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日( )
2010年10月31日()
 
体の割に小さな子嚢
 
 先週の日曜日に新潟県十日町市のブナ林で、倒木を円形で厚手のゼラチン質のきのこが一面に被っていた。ニカワチャワンタケの仲間らしい。一般に子嚢菌の胞子は大きく、対物40倍で子嚢やら胞子を楽に観察できる。しかし、ニカワチャワンタケの仲間の胞子は小さく、油浸対物100倍で観察しないと、サイズを正確に計測するのは難しい。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
 整った楕円形の胞子は(d)、フロキシンでは染まらず(e)、コットンブルーで軽く青色に染まった(f)。厚いゼラチン質の邪魔されて、子実層の断面を切り出すのは意外と面倒だ(g)。メルツァー液で子嚢の頂孔が青色に染まるが、これも対物40倍レンズではわかりにくい。子嚢頂口が青色の写真(h)は対物油浸100倍で見たものだ。今日はこれから筑波の植物園。

2010年10月30日()
 
ムラサキナギナタタケ
 
 さる10月23日に柏崎原発近くの神社の駐車場にきれいなムラサキナギナタタケが多数でていた(a)。持ち帰って冷蔵庫に保管しているうちに色がほとんど退色してしまい紫褐色になってしまった(b)。子実体先端の成長点付近が黒く細くなってまるで角のようになっている(c)。横断面は空洞で筒状ないし半筒状となっていて(d)、内側には柔らかい純白の菌糸が縦に並ぶ(f)。子実体上部の表面をルーペでみると、多数の突起が見える(e)。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
(h)
(i)
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(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 胞子は俵形。胞子画像をおもしろ半分にネガフィルム状に仕上げた(g)。子実層を含んで断面を見ると、薄膜柱状のシスチジアがある(h, i)。以下、子実層をフロキシンで染めて、KOHでほぐしてみた。シスチジア(j)はかなり大きく、写真は小さいタイプ。担子器は柄がとても長い(k, l)。

2010年10月29日(金)
 
2タイプのズキンタケ
 
 日曜日に新潟県十日町市のブナ林で二つのタイプのズキンタケにであった(b)。一つは明橙色の柄の先に緑褐色の頭部をもつ(a, c, d)。ズキンタケにしては頭部の色が緑褐色すぎるし、アカエノズキンタケにしては頭部の緑色がかなり弱い。
 いまひとつは、前者よりもやや小振りで、柄も頭部も同色でくすんだ緑色をしている(b, e, f)。この緑色タイプはアオズキンタケに似ているが、柄の表面に緑色の顆粒はなく、ほぼ白色のささくれが表面全体を覆っている。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ミクロの姿は両者ともほとんど差異はない。(g)〜(i)が黄色柄タイプ、(j)〜(l)が緑色タイプ。いずれも胞子は紡錘形で、子嚢先端は非アミロイド(i, l)。画像は掲載しなかったが、側糸の形や子実下層・子実層托などの菌糸構造もほとんど同じだ。
 「キノコのフォトアルバム」に掲載のズキンタケにはいくつかのタイプの写真が掲載されている。これは広義のズキンタケとみなすのがよさそうだ。

2010年10月28日(木)
 
凍てつく日光のきのこ
 
 昨日、展示用の野生きのこを集めるため奥日光連山を歩いた。今年の中禅寺湖の紅葉はあまり美しくない(a)。稜線では雪が舞い、気温はマイナス3〜4度と、この時期にしては寒かった。落ち葉をどけると、ゴンゲンタケ(b)、オシロイシメジ(c)、ネズミシメジ(d)、スッポンタケの仲間(e)がすっかり凍てついていた。ふと目を上げれば、ツキヨタケが凍りついていた(f)。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 昼過ぎになると陽が射しはじめ、気温も零度前後まで上がった。クリタケ(g〜i)、ムキタケなどがあちこちで大群落を作っていた。歩きやすい獣道を進むと、足下にはクマの毛とが到る処にあった。クマの毛が散乱する急斜面を下ると、途中にシロノハイイロシメジが群生していた(j〜l)。この脆いきのこに出会ったのは5年ぶりのことだ(雑記2005.10.29)。

