきた。圧倒的に多いのはイタチタケとヒビワレシロハツ。ついで目につくのが色彩豊かなベニタケ属のきのこだ(d〜j)。例年だとヤグラタケが目立つのだが、今年はクロハツ(a, b)がようやく発生しはじめたばかりで、ヤグラタケはまだ幼菌ばかりだ(c)。イグチ類はまだ数種類しか出ていない(k, l)。
 
(a)
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(c)
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 リンクページに少し手を入れた。「きのこ屋」と「徒然花鳥風月」の二つを、[きのこ 多様な価値観によるサイト] から [資料的価値のあるサイト] に移した。新たな「きのこ」情報の発信は今後ほとんどないだろう、という独断と偏見による判断だ。

2010年6月21日(月)
 
故今関博士の思いと昨今
 
 先日、あらためて保育社『原色日本新菌類図鑑(II)』の「読者と共に日本のきのこを研究しよう」(p.282〜285)を読み返した。故今関六也博士の思いが以下の見出しにそって語られている。たった4ページではあるが、図鑑本文よりも重みがあると常々感じてきた。
  きのこはどんなに大きくても微生物
  顕微鏡に親しむことの重要性
  標本の作製・整理・保存の重要性
  博物館を仲立ちにして専門家とアマチュアの連携
 はじめて読んだとき、非常に印象的だったのは次の一節だ。少し長いがそのまま引用しよう。

 近年,きわめて多数の地方的きのこ図鑑が出版されている。写真には美しいものが少なくないが,特徴のとらえ方に不備な写真が少なくない。その上に解説文は簡略に過ぎ,しかも胞子その他の顕微鏡的に重要な特徴を全く欠いている。その結果,読者の心には肉眼的観察だけできのこを見分けることができるという誤解が育てられる。そしてきのこの勉強は次第に科学性を失ってくる。肉眼的観察が基本的に重要であることはいうまでもない。しかし,それは眼光紙背に徹するような観察眼であってほしいが,その観察眼は顕微鏡的観察の裏付けがあって磨かれるのである。

・・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・
 そのためには顕微鏡を敬遠せず,顕微鏡に親しんでほしいと敢えて訴えるのである。顕微鏡は学者の独占物ではなく,学者の看板でものない。星好きの人にとっての天体望遠鏡,スポーツ愛好家にとってのゴルフ用具,スキー用具,サーフボード,ヨット,オートバイなどと変わらぬ道具だといえるであろう。
・・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・
 植物の場合,アマチュアの専門的知識はきわめて高い。残念ながら国家的に育てられなかった日本の菌学界にはまだその力がない。若い菌類分類学者の輩出とアマチュアのきのこ研究者の奮起と,これを育てる博物館の発展を切望してやまない。

 図鑑出版から21年・・・・、アマチュア研究者の層はずいぶん厚くなってきた。また、アマとプロとの間の風通しは良くなってきたが、顕微鏡観察の普及はあまり進んでいるとは言い難い。

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