Top  since 2001/04/24 back


日( )
2010年3月10日(水)
 
ヒダに脈絡のあるきのこ (2)
 
 3月8日の雑記で取り上げた [ヒダに脈絡のあるきのこ] について、千葉菌類談話会のUさん(柏市)からメールでご指摘をいただいた。「青木氏仮称のスギカワタケ(北陸のきのこ図鑑ではスギシロホウライタケ)ではないかと思います」ということだった。
 そこで、「北陸のきのこ図鑑」(p.38)をみると、解説と図は件のきのこの観察結果とよく符合する。あらためて、名部みち代編「日本きのこ図版 第一巻」2008 を開いてみた(p.809〜814)。いわゆる「青木図版」には、No.292にスギカワタケ(石川・青木新称 1969)、No.1155にフユノスギカワタケ(青木新称 1982)として、6ページにわたって詳細な観察結果が記されている。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 観察結果から、本標本はフユノスギカワキタケとしてよさそうだ。青木実氏が埼玉県南西部を主体に活動していたことを考慮すると、所沢から狭山地域では多数の人の目に触れてきたことだろう。先ほどあらためて、乾燥標本から(a, b)、柄の基部の表皮(c〜e)とカサ表皮(g〜i)を撮影した。カサ肉は薄く、カサ裏には一面に子実層が発達していて、そこにも頭部が球状になった長いシスチジアが多数みられた(j)。なお、柄の内部組織にもクランプがある(f)。

 このきのこは、埼玉南部や東京都下で過去に何度も見ているが、採取して観察してみたのは今年が初めてだった。身近で毎年見るにも関わらず未だ「名無し」、そういうきのこが多数あるのがわが国の現状だ。このきのこは、幸いにも青木実氏、池田良幸氏という偉大なアマチュアによってすでに報告されていた。「きのこ雑記」運営者がそのことを知らなかっただけだった。和名としてスギシロホウライタケとフユノスギカワタケのいずれを採用するかという悩ましい問題はあるが、熱意あるアマチュアの手で新種(多分!)として報告されることを願うばかりだ。
 Uさん、適切なアドバイスとコメントありがとうございました。


2010年3月9日(火)
 
今年是非とも再会したいきのこ
 
 何年ぶりかに Profile に若干の修正を加えて Monologue の文を書き換えた。ほとんど誰も見向きもしないページだから内容などどうでもよいのだが、現状にそぐわなくなってきたこともあり、今年の初め頃から手を入れようと思っていた。(I)は後半のみ、(Y)は全面書き換えとなった。トップページの写真もそろそろ変えたいと思っているのだが、納得できる写真がない。いつまでも同じものを使っていると、自分でもあきてくる。

 今年是非とも再び採取したいきのこを、忘れないよう羅列してみた。いずれも、写真や記載を失って久しい(雑記2004.8.11同2004.8.1)。列挙してみると20点もある。記載だけではなく、フィールドでの写真、検鏡写真、標本の3点を揃えたいと思うが、どうなることやら。

アシナガヌメリ、コレラタケ、ビロードムクエタケ、ヒカゲウラベニタケ、ムツノウラベニタケ、クリイロムクエタケ、オオヒラタケ、チャヌメリカラカサタケ、ハダイロガサ、イバリシメジ、ユキワリ、ヒメキシメジ、オオシロアリタケ、ニオウシメジ、タマツキカレバタケ、アミヒカリタケ、カブラマツタケ、コショウイグチ、ウツロイイグチ、ニワタケ

2010年3月8日(月)
 
ヒダに脈絡枝のあるきのこ
 
 去る3月3日に東京多摩湖畔の緑地で、遊歩道の小径で柄の黒い束生するきのこを採取した。階段状に横に埋め込まれた丸木から出ていた(a)。ヒダには脈絡膜があり(b)、カサ表面は細かい隆起した皺がある(c)。乾湿の繰り返しによって平滑だったカサ表皮が縮まったようには見えにくい。ルーペでみると、ヒダの縁や側面には大きなシスチジアがあるようだ(d)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ヒダの断面をみると(e)、先端が球状になった長いシスチジアが、縁にも側面にもある(f)。担子器は細長く、基部にはクランプがある(g)。カサ表皮は気球型の細胞が柵状に並ぶ(h, i)。カサ表皮にも柄にも、要するに体表部の全体に、ヒダのシスチジアと同様のシスチジアがある。胞子紋は白色。胞子は非アミロイド(j, l)。フロキシンで染めると輪郭がよりはっきりした(k)。

 キシメジ科のきのこだろうが、保育社図鑑からは属にまでもたどりつけなかった。熱意のある人ならば、国内外の図鑑類にあたり、さらにWEB情報なども得て、モノグラフや論文などの検索に進むのだろう。その気はないので、これ以上深入りはしないことにした。


2010年3月7日()
 
憎っくきスギ花粉
 
 昨日は「第49回 こけ茶会」に参加して、つくば市で一日を過ごした。「茶会」後は酒会だったので、つくばエクスプレスを使って科博植物部研究棟まで出かけた。マイカー以外で研究棟に出かけるのは初めてだったので、不慣れなバスに翻弄され長時間歩かされた。科博研究棟では久しぶりに菌類H2Oの三名が揃った場に加わった。帰宅は案の定夜中になった。