2010年10月27日(水)
 
久しぶりのミドリスギタケ
 
 新潟県柏崎原発近くの神社で、マツの倒木からミドリスギタケらしきキノコが多数出ていた。久しぶりに覗いてみるのもよかろうと思い、持ち帰っていた(a〜c)。日曜日に帰宅後直ぐに胞子紋だけをカバーグラスに採取し、きのこ本体は紙袋に容れたまま冷蔵庫に保管してあった。ツバはすでに全く見られず、カサ表皮にKOHを滴すと黒変した。
 ヒダを切り出してみると(e)、子実層から子実下層にかけて、クリスタル状の結晶塊が幾つもある(f)。封入液をKOHに置き換えると、明褐色となって結晶もすべて消えた(g, h)。縁シスチジアはボーリングピンのような姿をしている(i, j)。
 
(a)
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(c)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
(i)
(j)
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(k)
(k)
(l)
(l)
 担子器には4胞子をつけたものと2胞子だけをつけたものが混在し(k)、カサ表皮には細い菌糸が匍匐している(l)。ミドリスギタケを覗いたのは久しぶりだ(雑記2007.6.15)。

2010年10月26日(火)
 
アカチシオタケ:指先状突起
 
 新潟県のブナ林(a)でブナ倒木からでていたアカチシオタケ(b, c)を覗いて楽しんだ。クヌギタケ属のうちクヌギタケ節やチシオタケ節では、縁シスチジアやカサ上表皮の菌糸に独特の突起をもったものが多く、それが種を特徴づけている。ルーペでヒダをみてもそれを感じられる(d)。胞子はえてしてどれもほぼ似通っており(e)、非アミロイドのものが多い(f)。
 ヒダの断面を見ても、縁シスチジアがあるようには見えない(g, h)。しかしヒダを一枚寝かせて縁をみると、奇妙な姿の縁シスチジアが密集していることがわかる(i, j)。3%KOHで封入して軽く押しつぶすと、その姿が明瞭に捉えられる(k, l)。ヒダの断面を低倍率でみても、側シスチジアがあることはわかり(m)、これは長い紡錘形や便腹形をしている(n, o)。
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 担子器の基部には、クランプをもつタイプと持たないタイプの両者が混在していた(p)。菌糸自体はヒダ実質でもカサ肉でも、柄でもクランプがある。やっかいなのがカサ上表皮の観察だ。きのこの状態がよく、運がよければ楽にカサ上表皮の構造を確かめることができる。でも、たいていはそう簡単に表皮菌糸の実体を見せてくれない。
 カサ肉の上にやや太めの表皮菌糸がある。さらにその上に薄い層をなして、細くて疣が多数でたような姿の菌糸が匍匐している。これが重なり合ってわかりにくい(q)。ここまでわかれば、フロキシンやコンゴーレッドなどで染めてKOHで封入して軽く押しつぶすとわかりやすい(r)。

2010年10月25日(月)
 
新潟・富山の旅
 
 土曜日(10/23)から日曜日(10/24)にかけての二日間、仲間6名で柏崎の博物館と富山の中央植物園で行われているきのこ展を観賞してきた。
 柏崎市立博物館は主張と個性が溢れた展示で面白かった。生きのこの展示品には、大きなアオロウジやら巨大なカエンタケなどもあった。学芸員のMさん、沢田画伯らと一緒に会食して、さらにいろいろな裏話も聞くことができた(a, b)。展示は11月14日まで。
 富山県中央植物園の展示は、サブタイトルの「不思議なきのこの世界」を訴えるポイントがやや弱いように感じられたが、子供たちを楽しませる工夫もあり、楽しめた。中でも、客の持ち込むきのこ鑑定風景は面白かった(c, d)。こちらの展示は今月末まで。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)

 富山からの帰路、新潟県十日町市のブナ林に遊んだ。一体には「美人林」と称されるブナ林もあり、観光客の来訪も多かった。下草のほとんどない林床には多くのきのこが見られたが、倒木が少ないため材上に発生するきのこはわずかだった(e, f)。大形菌では、ここでもテングタケ属が目立った。道路渋滞を避けることができ、天候にも恵まれた。帰宅間際に雨となった。