 このところ採集したきのこのカサ表皮やヒダには決まってスギ花粉が付着している。多量に空気中に舞っているようだ。花粉症の患者にとっては憎っくき花粉といえよう。そこで、硫酸漬けの刑に処することに決めて、雄花を持ち帰ってきた(a, b)。
 

(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 雄花を縦断すると、中には多量の花粉がつまっていた(c, d)。花粉は球形でパピラと呼ばれる突起がひとつある(e)。これを濃硫酸で封入してしばらく放置した。10分ほどして接眼レンズを覗くと、次々と面白いように皮が破れて、透明で大きなゼラチン質の内容物が飛び出してきた(f)。

2010年3月6日()
 
樹の洞から出たきのこ
 
 先日採取した樹の洞から出ていたきのこを覗いた(a)。洞は思いの外深く、束生するきのこを柄の基部から取り出そうとしたが、うまくいかなかった。環境に適応して長い柄を作り上げたようだ(b)。同じきのこでも、少し離れた樹幹基部から出たものは、柄の長さが傘径の2.5〜3.5倍程度だった。カサ裏をみるとヒダの基部には、弱い横の脈絡があった(c)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ヒダの横断面を見ると、側シスチジアがないことは明瞭だが、フロキシンで染めても縁シスチジアの有無や形ははっきりしない(d, e)。ヒダを1枚スライドグラスに載せて縁をみると、縁シスチジアらしきものがある。そこで、その部分をフロキシンで染めてKOHで封入してバラしてみた(f)。
 ヒダ実質は並列型(g)。胞子は小さく(h)、アミロイド(i)。多量の胞子堆にメルツァー液をかけてみると、青色が明瞭に分かる(j)。担子器の基部にはクランプがあり(k)、カサ上表皮には細い菌糸が平行に走っている(l)。クヌギタケ節 Sect. Mycena のきのこのようだ。

2010年3月5日(金)
 
プロバイダ
 
 インターネットプロバイダTOK2PROから「【重要】ご契約満期のお知らせ」という連絡があった。今月7日で契約期限が切れるので、所定のページに行って契約更新の手続きを促す内容だ。更新手続きの期限は今日であるが、10日ほど前からどうしようか迷っていた。
 何度かトラブルにも見舞われたが、基本的にはTOK2PROは希望条件をほぼクリアできる比較的安定したプロバイダだ(雑記2008.11.6)。当初からやや遅かったが、ある時期から急にさらに遅くなったこともあり、最近数年間は主にミラーサイトとしてだけ利用していた。
 2003年7月から毎年更新して利用してきたが、今年限りでやめることにした。これに伴って、「きのこ雑記」関連ファイルで、TOK2PROにリンクを張っているファイルをすべて変更した。

2010年3月4日(木)
 
一ヶ月ぶりの狭山
 
 先月5日以来ひさしぶりに多摩湖畔の緑地に出かけてみた(雑記2010.2.6)。ここ何日か雨が降り少し春めいてきたので、何か変化があるかもしれないと思っていた。相変わらず、タマキクラゲ(a)、ヒメキクラゲ(b)、キクラゲ(c)、アラゲキクラゲ、シロキクラゲ、ヒラタケ、エノキタケといった常連ばかりだった。ごくわずかに、樹木の洞からクヌギタケ属のきのこが顔をだしていた(d)。ヒダに脈絡脈をもったエノキタケ型のきのこもみられた。朽ち木にはサラタケの仲間の子嚢菌がよく目立った。雨の後という環境のせいか、多くの硬質菌が新鮮にみえた。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)

2010年3月3日(水)
 
辞書を作ってPDICに登録
 
 電子版「菌学ラテン語と命名法」にはWindows版PDIC対応の辞書が収録されている。そのPDICだが、PDIC/UNICODE はこれまでの PDIC for Win32 と比べると大幅に改良されている(PDIC for Win32との違い)。いろいろ便利になった。登録できる辞書の数も16から30に増えている。諸機能を活用するためにも、菌類・蘚苔類・地衣類の専門用語と種や属などの学名等を登録した。まずはPDICに登録できる形の辞書の作成から行った。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 ベースとして利用したのは、MSIMEやATOKなどへの仮名漢字変換システム用のテキストファイルだ(a, b)。これらからPDIC登録用のファイル(d, e)を作ることにした。菌類蘚苔類地衣類のそれぞれが、4,000〜6,000行もある。これらをひとつひとつ手作業いじくっていては何日かかるかしれない。そこで、先日再復習したPerlでスクリプトを書いた(c)。
 教科書を読み直したかいあって、20分ほどで書くことができた。核心部は65〜67行の3行だけで、全体でもたかだか30〜40行しかない。バグとり時間を加えても30分ほどですんだ。DNA関連分野では標準言語となっているPerlだけあって、短いプログラムで大きな仕事ができる。
 このテキストファイルをPDIC/UNICODEの辞書に変換する作業は、以前のPDIC for Win32よりずっと楽になっている。すぐに辞書ができあがり、「bryo」と入力するとたちまちいろいろな用語が並んだ(f)。久しぶりにPerlやらPDICの辞書などに触れた。

過去の雑記

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2010
2009 中下 中下
2008
2007 上中
2006
2005
2004
2003
2002
2001

[access analysis]  [V4.1]