2010年10月23日()
 
柏崎市、富山市へ
 
 四国旅行から戻り、採集品と写真との照合作業や、標本の整理・作成などに追われて、ラテン語学習が疎かになっていた。サンスクリット語やラテン語などの屈折語では、最初の1ヶ月ないし2ヶ月は、動詞や名詞の活用・変化形を徹底して暗記するしかない。さもないと辞書すら引くことができない。この時期に4〜5日離れてしまえば、すべてはゼロに戻ってしまう。
 四国には教科書と辞書を持参して、アルコールで思考能力ゼロに近くなっても、就寝前には必ず20〜30分は教科書を開いて例文を音読し、動詞の活用、名詞の変化を復唱していた。しかし、1ヶ月ほど前に覚えた動詞の活用や、名詞の変化を思い出せない(雑記2010.9.29同2010.9.27)。ただでさえ極度に劣る記憶力はまるでザルのようだ。

 今日はこれから出発し仲間5名で柏崎市立博物館に向かう(雑記2010.10.18)。柏崎で沢田画伯らと一緒に昼食をしてから、そのまま富山県中央植物園の特別展「きのこ・キノコ・茸」に向かう予定。帰宅は日曜日で慌ただしいキノコ展ツアーとなる。昨日までに、手元の生きのこ標本の観察を終えておこうと思ったが無理だった。コケはまだ数点ほどしか同定作業を終えていない。


2010年10月22日(金)
 
ニンギョウタケ
 
 明日は新潟・富山に出かけるので、手持ちの生きのこを観察した。ニンギョウタケは一株を乾燥標本にし、その他は食用に回された。検鏡用はひとかけら。きのこは大きかったにもかかわらず、やや若かったのか胞子紋は殆ど落ちなかった。胞子はとても小さい(c)。子実体の断面を見ると中に空洞がある(d)。子実層は管孔状なのだが、ルーペでみたとき(e)と顕微鏡で見たとき(f)の印象はずいぶん違う。孔口付近は側糸のような菌糸が密集している(g, h, i)。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(g)
(g)
(h)
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(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
 担子小柄を備えた状態の担子器がなかなか見つからない。じっくりと探すとあった(j)。菌糸にはクランプがある(k)。クランプはカサ表皮やその直下の組織を見ると明瞭だ。

 来月岡山へ行くため、移動手段を比較検討した。夜行バスが最も安いが腰痛悪化は必至だ。選択肢は、新幹線か飛行機しかない。新幹線があまりにも高額なのに驚いた。岡山から東京への早割往復切符はあっても、東京から岡山へは単純な運賃のみの往復割引しかない。しかも飛行機の往復早割よりずっと高額だ。一瞬飛行機を予約しようと思った。しかし、乗るまでと降りてからの手続きに時間がかかり、ちょっと天候が悪いとすぐに欠航だ。あきらめて新幹線で往復することにした。あぁ〜、金欠病には移動費は辛い出費だ。


2010年10月21日(木)
 
幼菌のヒダと成菌のヒダ
 
 武蔵野の雑木林にザラエノハラタケがよく出ていたので、若い菌と成菌(a, b)、老菌を持って帰った。ハラタケ属の仲間は、肉眼的観察が重要で、顕微鏡を覗いたところでたいした情報は得られない。さらに、若い菌と成熟した菌では、ヒダの色がまるで異なる(d)。
 ヒトヨタケやコガサタケの仲間でもそうだが、顕微鏡で覗くつもりなら、なるべく若い菌を見つけて持ち帰るのがよい。特にヒダやカサ表皮の横断面を観察しようと思えば、若い菌を使うのが最も楽だ。多少未成熟でも、ヒダ実質の構造やシスチジアの様子は捉えやすい。
 
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 ヒダがすっかり黒ずんだ成菌と、カサが開く寸前の若い菌の両者から、ヒダを切り出してみた(e, f)。黒ずんだヒダはやはり薄切りが難しく、カバーグラスの重みで簡単に潰れてしまう(e, g, h)。それにたいして、若い菌のヒダは比較的しっかりしているので、簡単には潰れない(f, i, j)。とりあえず、胞子(k)とカサ表皮(l)の画像も並べてみた。

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